悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 お久し振りです。
 少し展開に悩んでいたら執筆が遅れました。今回は後半にオリジナルをいれています。今回もまた広い心でお楽しみ下さい。

 サブタイトルは仮面ライダーOOO風です。


66話 吸血姫と悪食とブラックホール

 淡い光が海面を照らし、それが天井にゆらゆらと波を作る。

 その空間には、中央に神殿のような建造物があり、四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また、周囲を海水で満たされたその神殿からは、海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そして、その円形の足場にも魔法陣が描かれていた。

 

 その四つある魔法陣の内の一つが、にわかに輝き出す。そして、一瞬の爆発するような光の後、そこには人影が立っていた。入間とユエだ。

 

「……ここは……あれは魔法陣?まさか、攻略したの?」

「……何か問題ある?」

「いや、まさかもうクリアとは思わなくて……他の迷宮に比べると少し簡単だった気が……」

 

 どうやら、メイル・メルジーネの住処に到着したようだとわかり、入間は少し拍子抜けしたような表情になる。

 

「……んっ、でも、この世界の一般人には困難。最初の海底洞窟だって潜水のためのアーティファクトなんて持ってないからクリアするまでずっと沢山の魔力を消費し続けるし、下手をすれば、そのまま溺死……亡霊みたいなのは物理攻撃が効かないから、また魔力頼りになる。それで、大軍と戦って突破しなきゃならないから……」

「むっ、そう言われれば確かに……」

「……まして、この世界の人なら信仰心が強いだろうし……あんな狂気を見せられたら……」

「余計、精神的にキツいか……」

 

 ユエの指摘は、要するにバビル一行が強すぎたという事だ。そこまで言われると、確かに、【グリューエン大火山】も最後のキリヲの襲撃さえなければ無傷で攻略出来ていたなぁと納得する入間。

 そして、そう言えば、他のメンバーと合流する前に到着してしまったが彼女達はどうしているだろうかと考えたその時、入間の思考を読んだように右側にある通路の先の魔法陣が輝き出した。

 

 爆ぜる光が収まると、そこにはシア達の姿があった。絶妙なタイミングだった。

 

「いいタイミングだね。そっちは大丈夫だった?」

「あぁ、問題ない。そっちは大丈夫じゃなかったのか?」

「あ、ユエさん大丈夫ですかっ!」

「なっ、ユエは何故イルマ様の背に乗っているのだ!?」

「えぇっ!?確かに普通の人には即死レベルの設定をしたけど、ユエちゃんが怪我したの!?」

「回復魔法はどうした?」

「ユエユエ、痛いの?アメちゃんいる?」

 

 入間の呼びかけに、それぞれ元気な様子を見せつつ、入間に背負われているユエに心配そうな視線を送っている。

 それに対するユエの返答は……

 

「……ん。問題ない。入間の背中を堪能していた」

「…ッ、と、兎に角!大丈夫ならもう下ろすからね!」

 

 入間はユエの悪戯っぽい笑みを見て、僅かに顔を赤くしてを降ろした。そして、神殿へと向かいユエ達と合流する。

 

「で?何があったんじゃ?ん?ほれ、言うてみよ、ご主人様。ユエと何かあったんじゃろ?ほれほれ、何があったんじゃあ?隠さずに言うてッへぶぅ!?」

 

 ティオがニヤつきながら実にうざい感じで問い詰め出したので、イラっと来た入間は取り敢えず張り手を繰り出した。足を崩して艶かしい姿勢で崩れ落ちたティオが荒い息を吐きながら頬を染める。

 

「ひ、久しぶりの衝撃じゃぁ~、はぁはぁ、んっ、ご主人様よ、もっとお仕置きしていいんじゃよ?むしろ足蹴にしてくれていいんじゃよ?」

 

 どこか期待した雰囲気で、そんなことをのたまうティオを無視して、一同は奥の祭壇へと向かった。背後から「あと一回、一回でいいのじゃ!お願い、妾をぶってぇ」とキモイ言葉が聞こえていたが、全員全力でスルーした。

 

「…それで、何があったのですか?」

 

 ティオをスルーし、アスモデウスが問い掛けると、ユエはフフッと可愛らしく笑いながら答えた。

 

「……入間のファーストキス、奪った♡」

「ユ、ユエ!!?」

「「「「「なっ!!!?」」」」」

 

 とんでもないカミングアウトに、入間は顔を真っ赤にして反応し、アメリ達は顔を真っ赤にして一斉に入間の方に顔を向けた。その表情には「どういう事だお前!!」と言わんばかりの眼力であり、入間は誤魔化すように踵を返して祭壇に歩き出した。

