悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 今回はノイント戦です。
 バダンに連れ去られた愛子がどうなったかは、少しだけ明かしていましたが、最初に予定していたものと変えてみましので、楽しんでいただけたら嬉しいです。


74話 審判と執行の時

 月下に銀翼がはためいた。

 だが、それは飛翔の為ではない。その銀翼から殺意をたっぷり乗せた銀羽の魔弾を射出する為だ。恐るべき連射性と威力を秘めた銀の魔弾は標高8000mの夜闇を切り裂き、数多の閃光となって標的に殺到する。

 

 対するのは、紅き翼を広げる魔王が放つ極炎。魔王の右腕に装着した赤い孔雀の盾が放つ炎が空を飛ぶ度に、飛来する銀羽は無残に飛び散り四散する。計算され尽くした弾道が、たった一発で幾枚も羽を蹴散らし、壁と見紛うほどの弾幕に穴を開ける。必要なのは踏み込む勇気。それこそが、完璧な回避を実現する。

 

「ひゃああ!」

 

 お互いの命をベットした死合に似つかわしくない可愛らしい悲鳴が響いた。場違いな声を我慢しきれず出してしまったのは畑山愛子先生だ。

 高速飛行を得意とする【仮面ライダーオーズ・タジャドルコンボ】の力を宿した【仮面ライダージオウ・オーズタジャドルコンボアーマー】に変身したジオウが、銀羽の弾幕を撃ち放つ“神の使徒”ノイントの攻撃を紙一重で回避し続けるジオウの片腕に抱かれながら、人生初のドッグファイト(生身バージョン)を経験中なのである。

 

「先生、今は口は閉じててください。噛んだら口の中が血塗れになりますよ?」

「そんなこと言ってみょッ!?か、かんじゃった……」

 

 ジオウの忠告も虚しく早速涙目になっている愛子。いや、空中戦が始まった時点で涙目だったので、噛んだことだけが原因ではないが。

 

 ジオウとしても、愛子は特別身体能力が優れているわけでもないので、激しい機動は避けて襲い来る弾幕を最小限の動きでかわしているのだが、それでも音速に達する飛行速度を誇るタジャドルコンボアーマーの機動に、愛子は既にグロッキー状態だ。

 かといって、そのへんに放り出しておくわけにもいかない。愛子を抱えるジオウに対してノイントの攻撃に容赦がない以上、放り出した途端、愛子の方を狙われかねない。愛子を背にしながら戦うより、抱いて一緒に動く方がずっとマシだった。

 

(ここまでで一分……)

 

 そう考えながら、再び全方位から包み込むように強襲してきた銀羽をタジャスピナーから放つ炎で迎撃しながら、ギュッと目を瞑ってジオウにしがみついている愛子に話しかける。

 

「先生、もう少し頑張ってください。あの不細工は直ぐに時間内に終わらせますから」

「うぅ、足手纏いですみません……」

 

 自分がお荷物になっていることを自覚して歯噛みする愛子。ジオウは、そんな愛子をギュッと抱きしめてタジャスピナーを構える。その瞬間、銀色の砲撃がタジャスピナーに遮られ四散する。最初に、愛子が幽閉されていた隔離塔の上部を消し飛ばした閃光だ。

 凄まじい魔力と轟音、閃光に身を震わせつつも、押し付けられたジオウの固い装甲から、全く乱れていない規則正しい心音が伝わり、そんな場合でないとわかっていながら妙な安心感を得てしまう愛子。ほんとに、こんな状況で何を考えているんだと自分を叱りつけながらも、より一層強く抱きついてジオウに身を委ねる。

 

「不安になる必要ありません。元から、多少の無茶をするのは想定内だったので」

「!わ、私のために……そこまで……」

「ん?……まぁ、そうですけど」

 

