悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

70 / 128
 今回は短めですよ。
 タイトルの元ネタは『空の青さを知る人よ』から。


64話 神の狂気を知る人よ

「ぷぁっ、はぁはぁ、ユエ、大丈夫?」

「けほっけほっ……んっ。大丈夫」

 

 全身が海水でずぶ濡れになり、磯臭い臭いがする入間とユエの目の前には、真っ白な砂浜が映っていた。周囲にはそれ以外何もなく、ずっと遠くには木々が鬱蒼と茂った雑木林のような場所が見えていて、頭上一面には水面がたゆたっていた。結界のようなもので海水の侵入を防いでいて、広大な空間である。

 

「はぐれたみたいだね。電波もないから電話も出来ないけど……まぁ、こんなことで皆がどうにかなる筈もないね」

「……ん。きっと大丈夫」

 

 巨大クリオネから戦略的撤退を図ったバビル一行。

 彼等が落ちた場所は巨大な球体状の空間で、何十箇所にも穴が空いており、その全てから凄まじい勢いで海水が噴き出し、あるいは流れ込んでいて、まるで嵐のような滅茶苦茶な潮流となっている場所だった。

 その激流に翻弄されながらも何とか近くにいる仲間の傍に行こうとする入間達だったが、潮流は容赦なく入間達を引き離していった。ユエが魔法で水流操作を行うが、流れがランダム過ぎて思うようにいかない。シアが体重操作とドリュッケンの重さを利用して何とかアメリ、アスモデウス、ミレディ、クララ、ティオと合流したのはファインプレーと言えるだろう。

 

 本当ならベルトを使って水中での活動が可能なフォームに変身したいところなのだが、気を抜けばウォッチが流されかねない激流の中では無理があった。入間は歯噛みしつつ“重量調整”で自身の体重を増やし、シアと同じように重さで潮流を乗り切ろうとした。

 その矢先、運良くユエが流れてかち合い、合流することが出来た。既に、シアとティオはどこかの穴に流されたようで、空間内では姿が見えず、直ぐにそんな事をしていられない程の激流にさらされ、二人は一緒に一つの穴に吸い込まれるように流されていった。

 

 するとそこは、今現在いる真っ白な砂浜が広がる、この海岸線だったというわけだ。

 

「取り敢えず、先ずは着替えよう。このままじゃ風邪を引いちゃうかもしれないし」

「……ん、同感。どうせなら一緒にシャワー浴びる?」

「ユエ、そう言う冗談は止めよう?」

「……本気なのに」

 

 ユエは不服そうに頬を膨らませるも、一緒にシャワーなんて事になったら確実に面倒なことになるし、何が起こるか分からない大迷宮であまりゆっくりもしていられない。ユエもそれを分かっているのか、“コネクト”の魔法で異空間から着替えを取り出して着替え始める。

 

「出来た……それで、これからどうする?」

「このまま海底に戻っても、皆が何処に行ったのかなんて分からないし……深部目指して探索するしかない。皆もそうするだろうしね。

 

 真っ白な砂浜をシャクシャクと踏み鳴らしながらしばらく進み、二人は密林に入る。鬱蒼と茂った木々や草を、ユエをおんぶした入間がバッサバッサと切り裂いていく。

 

「……ふふっ」

「?どうしたの、いきなり?」

 

 突如笑いだしたユエに入間が首をかしげていると、入間の背中から降りたユエは微笑みながら入間に声をかける。

 

「……ん。なんだか懐かしくなった。こうして二人で迷宮を進むのが」

「あぁ~、そういえばそうだったね。まだ半年くらい前の事なのに、もう一年以上前の事に感じるよ……」

 

 ユエの言葉に、入間は懐かしげに眼を細める。

 最初は二人だけ(アリクレッドもいたが)で始まった旅は、初日からアメリやシアという仲間を加えることになり、それからも次々と仲間が加わり、今ではすっかり大所帯だ。なのでこうして二人っきりになるのは本当に久しぶりに感じてしまい、入間はフフッと笑みを溢す。

