悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 今回のサブタイトルは『RIDER TIME仮面ライダーシノビ』をイメージしています。

 ありふれた職業で世界最強 リベリオンソウルが滅茶苦茶面白いです。気が付けば四時間近くプレイしていた自分がいました……。


80話 異世界召喚イッポウ通行の巻

 ハイリヒ王国の滅亡から一日が経過した。

 

 広大な青空を、巨大な“船”が外輪を回しながら進んでいく。

 ベースカラーは黒で甲板が赤で、船尾付近にある巨大な水車型の機構に、巨大な砲門を甲板に11、船底にも6つ配置されている。側面や船尾に大量の砲身が並び、船首は二又に分かれていて「鬼の角」のようになっており、中間部にはやはり砲身が配置されているその船は、入間の所持している全長四千メートルの超巨大戦艦──“鬼の戦艦”だ。

 

 これは本来、鬼の一族である【クチヒコ】と【ミミヒコ】が“鬼の切り札”を使って呼び出した時を走る船であり、巨大な砲門や魚雷といった数々の平気を搭載しており、また常時バリアを周囲に展開しているため要塞としても破格の戦闘力を有し、海のような空間を空中に作ることで空中を移動することも出きるものなのだ。

 

 本来、鬼の戦艦を操るミミヒコとクチヒコは、各々【シルバラ】【ゴルドラ】という戦士に変身することが可能であり、シルバラとゴルドラはシャドームーンやブラッドスタークのように擬似ライダーに分類される戦士であるため、入間はインフィニットジオウに昇華した時から、この戦艦を持っていたのだ。今まで使わなかったのは、単純にデカすぎるからである。

 全長四キロメートルもある戦艦だ。コントロールは全てブリッジで一人で行えてしまえる超お手軽設計とは言え、ここまで巨大な戦艦を使う意味がなかったのだ。

 それを出したのは、単に入間が使ったことがない物を試してみようと言う気持ちと、内装の悪さを改築する為だったりする。

 

 因みに、入間が鬼の戦艦を改築している間、ユエ、アメリ、シア、ミレディ、アスモデウス、クララは神山の迷宮攻略に向かっていったが、元々6人にはエヒトへの信仰心など微塵も持ち合わせていなかったので、条件の一つはクリアしていた様なもので、比較的容易だった。

 そして、“神の力が作用している何らかの影響に打ち勝つ”という条件については、現代の教会関係者と戦わない場合に於ける大迷宮が用意していた試練の内容は、洗脳・魅了・意識の誘導・無意識への刷り込み等、挑戦者の精神と価値観に働きかけながら過去の教会の戦士達と夢幻空間で戦うというものだったのだが、それらも6人はあっさりクリアした。

 

 そして、バダンと(オマケの)魔人族の襲撃によるハイリヒ王国の崩壊からの生存者である愛子や愛ちゃん護衛隊、そして光輝達勇者パーティー3人と、リリアーナは、バビルの保護の元、この鬼の戦艦に新たに取り付けられた住居区でお世話になっていた。

 本来なら、愛子と愛ちゃん護衛隊の6人だけ船にのせ、残りはハイリヒ王国跡地に放り投げて行こうと思っていたが、愛子が断固として光輝達を見捨てようとしなかった事もあり、渋々彼等もこの船にのせることにした。尤も、生活面には不自由がなくとも、精神面は平穏とは程遠いものだった。

 香織と恵里がクラスメイトを裏切り怪物になったと言うショックに、雫と鈴は時折生気を感じられないような表情をすることが多くなり、普段から見せる表情も痛々しいものだった。愛子が生徒一人一人としっかりとコミュニケーションを取り、生徒達を鼓舞しているからこそ、動けているのだろう。

 

 リリアーナはもっと酷い。家族の首を目の前で突きつけられ、王国を守ろうとしていたのに、あっという間に王国が滅びてしまった事実を受け入れられず、虚ろな目で虚空を見つめる時が多くなっている。香織の裏切りに回りをフォローする余裕がない雫に代わり優花が何とか鼓舞しようとしたが、結果は著しくなかった。

 