 もちろん、ジオウが言ったのは、神代魔法を修得するために教会側と衝突するのは想定内という意味であって、愛子を助けるためだけという意味ではないのだが……ちょっと、シチュエーションに酔ってしまった愛子は見事に勘違いする。そして、現在進行形で抱きしめられ守られているという状況が、勘違いを加速させていく。一刻も早く目を覚ます必要があるだろう。

 

「……雑談とは余裕ですね、イレギュラー」

「君程度じゃあ、余裕でいない方が難しいからね」

 

 銀色の砲撃と銀羽の弾幕を防いだ直後、ジオウのすぐ傍で機械的で冷たい声音が響く。その目に飛び込んできたのは、双大剣の片方を横殴りに振るうノイントの姿だった。

 銀光を纏う長さ2メートル幅30センチの大剣は、そこにあるだけで凄まじい威圧感を放っている。そして、その宿した能力も凶悪だ。なにせ、ノイントが操る銀の魔力は全て固有魔法“分解”が付与されているのだから。触れるだけで攻撃になるなど反則もいいところだろう。

 

 無論、入間には幾つか対処法があるのだが、愛子がいる以上無茶な動きは出来ず、ジオウはタジャスピナーを前に翳して、外部から与えられた剣の力を跳ね返す。

 

 ノイントは振るった大剣の遠心力に逆らわず、月光を反射してキラキラと煌く美しい銀髪を広げながら回転し、もう片方の大剣を振り下ろした。途轍もない膂力から生み出された剣速は、もはやただの銀閃であり視認することも叶わない。

 しかし、ジオウのタジャドルコンボの力を宿した優れた視覚能力は、完璧にそれを捉えていた。タジャスピナーから円状の炎刃を展開し、その大剣を弾き返し、素早く蹴りをいれようとするが、ノイントはもう片方の大剣を盾にして直撃を防ぎ、反動で20メートルほど後ろへ飛ばされた。

 

「はわ、はわわ……何が、どうなって……」

「……先生。あんまり可愛い声出さないでください。余裕とはいえ、何か気が反れる」

「かっ可愛っ…鈴木君!せ、先生相手に何を言って……」

 

 やっていることはコンマ数秒で勝敗が決してしまうような息つまる超高等戦闘だというのに、合間に入る妙に可愛らしい愛子の悲鳴に意外と余裕そうだな感心と呆れが混じったような声色で話すジオウ。

 

「……足手纏いを抱えて尚、これだけ凌ぐなど……やはり貴方は強すぎる、主の駒としては相応しくない」

「結構。僕達の本命はBADANなんでね。何処かの勇者みたいに、好き放題して周りに迷惑掛けるしか出来ない癖に、思い通りにならなかったら被害者面して癇癪起こすしか出来ない()()()なんて最初から眼中にもないですからね」

「……私を怒らせる策なら無駄です。私に感情はありません」

「今の会話の中の何処に挑発する言葉があったんですか?ありのままの本心を言っただけですが?」

「……」

 

 ノイントはスッと目を細めると大きく銀翼を広げ、双大剣をクロスさせて構えた。

 果たして本当に感情が無く、ただ無駄な会話をしたと仕切り直しただけなのか……ジオウの目にはどこか怒りを抱いている様に見えたが、どうでもいいと思考の外に追いやる。

 

 ノイントが再び銀翼をはためかせ、銀羽を宙にばら撒く。だが今度は入間に向かって射出されず、代わりにノイントの前方に一瞬で集まると何枚もの銀羽が重なって陣を形成する。そう、魔法陣だ。銀色に輝く巨大な魔法陣がノイントの眼前から入間を睥睨する。

 

 そして……

 

「──“劫火浪”」

 

 発動された魔法は、天空を焦がす津波の如き大火。

 どうやら、魔弾だけでなく属性魔法も使えた様だ。今まで使ってこなかったのは、単純に銀の魔弾だけで十分だと判断していた為だろう。

 

 うねりを上げて頭上より覆い尽くす様に迫る熱量と展開規模共に桁外れの大火に、一瞬世界が紅蓮に染まったのかと錯覚する愛子。どうする気なのかと胸元からジオウを見上げてみれば、動かない仮面を被ったジオウは小馬鹿にした様に鼻を鳴らす。