 すると、ユエは何故か舌舐めずりをしたあと、入間に向かい合うように近寄った。

 

「……入間、覚えてる?私との約束」

「ユエを魔界につれていくってこと?忘れるわけないでしょ」

「それもあるけど……一番大事なことを忘れてる」

「えっ?大事なこと……?」

「……はぁ、忘れてるなら思い出させて上げる。顔を寄せて」

 

 ユエの誘いに、入間は「う、うん…」と頷きながらその場で屈んでユエと目線を会わせると、何故かユエに頬を手で包まれたかと思うと……

 

 ……チュッ

 

 ユエの唇が、入間の唇と重なった。

 

「んな……っ!?」

 

 入間は途端に顔を真っ赤して絶句し、ユエは唇を離すと、チロリと妖艶な雰囲気を漂わせながら微笑んだ。

 

「入間の“特別の座”は私がもらうって約束……思い出した?」

「なっ、ななな……」

「無防備すぎ……そんなんじゃあ簡単に奪える♡」

「~ッ!と、とにかく!先に行くよ!!」

 

 口許を緩め妖艶に笑うユエに、ファーストキスを奪われた入間は羞恥心の余り、タコよりも真っ赤になった顔をして、眼に涙を溜めながら逃げるように先に進み、ユエもその反応に可愛いと思いながら後をついていくと、二人は密林を抜けた。

 その先は……

 

「これは……船の墓場かな?」

「……帆船のわりに、かなり大きい……」

 

 密林を抜けた先は岩石地帯となっており、そこにはおびただしい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっていた。そのどれもが、最低でも100mはありそうな帆船ばかりで、遠目に見える一際大きな船は300mくらいありそうだ。

 ユエも、入間も羞恥心を忘れても思わず足を止めてその一種異様な光景に見入ってしまった。しかし、いつまでもそうしているわけにも行かず、入間とユエは気を取り直すと、船の墓場へと足を踏み入れた。

 

 岩場の隙間を通り抜け、あるいは乗り越えて、時折、船の上も歩いて先へと進む。どの船も朽ちてはいるが、触っただけで崩壊するほどではなく、一体いつからあるのか判断が難しかった。

 

「それにしても……戦艦ばっかりだね」

「……ん。でも、あの一番大きな船だけは客船っぽい……」

 

 墓場にある船には、どれも地球の戦艦(帆船)のように横腹に砲門が付いているわけではなかった。しかし、それでも入間が戦艦と断定したのは、どの船も激しい戦闘跡が残っていたからだ。見た目から言って、魔法による攻撃を受けたものだろう。スッパリ切断されたマストや、焼け焦げた甲板、石化したロープや網など残っていた。

 大砲というものがないなら、遠隔の敵を倒すには魔法しかなく、それらの跡から昔の戦闘方法が想像できた。

 

 そしてその推測は、入間とユエが船の墓場のちょうど中腹に来たあたりで事実であると証明された。

 

 

──うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

──ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?なにっ!?」

「入間!周りがっ!」

 

 突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。驚いて足を止めた二人が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり──気が付けば、入間とユエは大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

 そして周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

 

「な、なんなのこれ……」

「……多分、幻覚かなにかだと思う、けど……」

 

 入間もユエも度肝を抜かれてしまい、何とか混乱しそうな精神を落ち着かせながら周囲の様子を見ることしかできない。

 そうこうしている内に、大きな火花が上空に上がり、花火のように大きな音と共に弾けると、何百隻という船が一斉に進み出した。入間とユエが乗る船と相対している側の船団も花火を打ち上げると一斉に進み出す。

 そして、一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

 

ゴォオオオオオオオオ!!

ドォガァアアン!!

ドバァアアアア!!!

