悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 今回はユエ無双回…だけど、原作崩壊するレベルでやらかしたかもしれない(今更)。


72話 魔法使いたちの乱舞

 天頂に輝く月が見えなくなるほどの灰竜の群れ。

 優に百体は超えているだろう。そして、その中心には胸元に傷を付けた白竜と、背に騎乗するフリード・バグアーの姿。

 

「悪く思うな。敵戦力の分断は戦いの定石だ」

 

 空間魔法“界穿”が作り出した転移ゲートの奥へと消えていったシアと、巨大な怪物にって王都の方へ押し込まれてしまったアスモデウス達。そして二人を追って飛んでいった黒鷲部隊を横目にフリードは宙に佇むユエに語りかける。

 風系統の魔法を使っている気配もないのに、まるで夜天に浮かぶ月のように空に浮かぶその姿に、目を細めながら反応を伺うが、ユエは無表情のまま静かにフリードを見据えているだけだ。

 

 フリードは魔人族であることに誇りを持っており、例に漏れず他種族を下に見ている。魔人族が崇める神に対する敬虔な信者でもあり、価値観の多様性を認めないタイプの男だ。そんな彼がバダンと組んでいるのは、単純に魔人族が崇拝する神がバダンを協力者であると進言したからであり、バダンに対して何の感情も抱いておらず、寧ろ、自分達より遥かに強者であるバダンを下に見るという傲慢な傾向があるほどだ。

 故に、他種族の女に興味を示すことなど有り得ない事だった。だが、そのフリードをして、本物の月が自らの配下である灰竜達により隠されてなお、地上を照らす月の如き輝きを放つ美貌の少女には、『殺すのは惜しい』と思わせるだけの魅力を感じていた。

 その思いは、入間を殺すためにも必要だと分かっていながら、そして同胞を殺された事に対する憎しみを抱いていながら、それでも、つい戯言を口にさせてしまう。

 

「惜しいな。……女、術師であるお前では、いくら無詠唱という驚愕すべき技を持っていたとしても、この状況を切り抜けるのは無謀というものだろう。どうだ?私と共に来ないか?お前ほどの女なら悪いようにはしない」

 

 そんなフリードの勧誘に対するユエの反応はというと……

 

「……気色悪い。二百万回は生まれ直してこい、醜男」

 

 何とも手厳しい、嫌悪感たっぷり表情での痛烈な返しだった。

 

 ちなみに、フリードは10人中10人が美男子と評価すると言っても過言でないほど整った容姿をしている。その力の大きさ(魔人族の基準)と相まって、魔人族の間では女性に熱狂的な人気がある。断じて醜男ではない。

 しかし、ユエはフリードが【グリューエン大火山】で神を語った時の恍惚とした表情を見ており、それが酷く気持ち悪かったという記憶がある上に、以前まで神の教えがどうので命を狙ってきた敬意から、完全に『敵』としか認識していないのだ。更に言えば、件の大火山で入間に不意打ちを仕掛けても倒すことができず、逆に手も足も出せずに追い詰められてバダンに助けてもらうという醜態を晒した男が、上から目線で何を言っているんだとも思う。

 そんな男が、澄まし顔で誘ってくる。もう、気持ち悪い上に滑稽な、それこそ光輝と同レベルの屑野郎にしか見えなかった。そもそも、入間以外の男に対して何かを感じるという事すらないので、本当に戯言以外の何ものでもなかった。

 

 ユエの言葉を受けて、フリードの目元がピクリと引きつる。

 

「殉教の道を選ぶか?それとも、この国への忠誠のためか?くだらぬ教え、それを盲信するくだらぬ国、そんなもののために命を捧げるのか?愚かの極みだ。一度、我らの神、“アルヴ様”の教えを知るといい。ならば、その素晴らしさに、その閉じきった眼もッ!?」

 

 全くの見当違いをペラペラと話しだしたフリードに、ユエは神速の風刃を放つことで答えとした。ただ単に、聞くに耐えなかっただけというのもあるが。

 

 夜風に乗って血飛沫が舞う。ユエの放った風刃はフリードが身を逸らしたために肩を浅く切り裂くに留まった。咄嗟にフリードが風刃に反応できたのは、腐っても大迷宮攻略者ということだろう。でなければ、今頃は腕一本失っているところである。

 ユエは、怒りを宿した瞳で自分を睨むフリードに、冷めた眼差しを返す。そして、愚かな魔物の支配者に対し豪然と告げた。

 

「……最後の慈悲で演説が終わるまで待ってようと思ってたけど、本当に下らない男。鏡を見たことがないの?」

「…何?」

 

 眼を細めるフリードに、ユエは心底下らないものを見るような冷めきった眼を向けながら口を開く。

 

「……くだらない教え?それを盲信するくだらない国?私から見れば、この国の連中も貴方達魔人族も同じ穴の狢。大体、私は私の意思にしたがって、入間達と最高の未来を掴み取る為にこの場にいる。神なんて“ゴミ”に尻尾を振るだけで自分で物事を考える頭もない癖に、私に上から目線で話し掛けるな醜男」

