今回もまたご都合主義満載のお話ですが、どうぞ広いお心で楽しんでいただけると幸いです。
聖教教会にて、二人の戦士が激突した。
一人は、目に当たる部分に書かれた「クロノス」の文字に、時計の針を模した角に、黒と緑を基調としたゲームキャラクターを思わせる装甲を纏う戦士──鈴木入間が変身した、仮面ライダージオウ・クロノスアーマー。
もう一人は、白い鎧にマントを羽織り、仮面に笑顔を浮かべるモールドの入った水色の複眼の戦士──畑山愛子が変身した、仮面ライダーゼイン。
ジオウは“ガシャコンバクヴァイザーⅡ”、ゼインは“ダークバイザーツバイ”。各々、レジェンドライダーが手にしていた武器を手に、ジオウとゼインは激しい攻防戦を繰り広げるが、優勢なのはゼインだ。
武器であると同時に変身アイテムでもあるガシャコンバクヴァイザーⅡのチェーンソーは、ゼインが右手に持つダークブレードとはリーチの差で圧倒的に負けている。ゼイン自身のスペックも高く、クロノスアーマーでも楽に勝てる相手ではない。
何より問題なのが、ゼインの変身者だ。今、ゼインドライバーを用いてゼインに変身したのは愛子なのだ。これは以前ウルの町でも起きたアナザーフォーゼと化した愛子を止めた時と同じだが、あの時との違いは、愛子がアナザーライダーではなく正真正銘のライダーになったことだ。
アナザーライダーの場合、同名のライダーかジオウⅡのような時空を超越する力を用いて撃破すれば、アナザーウォッチが排出されて変身者に多少の怪我程度で済む。だが、仮面ライダーになっては愛子の安全の保証は五分五分だ。故に、ジオウは下手な過剰攻撃を選択することが出来ない。
(考えが、甘かった……!!)
非常に不愉快だが、今だけは光輝の事を馬鹿に出来ない。愛子は入間をおびき寄せるエサなのだから、愛子の命は大丈夫だろうと考えていたが、まさか愛子自身に入間を襲わせるとは思わなかった。恐らく、囚われた間に洗脳か何かをされたのだろう。
その時、ジオウの背中に複数の魔法が襲い掛かった。
「邪魔だよ!」
ジオウは振り替えることもなく、悪食の指輪から黒煙を発生させてその魔法を飲み込んだ。再び襲い掛かるゼインの剣を防ぎつつ、チラリと後ろに視線を向ける。
「者共よ!殺れぇ!エヒト様の名の元に!崇高なる使徒様を卑劣な手で葬ったあの異端者を、畑山殿が抑えている内に我らの魔法で討ち滅ぼせぇっ!!全てはエヒト様の為にぃっ!!」
「「「「全てはエヒト様の為にッ!!!」」」」
真っ先に声をあげたのは、ノイントの惨殺に怯えていたイシュタルだった。先程まで失禁までしていたくせに、ジオウが諸々の理由でゼインに手間取っているのを見て、ゼインは自分達の味方だと勝手に思っているのだろう。何という面の皮の厚さだろうか。
そろそろ本格的に彼らに殺意を覚えたジオウは、ゼインの相手を一時放棄してガシャコンバクヴァイザーⅡを構えようとした時、ジオウよりも早く動くものがいた。
「私の生徒を利用し、傷付けた悪しき心を持つ者は……天罰を下す……!」
ダークブレードをダークシールドに収めたゼインは、その手に一枚のアドベントカードを取り出し、それをダークバイザーツバイに装填した。
分身能力を発動すると、ゼインの姿が一気に五人に増えた。
驚愕するイシュタル達を見据え、五人のゼインは一切の乱れがない動きで新たなアドベントカードを取り出し、それを再びダークバイザーツバイに装填した。
無機質な音声に連動し、ダークバイザーツバイが変形し、5人のゼインは“ダークアロー”となったダークバイザーツバイを取り付けた腕をイシュタル達に向けた。
「っ!先S」
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!??」」」」」
ジオウの制止も間に合わず、五人のゼインはダークアローから無数の光の矢を放ち、一人一本では生温いといわんばかりに、イシュタル達の体を射し貫いた。
イシュタル達聖教教会の司祭は断末魔の悲鳴を上げ、全身に空いた穴から噴水のように血を拭きだし、あるものは喉や頭や心臓を貫かれて絶命し、あるものは全身から血を流しても死ねずに泣きわめいている。
その瞬間、音声と共に、司祭達の悲鳴が止まる。
