本日、上野の森美術館の特別展『恐竜図鑑』を見に行った影響か、自分でも驚く程の速度で書き溜めておいたものを完成させられました。
一方、入間が奈落に落ちた後、入間と共に召喚された生徒達はメルドと光輝達の指示のもと、【オルクス大迷宮】を抜け出してハイリヒ王国に帰っていった。
王宮や教会の連中は“神の使徒”の一人が死亡したと聞いて激しく動揺するが、死亡したのが天職不明で生徒達から無能と蔑まれていた入間だと知ると、役立たずなど死んでくれて正々するとふざけた事を言い出した。だがメルドが、入間が一人でベヒモスを仕留めてくれたお陰で、自分達は逃げ出せたのだと証言し、目撃者である生徒達の証言を聞くと、何故そんな優秀な人材を死なせたのだと掌返してメルドを糾弾したのだ。つくづく身勝手な連中である。
死に直面した生徒達に至っても、あの時に入間に
入間に魔弾を撃った犯人の動機である
そしてあの窮地を招き、入間を故意に狙った犯人である檜山大介だが、生徒達に落ち着きが戻ってきた生徒達から避難を受け、檜山は土下座で謝罪するに徹した。狙いは光輝の目の前での土下座すれば自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのだ。
仮に入間が生きていたとしても、あれだけの状況を招いた原因である時点で過失傷害罪が過失致死罪に当たるというのに、檜山の思惑通り光輝は檜山を許すという意味不明なことを言い出した事で、クラスメイト達の檜山に対する批難は収まった。雫は薄々檜山の魂胆に気がついていたのだが、指摘する事もなく光輝に同調する当たり、結局は他の連中と変わらなかった。
もし、この場に入間がいたら生徒達も王宮も教会も跡形もなく消し飛ばされているだろう。
故に、彼等の未来は決まってしまった。
各々の身勝手のために好き放題してきた愚者達には、近い内に大きな災いが振り掛かることになるだろう。
神も悪魔も味方しない。
彼等の破滅は、決定された。
一方、新たにユエを旅仲間に加えた入間は、ユエを背負いながら草むらの中で魔物達の首を次から次へと跳ねていた。
周りは160cm以上ある雑草が生い茂り入間の胸下付近まで隠してしまっている。ユエなら完全に姿が見えなくなっているだろう。
入間はそんな生い茂る雑草を鬱陶しそうに払い除けながら、200体近い魔物を捌いていた。
時は少し遡る。
二人は十階層程経て現在の階層に降り立った。先ず見えたのは樹海だった。10mを超える木々が鬱蒼と茂っており、空気はどこか湿っぽいが、以前通った熱帯林の階層と違ってそれ程暑くはないのが救いだろう。
そこで入間とユエが階下への道を探して探索していると、見た目が完全にティラノサウルスそっくりの魔物と遭遇したのだ。何故か、頭に可憐な花を一輪生やして。
どこかシュールなその魔物が入間に襲いかかろうとすると、それより早くにユエが魔法を放ったことでティラノを絶命させた。
同行してからというもの、ユエはこうして入間もよりも早く魔物を駆除する傾向にあった。
そんな風にしていると、入間は続々と魔物が集まってくる気配が捉えた。
そうして現れたのは、全長約2m程のラプトルに似た魔物で、全部で十頭程いた。やはり、頭頂部からさっきのティラノ擬きと同じ花が生えていた。
「……かわいい」
「…なにこれ」
ユエが思わずほっこりしながら呟けば、入間はシリアスブレイカーな魔物に訝し気な目を向ける。
残る九体も確認すると、皆同じく頭にチューリップの様な花が咲いている状態だった。違うのは花の色ぐらいだ。
入間は向かってくるラプトル達を
「ユエ。30……いや、40以上の魔物が来ている。全方位から囲む様に集まっている」
「……逃げる?」
「……いや、面倒だ。一番高い樹の天辺から殲滅する」
「ん……特大のいく」
「任せる」
入間とユエは高速で移動しながら周囲で一番高い樹を見つける。そして、その枝に飛び乗り、眼下の足がかりになりそうな太い枝を砕いて魔物が登り難い様にした。