 

「さ、さぁ!試練を突破した証を手に入れるよ!!」

「待てイルマ!!ユエとキスをしたと言う件を詳しく話さんか!!」

「そうですよイルマさん!大迷宮の命がけの試練の最中だというのに、二人きりだからって何をイチャイチャしてるんですか!ユエさんも、少しは自重してください!!」

「……甘えてくる入間が余りにも可愛かった。反省も後悔もない」

「誤解を招く言い方はしないで!!」

「ご主人様が甘えてくるじゃと!?それはレアな光景を見逃したのじゃ……はぁはぁ……」

「ええぃ、興奮するなド変態!!」

「イルマ様ァ!いくらなんでもそれは見過ごせません!貴方はいずれ魔界を統治する御方!男女のお付き合いもキチンとした順序というものが……」

「イルマち、ユエユエの件で取り調べじゃーーーい!!」

「ニュフフフフ…♪イルくんは本当に女ったらしだね……ねぇねぇ、私を含めて沢山の女を囲ってハーレム作るのってどんな気持ち?世界の未来を担う魔王が、後に色情魔とか言う噂されたりしたらどんな気持ち?プギャーー☆」

「あぁーーーーーー!!!もぉーーーーーー!!!!」

 

 ギャーギャーと騒ぎながら祭壇に到着し入間達は、全員で魔法陣へと足を踏み入れる。いつもの通り、脳内を精査され、記憶が読み取られた。しかし、今回はそれだけでなく、他の者が経験したことも一緒に見させられるようだった。つまり、アメリ達が見聞きしたものを入間とユエも共有したのである。

 どうやら、アメリ達は巨大な地下空間で海底都市とも言うべき廃都にたどり着いたようだ。そこで入間達と同じく空間が歪み、二国の軍隊と都内で戦争して来たようである。というのも、その都は人間族の都で魔人族の軍隊に侵略されているところだったらしく、結局、両者から襲われたようだ。

 都の奥には王城と思しき巨大な建築物があり、軍隊を蹴散らしながら突き進んだアメリ達は侵入した王城で重鎮達の話を聞くことになった。

 何でも、魔人族が人間族の村を滅ぼした事がきっかけで、この都を首都とする人間族の国が魔人族側と戦争を始めたのだが、実は、それは和平を望まず魔人族の根絶やしを願った人間側の陰謀だったようなのだ。気がついた時には、既に収まりがつかないほど戦火は拡大し、遂に、返り討ちに合った人間側が王都まで攻め入られるという事態になってしまった……という状況だったらしい。

 そして、その陰謀を図った人間とは、国と繋がりの深い光教教会の高位司祭だったらしく、この光教教会は、聖教教会の前身だったようだ。更に、彼等は進退窮まり暴挙に出た。困った時の神頼みと言わんばかりに、生贄を捧げて神の助力を得ようとしたのだ。その結果、都内から集められた数百人の女子供が、教会の大聖堂で虐殺されるという凄惨な事態となった。

 

 アメリ達も、その光景を見たときは流石にかなりキツかったようだ。魔法陣による記憶の確認により強制的に思い出し、顔を青ざめさせている。特に、シアは今にも吐きそうだ。

 ようやく記憶の確認が終わり、無事に全員攻略者と認められたようである。入間達の脳内に新たな神代魔法が刻み込まれていった。

 

「ここでこの魔法……大陸の端と端じゃないか」

「うぅ……こっちを睨まないでよ~~」

「……見つけた“再生の力”」

 

 入間が悪態をつく。それは、手に入れた【メルジーネ海底遺跡】の神代魔法が“再生魔法”だったからだ。

 思い出すのは、【ハルツィナ樹海】の大樹の下にあった石版の文言。先に進むには確か“再生の力”が必要だと書かれていた。つまり、東の果てにある大迷宮を攻略するには西の果てにまで行かなければならなかったということであり、最初に【ハルツィナ樹海】に訪れた者にとっては途轍もなく面倒である。入間達はデンライナーという高速の移動手段を幾つも持っているからまだマシだったが。

 魔法陣の輝きが薄くなっていくと同時に、床から直方体がせり出てきた。小さめの祭壇のようだ。その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった。どうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残したらしい。

 

 人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は、白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。

 彼女はオスカーと同じく、自己紹介したのち解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、オスカーの告げたのと同じ語りを終えると、最後に言葉を紡いだ。