クロノスの最大の特徴とも呼べるポーズを使用し、時間の流れを停止させたジオウは、たった今イシュタル達に殺戮の鎌を振り上げたゼインに歩み寄る。
「その屑達は……貴方が殺る必要はない」
ジオウはそう呟いた。
自分も、偉大なライダーの力を殺戮に使っている以上、
ジオウがゼインドライバーに手を伸ばした時……
「……ハッ!」
「ッ!?」
何と、静止した時の中で動き出したゼインがダークバイザーツバイを装着した腕で攻撃をしてしたのだ。
ジオウは咄嗟に横に転がってこれを回避した瞬間、ポーズが解除されて時間が動き出す。
「ポーズが、効かない…!?」
ゼインから距離をとったジオウは呟く。
『悲劇のヒロインを助け出すヒーローは大変だねぇ』
「ッ!」
聞き覚えのある声が聞こえてきて、ジオウはその声がした方に仮面を向けると、そこにはコブラと宇宙の鎧を纏う戦士──仮面ライダーエボルの姿があった。
『久し振り……でもねぇか』
「エボル……!畑山先生をこうしたのは、貴方ですね…!」
『惜しいっ!俺は本部にアイツを連れていっただけさ。実際に改造したのは
エボルの態度に、ジオウは苛立ちが募る。
『だが、勘違いするな。確かに、俺たちはその女にゼインの力はを与えはしたが、こいつの行動はこの女の本心だ』
「本心…!?」
エボルの言葉にジオウは目を見開く。
愛子の性格を知るものからすれば、そんなことはある筈ないと断言するだろう。しかし、エボルの様子から、それが嘘でないことを悟ったジオウに、エボルは説明をする。
『元々、あのドライバーにはゼインとかいう人工知能が内蔵されていて、AIが精神を乗っ取ちまう欠陥があったらしい。だからこそ、バダンは人工知能を取り外した代わりに、人間の心の奥底に僅かにでも憎しみや悲しみといったマイナスの感情があれば、悪意を増幅させて従順にさせるように改造したのさ』
「嫌な改造…いや、もはや改悪ですね」
エボルの明かしたゼインドライバーの性能に、ジオウは不機嫌そうに吐き捨てた。
心とは、理屈で制御できるものではない。だからこそ、愛子はそんなこと思ってはいなくとも、自分でも気付かない心の奥の奥で、生徒を利用したイシュタル達への憎しみや、清水を救えたかもしれないのに救わなかった入間への不満等があったのだろう。バダンは、入間が愛子を気に入っている事を見抜き、愛子の僅かな悪意を利用したのだろう。
『所で、余所見していて良いのか!?』
「ッ!!」
そこへ、トランスチームガンにゴリラフルボトルを装填したエボルが、“サドンデストロイヤー”を模した巨大なエネルギー弾を放った。
考え込んでいて避けるのが一瞬遅れたジオウはバクヴァイザーⅡからエネルギー刃を展開してそれを弾いたが、威力が高すぎて数歩後退する。
すると、エボルのものとは電子音声が響き、ジオウはその音声が聞こえてきた場所に目を向けると、そこにはその手に“ジャコーダビュート”を手にしたゼインが、その赤い鞭を飛ばした。ジオウはバックステップで下がったことで拘束は免れたが、ガシャコンバクヴァイザーⅡを持つ右腕が鞭に巻き付かれてしまった。
「はぁっ!」
「うぁああああああっ!!?」
ジャコーダビュートからエネルギーが流し込まれ、ジオウは体中から火花を散らし、ジオウはクロノスアーマーが解除され、通常形態に戻って膝をついた。
『そこ、動くなよぉ…!』
無防備なジオウを狙い、エボルはエボルドライバーのレバーを回転させる。
足元に正座早見盤を模したエネルギーが出現し、そのエネルギーを右足に収束したエボルは、残像を残す程のスピードで動き、強力なキックを放とうとする。
「ご主人様に手出しはさせぬぞ、下衆が!!」
『うぉっ!?』
突如、凛々しい女性の声と無機質な電子音と共に、灼熱の炎がエボルに襲いかかった。
突然の事にその炎に呑み込まれたエボルは必殺技を中断して地面を転がり、ジオウがその声に笑みを浮かべた時、銀色の刃がジャコーダビュートの鞭を切り裂いた。
「ありがとう、手が足りなくて困ってたんだ」
「間に合ったようで何よりじゃ。してご主人様よ、これはどういう状況じゃ?愛子殿はどうした?」
言葉に嬉しそうにしながらも、それほどまでの強敵かと直ぐに険しさを取り戻す龍騎に変身してドラグセイバーとドラグクローを装備したティオ。
「ウルの町の二の舞だよ。あの白い方の仮面ライダーに無理矢理変身させられた先生なんだ」