それと共に入間はジカンギレード・ジュウモードを出現させると、ユエがそっと入間の服の裾を掴んだのがわかった。手が塞がっているので代わりに少しだけ体を寄せてやる。ユエの掴む手が少し強くなった。
そして第一陣が登場した。ラプトルだけでなくティラノもいる。ティラノは樹に体当たりを始め、ラプトルは器用にカギ爪を使ってヒョイヒョイと樹を登ってくるのを捉え、入間は二丁の銃の必殺技を発動した。
入間が引き金を引き、発砲音と共に閃光が幾筋も降り注ぎカギ爪で樹にしがみついていたラプトルを一体も残さず撃ち落とし、20を超える数が一瞬で地に落ちる。
しかし、眼下にはまだ30体を超えるラプトルと4体のティラノが犇めき合い、入間達のいる大木をへし折ろうと、或いは登って襲おうと群がっている。
「入間?」
「まだだよ。まだ待って……」
ユエの呼び掛けに、入間はラプトルを撃ち落としながら答える。ユエは入間を信じて魔力の集束に意識を集中させる。
そして遂に眼下の魔物が総勢50体を超え、“感覚”で捉えた魔物の数に達したところで入間はユエに合図を送った。
「今だ!」
「んっ!“凍獄”!!」
ユエが魔法のトリガーを引いた瞬間、入間達のいる樹を中心に眼下が一気に凍てつき始めた。ビキビキッと音を立てながら瞬く間に蒼氷に覆われていき、魔物に到達すると花が咲いたかの様に氷がそそり立って氷華を作り出していく。
魔物は一瞬の抵抗も許されずに、その氷華の柩に閉じ込められ目から光を失っていった。氷結範囲は指定座標を中心に50m四方。まさに“殲滅魔法”というに相応しい威力である。
「はぁ……はぁ……」
「ありがとう。流石は吸血姫」
「……くふふ……」
周囲一帯、まさに氷結地獄と化した光景を見てユエを労う入間。
ユエは最上級魔法を使った影響で魔力が一気に消費されてしまい肩で息をしている。恐らく酷い倦怠感に襲われている事だろう。
入間はでへたり込むユエの腰に手を回して支えながら、首筋を差し出す。吸血させて回復させるのだ。それが一番効率がいい。
ユエは入間の労いに僅かに口元を綻ばせながら照れた様に「くふふ」と笑いを漏らし、差し出された首筋に頬を赤らめながら口を付けようとした。
だが、それを止める様に入間が立ち上がった。更に100体以上の魔物を捉えたからだ。
「ユエ、更に倍の数だ」
「!?」
「たった今、全滅したところでまた特攻、まるで強制されてるみたいに……。あの花、もしかして」
「……寄生?」
「そんな所だね」
そこまで言って、互いに頷く。
「……本体がいる筈」
「ならさっさと叩こう。流石に面倒だ」
物量で押しつぶされる前に、恐らく魔物達を操っているのであろう魔物の本体を探す事にした。でなければ、とても階下探しなどしていられない。
座り込んでいるユエに吸血させている暇はないので、入間はユエを背負う。
「入間?」
「この状態なら血を吸えるでしょ?」
入間がそう言うと、ユエは見た目相応の笑顔を浮かべて入間の背中に抱きついた。それを確認した入間は、樹から飛び降りた。
そして冒頭に戻る。
入間はユエを背中に背負ったまま200近い魔物に囲まれている。後ろからは魔物が地響きを立てながら迫っている。背の高い草むらに隠れながらラプトルが併走し四方八方から飛びかかってくる。
それを見た入間は、埒が明かないと、ジクウドライバーを腰に巻いた。
「ユエ、これから特大の奴で全滅させる。しっかり捕まってて」
「ん!」
ユエはそう言って、より一層入間の背中にギュ~っと抱きついたのを確認した入間がジオウウォッチと共に取り出したのは紫と金で彩られたウォッチ──“オーズ・プトティラコンボライドウォッチ”を取り出し、ベゼルを回して起動する。
「変身!!」
入間はユエを背負ったままいつもの行程でジオウに変身すると、何処からかプテラノドン、トリケラトプス、ティラノサウルスを模した紫の機械が現れ、周りを取り囲んでいた魔物達を攻撃しながらジオウの元へ向かっていく。
プテラ!トリケラ!ティラノ!