 

「……」

 

 数百メートルに及んだ炎の津波は、ジオウと愛子を逃がす事無く完全に呑み込んだ。誰が見ても詰み。二人は灼熱に焼かれて骨も残さず消滅したと思うのが普通だ。

 しかしノイントは、燃え盛る大火の中心から目を逸らさない。

 

「……これも凌ぐのですか」

 

 ノイントがそう呟いた直後、大火はまるで何かに吸い込まれるかの様に一点に収束し、その流れを追えば、大火を右中指にに吸収していくジオウと、抱えられた愛子が無傷で姿を現した。

 

「何をするかと思えば……芸がないですね」

「す、すごい……」

 

 ジオウはあっけらかんとした表情で呟く。入間の右手に嵌められている“悪食の指輪”は魔力を食らう指輪。魔力の塊である魔法など、飲み込める限界量を越えていない限りいくらでも呑み込める。ノイントは、その枠に入っていなかった。

 

 と、その時、突如、【神山】全体に響くような歌が聞こえ始めた。

 

 ジオウが何事かと歌声のする方へ視線を向ければ、そこには、イシュタル率いる聖教教会の司祭達が集まり、手を組んで祈りのポーズを取りながら歌を歌っている光景が目に入った。どこか荘厳さを感じさせる司祭百人からなる合唱は、地球でも見たことのある聖歌というやつだろう。

 一体何をしているんだとジオウが訝しんだ直後、

 

「……ッ、これは…」

「あうっ、な、何ですか、これ……」

 

 ジオウと愛子の体に異変が訪れた。

 体から力が抜け、魔力が霧散していくのだ。まるで、体の中からあらゆるエネルギーが抜き出されているような感覚。しかも、光の粒子のようなものがまとわりつき、やたらと動きを阻害する。

 

 イシュタル達は、“本当の神の使徒”たるノイントが戦っている事に気が付き、援護すべく“覇堕の聖歌”という魔法を行使しているのだ。これは、相対する敵を拘束しつつ衰弱させていくという凶悪な魔法で、司祭複数人による合唱という形で歌い続ける間だけ発動するという変則的な魔法だ。

 

「イシュタルですか。……あれは自分の役割というものをよく理解している。よい駒です」

 

 恍惚とした気色悪い表情で地上からノイントを見つめているイシュタルに、感情を感じさせない眼差しを返しながらノイントがそんな感想を述べる。イシュタルの表情を見れば、ノイントの戦いに協力しているという事実自体が、人生の絶頂といった様子だ。さぞかし神の思惑通り動く便利な存在なのだろう。

 そんなイシュタル達司祭の腐り切った中身はともかく、現在、展開している魔法は厄介なこと極まりないものだった──この男が相手でなければ。

 

「……そろそろ、遊びも終わりかな」

「……?」

 

 その瞬間、イシュタル達にとって予想外の事が起きた。ジオウと愛子を衰弱させていた魔法が、瞬く間に効力を失っていき、ジオウと愛子に纏わりつく光の粒子が、ジオウの右手から発生した暗黒の靄に吸い込まれていくのだ。

 

 どんな効果を持っていようと、魔法ならばそのエネルギー原は魔力。入間達の魔力を吸い、動きを鈍らせていた魔法を、悪食の指輪で吸い込む。そしてその魔力は、全て入間の力として利用される。

 イシュタル達が行ったことは、消費した入間の有限の魔力を回復させただけであった(それでも、これまでで入間が消費した魔力の十分の一にも満たない微々なものだが)。

 そして、ジオウは一つのライドウォッチを取り出した。

 

「そろそろ5分経ちそうだからね。もう終わらせるよ」

「何を世迷言を……」

 

 ノイントはジオウの言葉を下らないというように無機質な言葉で吐き捨てようとして、黙らされた。

 ジオウがライドウォッチのベゼルを回してライドオンスターターを押して、そのウォッチがライダーの名前を叫んだからだ。

 

 

クロノス!