 

 辛辣かつ侮蔑に満ち溢れたな言葉に、フリードは自分どころか敬愛する自身の神をも貶され、無表情となった。どうやら、フリードのタブーに触れたようだ。

 

「よかろう。もはや、何も言うまい。貴様を殺して、あの男の前に死体を叩きつけてやろう。さすれば、多少の動揺は誘えよう。その時が、あの男の最後だ」

「……入間にコテンパンされてバダンに助けてもらった雑魚の癖に、私を殺して入間を殺す?相変わらず、自分と相手の格の違いを理解できないの?醜男」

 

 怒りを押し殺して告げた言葉に、事実を織り混ぜた嘲笑を以て返されたフリードの額に青筋が浮かぶ。直後の返答は行動で示された。

 【グリューエン大火山】でも見た、肩に止まる小鳥型の魔物に指示を出すフリード。すると、王都の外壁を破り都に侵攻していた魔物の群れの一部が地上からユエ達の方へと押し寄せて来た。どうやら、地上からも攻撃をするつもりらしい。

 

 

ドライバー・オン!

 

 

 対するユエも、腰にウィザードライバーを出現させ、あるリングを指に嵌めた。

 

「……見せてあげる。私と貴方の“格”の違い」

 

 その言葉と共に、ユエはウィザードライバーのレバーを操作し、ハンドオーサーの向きを変える。

 

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!

シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

 

 ユエは、水色の宝石で作られた仮面の指輪──“インフィニティーウィザードリング”をハンドオーサーに翳し、両手を小さく広げ、眼を閉じて天を仰ぐ。

 

「……変身」

 

 

イィィンフィニティー!!

イィィンフィニティー!!

イィィンフィニティー!!

イィィンフィニティー!!

 

 

 音声と共に、ユエの体から目映い輝きを放つ結晶体のドラゴンが飛び出してユエの周囲を飛び回ると、ユエの足元に白銀に耀く魔法陣が現れる。

 魔物達の間から差し込む僅かな月の光を反射し、ドラゴンの飛ぶ道筋からキラキラと光る粒子を降らせ、足元の見たことのない魔法陣の光を浴びるユエの姿は、綺麗と言う言葉すら陳腐に聞こえるような、言い表せぬ美しさと神々しさを秘めており、フリードや魔人族、魔物達ですら、ユエが動かないと言う戦略的なチャンスを放棄してまでその光景に眼を奪われてしまう。

 そして、遂にその時は来た。

 

 

プリーズッ!!

 

ヒースイフードー!ボーザバビュードゴーン!

 

 

 足元の白銀の魔法陣がユエの体を駆け上がると、ユエの体が、水晶のように透明度の高い結晶に包まれる。やがてユエの全身が結晶に包まれると、一瞬でその結晶が弾けたことで、姿を変えたユエの全容が露になった。

 

 それは、淡い水色のような白銀の魔法使い。

 装甲に嵌め込まれた宝石が月の光を反射して光る輝かしい姿はまるでダイヤモンドの様。顔を覆うベゼルのフレームもダイヤモンドの指輪を思わせる王冠のような形状へと昇華している。装甲の宝石が目映い輝きを放つその姿は美しく、神々しい。

 その姿こそ、ユエの新たな力にして、仮面ライダーウィザード最強の姿──仮面ライダーウィザード・インフィニティースタイルである!!

 

 その姿に、フリードは驚愕し、魔物達や魔人族達も、その姿に目を奪われる。

 

「その姿は…!」

「……このショーに、お前の見せ場はない。ここからは、幕開けからフィナーレまで、私のショータイムだ」

 

 

チョーイイネ!ブリザードッ!サイコォーッ!!

 

 

 その言葉を合図に、ウィザードを中心にして極寒の氷雪が吹き荒れた。

 一瞬で巨大な竜巻へと発展したそれは、ウィザードを覆い隠しながら天頂へと登る。地と天を繋ぐ白き嵐は、周囲の温度を一気に絶対零度まで引き下げ、月を覆い隠して上空を旋回していた灰竜達の尽くを凍てつかせた。

 

 竜巻を発生させる風系中級攻撃魔法“嵐帝”と、海をも凍らせる極寒の冷気を放つ指輪の魔法“ブリザード”。プロセスの違う魔法同士を複合させた魔法である。

 まるで、氷河期をもたらした気候変動により一瞬で凍りついたマンモスのように、その身を傷つけることなく絶命した灰竜達は、地上へと落下すると地面に激突してその身を粉々に砕けさせた。体内まで完全に凍りついていたようで、赤い血肉の結晶が大地にコロコロと跳ね返っている。

 

「おのれ、小賢しい……!掃射せよ!」

 

 一気に20体近くの灰竜を落とされたフリードは、ギリッと歯を食いしばりながら一斉攻撃の命令を下す。それにより、旋回していた灰竜達が一斉に散開し、四方八方上下、あらゆる方向から極光の乱れ撃ちを行った。