「なんと!?」
「…ティオ、きついだろうけど、少しの間エボルの相手を任せられない?僕は先生をどうにか正気に戻す」
「承知したのじゃ。ご主人様よ、後で折檻……ご褒美を所望する」
「……出来る範囲でしてあげるよ」
「本当か!その言葉忘れるでないぞ!」
ジオウは、こんな状況でも自らの欲望に忠実な
龍騎はこの後に待っている御褒美に気分を高揚させつつも、目の前に立っている星の破壊者に向き直り、気を引き閉めた。
『お前が相手なら、こいつを使ってみるか…!』
エボルは新たに取り出した“ドラゴンエボルボトル”をコブラエボルボトルと取り替え、エボルドライバーのレバーを高速で回転させると、エボルの前後に鎧が出現する。
頭部と肩部分が仮面ライダークローズに似た形状の【仮面ライダーエボル・ドラゴンフォーム】へと変身し、グルグルと体をほぐすように首を回した。
『フェーズ
「……お主が相手ならば、出し惜しみはなしじゃ!」
その姿を見た龍騎は、変態的な考えを頭の外に追いやり、ベルトに装着されたカードデッキから、燃え盛る炎と金色の片翼が描かれた“サバイブ”のカードを取り出した。
龍騎の左腕に取り付けられたドラグバイザーが炎に包まれ、龍の頭部を模した拳銃型召喚機“ドラグバイザーツバイ”に変化し、龍騎は口部分のスロットにサバイブのカードを挿し込み、口を閉じさせてアドベントカードをベントインした。
龍騎の全身が炎に包まれ、一瞬にしてその姿が変化する。
仮面には金色の意匠と触覚が追加され、胸部には龍の頭を模した赤い鎧が纏われた最強の姿──仮面ライダー龍騎サバイブだ!!
『コイツは、楽しめそうだなぁ♪』
「……来るが良い!返り討ちにしてくれるわ!!」
“ビートクローザー”を手にしたエボルは剣を振り上げながら走り出し、龍騎サバイブはドラグバイザーツバイから火炎弾を放ちながら走り出した。
ジオウはジオウⅡライドウォッチを取り出し、二つに分離させてジクウドライバーに装填し、ベルトを回転させる。
基本形態からジオウⅡに変身し、サイキョーギレードを装備して走り出す。
対するゼインは、新たなゼインカードを取り出し、ゼインドライバーに装填して裁断した。
ゼインの手に“サソードヤイバー”が出現し、紫の剣の絵を握り締めたゼインは、ゼインドライバーに触れながら呟く。
「クロックアップ」
その瞬間、“クロックアップ”を発動したゼインは時間の流れから外れた速度でジオウⅡに迫り、サソードヤイバーで攻撃しながら翻弄していく。流石のジオウⅡもクロックアップの速度を目で追うことは出来ないが、仮面にあるプレセデンスブレードを回転させて未来を見ると、ゼインが攻撃してくる位置を特定する。
「そこっ!」
「っ!?」
サイキョーギレードを突きだし、突進してきたゼインを攻撃する。
クロックアップを解除したゼインは、サソードヤイバーを手にしたままジオウⅡに切りかかるが、ジオウⅡはサイキョーギレードで振り下ろされたサソードヤイバーを受け止め、しばらく鍔迫り合いの姿勢のままでいると、ジオウⅡが声を張り上げた。
「……いい加減、目を覚ましてください!!」
「…!?」
ジオウⅡの怒声に、ゼインは鍔迫り合いの姿勢のまま、僅かに驚きを露にしたようにジオウⅡに仮面を向ける。
「ウルの町の時みたいに、また敵に良いようにされるんですか!?生徒と一緒に地球に帰りたいのなら…自分の意思で抗ってください!!」
「………ッ!」
ジオウⅡの叱咤に、ゼインは僅かに反応をみせるが、直ぐにサソードヤイバーを振り上げてジオウⅡのサイキョーギレードを振り払うと、体を回転させながら距離を取り、新たなゼインカードを取り出し、ドライバーに装填した。
ゼインの手に“シャイニングカリバー・ツインモード”が出現し、ゼインは二対の剣を握り締めて走り出す。
負けじとジオウⅡもサイキョーギレードとジカンギレードの二刀流で応戦する。剣同士がぶつかり合い、辺りに凄まじい衝撃波と金属音が広がる中で、ゼインが少しずつジオウⅡを押していく。
二刀流にはあまり慣れていないジオウⅡと、アギト・シャイニングフォームの力を完全に自分のものにしたゼインの剣術では、ゼインが優勢なのは明らかなのだ。
その時、ゼインは素早く体を回転させ、ジオウⅡの足元を払った。
「っ!?」