 光輝は、二度に渡って何も出来ず入間に救われたという事実に相当落ち込んでおり、大恩のある入間に対してはいい感情も持てていなかった。

 それが、いわゆる“嫉妬”であるとは、光輝自身自覚がない。仮に、気が付いたとしてもこの男は認めようともしないだろう。仮に認めても、その上で前に進めるか、やはりご都合解釈で目を逸らすかは光輝次第である。

 

 そして現在、ユエ、アメリ、シア、ミレディ、アスモデウス、クララが神山の迷宮で“魂魄魔法”を手に入れた後、入間は新たに取り入れたリビング光輝達を集め、愛子に狂神の話と異世界からの侵略者達、そして入間の旅の目的を説明させた。理由としては、彼等がこれからどうするにしろ、この事については話しておかなければならないだろうと判断したからだ。心に負担を負った状態で更に重荷になるようなことを告げるような行為だが、入間達にはハルツィナ樹海の大迷宮の攻略があり、このまま問題を先伸ばしにすれば余計に長引くだけなので、愛子達にはさっさと今後の方針を決めて貰いたいと言うのが本音だった。

 

 そして、全てを聞き終わると、真っ先に声を張り上げたのは光輝だった。

 

「なんだよ、それ。じゃあ、俺達は神様の掌の上で踊っていただけだっていうのか?なら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!オルクスで再会したときに伝えることは出来ただろう!」

 

 非難するような眼差しと声音に、しかし、入間は光輝を見ようともせずにアスモデウスが淹れたお茶が入ったティーカップに口をつける。無視だった。その態度に、光輝がガタッ!と音を立てて席を立ち、入間に敵意を漲らせる。

 

「何とか言ったらどうなんだ!お前が、もっと早く教えてくれていれば!」

「ちょっと、光輝!」

 

 諌める雫の言葉も聞かず、いきり立つ光輝に入間はティーカップから口を離して五月蝿そうに眉をしかめると、盛大に溜息をついて面倒くさそうな視線を光輝に向けた。

 

「何でそんな事言わなきゃいけないの?」

「なんだと?」

「自分に都合のいい話しか耳に入れようとしない君の事だから、人間族が信仰している神がクズで君達のやっていることは無意味だ、なんて僕が言ったとしても、どうせ信じない所か、僕を非難するだけだよね?あの時、君は僕の事、筋違いな理由で僕を責め立ててたし……ハッキリ言って、時間の無駄以外の何でもなかったんだよ」

「だ、だけど、何度もきちんと説明してくれれば……」

「何で僕が、赤の他人でしかない君達の為に時間を使わなくちゃならないのさ?まさか、まだ僕がクラスメイトだから君達を仲間だと思って優しくしてくれるとか都合の良い妄想してる訳じゃあないよね?なんならそんなことはないって証明するために、君の大事な仲間を殺してあげようか?」

 

 永久凍土の如き冷めた眼差しで睥睨する入間に、雫と鈴はさっと目を逸らした。

 だが、光輝だけは納得できないようで未だ厳しい眼差しを入間に向けている。結果的にとはいえ二度も命を救われ、今もこうして衣食住の提供までしてもらっていると言うのに、感謝するどころか非難してくる恥知らずな光輝に、ユエ達がゴミを見るよりも冷たい目を向けているが、光輝は気が付いていない。

 

「でも、これから一緒に神やバダンとかいう連中と戦うなら……」

「いや、なんで僕が君達と協力する必要があるの?君達をこの船に乗せたのはあくまで先生のオマケ。戦いたいなら勝手にすれば良いけど、共闘する気は一ミリもないよ」

「なっ、何でだよ!?お前は、この世界の人達を弄んでいる神を倒して人々を救うために旅をしてるんだろう!?戦力は多い方が……」

「神を倒すのが目的だっていう点は間違ってはいないけど、一つだけ間違えてる。ミュウとレミアさんは別として、僕はこのトータスに住んでいる人間のために戦った事なんて一度もない」

「なっ!?お前は、この世界の人達がどうなっても良いっていうのか!?」

「この世界の人達がどう生きていくかなんて当人達の問題だし、異世界人の僕が口出しする必要はないと思うんだけど……」

「なんで……なんでだよっ!お前は、俺より強いじゃないか!それだけの力があれば何だって出来るだろ!力があるなら、正しい事の為に使うべきじゃないか!」

 