 それを見て、何故かミレディが苦笑する。

 

『……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています』

 

 そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインと、昭和ライダーのライドウォッチが置かれていた。

 入間はコインを手にした後、昭和ライダーのウォッチを手に取る。黒と銀で彩られたウォッチにはXを模したマークと「1974」の年号が描かれており、ベゼルを回すと、それは【Xライダー】のライドウォッチだった。

 

「証の数も四つですね、入間さん。これできっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」

 

 シアが、懐かしそうに故郷と家族に思いを馳せた。入間は証のコインとXウォッチを“宝物庫”にしまった途端、神殿が鳴動を始めた。そして、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

 

「うわぁっ!?強制排出!?全員、掴み合うよ!」

「……んっ」

「何故こんな退出なのだ!?」

「ライセン大迷宮みたいなのはもういやですよぉ~」

「解放者にはろくな奴しかいないのか!?」

「何気にミレディさんを責めてない!?」

「水責めとは……やりおるのぉ」

「うわはははは!!ウォータースライダーーッ!!」

「「「「「「なんでクララは楽しんでるの!?」」」」」」

 

 凄まじい勢いで増加する海水に、入間達はデンライナーを出して乗り込む暇もなく、あっという間に水没していく。咄嗟に、また別々に流されては敵わないと、全員がしっかりお互いの服を掴み合い、“宝物庫”から酸素ボンベを取り出して口に装着した。

 そして、その直後、天井部分が【グリューエン大火山】のショートカットのように開き、猛烈な勢いで海水が流れ込む。入間達もその竪穴に流れ込んで下から噴水に押し出されるように猛烈な勢いで上方へと吹き飛ばされた。

 おそらく、【メルジーネ海底遺跡】のショートカットなのだろうが、おっとりしていて優しいお姉さんといった雰囲気のメイル・メルジーネらしくない、滅茶苦茶乱暴なショートカットだった。しかも、強制的だった。後にミレディの口から実はドSで大雑把な性格だと知るのはそんなに遠くないことである。

 

 押し上げられていく入間達は、やがて頭上が行き止まりになっていることに気が付く。しかし、入間達がぶつかるといった瞬間、天井部分が再びスライドし、入間達は勢いよく遺跡の外、広大な海中へと放り出された。

 海中に放り出されたバビルは、急いでデンライナーを召喚して乗り込もうとするが、その目論見は阻止される。一番、会いたくなかった相手によって。

 

 

 

 入間達の眼前を凄まじい勢いで半透明の触手が通り過ぎ、デンライナーが勢いよく弾き飛ばされた。

 

『ユエ』

『“凍柩”!』

 

 入間が向けた視線の先には、一見妖精のような造形でありながら、全てを溶かし、無限に再生し続ける凶悪で最悪の生物──巨大クリオネがいた。わざわざ攻略が終わった後で現れたことに苛立ちながら、入間はユエに“念話”を発動して呼びかける。

 巨大クリオネは再び無数の触手を水の抵抗などないかのように猛烈な勢いで射出した。それに対して、ユエが入間の呼びかけに応え阿吽の呼吸で周囲の海水を球形状に凍らせて、氷の障壁を張る。

 

 直撃した触手の勢いで海中を勢いよく吹き飛ばされる氷の障壁と中の入間達。激しい衝撃に全員が障壁内でシェイクされる。

 

 

コズミックステイツ!

 

 

 コズミックステイツウォッチを起動した入間が、目の前にワープホールを作り出す。それを見て入間の意図を察した面々は、躊躇いもなくそのゲートに飛び込んだ。

 

 ゲートを潜った入間達は、凄まじい浮遊感に襲われた。転移した先が上空だったからだ。少しでも海から離れようと上空百メートルに出口を設定したのである。

 すぐさまティオが“竜化”をし、その背に入間達を乗せて浮遊した。

 

「流石ですイルマ様!咄嗟の判断でコズミックステイツの力を扱うとは!!」

「……ん。空間魔法はまだまだ実戦レベルじゃないから」

 

 ユエの言う通り、空間魔法は重力魔法の比ではないくらい扱いが難しく、ユエを以てして未だ、実戦で使えるレベルではなかった。“想像構成”によるイメージでの魔法陣構築には多大な時間がかかるし、魔力効率もまだまだ悪く、百メートルの空間転移をするのに最上級魔法一回分と同等の魔力を消費してしまう程だ。なので、それを必要としない入間のワープドライブによる脱出法に全員が称賛を送る。

 次の瞬間、その表情は凍りつくことになる。

 

ドォゴオオオオオオオ!!!