思わず地面に倒れるジオウⅡ。背中の痛みを意識するよりも先に、目前にシャイニングカリバーを振り下ろそうとするゼインの姿が目に入り、仮面の下で表情を強張らせながらも、ジカンギレードとサイキョーギレードで受け止めようとする。
そして、振り下ろされたシャイニングカリバーが──止まった。
「っ!?」
「……!?あ……あぁ……っ!!!」
思わずゼインを凝視するジオウⅡ。ゼインは、シャイニングカリバーを持つ手を震わせながら一歩ずつ後退していき、シャイニングカリバーから手を離して頭を抑えて呻き始めた。
それを見て、ジオウⅡは悟る。愛子が自分の悪意を乗り越えようと抗っているのだと。
「流石ですね……よし、これならイケる気がする!!」
立ち上がったジオウⅡは、ジオウウォッチとディケイドライドウォッチを取り出すと、それをジクウドライバーに装填する。
ベルトを回転させると、ジオウは更にゼロワンライドウォッチを取り出し、ベゼルを回して起動し、ディケイドウォッチに装填する。
メタルクラスタホッパーの力を宿したディケイドアーマーゼロワンフォームに変身すると、ジオウは武器を“プログライズホッパーブレード”に変えると、持ち手部分の“キックオントリガー”を5回引いた。
「貴方を止められるのは一人だけ……僕です!」
「はぁっ!」
「あぁああああああっ!!?」
プログライズホッパーブレードの刀身に集まったクラスターセルを飛ばし、銀色の刃がゼインを切り裂く。
呻いていて動けなかったゼインは爆発を起こし、爆炎が収まると、ゼインの鎧が消失し、膝から崩れ落ちる愛子の姿があった。
そのまま倒れそうになる愛子に駆け寄り、ジオウは背中に腕を回して支える。
「畑山先生、大丈夫ですか?」
「……ッ、鈴木…君……?」
ジオウが声をかけると、愛子はふるふると目を開けた。慣れない戦闘による痛みが残っているのか、まだ少し弱々しいものだが、特に後遺症のようなものは見られないようだ。
「ぬおぉっ!?」
「ッ!ティオ!!」
「ティオさん!?」
その時、ジオウと愛子のもとに、龍騎サバイブが転がってきた。
二人が慌てて彼女のもとに駆け寄ると、龍騎サバイブが飛んできた方角から、ゆっくりと床を踏み鳴らす靴音が聞こえてきた。
『……まさか、ドライバーの洗脳に抗うとはなぁ。その女の意思の強さを甘く見すぎていたか』
それは、龍騎サバイブが足止めをしていたエボルだった。
ジオウはエボルを捉えると、龍騎サバイブと愛子の前に立ち、プログライズホッパーブレードを構えた。
「ティオ、畑山先生を安全なところに運んできて。あとは僕がやるよ」
「承知した。しかし、それが済めば助太刀するぞ?あの者は尋常ではない」
「それは分かってるよ」
そう言って、ジオウがエボルに向かっていこうとした時、突如その突撃に待ったをかけるものの声が響いた。
「待ってください!」
その声の主は、愛子だった。
両手を胸の前で組み祈るようなポーズの愛子がジオウを見つめており、何かを察したのか龍騎サバイブが興味深げな、ジオウは訝しげに愛子に視線を集めた。
愛子は、決然とした眼差しを返した。
「今から私を地上に降ろして、また戻って来るとすればかなりの時間がかかるのではありませんか?ここは標高八千メートルです。往復するのも大変なはず……」
「むっ?確かに、その通りじゃが……」
「まさか、先生……?」
「はい。私にも手伝わせて下さい。あの人がそれだけ強いなら、私を下に送り届ける時間が勿体ないです」
愛子の頼みに、ジオウと龍騎サバイブは仮面の下で渋顔を浮かべる。
「……先生、こんなこと言うのはなんですが、貴方になにが出来るんですか?魔法陣も戦闘経験もないんでしょう?無謀と勇気は全くの別物です」
愛子は、ジオウの厳しい意見にぐっと歯を食いしばると、その手に持っていたもの…ゼインドライバーと、ゼインプログライズキーを力強く握り締める。
「それは……」
「私、こう見えて魔力だけなら勇者である天之河君並なんです。戦闘経験はないけれど……必ず、二人の援護くらいはしてみせます!戦うのは……正直怖いですが…口先だけじゃダメなんです!これから先、皆で生き残って日本に帰るためには…生徒を守る為には、私が誰よりも立ち向かわなくちゃダメなんです……だから戦います…例え弱い私でも……戦わなくちゃならないんです!!」