 光輝が吠える。言葉だけを並べれば、実に正義感溢れる言葉だ。しかし、そんな『幼稚さゆえの正義感』から来る言葉は、意思の弱いものならともかく、入間には届かない。

 入間はまるで路傍の石を見るような眼差を光輝に向ける。

 

「あのさ……力の使い方に、善悪なんてないんだよ?」

「なに?」

「力は使うものじゃない、求めるものなんだよ。人を守るために力を使う……確かに、それは正しいことだと僕も思う。でもね、それを言い訳にして自分の正しさを強要するのはただの独り善がりだよ。僕は僕の力を、僕自身の野望のために使う。自分の力をどう使うのかの決定権は本人だけにあって、善行の為に使えなんて決める権利は誰にもない。その力の使い方が善か悪かは結果で決まる。君は力を求める意思が薄弱だから、バダンにも神にも勝てないんだよ」

 

 入間はそれだけ言うと、光輝達に興味がないということを示すように視線を戻してしまった。

 光輝は自分の敗北原因について言及され激しく動揺してしまい口をつぐむ。自分には強い意志がある!と反論したかったが、自分でも自覚していない図星をさされてしまい、言葉が出なかった。

 

 入間の言葉に同じく口をつぐんでいた優花は、やがて入間に話しかける。

 

「それで、鈴木やユエさん達はどこへ向かうの?神代魔法を求めているなら大迷宮を目指すのよね?西から帰って来たなら……ハルツィナ樹海?」

「そのつもりだよ。このまま東に向かおうと思ってる」

 

 入間の予定を聞いて、話し終えた後から何やら考え込んでいるようすだった愛子がミレディに歩み寄る。

 

「……ミレディさん。1つお聞きしたいんですが、神代魔法を手に入れれば、地球へ帰ることは出来るんですか?」

「集めればすぐに帰れるなんて事はないけど……その地球っていつ世界に帰ることは出来るよ。これ絶対だよ」

 

 その答えを聞くと、愛子は決然とした表情で顔を上げる。

 

「……鈴木君、無理を承知でお願いします。ハルツィナ樹海の攻略に、私を連れていってくれませんか?」

「あ、愛ちゃん先生!?」

 

 優花達が驚く中、入間は愛子を見据えたまま口を開く。

 

「寄生したとしても、神代魔法が手に入らないのは分かってるでしょう?神山は緩い方だったけど、他の迷宮がそうだたとは限りませんよ?」

「分かってます。……でも、白崎さんの件にしろ、皆で地球に帰る件にしろ、私達にはどうしても神代魔法が必要なんです。何度も鈴木君に迷惑をかけている事は分かっていますが……お願いします!どうか、もう一度だけ力を貸してください!!」

 

 頭を90度まで下げて懇願する愛子を入間はジッと見つめる。

 ゼインや魂魄魔法という力を手に入れて思い上がっているような感じはしない。寧ろ、生徒を守れる力を手に入れても、目の前で生徒を守れなかった自分への不甲斐なさが滲み出ている。入間が、クラスメイト達をアナザーワールドに閉じ込めた香織の事にまでは関与しない…寧ろ殺意しかないと分かっている以上、自分達自身でどうにかしなければならないという決意を固めたのだろう。

 

「なら、私も行かせて!愛ちゃんが私達のために危険な場所に行くのなら、私も一緒に行って、愛ちゃんを守りたい!」

 

 すると、優花も愛子のとなりに並んで頭を下げてきた。

 

 それを見て、入間は考える。入間は、神代魔法全てを集めても彼女達を返すきはない…というか、帰すことが出来ないのだ。入間達と愛子達は別々の世界の人間であり、彼女達の世界の座標が良く分からないからだ。だからと言って、彼等が一から神代魔法を手に入れる手伝いをするなど、時間のロス以外の何ものでもないからまっぴらごめんだった。

 

 だが、入間の中で、愛子と優花に関しての好感度が高いのは事実であり、彼女達も鍛えればかなりの戦力になるのは事実である。愛ちゃん護衛隊残りの5人は兎も角(今や愛子が彼等よりも強くなった以上、迷宮にはいっても愛子に守られるだけだろう)だが、彼女達にはなかなかに見所がある。愛子が改造された遠因であることに負い目を感じているのも事実なので……