ザバァアアアアアア!!!

 

 轟音と共に、突然背後から巨大な津波が襲いかかったのだ。いや、巨大というのもおこがましいだろう。もはや、壁、そして空だ。上空100mほどの高さを飛ぶティオの遥か天に白波を立てながら襲い来る津波は、優に高さ500mを超えているだろう。そして直径は1kmくらいありそうだ。

 

「ッ、ティオ!」

『承知っ!』

 

 入間の叫びにティオが我を取り戻し、翼をはためかせて一気に加速する。左右に逃げ場はない。空間転移は間に合わない。ならば、何も考えず前へ!【グリューエン大火山】から脱出した時に匹敵するような高速で飛行する。

 

「“縛印”、“聖絶”!」

「“聖絶”」

 

 ミレディが呑み込まれた時に備えて全員を繋げる光のロープを作り出した同時にユエと共に上級防御魔法を展開する。シアは、何やら集中すると次の瞬間には目を見開いて警告を発した。

 

「ティオさん、気をつけて!津波の中にアレがいます!触手、来ます!」

 

 固有魔法“未来視”の派生“仮定未来”で見た光景を伝えたのだろう。ティオは、シアの言葉を確認することもなく、咄嗟に身をひねった。直後、津波から無数の触手が伸び、今の今までティオの居た空間を貫いていく。

 上手く避けることは出来た。しかし、そのせいで津波との差が詰まってしまった。なお襲い来る触手を、入間とアスモデウスが魔術による炎で焼き払い迎撃するが……

 

「全員固まって!」

 

 ティオの背で入間はユエとシアとミレディとアメリを、アスモデウスはクララ抱きしめるように庇い、そして、その直後、天災とも言うべき巨大津波が入間達を呑み込んだ。

 ユエとミレディの二人がかりでの”聖絶”があるため、津波の衝撃を直接受けることはなかったが、それでも壮絶な奔流によって滅茶苦茶に振り回され、海中へと逆戻りとなった。海に叩きつけられた衝撃に頭を振る入間達は、顔を上げて表情を更に険しくした。

 

「狙った獲物は逃がさないってこと?」

 

 “聖絶”に守られた入間達の前に巨大クリオネが既にいたのだ。しかも、その姿は更に巨大化しており、既に20mを超えている。それでも足りないのか、周囲から半透明ゼリーを集めながら、更に巨大化を続けていく。

 

「……入間さん。冗談抜きにキスしてくれませんか。最後くらい入間さんからして欲しいです」

 

「……ふぅ、ご主人様よ。妾も、最後はキスを所望するじゃ」

 

 シアが困ったような微笑みを浮かべながら入間におねだりをする。ティオも同じだ。

 だが、入間に視線を向けた彼女達はビクッと体を震わせた。なぜなら、入間の眼がとても静かだったからだ。眼光は鋭く、巨大化するクリオネモドキを睨んでいる。

 入間は諦めてなどいなかった。そんな事を考える必要もない。有り得ないほどの強敵と相対して諦めが付くくらいなら、入間は今この場に立っていない。というか、今の入間にとっては、この程度の事は“驚異”のうちには入らない。

 そして、それを理解し、共に奈落の底で死線をくぐり抜けて来たからからこそ、ユエ、アスモデウス、クララ、アメリもまた諦めなど一切持たない。

 

 凛とした入間の眼に、シアもティオもミレディも心奪われたように、しばらく惚けた表情で見つめたまま硬直していたが、巨大クリオネがいよいよ30m級になり攻撃を開始したことで正気を取り戻した。

 

「じゃあ、始めようか。皆は十秒だけ時間を稼いで。そうすれば終わらせられる」

 

 そう言って、入間はジクウドライバーとライドウォッチを取り出す。

 ミレディが“聖絶”に更なる魔力を送り、ユエとアスモデウスとティオがブレスを放ち、アメリが“ギガキャノン”を、クララが“ギガント”を使って砲撃を放つ。彼女達の眼には、もう諦めの色はなかった。入間がやれると言ったのなら、怖いものなどなにもない。

 

 そして、入間は仲間達が稼いだ時間を使い、2つのウォッチを起動してベルトに装填した。

 

 

 

ジオウ!

 

エボル・ブラックホール!

 

 

「変身!!」

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ジオウ!!

 

アーマータイム!

 

エボリューションッ!ブラックホールッ!!