 夜天に奔る幾百の極光は、さながら流星雨のようだ。夜の闇を切り裂き迫る閃光は、中の術者を射殺さんと、吹き荒れる絶対零度のブリザードを剣山の如く貫いた。

 

 無数の極光による衝撃で、氷雪の竜巻は宙に溶けるように霧散していく。散らされた氷雪が螺旋を描き、その中央から現れたのは、極光に貫かれ傷ついたウィザードの姿……ではなく、前後左右に黒く渦巻く星を従えた無傷のウィザードだった。

 

 間髪いれず、目視した小さな敵に再び幾百の閃光が奔る。

 しかし、本来なら全てを消滅させる強力無比な死の光は、ユエの体を包む白銀の鎧に阻まれ、ただの一つも、その鎧の内側には届かなかった。

 

 ウィザードの装甲に備わった宝石“アダマントストーン”は、ダイヤモンドをも凌駕する硬度を有する鉱物であり、それで出来た鎧を身に纏うウィザードの防御力の前には、所詮量産型の灰竜達のブレスなど、風が吹いた程度の感覚でしかなかった。

 

「これも私の知らぬ神代魔法か……ブレスが効かぬなら、直接叩くまで!行け!」

 

 どうやら、ウィザードが無事な理由が自分の知らない神代魔法で防いだと誤解したフリードの作戦変更命令に、灰竜達はタイムラグなど一切なく忠実に従う。竜の咆哮を上げながら、その鋭い爪牙で鎧ごと肉体を引き裂かんと眼に殺意を宿して襲いかかった。

 波状攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。ウィザードの周囲は直ぐに灰竜の群れによって灰色に埋め尽くされた。

 

 対するウィザードは、迫り来る竜達の殺意など微塵も気にせず、静かに手を前に出した。

 

「来い、ドラゴン」

 

 その瞬間、ウィザードの体から結晶のような煌めきを放つドラゴンの幻影が飛び出し、ウィザードの目前まで迫り、の鋭い爪を伸ばし、強靭な顎門を大きく開けていた灰竜達がそのドラゴンの出現によって発生した衝撃波によって悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

 すると、周囲を飛び回った結晶のドラゴンは、ウィザードの新たな武器となって具現化した。

 

 ドラゴンの翼や顎を模した斧頭や刃に、柄に刃を持つ斧のような武器──“アックスカリバー”を手にしたウィザードはその場で回転し、アックスモードとして手にしたアックスカリバーを振るいながら魔法を行使した。

 

「“斬羅”」

 

 アックスカリバーが円を描くように回転すると、世界に一筋の光が走り、世界がずれた。

 何もない空間に一線が引かれ、その線を起点に隣り合う空間が僅かにずれているのだ。そして、ドラゴンの幻影に吹き飛ばされてその空間の亀裂に重なっていた灰竜達は、一瞬の硬直の後、ズルっという生々しい音と共に空間ごと体を切断されて血飛沫を撒き散らしながら地へと落ちていった。

 

 これは、空間に亀裂を入れてずらす事で対象を問答無用に切断する魔法である“斬羅”を、アックスカリバーを使った状態で行使することで、アックスカリバーに空間そのものを斬る能力を付与する事ができる…要するに、仮面ライダーオーズの必殺技である“オーズバッシュ”と似た効果を持つ技だ。

 

 ウィザードによる防御不能の切断魔法で、周囲に集まっていた灰竜30体以上が断末魔の悲鳴を上げる事すら出来ずに絶命した。フリードは、自分でも出来ない発動速度・展開規模での空間魔法の行使に戦慄の表情を浮かべる。

 

「なんという技量だ。……そうか、貴様も神に選ばれし者なのか!それなら、私の誘いに乗れぬのも頷ける」

 

 額に汗を流しながら得心がいったというように頷くフリードに、ウィザードは「コイツ、頭おかしいの?」と、仮面の下でバカを見るような心底呆れた眼を向けた。

 

「……口ばかりペラペラ動かしてないで、少しは自分の強さを行動で示せないの?バダンの腰巾着」

 

 明らかにフリードを…いや、魔人族全体をを見下した言葉の返答はウィザードの言う通り、行動で示された。

 【グリューエン大火山】でも見た、肩に止まる小鳥型の魔物に指示を出すフリード。すると、王都の外壁を破り都に侵攻していた魔物の群れの一部が地上からウィザード達の方へと押し寄せて来た。どうやら、地上からも攻撃をするつもりらしい。

 

 

チョーイイネ!サンダーッ!サイコォーッ!!