 

 

 それは、“クロノスライドウォッチ”。

 【仮面ライダークロノス】──神の名前を持つ戦士のウォッチを起動したジオウは、ベルトに装填されたタジャドルコンボライドウォッチとクロノスウォッチを入れ換え、ドライバーのロックを外し、回転させた。

 

 

アーマータイム!

 

バグルアーップ!ク・ロ・ノ・スーッ!!

 

 

 仮面ライダークロノスを模した逆立った髪に5本の角を持ち、黒いガシャットを象った両肩に、仮面の目にあたる位置には「クロノス」という文字が書かれた【仮面ライダージオウ・クロノスアーマー】に変身するジオウ。

 

 その瞬間、ジオウとノイントの戦闘が開始されて、丁度4分が経過した。

 

──4分1秒経過 

 

「…どんな姿になろうと無駄です。貴方は主を楽しませる為n──」

 

 

PAUSE

 

 

 その瞬間、ノイントの動きが止まる。

 ノイントだけではない。聖歌を歌っていたイシュタル達も、ジオウの背中にいる愛子も、風も音も、全てが制止していた。

 

「シーッ……ジャッジメントタイムは、厳粛でなければならない……って、この台詞、どことなくカルエゴ先生みたいだなぁ……」

 

 一時停止をしたビデオのように制止した世界で一人、仮面ライダージオウは、重量調整で空を飛び、ノイントとの距離を積める。

 

「こういうチート能力ってどうかと思うけど、殺し合いに卑怯も何も無いし、君の相手するのも時間の無駄だから、この場で終わらせる……よっ!!」

 

 愛子を背に、ジオウは取り出した“ガシャコンバグヴァイザーツヴァイ”を振り下ろし、ノイントの美しい天使の羽を一瞬にして切り飛ばした。

 背中から血飛沫を上げ、血を噴き出して飛ばされる羽が制止する。

 

「…ハァッ!」

 

 更にジオウは、ノイントの右腕を切り飛ばすという拷問を与える。

 そして、時は動き出す。

 

「……ッ!?ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?!!?」

 

 その瞬間、ノイントは背中と右腕の激痛に、先程までの神秘的な雰囲気の欠片もない悲鳴を上げた。その姿は、神の使徒としての威厳もない、ただ痛みに堪えられず叫ぶだけの子供のようだ。

 イシュタル達が悲鳴を上げる中、仮面ライダークロノスの力を手にしたジオウの拳が、ノイントの顔面に突き刺さった。

 

「グゥエェエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」

「「「「「「ギャアアアアアアアアアアアっ!!?」」」」」」

 

 美しい顔を顔面の形に没落させたノイントは、流星のような速度で教会に向かって殴り飛ばされた。

 ノイントの体が直撃した教会は、まるで砲撃を食らったような大爆発を起こし、イシュタル達はその爆発に呑み込まれて悲鳴を上げた。

 

「す、鈴木君!?何が起こったんですか!?」

「説明はあとでします。今は落ち着いてください」

 

 ジオウは背中にいる愛子にそう声をかけながら、爆煙を昇らせる教会に向かっていく。

 

──4分5秒経過

 

 教会の内部にクレーターを作り、その中心に埋まったノイント。

 それは、見るも無惨だった。全身は埃と煤にまみれ、顔面は拳の形に没落して、歯は全て砕けて鼻血を流している。残った四肢は曲がってはいけない方向に曲がっていた。

 

「あ……ぎ……な…に、が……?」

 

 苦しみ悶えながら、ノイントは認識する暇もなく起こった蹂躙に呟くノイント。

 

「──痛みを知るのは、初めてかな?」

 

 その時、冷ややかな声と共に、コツ…コツ…と、ゆったりとした靴音が聞こえてきた。

 ノイントがその音が聞こえた方向に顔を上げれば、そこには愛子の姿を何処かに隠したジオウが歩み寄ってくる光景だった。

 

「ヒ、ヒィ…!!」

「逃げるなよ……君が弄んだ全生命の痛みだ」

 

 ノイントの首を掴んで、無理矢理立ち上がらせる。

 彼女の目には、理解不能にして残酷な仕打ちを自分に行ったジオウは最早恐怖の対象にしか映っていない。神の使徒としての威厳の欠片も失った、絶望に染まった表情で悲鳴を上げる。

 

 

フィニッシュタイム!クロノス!