 

 

 禍々しいエネルギーが入間を包み、両肩に大きな“エボルトリガー”を模した装甲が装着され、「ブラックホール」の文字が顔に張り付くことで、入間は【仮面ライダージオウ・エボルブラックホールフォームアーマー】に変身した。

 

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす、時の王者!その名も仮面ライダージオウ・エボルブラックホールフォームアーマー!イルマ様が星の狩人の力を手にした瞬間である!」

「……毎度思うんですけど、誰に向かっていってるんですか?」

「シア、考えるだけ無駄だ」

「そーそー!アズアズはこんなんなんだから!」

 

 アリスの祝福を受けながら、姿を変えたジオウは、ベルトに装着されたライドウォッチのボタンを押し、ドライバーを回転させる。

 

 

フィニッシュタイムッ!!ブラックホールッ!

 

ブラックホールッ!タイムブレークッ!!

 

 

「再生するなら……跡形もなく消滅させれば言い……!!」

 

 その瞬間、ジオウが掲げた腕の先に、野球ボールサイズの漆黒の渦が現れる。

 ジオウがその渦を投げ放ち、その渦がクリオネの前に現れたかと思うと、その渦は瞬く間に肥大化していき、直径一メートル程までになったかと思うと、その暗黒の渦は周囲の海水ごと、巨大クリオネを吸い込み始めた。

 

 巨大クリオネは、ジオウの発生させたブラックホールの危険性を察し、振り払おうとそのブラックホールに近付くが、それがいけなかった。

 飛ばした触手は一瞬で無限の闇に呑み込まれ、やがてはその身体も闇に誘われようとする。巨大クリオネは、逃がすまいと躍起になっていた入間達の事すら頭から追いやり、必死に目の前の闇から逃げようとするが、惑星の破壊者の手から逃れることは出来ず、瞬く間に呑み込まれていった。

 

 太古から海に巣食う天災、“悪食”は、異世界の魔王の手により、永遠に海から姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天に昇る月を映す海。

 悪食を討伐した入間達バビルは、デンライナーに乗って海上を走り、ミュウとレミアの待つエリセンへと帰還していた。

 本当なら、空間魔法かワープドライブで一瞬で帰ることも出来たのだが、ユエ達はメルジーネ海底遺跡の幻覚で精神的に疲れており、入間も悪食を討伐すらる際に使用したブラックホールの制御で疲弊しており、自動操縦に切り替えて帰ろうと言ったからだ。

 時刻は地球時間で言えば夜中の一時を回っており、シア達は既に各自に割り当てられた部屋のベッドで夢の世界の住人とかしている。

 そんな中、ある一室で、ベッドの上に腰掛ける影あった。

 

「……はぁ」

 

 その人物──入間は、窓から差し込む月の光を浴び、ベッドの上に腰掛けながらため息を吐いた。

 サバイバル生活が長かった人生故か、寝付きは非常に良い入間なのだが、今回ばかりは眠ることが出来ない。と言うのも、眠れない理由があるからだ。

 すると、入間の部屋の扉がノックされ静かに音を立てながら扉が開かれた。

 

「……ん。入間、お待たせ」

「ユエ……」

 

 入ってきたのは、ユエだった。

 ネグリジェだけという非常に扇情的な姿をしており、最高級のビスクドールのようなユエの美貌とベストマッチしていることで、それは一つの芸術品のような美しさをもつ姿に、入間は僅かに目を奪われるが、すぐに気を取り直すと、ユエは入間が座るベッドの上に座り込んだ。

 

「その…ごめんね。いきなり呼んじゃって」

「……ん。問題ない。寧ろ嬉しい♡」

「……それにしたって、もう少し服を選んだ方がいいと思うんだけど」

 

 実は、就寝前に入間はユエに声をかけて皆が寝静まったら来るように呼び掛けていたので、眠らなかったのはそのせいである。真夜中に呼び出したことを申し訳なく思う入間だが、ユエは寧ろ嬉しそうな様子だ。

 

「…それで、話って?」

 

 ユエに水を向けられて、入間はわずかに身を強張らせるが、大きく深呼吸してから話し始めた。

 

「ユエ……大迷宮で僕に行ったよね?特別の座を貰うって…」

「……」

「その時、それもいいかもしれないって思って……分かったんだ」

「……入間」

 