機械の恐竜が装着されると、ジオウは【オーズ・プトティラコンボ】を模したアーマーに胸に『プテラ』『トリケラ』『ティラノ』の文字、仮面には『プトティラ』の文字が描かれた姿へと変身する。
オーズの最強形態の力を受け継いだ姿、【仮面ライダージオウ・オーズプトティラコンボアーマー】だ!
「ウォオオオオオオオオッ!!」
変身を完了したジオウが雄叫びを上げると、ジオウを中心に極寒の冷気が発生し、ジオウとユエに飛びかかろうとした魔物を凍てつかせる。
ジオウが地面に手を突き刺すと、地面から紫の亀裂が発生し、ジオウはティラノサウルスの顎を模した戦斧──“メダガブリュー”を装備し、フィニッシュタイムを発動した。
「ウォオオオオ……セイヤァアアアアアアアアッ!!!」
ジオウの雄叫びと共に、メダガブリューに紫のエネルギーが蓄積し、ジオウはメダガブリューを横凪に振るう。
破壊170tを誇る力オーズの必殺技“グランド・オブ・レイジ”が、周囲の魔物を一匹残さず駆逐する。
残されたのは、魔物達の死骸と破壊され尽くした地面だけだった。
「大体片付いたか」
魔物達が一掃された事を確認し、プトティラコンボアーマーのままジオウは地辺りを見回す。
そして今通っている草むらの向こう側にみえる迷宮の壁の中央付近にある縦割れの洞窟らしき場所に目を付けた。
「ユエ、歩ける?」
「……うん。入間、やっぱり凄い」
驚愕と尊敬に目を輝かせるユエを伴い、ジオウは縦割れに向かって歩き出した。
縦割れの洞窟は大の大人が二人並べば窮屈さを感じる狭さだ。入間は先に入り、直近の危険が無い事を確認してからユエに入ってくる様促した。
暫く道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。もしかすると階下への階段かもしれないが、この場合RPGだとここでこの階層のボスが出てくるのがセオリーだ。
その時、ジオウ達が部屋の中央までやってきた時、全方位から緑色のピンポン玉の様な物が無数に飛んできたのだ。ジオウとユエは一瞬で背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃する。
ジオウはジカンギレードを発砲して緑球を撃ち抜いていく。ユエの方も問題無く、速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃している。
「これが迷宮の罠なんて思えないけど…、どう思う?」
「……」
「ユエ?」
敵の意図を探る為、ジオウはユエにも話しかけるが、ユエは答えない。訝しんだジオウがユエの肩に手をおこうとする。
「……逃げて……入間!」
いつの間にかユエの手がジオウに向き、風が集束する。ジオウは放たれた風刃をメダガブリューで破壊しながらユエを見た。
「……そういうことか」
ユエの頭の上にあるものを見て事態を理解する。そう、ユエの頭の上にも花が咲いていたのだ。それも、ユエに合わせたのか?と疑いたくなるぐらいよく似合う真っ赤な薔薇だ。
ジオウは原因に目星を付けながら、ユエの風の刃に対処し続ける。
「入間……うぅ……」
ユエが無表情を崩し悲痛な表情をする。花をつけられ操られている時も意識はあるという事だろう。体の自由だけを奪われる様だ。だが、それなら解放の仕方も判り易い。入間はユエの花にジカンギレードを向けた。
しかし、そう簡単にはいかず、ユエを操って花を庇う様な動きをし出したのだ。上下の運動を多用しており、外せばユエの顔面を吹き飛ばしてしまうだろう。ならばと接近し切り落とそうとすると、突然ユエが片方の手を自分の頭に当てるという行動に出た。
「……チッ」
つまり、ジオウが接近すればユエ自身を自らの魔法の的にすると警告しているのだろう。
ユエは確かに不死身に近い。しかし、上級以上の魔法を使い一瞬で塵にされてなお“再生”出来るかと言われれば否定せざるを得ない。そしてユエは、最上級ですらノータイムで放てるのだ。特攻など分の悪そうな賭けは避けたいところだ。