 

 

 ウィザードは、灰竜達の極光を“絶禍”で吸収して防ぎながら、指輪の魔法を発動する。天に出現した緑色の巨大な魔法陣から落雷の咆哮と共に緑色の竜が姿を現した。“絶禍”に溜め込んだ極光を迫り来るフリードと灰竜達に解き放ち牽制しながら、地上部隊を殲滅せんと雷の竜を強襲させる。

 いつも通り、問答無用に顎門に吸い込み全てを灼き尽くす雷竜……のはずが、体長5mを超える六足の亀型の魔物・アブソドによってその進撃を止められてしまった。大口を開けた巨大アブソドによって、正面から逆に喰われ始めているのだ。

 

 アブソドは、以前、【オルクス大迷宮】でカトレアという魔人族の女が連れていた、魔法を体内に取り込む固有魔法を持つ魔物だ。しかし、地上で雷龍を吸い込んでいるアブソドは、迷宮にいたアブソドとは大きさが違う。おそらく、改良が加えられ更に強化されたのだろう。

 しかし、ウィザードの放った雷の竜は、アブソドに呑み込まれながらも、その巨体を浮かせていき、少しずつではあるがその身を灼いていく。ウィザードが放ったのは“サンダーウィザードリング”による雷の魔法だが、同時に重力魔法を使うことでユエの十八番“雷龍”と同じ効果を発動できる。どうやら、同時に複数属性の魔法を呑み込むことが出来ないという制限は変わっていないらしく、雷は呑み込めても重力魔法の方は呑み込めないようだ。

 

 徐々に浮かされていく体に焦ったように六足をばたつかせるアブソドだったが、その巨体が雷龍に攫われる前に、もう一体のアブソドが重力魔法を呑み込み始めた。流石に、二体の強化されたアブソドによるフルパワーでの固有魔法“魔力貯蔵”の行使には雷竜も耐えられず、その雷の体を取り込まれてしまった。

 

 その直後、圧縮されたそれぞれの魔法が、ウィザードに向けて発射される。

 

「……鬱陶しい」

 

 地上より発射された対空砲火二条は、正確な狙いでウィザードを襲う。ウィザードはアックスカリバーの一振りでその二つを呆気なく切り裂いた。

 

「ふっ、貴様がその奇怪な雷系魔法を使うことは承知している。アブソドがいる限り、お前の魔法は封じたも同然だ」

 

 ニヤリと口元を歪めながら嗤うフリード。しかし、ウィザードは特に焦ることもなく、新たな指輪の魔法を行使し、同時に集中状態に入る。

 

 

コピー!プリーズッ!

コピー!プリーズッ!

コピー!プリーズッ!

コピー!プリーズッ!

 

 

 魔法の行使と同時に、魔法陣から4つのアックスカリバーがウィザードの周囲を飛び回る。

 

「また、空間を裂く気か?そんな暇は与えんぞ!」

 

 先程アックスカリバーで空間を斬った光景を見たフリードの号令で、白竜と灰竜がより一層苛烈に極光を放ち、地上からは空を蹴って黒豹型の魔物が迫った。

 

 極光の嵐を、重力魔法で操ったアックスカリバーを縦横無尽に飛び回らせて防ぐ。そこへ、地上から黒豹がその姿を霞ませるほどの速度で迫り、無数の触手を射出し始め、更に、極光を防ぐため動き回るアックスカリバーを掻い潜って鋭い爪を振るった。

 

「ギャアアアアアッ!!」

 

 しかし、その鋭い爪は、ウィザードに僅かの痛みすら与えられない。逆に、触れた瞬間にその爪はガラスのように砕け散り、悲鳴を上げた瞬間にはアックスカリバーの刃の餌食になる。

 

 それを見て、ようやくフリードは、ウィザードの身を守る鎧の理不尽なまでの防御力を理解し、ならば対応が間に合わないほどの飽和攻撃をするまでと魔物達に全力の直接攻撃を命じる。そして、フリード自身も神代魔法の詠唱を始めた。

 

 だが、当然、ウィザードの方が早く魔法を発動させる。ウィザードは、縦横無尽に周囲を飛び回るアックスカリバーのハンド部分を、それぞれ5回ずつタッチした。

 

 

ハイハイハイハイハイタッチ!

 

プラズマシャイニングストライクッ!!!

 

 

 直後、空に超巨大な5つの魔法陣が出現し、5つのアックスカリバーが回転しながら宙を舞い、その魔法陣に引き寄せられていく。そして、緑色の暗雲が立ち込め雷鳴が轟き、青い魔法陣に集う水流が冷気を帯びて凍りつき、黄色い灰色の砂煙が大蛇雲の如く棚引いて形を成し、赤い魔法陣に殲滅の炎が大気すら焦がしながら圧縮され、白銀の魔法陣に宝石のような粒子が降り注ぐる。そして、その全ての魔法陣の中心で回転を繰り返すアックスカリバーは、各属性の魔力の力を宿し、アックスカリバーはかの骸骨恐竜にも比毛を取らない程に巨大化をした。

 

 巨体を誇り神々しくすらある光耀く戦斧の群れに、灰竜達は、本能が己の上位者であるとでも悟ったのか、怯えたように小さく情けない鳴き声を上げた。その瞳には、既にウィザードに対する殺意の色はほとんどなく、代わりに戸惑いと畏怖が住み着き、主たるフリードに助けを求めるような視線を寄せていた。