 

「おぉ!?」

「んっ!」

 

 轟音と共に火炎弾が飛び交い船体に穴を穿ち、巨大な竜巻がマストを狙って突き進み、海面が凍りついて航行を止め、着弾した灰色の球が即座に帆を石化させていく。

 入間とユエの乗る船の甲板にも炎弾が着弾し、盛大に燃え上がり始めた。船員が直ちに、魔法を使って海水を汲み上げ消火にかかる。

 

 戦場──文字通り、このおびただしい船団と人々は戦争をしているのだ。放たれる魔法に込められた殺意の風が、ぬるりと肌を撫でていく。

 その様子を呆然と見ていた入間とユエの背後から再び炎弾が飛来した。放っておけば直撃コースだ。

 

 入間はなぜいきなり戦場に紛れ込んだのか?などと疑問で頭の中を埋め尽くしながらも、とにかく攻撃を受けた以上皆殺しOKの精神でスカルマグナムを召喚し、炎弾を迎撃すべく弾丸を撃ち放った。

 破裂音と共に一条の閃光となって飛翔した弾丸は、しかし、全く予想外なことに炎弾を迎撃するどころか直撃したにも関わらず、そのまますり抜けて空の彼方へと消えていってしまった。

 

「ッ!?」

「“光絶”!」

 

 入間が何度目か分からない驚愕をすると同時に、迫ってきた炎弾を防ぐべく、ユエは光系初級防御魔法の障壁を出現させた。

 ユエの障壁が、しっかり炎弾を防いだ。入間は訝しそうな表情となり、まさか射撃ミスか?と首を捻って、再度、飛来した炎弾に向かって発砲してみた。今度も、やはり弾丸は炎弾をすり抜けて、明後日の方向へ飛んでいく。

 

「……そういう事?」

 

 それを見て、攻撃の有効性についてある程度の推測を立てた入間は、別の攻撃方法を試してみることにした。取り出した羽に魔力を送り、愛用の漆黒の弓矢に矢を備えると、入間は連続でその矢を放った。今度は、炎弾をすり抜けることもなく貫くことが出来た。

 

「どうやら、ただの幻覚ってわけでもないけど、現実というわけでもないみたい。実体のある攻撃は効かないけど、魔力を伴った攻撃は有効らしい。全く、本当にどうなってんだろう……」

「……ん。面倒臭い……」

 

 入間とユエが厄介な状況に溜息を吐いていると、二人は不穏な気配を感じる。

 周囲を見渡せば、雄叫びを上げながら、かなり近くまで迫ってきた相手の船団に攻撃する兵士達に紛れて、いつの間にか、かなりの数の男達が、暗く澱んだ目で入間とユエの方を見ていた直後、彼等は二人に向かって一斉に襲いかかってきた。

 

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

 そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

 相対する船団は、明らかに何処かの国同士の戦争なのだろうと察することが出来るが、その理由もわかってしまった。これは宗教戦争なのだ。よく耳を澄ませば、相対する船団の兵士達からも同じような怒号と雄叫びが聞こえてくる。ただ、呼ぶ神の名が異なるだけだ。

 

「ユエ、飛ぶよ」

「んっ!」

 

 入間が短く告げると、二人は重力魔法を行使して空を飛び、先に物見台にいた兵士を蹴り落としつつ、四本あるマストの内の一本にある物見台に着地した。

 

 下方で、狂気に彩られた兵士達が血走った眼で入間とユエを見上げている。

 今の今まで敵国同士で殺意を向け合っていたというのに、どういうわけか一部の人間達が入間とユエを標的にしているようだった。しかも、二人を狙う場合に限って敵味方の区別なく襲ってくるのだ。その数も、まるで質の悪い病原菌に感染でもしているかのように、次々と増加していく。

 一瞬前まで、目の前の敵と相対していたというのに、突然、動きを止めるとグリンッ!と首を捻って二人を凝視し、直後に群がって来る光景は軽くホラーだ。

 

「さて、どうすれば、この気持ち悪い空間から抜け出せるかな?」

「……どこかに脱出口がある……とか?」

「海のど真ん中に?」

「……ん、確かに。戦争を終わらせるとか?」

「確かにね。それなら、良い考えがある。ユエ、僕に捕まってて」

 

 ちょうど、マストのロープを使って振り子の要領で迫ってきた兵士数人を見もせず魔力弾で撃ち抜き霧散させた入間はユエを背中に乗せて飛び出す。

 眼下を見れば、そこかしこで相手の船に乗り込み敵味方混じり合って殺し合いが行われていた。入間とユエが攻撃した場合と異なり、幻想同士の殺し合いでは、きっちり流血するらしい。