王国は侵攻を受け、国王も司祭達も狂信者と成り果てた。当初予定していた神を頼っての帰還はもう有り得ないだろう。この異世界で寄る辺なく愛子達は前に進まねばならないのだ。
ならば、先生である自分こそが、たとえ忌避するべきことでも、それがすべき事ならやらねばならない。そんな決意を愛子の眼差しから読み取ったジオウと龍騎サバイブは、互いに顔を見合わせて逡巡したものの、仕方あるまいと愛子の参戦を許すことにした。
「既に決めたというなら是非もない。ご主人様も、それが先生殿の意志だというなら文句は言わぬじゃろう?」
「……そうだね。彼女の意思の自由を奪う権利は僕にはない。一緒に戦いましょう、先生」
「はい!」
愛子は緊張と恐怖、そしてそれらを必死に制しようとする決意が表れた返事と共に、ゼインドライバーを腰に当てた。帯がベルトから飛び出しベルトとして装着される。
『フハハハハ……物好きな先生だねぇ。大事な生徒の次は俺とやり合おうとは……大人しい見た目して、そんなに戦いに飢えてるのか?』
その一連のやり取りを見ていたエボルは、笑い声を上げながら愛子を嘲笑うように口を開く。
エボルの言葉に、入間に襲い掛かり、イシュタル達を殺してしまったときの記憶が甦り、歯を食い縛る愛子。すると、突然、愛子の頭にポンッと暖かい手が乗せられた感触に、愛子は驚いたように、自分の頭に手を置いたジオウを見上げた。
そして、ジオウの隣に立った龍騎サバイブが最初に口を開く。
「勘違いするでないわ、下郎。先生殿は、そんな事のために戦おうとするのではない」
『何…?』
「この人は、自分がどれだけ苦しみ、罪を背負おうとも……この人は、大切な生徒を守りたい…だから戦うんです!」
『大切な生徒ォ…?大人の意見を無視して殺し合いに身を投じた愚かでちっぽけな連中に、そんな価値があるのか?』
エボルの嘲笑に、ジオウは迷わず返した。
「ちっぽけだから……守らなくちゃならないんでしょう!!」
「ッ!……はい!」
グランドジオウウォッチを取り出したジオウの言葉に頷き、愛子は左手にゼインプログライズキーを握りしめる。
それを見て、ジオウもエボルに向き直り、グランドジオウウォッチを起動。パーツがせり出したウォッチを、ディケイドライドウォッチと入れ替えて、ベルトを回転させた。
黄金のフレームに収まった仮面ライダーの像が体に張り付いてライダー達がポーズを取って固定され、「ライダー」の文字が収まることで、ジオウはグランドジオウへの変身を完了させる。
そして、愛子もそれに続くように、祈るようなポーズで握り締めたゼインプログライズキーのライズスターターを押した。
ゼインが抜けていることで、既に変身者として認証されていた愛子が起動した事でプログライズキーのロックが解除され、キーモードに展開される。
その瞬間、愛子の背後に都心の光景が映った青い光球とファンタジー世界の光景が映った赤色の光球が出現する。
「…変身!!」
独特の待機音を響かせながら、愛子は両腕を大きく回して前方に突き出し、ゼインプログライズキーを顔の右に持って行きながら叫んだ後、プログライズキーをベルトに装填する。
背後の光球が愛子と同化し、高速道路のタイムラプス映像が背後で流れると、愛子の身体が鎧と仮面に包まれ、仮面ライダーゼインへの変身が完了する。
今、龍騎サバイブ、グランドジオウ、ゼインという異色の組み合わせのライダー達が、惑星の破壊者の前に並び立った。
『面白い組み合わせだな……
エボルは、全体的な形状がブラックホールフォームの頭部のシルエットを模している錆び付いたアイテムを取り出し、そのアイテムのスイッチを親指で押してみるが、カチカチと音が鳴るだけで、何も起こらない。
その事に溜め息を吐いたエボルは“ラビットエボルボトル”を取り出し、それをドラゴンエボルボトルと入れ替え、ドライバーのレバーを回転させる。
頭部がラビットハーフボディに似た形状の【仮面ライダーエボル・ラビットフォーム】。
かつて入間にビルドウォッチを託した男──
「ティオ、畑山先生……行くよ!!」
「承知!!」
「は、はい!」
『フフフ……来い!』
エボルに向かって走り出したグランドジオウに続き、龍騎サバイブとゼインも走り出す。エボルも、仮面のEVOイヤーフェイスモジュールをスッと撫でながら歩き出す。