 フリードもまた、非常識極まりない魔法の行使に白竜の上でポカンと口を開くという醜態を晒していた。その隙を逃さず、ウィザードは5つの竜の斧を地上へと強襲させる。

 

「“天竜斬”」

 

 雷の戦斧がアブソドに突撃する。アブソドは何を思ったのか口を開けてその魔力を飲み込もうとするが、多少魔力を吸われてもアックスカリバーの回転力は一切として衰えず、稲妻の刃は、一瞬にしてアブソドを縦に真っ二つにした。

 

「クァアアアアアアアアン!!」

 

 断末魔の悲鳴を上げて絶命するアブソドを放置して、雷を纏うアックスカリバーは、別のアブソドを次の標的として狙う。

 

 また、少し離れたところでは、極炎を纏うアックスカリバーがアブソドを灰も残らず焼き尽くし、氷を纏うアックスカリバーがアブソドを凍てつかせながら粉々に砕き、石龍が周囲一帯を根こそぎ巻き込んで石化・破壊していく。宝石のような粒子を降らせるアックスカリバーは、ダイヤモンドを越える強度を誇る刃でアブソド以外の黒豹などの魔物共も一緒くたに切り刻んでいった。

 

 ウィザードは早々にアブソドを片付けると、アックスカリバーを操り、今度は上空の灰竜達に矛先を変えた。

 

 強力無比な竜の群れを従えるフリードに、竜の戦斧をもって挑むウィザード。なすすべなくアックスカリバーの餌食となっていく灰竜達の姿が、そのままフリードとウィザードの格の違いをあらわしているようだった。

 

 フリードは、ここに来てようやく悟る。自分がとんでもない化け物を相手にしてしまったことを。あの【グリューエン大火山】で自分に瀕死の重症を負わせた少年だけでなく、眼前の少女もまた、決死の覚悟で戦わねばならない相手だったのだと。戦う前に言った、自分の下に付けてやろうなどという傲慢な言葉を今更ながらに恥じた。

 故に、これより放つ魔法は、文字通りフリードの全力だ。

 

「──揺れる揺れる世界の理、巨人の鉄槌、竜王の咆哮、万軍の足踏、いずれも世界を満たさない、鳴動を喚び、悲鳴を齎すは、ただ神の溜息!それは神の嘆き!汝、絶望と共に砕かれよ!“震天”!」

 

 周囲一帯の空間が激しく鳴動する。低く腹の底に響く音は、まるで世界が上げる悲鳴のようだ。

 

 ウィザード自身、知識にあるその魔法に「むっ!」と警戒心を強め、すぐさま防御態勢を整えた。放たれる魔法は範囲が広すぎて回避は既に不可能なのだ。そして、並みの防御では、この魔法には一瞬も耐えられない。

 ウィザードはアックスカリバーの分身を消し、本物のアックスカリバーを元のサイズに戻して手元に引き寄せると、即行で空間魔法を構築する。ウィザードリングを付け替えている暇がないからだ。ウィザードが驚異的な速度で空間魔法を発動したのと、一瞬収縮した空間が大爆発を起こしたのは同時だった。

 

 空間そのものが破裂する。そうとしか言いようのない凄絶な衝撃が、生き残りの灰竜や地上の魔物すら一瞬で粉微塵に砕いて、大地を抉り飛ばし、天空のまだら雲すら吹き飛ばした。

 空間魔法“震天”。空間を無理やり圧縮して、それを解放することで凄まじい衝撃を発生させる魔法である。

 

「……んっ、流石……神代魔法」

 

 しかし、その衝撃の中心にいながらウィザードは全くの無傷だった。

 本来なら、文字通り跡形もなく消し飛ぶほどの威力があったのに、ウィザードが無傷であるその理由は、ウィザードが“震天”が効果を発揮する直前に空間魔法“縛羅”を発動したことにある。これは、空間を固定する魔法だ。使い方によって、防御にも捕縛にも使える便利な魔法である。本来なら消費コストは白目を剥きたくなるレベルだが、インフィニティースタイルのウィザードには自身の使用した魔力を再吸収して無限に魔力を使えると言う特性上、ウィザードの魔力は最初と殆んど変わっていない。

 

 だが、そんなウィザードの強さを疑わない者が一人。ウィザードの死角から強襲する。

 

「耐え切るとわかっていたぞ!少女の姿をした化け物よ!」

 

 ウィザードの背後に開いたゲートを通り、極光を放ちながら白竜に騎乗したフリードが出現する。

 それを一瞥したウィザードは、アックスカリバーを逆手に持ち変え、インフィニティーウィザードリングをウィザードライバーに翳した。

 

 

ターンオン!!

 

 

イィィンフィニティー!!