ジオウの逡巡を察したのか、それは奥の縦割れの暗がりから現れた。
アルラウネやドリアード等という人間の女性と植物が融合した様な魔物がRPGにはよく出てくるが、ジオウ達の前に現れた魔物は正しくそれだった。
神話では美しい女性の姿で敵対しなかったり大切にすれば幸運を齎す等という伝承もあるが、目の前の似非アルラウネは内面の醜さが溢れているかの様に醜悪な顔をしており、無数の蔓が触手の様にウネウネとうねっていてウルトラ気持ち悪い。その口元は何が楽しいのかニタニタと笑っていて、そんな印象は皆無である。
ジオウはすかさず似非アルラウネに斬撃を放とうとするが、ユエが間に入って妨害する。
「入間……ごめんなさい……」
悔しそうな表情で歯を食いしばるユエ。自分が足手纏いなっている事が耐え難いのだろう。口は動く様で、謝罪しながらも引き結ばれた口元からは血が滴り落ちている。鋭い犬歯が唇を傷つけているのだ。悔しい為か、呪縛を解く為か、或いはその両方か。
ユエを盾にしながら似非アルラウネは緑の球をジオウに打ち込む。
ジオウはそれを握り潰した。球が潰れ、目に見えないが恐らく花を咲かせる胞子が飛び散っているのだろう。
しかし、ジオウの頭に花が咲く気配はない。似非アルラウネはニタニタ笑いを止め怪訝そうな表情になる。
(変身してたから、毒が浄化されたのか)
つまりここに入ってきた時、ジオウが無事だとしてもユエが油断した事にはならない。ユエが悲痛を感じる必要はないのだ。
似非アルラウネはジオウに胞子が効かないと悟ったのか不機嫌そうにユエに命じて魔法を発動させる。また風の刃だ。もしかすると、ラプトル達の動きが単純だった事も考えると操る対象の実力を十全には発揮できないのかもしれない。
風の刃に対処しようとすると、これみよがしにユエの頭に手をやるのでその場に留まり、ジオウはユエの攻撃を無防備で受ける。
プトティラコンボの力を上乗せしたジオウの防御力なら、ユエの全力であったとしても傷一つ付けられない。その為この程度の攻撃は防御するまでもない。
(それに、打開策はある)
ジオウがこの状況を突破する為のライドウォッチを取り出した時、ユエが悲痛な叫びを上げる。
「入間!……私はいいから……攻撃して!」
何やら覚悟を決めた様子でジオウに攻撃してと叫ぶユエ。足手纏いになるどころか、攻撃してしまうぐらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな意志を込めた紅い瞳が真っ直ぐジオウを見つめる。
「……ユエ。大丈夫だからそんな顔しなくていいよ」
そんなユエに、ジオウは仮面の下で苦笑しながらライドウォッチを起動してベルトに装填した。
【仮面ライダーカブト】を模したアーマーが装着され、ジオウは両肩に“カブトゼクター”を模した鎧に仮面に『カブト』と書かれた【カブトアーマー】に変身すると、ジオウは呟いた。
「──“クロックアップ”」
その音声がなる瞬間、ジオウの姿が消えた。
ユエが驚愕すると同時に、ユエの頭の薔薇がブチッと引っこ抜かれ、似非アルラウネの首が飛んだ。
ユエがそっと両手で頭の上を確認すると、そこに花はない。続けて背後に目を向けると、そこには似非アルウラネの首無し死骸が転がり、すぐ近くにその首が転がり、ジカンギレード・ケンモードを手にしているジオウがいた。
「ユエ、大丈夫?」
変身を解除しながら気軽な感じで歩み寄り、ユエの安否を確認する入間。
未だに頭をさすりながら呆然とした目で入間を見ていたユエだったが、やがて入間に向かってピョンッ!と飛び付いた。
「え!?ユエ?」
「……体が痺れてる」
「体が!?神水のむ!?回復魔術…」
「……抱っこしてくれなきゃ動けない」
「えぇッ!?」
端から見れば、バカップルがイチャイチャしてるようにしか見えないだろう。
入間はユエの言葉を真に受け、ユエを抱っこしながら次の階層へ歩を進めていった。
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