 

 

 

 ベルトに装填されたウォッチのライドオンスターターを押す。

 それは、ジオウの死刑宣告だった。

 

「ヒッ!た、助け……」

 

 ジオウから明確な殺意を感じとり、ノイントは神の使徒としての尊厳をかなぐり捨てて、必死に命乞いをしようとするのと、ジオウの足元に、荘厳な時計のエフェクトが出現したのは同時だった。 

 

──4分55秒経過

 

 

絶版タイムブレーク!!

 

 

 ジオウが足を振り上げて回転し、足元の時計の長身が連動して動き出す。

 

「はぁっ!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 ジオウの回転右足蹴りが炸裂し、ノイントは蹴りを受けた箇所から爆発を起こし、臓物をぶちまけながら断末魔の悲鳴を上げ、教会全体に轟く凄まじい大爆発を起こした。

 

 “神の使徒”ノイント。

 神の従順な傀儡として人々を弄び続けてきた女は、神の力を手にした魔王によって呆気なく数百年と続くその命を永遠に終わらせた。

 

 戦闘が開始してから経過した時間──5分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい……」

 

 教会に着地した際に、ジオウが行使した“保護繭”に守られていた愛子は、圧倒的なまでのジオウの勝利に目を奪われていた。

 ノイントの威圧を受けた時にはもうダメだと思っていたのに、そのノイントを虫けらのように一蹴する入間の強さには、相変わらず驚かされるばかりだ。

 

……殺せ

 

「ッ!?」

 

 その時、愛子は脳裏に響き渡る言葉に体を震わせた。

 更に、その声は愛子の脳内に…悪意の籠った言葉を響かせ続ける。

 

……殺せ

……殺せ……私の生徒を見殺しにした悪魔を殺せ……

 

「嫌…!何なんですか…!私は、そんなこと…!!」

 

 考えるはずのない思考が愛子の頭に響き渡り、愛子は耳を塞いでその声を遮断しようとするが、その声は変わることなく、愛子の頭の中を埋め尽くすように声を響かせていく。

 

…殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せコロセコロセコロセコロセ…

 

(嫌……嫌……助けて、鈴木君!!)

 

 自分の心が、自分ではない何かに染められていくような感覚に、愛子は入間の名を呼んで助けを求めた。

 同時に、愛子の意識は消失した。

 

『ようやく、目覚めたかぁ……♪』

 

 そして、教会の瓦礫の影から、愛子の変化を面白そうに眺める“蛇”の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ノイントを瞬殺したジオウは、イシュタル率いる数百人規模の司祭達と神殿騎士団に向かってゆっくりと歩み寄りながら死神の鎌を構えていた。

 真の“神の使徒”が瞬く間に殺された光景を目にしたイシュタル達は、先程の恍惚した気色悪い表情恐怖と絶望に染め、中には腰を抜かして失禁している者もいた。

 

 しかし、ジオウは慈悲を与えない。救いを与えない。神の都合のいい傀儡となった愚か者達に、ジオウは容赦なくガシャコンバグヴァイザーツバイという死神の鎌を振り下ろそうとする。

 

「ッ!?」

 

 その時、ジオウは凄まじい寒気を感じた。

 死の恐怖に怯えるイシュタル達に放とうとしていた攻撃を止め、ジオウは優れた第六感が関知した場所をバッと振り替えると、その異常な悪寒の正体を目にし、驚愕に目を見開いた。