 

「……一から神代魔法を手に入れるのに付き合う気はありませんが、僕が行っていない迷宮だけなら同行しても構いませんよ。それから、残りのメンバーも、しばらくは鬼の戦艦(ここ)で面倒見ることにしますよ」

「「鈴木(君)!!」」

 

 実際、鬼の戦艦の攻撃力ならノイント一体二体くらいなら簡単に撃墜できるし、最悪の場合は時を走る船と称される鬼の戦艦に、時空トンネルに逃げ込めば何とかなるだろう。折角取り付けた鬼の戦艦の設備を使わないのも勿体無いので、入間はわりと好待遇で彼女達の同行を許した。

 パァッと顔を明るくする愛子達に、入間が照れ臭そうに顔をそらすと、そこではユエ達が「愛子には甘いよなぁ」と言うようなジト目を向けるユエ、アメリ、シア、ミレディ、ティオの姿を目にし、頬をひきつらせた。

 

 だが、何時の時代でも、どの世界でも、古今東西、贔屓というのはろくな結果にならないものだと言うことを、入間は忘れてしまっていた。

 

「だったら、俺達もついて行くぞ!この世界の事をどうでもいいなんていう奴に、先生や園部さんは任せられない。それに、鈴木が人々を救う気がないなら、俺がこの世界を救う!そのためには力が必要だ!神代魔法の力が!お前に付いていけば神代魔法が手に入るんだろ!」

「いや、寄生しても手に入らないって言ったばかりだよね?それに君達、オルクス攻略途中だったでしょ?他の迷宮の場所なら教えてあげるから、勝手に行けば?」

 

 勝手に盛りがって何言ってんだとバカを見るような目を向ける入間。非難しながら他力本願とか支離滅裂すぎる。そこに、迷宮を創立した張本人であるミレディが入間の言葉を指摘する。

 

「いやいやイル君、オー君の迷宮は一番難易度高いんだから、イル君やユエちゃんみたいな規格外でもない彼等じゃ101階層で死んじゃうって」

「んー……そこは根性じゃない?命懸けの試練なんだし、そこで果てれば本望でしょ」

「それ、遠回しに死んでこいって言ってるよね?いや、気持ちは分かるけど……」

 

 そっぽを向いて口笛を吹く入間に、ミレディは苦笑い。仮面ライダーになれるから攻略出来るという事はないが、ハッキリ言えば光輝達の実力ではオルクスを攻略できる可能性はゼロだ。

 

「そ、それなら……そうだ!ミレディが俺達に神代魔法を……」

「いやいや、そんな簡単に渡すわけないでしょ?ってか、ミレディさんを呼び捨てにしないで。気持ち悪いから」

「仮にミレディの試練受けたとしても、色んな意味で天之河君とミレディは相性悪いだろうしね」

「「「激しく同意」」」

 

 それならミレディが重力魔法を渡してパワーアップできればいい口にしようたした光輝だが、当然ミレディは却下。入間に対する態度のあれこれを抜きしても試練をパスして神代魔法を渡すなんてあり得ないし、それでは試練を課す意味がない。

 それに入間が口にする通り、ライセン大迷宮に光輝達が行ったとしても、物理トラップの度に出てくるウザイ文字に光輝がキレてトラップの餌食になる未来が簡単に予想できる。

 

「…お願いします、鈴木君。香織をバダンから助けるために、どうしても力がいるの。一度でいいの。一つでも神代魔法を持っているかいないかで、他の大迷宮の攻略に決定的な差ができるわ。一度だけついて行かせてください!」

「鈴からもお願い、鈴木君。恵里があんな風になったのが神代魔法だっていうなら、きっと元に戻す方法なあるはず。恵里を元に戻して、話をしたい。だからお願い!このお礼は必ずするから鈴達も連れて行って!」

 

 すると、ずっと黙っていた雫と鈴まで頭を下げだした。どうやら、怪物となってバダンのもとへ行った香織と恵里の事で色々考えているようだ。その声音や表情には必死さが窺えた。光輝は、その光景を見て眉をピクリと反応させたが、結局何も言わなかった。