龍騎サバイブはドラグバイザーツバイの後方にあるグリップを引き、展開したカードスロットにカードをベントインしてグリップを押し込むことでカードを読み込む事で、ドラグバイザーツバイを変形させた“ドラグブレード”を手にし、グランドジオウは走りながら全身に配置されたレリーフにタッチした。
レリーフから“タイタンソード”と“ドア銃”が出現し、グランドジオウはタイタンソードを握り、ドア銃をゼインに投げ渡した。
「それ、使ってください!」
「うぇっ!?は、はい!」
突然銃を渡されたことに驚きつつも、ゼインはドア銃を握り、銃口をエボルに向け引き金を引いた。
『フンッ!』
「せやっ!!」
「はぁっ!」
『おっ!?』
ゼインのエネルギー弾を難なく弾いたエボルだな、その直後にグランドジオウと龍騎サバイブの剣が振り下ろされ、エボルは数歩後退した。
ゼインがドア銃から銃撃を放ち、その隙を縫うようにグランドジオウと龍騎サバイブが剣を振るうが、エボルはラビットフォームの超感覚と俊敏さを活かし、エネルギー弾を避け、剣を受け流していく。
『ハァっ!』
「「っ!?」」
すると、エボルは手の先から衝撃波を放ち、グランドジオウと龍騎サバイブを後退させると、エボルは残像を残すほどのスピードでゼインに迫り、その腹部に強烈な一撃を叩き込んだ。
『フンッ!』
「うぐっ!?」
25年間で経験したことがないような痛みに、ゼインは殴られた腹部を押さえてよろめく。エボルはゆっくりとゼインに歩み寄り、右手に赤いエネルギーを纏わせる。
「先生殿!!」
「この…!」
それを見たグランドジオウはカブトのレリーフに触れて仮面ライダーカブト・ライダーフォームを召喚する。
「…クロックアップ」
『うぉっ!?』
クロックアップを発動したカブトが、四方八方からエボルを攻撃する。ラビットフォームでも視認が難しいクロックアップの攻撃に、エボルはゼインに御見舞いしようとした攻撃の手を止める。
頃合いを見計らったカブトはベルトのカブトゼクターを操作し、グランドジオウはそれに合わせて走り出す。
「ライダー…キック!」
「「はぁっ!!」」
『ぐうっ!!?』
グランドジオウとカブトの回し蹴りが同時に炸裂し、エボルは爆発を起こしながらゼインから引き離される。そこへ、龍騎サバイブが走り込み、ドラグバイザーツバイによる斬撃を放つ。
その光景に、ゼインはやはり戦闘経験が皆無な自分は足を引っ張ってしまうことに歯噛みし、ディケイドのライダーカードに似たカード──ゼインカードを取り出した。
「……こんな使い方して、ごめんなさい…。でも、私の生徒達を守るために…力を貸して下さい!!」
カード越しにレジェンドライダー達に謝罪しながら、ゼインは手に持ったゼインカードをゼインドライバーに装填し、ライドエグゼキューターを引いてそのカードを裁断し、プログライズキーを押し込んだ。
カードの力がゼインに宿り、ゼインの右腕にガントレット型武器“メテオギャラクシー”が装着され、ゼインは一番奥のマーズレバーを押し込み、指紋データ受信センサーのフィンガーマウントパネルに左手人差し指の指紋を照合する。
右手に火星を模した球体を発生したゼインは走り出す。エボルはそんなゼインに気付くと、カウンターを御見舞いしてやろうと拳を握り締め、ゼインを迎え撃つ。
『ハァっ!』
「ハッ!ホァッ!」
『何ッ!?』
しかし、エボルが繰り出したパンチを、ゼインは左手で弾き、回転蹴りを加えた後、火星を纏った右手を叩き付けた。
「ホワチャァッ!!」
『ぬぉっ!?』
愛子らしくない声と共に鳩尾に直撃した800度の拳に、エボルは僅かな痛みを感じて数歩後退する。すかさずエボルは反撃しようとするがそこへグランドジオウと龍騎サバイブが攻撃を加えてエボルを吹き飛ばすことでゼインを守った。
「鈴木君、ティオさん…!」
「まさか、ここまでやるとはのぅ。流石、ご主人様の先生殿じゃ。感服じゃよ」
「感心してる場合じゃないでしの、ティオ。僕達も負けてられないよ!」
「勿論なのじゃ!」
鎧武のレリーフに触れたグランドジオウは“ソニックアロー”を手にし、龍騎サバイブもドラグバイザーツバイに二列になったカードが遺伝子のようになった絵柄のカードを装填する。