 

 

 その瞬間──白竜の首が、飛んだ。

 

「ッ!?ウラノ──ぐはっ!!?」

 

 相棒の惨劇にフリードが眼を見開いた瞬間、彼の身体中から鮮血が噴き出した。

 同時に、認識をする間もなく絶命した白竜は、重力に従って地面へと落下し、轟音と土煙を巻き上げながら墜落し、全身の痛みに悶えていたフリードは、その衝撃で白竜から投げ出され、ゴロゴロと地面を転がった。

 

 フリードの状態は酷いものだった。胸にある一文字の切創からダラダラと血を流し、左腕は半ばから切断され、内臓が傷ついているのか激しく吐血している。その他にも全身に大小様々な傷が付いており、まさに満身創痍といった有様だった。

 

「……不意打ちが得意みたいだけど、自分が不意打ちされてボコられるのはどんな気分?醜男」

「ぐぅうう!貴様ぁ、何をしたぁ…!?」

 

 フワリと地面に降り立ち、フリードの持つ魔法陣が描かれた布を燃やしたウィザードに対し、フリードは壮絶な痛みに歯を食いしばって耐えながら、鋭い眼光を返した。

 

「……お前がノロマなだけ」

 

 ウィザードが行ったのは単純で、ただ“カリバーモード”に切り替えたアックスカリバーで白竜の首を切り落とし、フリードの全身を切り刻んだのだ。それをフリードが認識できなかったのは、単純明快。ウィザードが速すぎるのだ。

 インフィニティースタイルのウィザードには、アックスカリバーがカリバーモードにした時にウィザードライバーにインフィニティーウィザードリングを翳すことで、時間の流れに干渉して高速移動することが可能であり、その速度はかの有名な“クロックアップ”にも匹敵する。その速度を発動すれば、白竜の極光を掻い潜り、白竜の首を切り落としてフリードから魔法陣の描かれた布を奪ってから滅多斬りにするなど朝飯前だ。

 いくら魔法に優れているとは言え、動体視力は人間族と大差がないフリードに、その異次元の速度を捉えることなど、不可能だ。

 

「……これで、頼りの蜥蜴はもういない。そろそろフィナーレだ」

「ぐ…っ!!」

 

 アックスカリバーを構えながら歩くウィザードを睨み付けるが、魔法陣を描いていた布がなくなれば、最早彼に抵抗する術はない。

 

「フリード様!一度お引き下s」

「我らが時間を稼g」

 

 

プラズマシャイニングストライクッ!!!

 

 

「……邪魔」

 

 フリードの窮地を察して救援に来た王都侵攻に出ていた地上部隊の魔人族達が特効を仕掛けようとするが、その直前にウィザードが操ったアックスカリバーが無謀すぎる特攻を仕掛ける魔人族達を一人残らず微塵切りにした。一矢報いるどころか時間稼ぎにもならない、あまりにも一方的な蹂躙だった。

 

「貴様ァ……よくも同胞を……!!」

 

 自分を助けようとしてくれた仲間を一瞬で殺したウィザードを、フリードは憎悪を宿した眼で睨み付ける。王手をかけられたと察したフリードが歯噛みし、ウィザードがとどめを刺そうとすると、フリードが満身創痍の体を動かして取り出したものを見て、動きを止めた。

 

「それは……!」

「バダンの連中の渡してきたものを使うのは遺憾だが……最早、是非もない……!!」

 

 そう言いながら、フリードはその懐中時計──アナザーウォッチを起動し、自信の体に押し当てた。

 

「がっ……ウゥオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 

ウィザァァドォッ! 

 

 

 フリードの体が黒い繭に包まれると、炎と共にその怪物が姿を現した。

 

 仮面ライダーウィザード・フレイムスタイルに似た姿をした歪な外見。

 顔は粉々に割れてしまった宝石、こめかみからはリングが生えており、後頭部の装飾は異形の怪物の鷲掴んだ手を連想させ、目はドクロのように落ち窪んでいるものの瞳は存在し、オリジナルには無かったクラッシャーもシールドの中に隠れるという形で存在している。

 その顔の造形はさながら、ゲートの人間のひび割れた体から現界しようとするファントムのようであり、加えてその表情は角度によっては苦悶の表情にも絶望し、今にも泣きだしそうな悲痛な表情にも見える。

 左手の指にはメリケンサックを思わせるかなり尖った形状になった指輪を嵌めており、肩や胸はドクロを意識した造形、ローブの色は赤色になっている。腰には、中央に骸骨の掌の意匠があるベルトを着けている。

 そしてマントには『WIZARD』のライダー名が書かれ、背中には『2012』の年号が刻まれている。

 

 見る人によっては夢に出そうな、相手に強い不安感を与える姿をしており、その姿はまるで絶望の魔法使いである。

 

「……アナザーウィザード…!」

 

 フリードが変貌した怪物──【アナザーウィザード】を見て、ウィザードは僅かに驚きを露にした。何故フリードがアナザーライダーに…と一瞬考えたウィザードだが、思い返してみればオルクス大迷宮で赤髪の魔人族…カトレアも仮面ライダーメイジに変身していたので、上司であるフリードがバダンから力を渡されていても不思議はない。

 

「……最悪。お前みたいな醜男が私と同じ力をつかうなんて」

 

 考えを纏めたウィザードは、嫌悪感を隠せぬ様子で溜め息を吐くだけだった。

 同時に、ウィザードは運がいいとも思っていた。アナザーウィザードを倒すには、元となった仮面ライダーウィザードの力が必要であり、もしも他のアナザーライダーならばユエにはフリードを倒す手段がなくなる為、他のアナザーライダーではなく、ピンポイントにアナザーウィザードになってくれたのはラッキーだった。

 だが、同時にある疑問も浮上する。

 

(……でも、おかしい。醜男にアナザーウィザードのウォッチの渡したなら、あの銀色の奴は何で醜男に私を相手にさせたの……?)