 

 それを見て入間は逡巡する。愛子と優花はともかく、本来なら【ハルツィナ樹海】の攻略に光輝達を連れて行く様な面倒事を引き受けるなど有り得ない。仮面ライダーではないから弱いとかいう理由ではなく、光輝達の性格には入間達にとってはイライラの種でしかないからだ。さっさと断って、オルクス大迷宮でもグリューエン大迷宮でも適当な所に放り出すところだ。

 

 だが、どうせ断っても、彼等もこの船に乗せる決断をした以上、置いていっても無理矢理にでも着いてくるだろう。そこまで考えていたところで、横から声が聞こえた。

 

「私は断固反対だ」

「アメリさん?」

 

 それは、横で話を聞いていたアメリだった。入間達の視線が彼女に集中すると、アメリは鋭い目で雫を睨みながら言葉を続ける。

 

「…言葉通りの意味だ。コイツらが寄生したところで、私達はデメリットしかない」

「なっ!?何でそんなことを言われなきゃ……」

 

 あまりの物言いに光輝が声を上げようとするが、アメリはそれを遮るように言葉を続ける。

 

「貴様は論外だ。常に自分本意で女を物扱いしている奴が着いてくる等、虫酸が走る」

「なっ!?俺は女性を物扱いなんて……」

「何が違う?お前はオルクスでイルマに再会した時、イルマに不幸にされた私やユエ達を解放しろとか宣いながらイルマに決闘を申し込んでいたが、私達が一言でも、イルマに不幸にされていると言っていたのか?それに、私達がいつ、お前が決闘に勝てばお前の仲間になると言った?」

「そ、それは……」

「他人の意見も聞かず、勝手に人を戦利品扱い。あの時、お前はイルマを女をコレクションと思っている最低の奴と罵倒していたが…私からすれば貴様の方が余程、私達女をコレクション扱いしているだろう」

 

 アメリの指摘に光輝は何も言えなくなった。愛子達は光輝がそんなことをしていたのかと目を見開いて光輝に視線を向け、オルクスで光輝に戦利品扱いされていたユエ達はうんうんとアメリの言葉に頷き、ティオは光輝に軽蔑するような目を向け、アスモデウスは軽く殺意を抱いた。

 そして、アメリは雫に視線を向けた。

 

「それに、その女のせいでアナザーディケイドを倒せるチャンスが潰されたのだぞ?」

「ッ!」

 

 それを言われた雫はビクッと肩を震わせる。アメリの言う通り、インフィットジオウがアナザーディケイドに必殺技を決めることができていれば、少なくとも香織のアナザーウォッチを破壊して元に戻すことが出来た筈だ。それに、アナザーディケイドを倒せば、彼女が作り出したアナザーワールドも消失し、アナザーワールドに囚われていた生徒達を救うことだって出来た筈なのに、雫が直前で妨害したせいで、バダンの勢力は減る処か増えてしまったのだから。

 

「……幼馴染みを大事に思うのは良いが、私には今のコイツらは、親友を無条件に信じたいだけにしか見えん。そんな奴らを連れていっても、邪魔なだけだ」

 

 アメリの容赦ない言葉に、雫と鈴は何も言えなくなってしまう。

 愛子達はこの険悪な雰囲気をどうすれば良いのかとオロオロしており、アメリの言葉に大いに納得できる入間達は、光輝達の同行を拒否しようかと考え始める。

 

 すると、アメリはポンポンと背中を叩かれて振り向くと……そこには、にらめっこをしているような変な顔をしたクララがいた。

 

「うぉっ!?」

「ク、クララ!?」

 

 流石のアメリも驚き、入間も混乱していると、クララはムスッとした表情をしながら口を開く。

 

「イルマち!まっかちゃん!いっつも怒りんぼさんじゃダメだよ!昔のことズルズル、イルマちとまっかちゃんっぽくないよ!!」

 

 クララの言葉に、バビルの面々は目を丸くする。だが同時に、あの件は入間が光輝の顔面を没落させて入間の勝ちと言う事で終ったことだ。雫がアナザーディケイドを倒すのも邪魔したのも、入間自身の判断だったし、入間も特に気にしていないので、いつまでも過ぎた事を引き摺るのは、確かにらしくないと思う。