任意のカードに変化するという特殊なカードを使用し、別のカードに変わったストレンジベントのカードを一度取り出した龍騎サバイブは、再びそのカードをドラグバイザーツバイに装填した。
『ん?これは…!?』
敵を凍りつかせて動けなくするカードが発動し、エボルの体が凍りついたことで、体が石像よように動かなくなる。
「ナイス、ティオ!」
グランドジオウは“ドラゴンフルーツエナジーロックシード”をソニックアローに装填し、ゼインはそれに続くようにメテオギャラクシーの一番手前のサターンレバーを押し込み再び左手で指紋認証する。
「はぁっ!」
「ウゥ~~……ワチャァッ!!」
『グォオオオオオオオッ!!?』
グランドジオウはソニックアローから赤い龍のエネルギー矢を放ち、ゼインは右手に土星とその環状の衛星を象ったエネルギーを発生させエネルギーリングを放出する。
二つの攻撃を受け、動かぬ的となっていたエボルは爆発と共に凍結が解除されて吹き飛ばされ、床を抉りながら壁に激突した。
『ここまでやるのかぁ…!』
「ここまでやっても、倒れないなんて…!?」
「流石、フェーズ3は強い…!なら、本気でいくよ!」
技が直撃した箇所を撫でてめり込んだ壁から抜け出したエボルを見て、グランドジオウは胸の前で腕を交差させて力を集中させる。
その瞬間、グランドジオウの体から凄まじい黄金の光が溢れだし、その光がグランドジオウを包み込むと、その背中にゼロワンからガッチャードまでのライダーズクレストが刻まれた夜空色のマントが出現した事で、グランドジオウは上位互換形態であるネクストグランドジオウへと進化を遂げる。
かつてはその力の強大さ故に消耗が激しかった形態だが、入間の短期間の成長により、入間はその力を使いこなせるようになっていたのだ。
「行くよ!!」
「おう!なのじゃ!」
「は、はい!」
仲間達に声をかけ、ネクストグランドジオウは魔術で愛用の弓矢を作り出し、同時に龍騎サバイブはカードデッキからアドベントカードを引き抜き、ゼインは“メテオスイッチ”を取り出した。
『そう簡単にやられるかよ!!』
それを見たエボルは、“カイゾクハッシャー”を召喚し、ビルドアロー号を引き絞る。
同時に、龍騎サバイブは取り出したアドベントカードをドラグバイザーツバイに装填した。
龍騎サバイブの背後に、ドラグレッダーが進化した【烈火龍ドラグランザー】が現れ、龍騎サバイブの周囲を旋回すると、龍騎サバイブはドラグバイザーツバイの銃口をエボルに向ける。
龍騎サバイブの大技の一つ“メテオバレット”と、エボルのカイゾクハッシャーによる必殺技“ボトルテックブレイク”が同時に放たれ、ドラグランザーの炎とドラグバイザーツバイの光線が、エネルギー状になったビルドアロー号と、互いの中間点でぶつかり合い、爆発を起こす。
凄まじい爆音と衝撃波が辺りに広がり、ノイントとの戦いで破壊されていた教会の内部が爆発によって更に破壊される。
「ッ!私も…!!」
それを見たゼインは、メテオギャラクシーの外側にあるスイッチソケットにメテオスイッチを装填すると、ノリのいい待機音が流れ、フィンガーマウントパネルに指紋認証をする。
ゼインは右親指で仮面に隠された鼻の部分を撫でると、両腕を広げて腰を落として構えをとり、エボルに向けて走りだしながらて目前まで迫ると、ゼインドライバーのプログライズキーを押し込みながら、メテオギャラクシーを装着した右手をエボルに向けて突き出した。
「ホォ~~~~~~~…ッワチャァア!!!」
『ッ!!』
ゼインの右手が水色の光に包まれ、その拳を叩き付けてエボルを浮き上がらせ、宙に浮いたエボルにそのまま某ペガサス座の戦士のように水色のパンチの連続で叩き込む“スターライトシャワー”を繰り出した。
「ッ!ホワチャァッ!!」
そこで、後ろから音声が聞こえてきたことで、ゼインは最後に渾身の一撃を叩き込むと同時に後ろに下がる。
すると、エボルの視界に弓矢を構えるネクストグランドジオウの姿が映り、エボルはエボルドライバーのレバーを高速回転させる。
エボルの足に赤いエネルギーが蓄積すると同時に、ネクストグランドジオウは、魔力と必殺技のエネルギーを送り込んだ矢を解き放った。
「…ばちっ、こん!!」
光速で飛ぶ漆黒の矢とエボルの蹴りがぶつかり合う。