 

「畑山先生…!?」

 

 そう。ジオウの感じた悪寒の正体は、爆煙の中から靴音を響かせて姿を現した愛子だった。何があったのか、瞼を閉じて歩いていることで、愛子の緑色の目が見えなくなっている。

 しかし、ジオウは愛子をイシュタル達の魔の手から守るため、トータスの者には消して破れない程に強固な“保護繭(グラン・ココン)”で包んでいた筈なので、あの障壁から出てくるなんてありあない。戦闘職でもない愛子のスペックや力では、内側からだろうと破壊できない筈だ。

 

 ジオウが困惑していると、愛子が右手を後ろに回した後、ジオウに見せるようにして右手で掴んでいる物を見て、ジオウは目を見開いた。

 

「あれは……ドライバー…!?」

 

 その手に握られていたのは、黒・金・白・水色で彩られ、右側に白いレバーがついたバックルだった。

 愛子がそのバックルをゆっくりと腰に当てると、ドライバーの側面から帯が伸び、一瞬にして愛子の腰にベルトとなって巻き付いた。

 

 ベルトから手を離した愛子はゆっくりと瞼を開き、水色の目を光らせると、左手に白と金色を基調とした“プログライズキー”を握り、上部のライズスターターを押す。

 

 

ゼイン!

 

 

 音声と共に、プログライズキーのロック部分が自動で解除され、キーコネクタを露出したキーモードに展開される。

 その瞬間、愛子の背後に、都心の光景が映った青い光球とファンタジー世界の光景が映った赤色の光球が出現する。

 

「……変身」

 

 独特の待機音を響かせながら、愛子は合言葉を呟き、左手に持った白と金色のプログライズキー──ゼインプログライズキーを、腰に巻いたゼインドライバーの左側に装填した。

 

 

ゼインライズ!

 

 

 背後の光球が愛子と同化し、高速道路のタイムラプス映像が背後で流れると、愛子の小さな体と愛嬌のある童顔が鎧と仮面に包まれる。

 

 

JUSTICE!JUDGEMENT!JAIL!

 

ZEIN!!

 

“Salvation of humankind.”

 

 

 白と銀をメインに差し色の金と水色をあしらった高貴さを感じられ、マントをはためかせる聖騎士や救世主に似た外見。

 頭部のデザインが『笑顔』に近いモノが見え隠れしており、目の上部には眉のように^の形が、顎にはV字型のモールドがある金色のライン。

 

「先生が……仮面ライダーに…!?」

 

 ジオウが絶句してその姿を見つめるなか、姿を変えた愛子──仮面ライダーゼインは、ディケイドの使うライダーカードに似た仮面ライダーの姿が描かれているカード──“ゼインカード”を取り出した。

 

 

ナイトサバイブ!

 

 

 ゼインは【仮面ライダーナイトサバイブ】の姿が描かれたカードを裏返すと、それを横向きにゼインドライバーに装填すると、右側のレバーを引いた。

 

 

執行!!

 

 

 レバーが自動で元の位置に戻ると、ゼインドライバーからシュレッダーにかけられたように細かく裁断されたカードが排出され、バラバラになったナイトサバイブのカードが地面に落ちる。

 ゼインは、心臓の鼓動のような待機音と共にゼインプログライズキーを押し込んだ。

 

 

JUSTICE ORDER!!
 

 

 

 カードの力を手にし、ゼインの右手に青と金の長剣“ダークブレード”が、左腕には青と金のコウモリの意匠を持つ盾“ダークシールド”に分離した“ダークバイザーツバイ”が出現する。

 

「鈴木、入間……貴方を、殺します」

「ッ!」

 

 その宣告と共に、ゼインはダークブレードを握りしめて走り出した。

 

 最悪の第2ラウンドが、開始された。




 今回で下書きのストックがなくなったので、更新が遅れますが、どうぞこれからも読んでいただけると幸いです。




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