 

 ユエは、チラッとしか見ていなかったが、フリードの近くに、他の怪人とは明らかに桁違いの覇気を纏う銀色の戦士──シャドームーンが、フリードを隠した扱いして、フリードにユエの相手をするように指示するのを見ていた。

 バダンのように狡猾な連中が、自分からアナザーライダーの力を渡しておいて、わざわざそのチートじみた特性を打ち破れる者の相手をさせるなんて間抜けな指示をだしたのだろうか?どうも腑に落ちない。

 

 

フレイム

 

 

『余所見をするなぁッ!!』

「ッ!」

 

 その時、アナザーウィザードが火炎放射を放ってきたことで、ウィザードの思考は中断された。

 ウィザードはアックスカリバーでその炎を防ぎながら、アナザーウィザードへと走り出す。その間にも、アナザーウィザードは指輪を嵌めた手を、ベルトの骸骨の部分に翳す。

 

 

ウォーター

 

 

 アナザーウィザードの周囲に、どこからともなく大量の水が発生し、それが一気にウィザードへと迫る。

 

「“凍獄”」

 

 ウィザードは直ぐ様水系上級魔法を発動し、迫り来る水の暴力を一瞬にして氷の彫刻へと変貌させると、アックスカリバーでその彫刻を砕きながら突き進み、アナザーウィザードにアックスカリバーを振り下ろした。

 

「はぁっ!」

『ゴオォッ!!?』

「ふっ、てやっ!」

『ぐぁあああああっ!!?』

 

 ウィザードは、手にしたアックスカリバーを、優雅に舞うように振るう。

 

 アナザーウィザードも、メリケンサックのような指輪を使ったパンチ等で反撃しようとするが、元々アナザーウィザードは接近戦には向かないアナザーライダーだ。更に言えば、神代魔法で強力な魔物を作れるようになったことで傲っているのか、フリードも接近戦には不慣れなようだ。術者というのは、強大な魔力か強力な魔法にものを言わせた戦闘を主体とするせいで距離を取った戦いを十八番とし、距離を縮められるのが弱点になる例が多いのだが、フリードの例に漏れないようだ。

 元々はユエも接近戦が苦手だったが、奈落の底で指輪の魔法の力を手に入れてから、ユエは魔法の訓練のみならず、ウィザーソードガンを使って行っていた接近戦の訓練を怠った事はなく、ユエの接近戦のレベルはアメリやシアのような体術のスペシャリストには及ばずとも普通の領域を越えるだけの力を有していた。

 

 要するに、フリードがアナザーウィザードになったとしても、恐らく魔人族てしてのプライドとバダンの上から目線の態度にアナザーウォッチをこのタイミングになるまで使おうとしなかったフリードでは、常に指輪の魔法も使いこなせるように鍛練を重ねてきたユエとでは、同じウィザードでも隔絶したレベルの差があるのだ。

 

「……魔法陣がなくなったら、雑魚同然なの?腰巾着」

『…黙れ!死ねぇっ!!!』

 

 

グラビティ

 

 

 何度も相手を侮辱したことで、激昂したアナザーウィザードは素早く指輪の魔法を発動。

 重力を操る力が発動さると、あちこちに転がっていたウィザードが惨殺した魔物や魔人族の死骸が、数えきれない程迫ってくる。恐らく全てが直撃しても一ミリもダメージにはならないだろうが、その死骸の量は纏わりつかれたら動きが鈍くなるのは必須なものだ。

 なので、ウィザードはアックスカリバーのハンド部分を素早くタッチする。

 

 

ハイタッチ!

 

シャイニングストライクッ!!!

 

キラキラ!キラキラ!

 

 

 音声と共にウィザードはアックスカリバーを振り回すと、次第にアックスカリバーが巨大化し始め、迫り来る魔物や魔人族の死骸を細切れにする。

 そして、巨大化したアックスカリバーを手にしたウィザードは高く飛び、白銀の魔法陣を背後に展開して急降下すると、その巨大な斧を一気に振り下ろした。

 

「はぁっ!!」

『グォオオオオオオッ!!?』

 

 “ドラゴンシャイニング”により、アナザーウィザードは爆発しながら吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がる。しかし爆発はしない辺り、まだ完全に倒せていない。

 

「……これで、フィナーレ!」

 

 ウィザードは“キックストライクウィザードリング”を右手の中指に嵌め、全身から火花を散らすアナザーウィザードを見据え、ウィザードライバーのハンドオーサーの向きを変えてウィザードリングを翳した。

 

 

ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!