矢と足から火花が飛び、衝撃波が撒き散らされると、教会の壁が音を立てて穴が空き始める。やがて、エボルのキックとネクストグランドジオウの矢が、爆発を起こした。
『グァアアアアアッ!!?』
爆発に巻き込まれたエボルは、爆炎から飛び出しながら床を転がった。
数回床を転がった後、エボルは直ぐ様起き上がり、床に片膝を着いた体勢で、頭をポリポリと掻いた。
『やるじゃねぇか……フェーズ3でも、押しきれねぇか』
そう愚痴るように呟いたエボルは立ち上がると、腰の後ろに手を回し、あるものを取り出した。
『しょうがねぇなァ……まだ試作段階だが、コイツを使ってみるか』
そう言いながらエボルが取り出したものを見て、ネクストグランドジオウ達は仮面の下で眉を潜めた。
「…何、あのボトル…?」
ネクストグランドジオウが呟いた通り、エボルが取り出したのは、入間の知らないボトルだった。
形状はジーニアスボトルやマッスルギャラクシーボトルと同じだが、そのカラーリングは、ジーニアスボトルならば青かった箇所が漆黒で、黄色かった部分がワインレッドになった…さながらジーニアスボトルの色違いという印象のボトルだった。
『コイツか?コイツは、とある世界で、レリックとかいうエネルギー体を元に作り出した……エボルディマイズボトルとでも呼ぼうか……』
エボルはそのボトル──“エボルディマイズフルボトル”を見せながら、そのボトルのキャップを回してそのボトルを起動する。
エボルドライバーに装填していたラビットエボルボトルとライダーシステムエボルボトルを引き抜き、代わりにエボルディマイズフルボトルを装填すると、エボルはエボルドライバーのレバーを回す。
ベートーベンの交響曲第9番に酷似したBGMが流れ、エボルの周囲に漆黒に変化した“EV-BHライドビルダー”が現れてエボルの体を包むように回転すると、EV-BHライドビルダーが縦に並ぶ。
周囲に“パンドラボックス”を連想させる物体が黒い竜巻にのってエボルの周りを飛び、エボルは腕を交差させ、それをバッと広げる。
『エボルアップ』
黒い箱形の物体がEV-BHライドビルダーと合体して柱状になり、暗黒空間に飲み込まれ、そこから小型の黒い立方体を飛び散らせながら、夜空のエフェクトと共に、新たな姿となったエボルが姿を現した。
シルエットは【ブラックホールフォーム】と同一だが、本来白を基調としていたアーマーのカラーリングは大部分が光沢のある黒で、黒かった部分がワインレッド。胸部の“カタストロフィリアクター”はワインレッドに染まっている。
複眼は黒で、水色のライン。
両肩と腰には、仮面ライダーブラッドのBDベクターマントに似たような内側が水色となった漆黒の腰マントとケープを風に靡かせている。
それは、誰も見たことがないエボルの姿だった。
姿を変えたエボルは、驚愕するネクストグランドジオウ、龍騎サバイブ、ゼインに向けて、口を開いた。
『フェーズ4を飛ばして一気に駆け上がった……今の俺は、仮面ライダーエボルディマイズ。以後、お見知りおきを♪』
名乗りをあげたエボル──仮面ライダーエボルディマイズは、ゆっくりとネクストグランドジオウ達に向かって歩きだした。
──第3ラウンド、スタート。
・ライダー紹介
仮面ライダーゼイン(愛子Ver.)
【概要】
畑山愛子がゼインドライバーとゼインプログライズキーを使い変身した仮面ライダー。
本来はハダンが愛子を使い入間を殺すためのものだったが、愛子が強靭な意思で洗脳に抗い、ジオウのプラグライズホッパーブレードにより正気を取り戻したことで味方となった。
【スペック】
パンチ力:50.1t
キック力:107.5t
ジャンプ力:一跳び70m
走力:100mを0.8秒
【使用アイテム】
・ゼインドライバー、ゼインプログライズキー
ハダンがゼインを取り外して機能だけを残した物である為、『仮面ライダーアウトサイダーズ』で使われたものとは別物であり、人間に悪意を宿らせて暴走させる機能があったが、ジオウの手でその機能は壊れた。
最初からゼインがいないため、プログライズキーの起動にはゼインの承認は必要ない。
エボルのオリジナルフォームは、また次回にご紹介いたします。
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