 甲板の上には、誰の物とも知れない臓物や欠損した手足、あるいは頭部が撒き散らされ、かなりスプラッタな状態になっていた。どいつもこいつも「神のため」「異教徒」「神罰」を連呼し、眼に狂気を宿して殺意を撒き散らしている。

 兵士達の鮮血が海風に乗って桜吹雪のように舞い散る中、マストの上の物見台にいる入間とユエにも、いや、むしろ二人を狙って双方の兵士が執拗に襲いかかった。

 それを見た入間は、魔術で空に滞空し、ジオウウォッチとインフィニットジオウウォッチを、ジクウドライバーに装填した。

 

「変身!!」

 

 

インフィニットタイムッ!!

 

Rider is Forever!!

仮面ライダー!インフィニット・ジッオーーウ!!

 

 

 周囲に出現したライドウォッチが集束し、入間は仮面ライダーインフィニットジオウへと変身すると、背中にしがみつくユエを守るように更に高く飛ぶ。

 

「……入間、何をするの?」

「このインフィニットジオウ……他にも色々出来ることがあると思うんだ。今からそれを試す」

 

 そう言いながら、インフィニットジオウは二つのレリーフをタッチした。

 

 

ウィザードライダーズ!

 

エグゼイドライダーズ!

 

 

 音声と共に、上空に出現したゲートから【仮面ライダーウィザード・インフィニティースタイル】と【仮面ライダーゲンム・ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオン】の幻影が出現し、その力がジオウに宿る。

 

「『マジック・クロニクル』、『コズミック・クロニクル』──起動!」

 

 ゲンムレベルビリオンの能力……『ありとあらゆる概念を書き換え、どんなゲームでも作り出す』能力を用いて、インフィニットジオウは二つのゲームを作る。

 

──マジック・クロニクル。

 様々な魔法を操る主人公が、邪悪な魔法使いから世界を救うゲーム。

 

──コズミック・クロニクル。

 宇宙崩壊の危機から地球を救うゲーム。

 

 宇宙と魔法の力を操る事が出来るようになったインフィニットジオウは、インフィニティースタイルのほぼ無尽蔵の魔力を使い、両手を伸ばした瞬間、上空巨大な四つの魔法陣が出現すると同時に、天から巨大な岩石──隕石がふりそそぐ。

 

 そして、インフィニットジオウが出現させた魔法陣を潜り抜けた隕石軍は、炎、水、風、土、雷、氷、重力波を纏い──船に直撃する。

 魔力を纏った隕石の直撃を受けた船は、抵抗する事も出来ずに瓦礫の山となり、海の藻屑となって沈んでいく。

 

「……入間、流石」

「どうやら、このインフィニットジオウには別の年号のライダーの能力を同時に行使して、重ね合わせることも出来るみたいだね……」

 

 物理攻撃が一切通用せず、どのような攻撃にも怯まない狂戦士の大群と船の上で戦わなければならないという状況は、普通なら相当厳しいものなのだろうが、ここにいるのはチートと化け物。

 二国の大艦隊は、その後、たったの五分間で、たったの二人に殲滅されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、流石にはじめての事で少し疲れたよ……インフィニットジオウはネクストグランドジオウみたいにコントロールが効かない訳じゃないけど……乱用は避けた方がいいか」

「……入間、お疲れ様」

 

 全ての戦艦を海の藻屑にした後、再び、周囲の景色がぐにゃりと歪み、気が付けば、入間とユエは元の場所に戻っていた。

 やはり殲滅で正解だったかと安堵の吐息を漏らしたインフィニットジオウは変身を解き、ユエと共に近くの岩に腰を下ろした。

 “宝物庫”から取り出したリンゴジュースをコクコクと飲み込んで喉を潤し、一息ついた入間は口を開いた。

 