 

「……まぁ、過ぎた事を蒸し返すのもアレだしね。攻略の邪魔になるなら放置で、ハルツィナ樹海の攻略に同行させるだけなら良いんじゃないですか?」

「……確かにそうだな」

 

 入間が条件付きで同行を許可し、アメリも無表情ながらも頷く。一応、ユエ達にも視線で確認を取るが、特に反対意見はないようだ。

 

 雫達の間に安堵の吐息と笑顔が漏れる中、入間は、残り二つとなった大迷宮とこれからの展開に思いを巡らせる。

 

 何があるにせよ、大迷宮の攻略に終わりが見えてきたのだ。その先は、遂にバダンとの決戦だ。バダンの頂点がどんな存在だろうと、どんな状況に陥ろうと、必ず全てを薙ぎ倒す。この世界で手に入れた“大切”と共に。

 

 その誓いを、新たに重ねてきた絆と想いで包み込み、更に強靭なものとする。入間は、心の中で更に大きくなった決意の炎を感じながら、そっと口元に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔界──悪魔学校(バビルス)

 入間達の母校である魔界の名門校の廊下を、一人の女生徒がゆっくりと歩いていた。

 

 ユエよりも一回り小さい体躯に悪魔学校(バビルス)の女制服を身に付け、長い水色の髪を二つに纏めた低いツインテールに小さな黒い角を生やし、薄く氷が張っているような水色の瞳をした少女──【クロケル・チマ】。

 

 入間の後輩であり、恋心を持つその少女に、突如として後ろから声がかけられる。

 

「やぁ!プリンセス!教室へ行くのかい?」

 

 真っ赤な服に身を包み、「全智全能」と書かれた扇子を持ち歩く異常に長い角を持つ美悪魔──【ゼパル・ゼゼ】が、扇子を開いて読者の皆様(見当違いの方向)に目を向けながら声をかけてきた。

 それを見て、チマはチラリとゼゼを見て、口を開く。

 

「……何処見ていってるの?」

「いや…何だかっ、始めてカメラが回ってきたきた気がしてね!!

「今回文面体でしょ」

 

 メタ発言で返しながら、チマはスタスタと歩いていき、ゼゼはその背中をツカツカお靴音をならしながら追い掛ける。

 

「フフフ、プリンセス!ここは君が大尊敬してて大好きな!ライバルの俺が!エスコートをっ!!?」

 

 エスコートを申し込もうとしたところで、突如ゼゼは虚空から発生した氷塊に押し潰された。チマが得意とする氷系の魔術である。

 

 ゼゼを押し潰したチマは、プイッと視線をそらし、自教室へと向かって歩きだす。すると、彼女に再び声をかけるものが現れた。

 

「ハハハッ!流石だねぇ、クロケル・チマ」

 

 その声にチマが振り向くと、そこには白系統の色をしたベレー帽と芸術家風のコートを纏った青年が、学校の柱に背中を預けながら笑い声を上げていた。

 

「貴方、誰…?」

 

 タブレットPC状のノートを携帯した男はトーンが高く気取った話し方でチマの質問に答える。

 

「私はこの学校の生徒ではない。君に力を与え導くために来た者だ」

「私に力を……?」

 

 チマが訝しげに呟くと、その青年は手に持ったノートを開き、右側のページにタッチペンである文章を書き込んだ。

 

『未来の仮面ライダー達の力、クロケル・チマの身に宿る』

 

「ッ!?」

 

 その瞬間、何処からか紫・オレンジ・黄色・青の光が現れ、その光がチマの周囲を飛び回ったかと思うと、四色の光は、一斉にチマの体の中へと吸い込まれていった。

 

「うぐっ!?あ……うぅ……!?」

「失われた未来のライダーの力を、魔王のもとで存分に振るうと良い」

 

 苦しむチマに、その青年は自身のベレー帽をチマの角を隠すように頭にポスッと被せてからフィンガースナップすると、彼女の背後に銀色に揺らめくオーロラが現れる。

 そのオーロラが独りでに動くと、チマの体は、銀色のオーロラに包み込まれた。

 