 入間は自身の内心を確認するように、自分の想いを口にする。

 オルクスの奈落で出会いユエの過去を聞いた時、入間はユエに、()()()()()()()と思ってしまった。生まれてから両親から金儲けのために使われてきた自分と。

 だが、入間は魔界に行き、悪魔達と共に生きていくうちに、入間は魔界を自分の生きる場所と決めた。だからこそ、彼女には幸せになってほしいと思った。

 ドラスとの戦いで、一度は彼女と離れるべきだとも考えた。だが、仮面ライダーという生き方の過酷さを知り、入間についていく事の意味を知っても、ユエは入間と共に生きていく事を選んだ。

 それから多くの仲間を得たが、入間はきっと、誰か一人でも欠けていたら、この旅は今ほど楽しくなかっただろうと思っている。

 

「……きっかけは何だったのか分からないけど、いつしか僕は君に惹かれてたんだ」

 

 そう言った入間は一度大きく息を吐き、竜のブレスのように熱い熱を持った紅い目を向けてくるユエの頬に優しく触れる。

 

「ユエ……僕は、君の事が好きです」

「……ん。私も、貴方を愛してる」

 

 ユエは噛み締めるように返事をして、美しく可憐な笑みを浮かべた。きっと、他の男が今のユエを見たのなら、種族も貴賎も関係なくそのハートのド真ん中を撃ち抜かれたことだろう。

 それは入間も例外ではなく、こみ上げる愛おしさそのままに強くユエを抱きしめた。そして、ごく自然にユエの唇を奪う。

 

「…んっ」

 

 触れたのは一瞬。ゆっくりと口が離され、今にも泣き出してしまいそうに潤んだ目を向けるユエに、入間は顔から火が吹き出してしまうような錯覚を覚えると共に、より愛おしさが込み上げてくる。

 しかし、次の瞬間、入間は胸の中にいたユエに飛び付かれ、ベッドの上に押し倒された。

 

「えっ!?」

 

 告白とキスの羞恥心が残っていた事で対応ができなかった入間は眼をパチクリさせながら、自身の下腹部に股がっているユエを見る。

 

「ユ、ユエ…?」

「……ようやく、入間の“特別”になれた♡もう遠慮なんてしない♡」

 

 妖艶な雰囲気を撒き散らしながら舌なめずりをするユエに、入間は嫌な予感がする。

 入間ももう17歳だ。赤ちゃんはコウノトリが運んでくるなんて話は信じていないし、恋人が関係を深めていった先に何をするのかくらいは分かっている。

 

「ま、まさかとは思うけど……」

「……ん。“ピー”する♡」

「ちょっ、流石にそれは……んむっ!?」

 

 咄嗟に止めさせようとする入間の言葉は、身を乗り出したユエが自身の唇を入間のそれと重ね合わせることで塞がれた。

 眼を見開く入間だが、ユエは唇の角度を変えて貪るように入間の唇を堪能する。ユエを引き剥がそうとしていた腕を下ろした入間は、ユエの唇の感触と、口内に侵入して入間の舌と絡み合うユエの舌の感触に、抵抗する意思を失っていく。

 

 やがて唇が離れ、二人の口内で絡み合った唾液が銀色の糸となってつぅっと音を立てて橋を架けると、ユエは指でその銀色の糸を絡めとり、艶かしい仕草で舐めとった。

 

「……ふふっ。入間、シよ?」

「…………うん」

 

 ユエの誘いに、抵抗は無意味だと悟った入間は弱々しく頷いた。

 

 その夜、夜の海上を突き進むデンライナーの一室で、二つの影が重なりあい、ベッドが軋む音と互いを求め合う声が室内に響き渡った。

 




・スキ魔

シア「皆さ~~ん。お夕飯が出来ましたよぉ~」

クララ「うは~~!!シアシアのお料理キラキラだぁ~~!!」

アメリ「刺身か……アスモデウス、どうした?」

アズ「臭いが相成れん……!」

ティオ「ふむ、アリス殿は魚が苦手なのじゃな」

ユエ「……アリス、好き嫌いはダメッ!」

アズ「断固拒否する!」

ミレディ「あれあれ~?アズアズって17歳の癖に魚も食べられないのぉ?お魚さんに申し訳ないって思わないのぉ?プキャー☆」

アズ「燃やすぞ貴様ぁッ!!」

入間「あはは……ところでシア、こんなに沢山のお刺身作る魚はどこで調達したの?」

シア「ここは海ですよ、入間さん。デンライナーの上で大量に釣ってきましたよぉ!特にこの、“オッサンの顔をした魔物のお刺身”とかは自信作ですぅ!」

一同「「「「「「「………」」」」」」」



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