「それにしても…あそこまで気持ち悪いものを見たのは久しぶりだね。人間はあそこまで盲信的で狂気的になれるもんなんだなって思ったよ……」

「……ん。ここにある廃船と関係ある?」

「うーん……多分、昔あった戦争を幻術か何かで再現したんじゃないかな。……まぁ、迷宮の挑戦者を襲うって改良は加えられているみたいだけど……あるいは、これがこの迷宮のコンセプトなのかもしれないな。この推測が本当だとすれば、ここは……」

「……“狂った神がもたらすものの悲惨さを知れ”?」

「そんな気がするよ」

 

 入間の言葉を引き継ぎ、答えを呟いたユエ。

 入間は先程までの光景を思い出して、不快感を感じたのか顔をしかめる。

 彼がここまで気分を害したのは、兵士達の狂気だ。“狂信者”という言葉がぴったり当てはまる彼等の言動が、思想が、そしてその果ての殺し合いが気持ち悪くて仕方なかったのだ。

 狂気の宿った瞳で体中から血を噴き出しながらも哄笑し続ける者や、死期を悟ったからか自らの心臓を抉り出し神に捧げようと天にかかげる者、入間とユエを殺すために弟ごと刺し貫こうとした兄と、それを誇らしげに笑う弟。戦争は狂気が満ちる場所なのだろうが、それにしても余りに凄惨だった。その全て“神の御為”というのだから、尚更だ。

 一度“敵”と認識すれば一切容赦のない入間だが、彼の本質は根っからの平和主義者だ。大事なものを守るためには敵と言う一を切り捨てなければならないと言うことはとっくの昔に受け入れてはいるが、幻覚と分かっていても、あの悲惨な光景には多少なりとも心を痛めてしまう。

 

「……入間、辛い?」

「あっ、いや大丈夫だよ……」

 

 ユエが心配そうに声をかけると、入間は苦笑しながら答える。

 その答えを聞いたユエは、一瞬だけ不快そうに顔をしかめると、入間の手を取った。

 

「……入間、こっち」

「わっ!?」

 

 ユエがその手を思いっきり引っ張ると、思わず入間はユエのもとへと引き寄せられ、絶壁と言うわけではないが、慎ましやかに膨らんだユエの胸のなかに顔を埋めてしまった。

 

「ユッ、ユエ!?こんな時にまで……」

「良いから、今はゆっくりして」

「……ッ!」

 

 また普段のようなアピールかと思い飛び出そうとした入間だが、ユエの優しげな声を聞くと、不思議と抵抗する気力が失せて、大人しく胸の中に収まる。心臓は耳に移動したのかと思う程にドキドキしている入間に、ユエは優しく語りかけた。

 

「疲れてるなら…無理はよくない」

「あ、ありがとう……」

 

 そう言われると何故か逆らう気が起きず、そうしてしばらくユエの胸に顔を埋めていると、不思議と入間の沈んでいた気分がフワッと軽くなったのを感じた。

 

「そ、そろそろ良いよ……」

「……ん。癒された?」

「ッ!と、とにかく!まだ大迷宮内なんだし、速く先へ進もう!」

 

 ユエの笑顔を見た入間は、途端に顔を真っ赤に染め上げ、その顔を隠すようにユエを促して、一番遠くに鎮座する最大級の帆船へと歩みを進めた。

 

(なんでだろ……ユエを見てるとこんなにドキドキするのは…?)

 

 先程から、耳に移動したのではと思うほどに高鳴る鼓動に困惑しながら……




・スキ魔

アメリ「むっ!?」キュピーン!

アスモデウス「どうしたのですか、会長?」

アメリ「何か……今とてつもなく不味い状況になっている気がする」

シア「アメリさんも感じましたか?私もなんと言うかウサミミがゾワゾワしてますぅ……」

ミレディ「これはもしかすると……イルくんとユエちゃんがきすしてたりして……」

ティオ「ミレディ殿、いくらユエでもそれは……あり得るかもしれんの」

アスモデウス「……貴様ら、いったいなんの話をしている?」

クララ「アズアズには分かんないね」

アスモデウス「どういう意味だ!?」

ー完ー





感想、評価お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。