 視界が一瞬だけ銀色に包まれたチマは、顔を上げた途端、チマが立っているのは、見たことのない場所だった。

 

 先程まで昼だったはずの空は星が輝く夜に変わり、徹底的に実用性を突き詰めたような飾り気のない建物が並んでいる一方で、後から継ぎ足し続けたような奇怪な建物の並ぶ場所もある。

 

「ここ、何処……!?」

 

 滅多に感情を露にしないチマでさえ、その様子に驚愕を隠せない。しかし、こうしていても仕方ないと、情報収集も兼ねて歩いてみることにした。道中、チマの容姿に下卑た表情で声をかけてくるものを氷漬けにしていると、チマの耳に、突如として怒号と悲鳴が聞こえてきた。

 

「ま、魔物の襲撃だぁッ!!!」

「おい、何なんだよあの魔物!?俺達の攻撃が全然きかねぇぞ!?」

 

 そんな声が聞こえてきたと同時に、民家を破壊する轟音と共に、チマの前に、恐ろしい異形の怪物が姿を現した。

 

 その姿は、まさに蟹だ。しかし、全長は8メートル近くあり、ハサミは腕だけでなく背中の甲羅にも二本の計4本の鋏を携えた怪物──【バケガニ変異態】だった。

 バケガニは、奇怪な唸り声を上げながら帝都を本能のままに破壊し、ハサミの一振りや、強固な甲羅による体当たりだけで、民家や建物は積み木でも崩すかのように瓦礫と山と化していく。血気盛んな住民達は武器を手にしたり、魔法を放ってバケガニに立ち向かっていくが、強固な甲羅の前には傷処か足止めさえ出来ず、逆にバケガニの脚に踏み潰されたり、巨大なハサミによって小枝を折るように簡単に体を切られてしまう。

 

 チマは、そんな光景に顔を青くしていると、突如として彼女の懐が光り始めた。チマがそれに気づき、ポケットの中を探ると、そこには、見覚えのない銀色の瓢箪があった。

 何となく、チマはその瓢箪──“シノビヒョウタン”の蓋を開けると、ポンッという音と共に、シノビヒョウタンからクナイのエフェクトを持つ紫色の液体が飛び出し、それがチマの腰に巻き付き、二つのアイテムの形となって具現化した。

 

「これって……!?」

 

 チマの腰には、外見はジクウドライバーと酷似しているが、黒鉄色一色に染まっているベルト──“シノビドライバー”が装置され、手には紫色の手裏剣のようなアイテム──“メンキョカイデンプレート”が収まった。

 

 突如腰に巻かれたドライバーにチマが混乱していると、帝都を破壊していたバケガニが、寄生を上げながら自身のもとへと向かってきた。

 その時、チマは脳裏に、ある仮面の戦士の姿が浮かび上がったかと思うと、チマはまるで動かされるようにメンキョカイデンプレートを構え、想い人がよく口にしていたあの言葉を叫んだ。

 

「変身!」

 

 メンキョカイデンプレートをシノビドライバーにセットし、手裏剣を風車のように回転させた。

 

 

誰じゃ?俺じゃ!忍者!

 

シノォ~ビィッ!見参!!

 

 

 ドライバーから巻物が飛び出し、チマの背後で回転すると、背後で巨大な紫色の機械の蛙が現れ、その蛙の口が開くと、口の中からスーツと装甲が飛び出してチマの体に装着されると、チマの小柄な体躯が大きくなり、一瞬にして別の姿へと変身した。

 

 全身を紫の装甲に包み、太股にはクナイ、胸部には十字手裏剣の模様が描かれ、仮面には手裏剣を模したアンテナに黄色の複眼を持つ戦士──仮面ライダーシノビであった。

 

「忍びと書いて刃の心、仮面ライダーシノビ……いざ、参らん」

 

 姿を変えたチマは、自然と頭に思い浮かんだ言葉を口にすると、忍法の印を結んだ。

 

 

 




 というわけで、愛子&優花&勇者パーティーの同行決定と、新ヒロインの登場回でした。
 第七章はもう少し続きますので、新ヒロインの本格参戦はまだ少し先になります。

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