 

チョーイイネ!キックストライクッ!サイコォーッ!!

 

 

 体を回転させるウィザードの足元に白銀の魔法陣が出現し、その魔法陣の魔力を右足に集中させたウィザードは、側転の後に背面回転ジャンプして高く飛び上がると、体を捻って宝石のように輝く右足を前に突きだしてキックの体制を取ると、白銀の魔法陣を突き抜けながらアナザーウィザード目掛けて急降下した。

 

「ハァッ!!」

『グゥオォアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 “ストライクウィザード”が炸裂し、直撃を受けたアナザーウィザードは爆発と共に体内からアナザーウィザードウォッチを排出しながら吹き飛ばされる。そして、生身の姿に戻ったフリードは、その体に白銀の魔法陣を浮かび上がらせながら、再び大爆発を起こした。

 

 原作(本来)ならば、“奈落から這い上がってきた化物”と幾度となく対峙する筈だった魔人族の将──フリード・バグアーは、この瞬間を持って、神に捧げたその命を落としたのだった。

 

「……やっぱり、弱すぎる」

 

 フリードの死を確認したウィザードは、拭えぬ違和感を感じていた。

 どう考えても、やはりフリードにアナザーウィザードの力を渡しておいてユエと対決させたシャドームーンの意図や、たった今蹴り殺したアナザーウィザードも、あまりにも強いとは言えない。フリードとユエに天と地ほどの実力差があったとしても、やはり不自然に思えてならない。

 

(……もしかして、バダンは醜男を見殺しにする気だった?)

 

 そう考えれば納得がいく。だとすればシャドームーンの不合理な指示の意図も分かる。だが、神の盲信に捕らわれた馬鹿とは言え、大迷宮を攻略して神代魔法を手に入れたフリードを殺す事でバダンが得する理由を考えると……導きだされるものは不愉快なものでしかなかった。

 

「……ムカつく」

 

 フリードを殺したことに後悔はないし、この場で殺るつもりだったのだが、それでもバダンの利益のために利用されたのは不愉快でしかない。また、その違和感に今更気づいた自分の不甲斐なさも情けない。

 しかし、今はそんな状況ではないと意識を切り替えようとした時……

 

 

 

 

ズドォオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

 

「ッ!!?」

 

 天を揺るがすような轟音と共に、大震災が起きたような凄まじい地面の揺れがウィザードを襲う。

 ウィザードは地震によってバランスを崩しそうになるのを堪え、まさかバダンか魔人族のどちらかが何か仕掛けてきたのかと辺りを見渡すと、王都の方に視線を向けた時、その推測は正しかったと証明された。

 

「あれは……!!」

 

 外壁の直ぐ側に出現した途方もなく巨大な銀色のオーロラから現れた、数万からなる魔物の大軍をアリのように踏み殺しながら現れた…かつて、ユエ達の前に驚異として現れた兵器が、何十と数を増やして現れたことに、ウィザードは仮面の下で目を見開く。

 

「ユエさん!!」

「……シア」

 

 そこへ、ウサミミを靡かせてマシントルネイダー・スライダーモードに乗ってウィザードのもとまでやって来たシアが、焦ったような声色でユエに声をかけてきた。

 シアも、目の前の光景に普段の明るさを消し、真剣な表情でオーロラカーテンから現れ、外壁を積み木のように蹴り壊して王都を破壊し始めた巨大な軍団を見据えていた。既にいつでも変身できるように、腰にはゲーマドライバーが巻かれている。

 

「あれって、確かあの時の…!」

「……ん。バダンが仕向けてきた…!」

「アスモデウスさん達は王都にいるなら…援護に行きましょう!ユエさん、乗ってください!」

「…ん!」

 

 ウィザードはフレイムスタイルにフォームチェンジして跳躍し、マシントルネイダーの上に飛び乗る。

 シアはマシントルネイダーを発進させ、シアとウィザードは、今まさに破滅の時を向かえようとしている王都で戦いを繰り広げているであろうアスモデウス達のもとへと向かうのだった。

 

 




・スキ魔

シア「ところでユエさん。この辺りメチャクチャになってますけど、天変地異でもあったんですか?」

ユエ「……何でもない。雑魚魔人族のブルーム・イーグレットを殺しただけ」

シア「いや、ユエさん。そんな二人組の変身ヒロインみたいな名前はしてなかった筈ですよ」

ユエ「……じゃあ、キミとアイドル?」

シア「最早、名前でもないじゃないですか!っていうか、それは私ですよ!いや、正確には私じゃないですけど!!」

ユエ「……じゃあ、シアは覚えてるの?」

シア「え、え~~っと………確か、ゴ○イナイ○とかそんな名前だった気が……」

ユエ「……それ、作品違う。シアも覚えてないじゃん」

ー完ー


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