ウィザード「……ん。兎人族の未来のために決起したハウリア族。相手は惑星の破壊者仮面ライダーエボル。そして今、ハウリアとエボルの激闘に決着がつこうとしていた」
エグゼイド「ところで入間さん!私たちなんで変身して走りながらあらすじ紹介してるんですか!?」
ジオウ「こっちはこっちで、ファントムクラッシャーがなんか合体してすごい事になっちゃったからだよ!兎も角、第八章もいよいよクライマックスな第90話をどうぞ!」
時は遡る。
カム達を救出した入間達が岩石地帯に転移し、ハウリア族に“スラッシュアバドライザー”といった変身アイテムを渡した入間は、最後にカムを呼び、ゲーマドライバーを手渡した。
「このゲーマドライバーと、ハリケーンニンジャガシャットを使えば、君は仮面ライダー風魔になれる」
「ほぉ、陛下と同じように変身できるというわけですか……」
まじまじとゲーマドライバーとガシャットを見つめるカムの手からハリケーンニンジャガシャットを取り上げ、入間は言葉を続ける。
「……けど、この件にはエボルトが絡んでるなら、間違いなく君達ハウリアはエボルトと対峙することになる。このまま戦ったとしても……風魔じゃ勝てない」
「なッ!?」
ハッキリと勝てないと言われてカムは動揺するが、それは事実だ。
単純なスペックだけなら風魔はエボルを越えているが、惑星の破壊者であるエボルトと、兎人族のカムでは、変身者に隔絶した実力差がある。隠密を駆使しても、勝てる可能性は限りなく低い……というか不可能だ。
「なら、どうするんですか入間さん。やっぱり私達が戦うんですか?」
シアがそう尋ねる。カム達に勝てないのなら、エボルトを倒せるだけの力を持つ入間達バビルがやるしかない。だが、それでは結局入間達がハウリア族の後ろ楯ということになり、兎人族の問題は何一つとして変わらない。
だが、シアの考えに入間は首を振った。
「いや、裏技を使うよ。このまま戦っても勝てないなら、勝てる手段を練ればいい……まぁ、
入間の言葉にユエ達が総じて首をかしげていると、入間はインフィニットジオウウォッチを取り出した。
音声と共に金色のゲートが出現し、そこからレベル2とエグゼイドと瓜二つだが、全身が黒で、目の形状が若干異なる仮面ライダーが現れた。
見たことのない仮面ライダーの出現にユエ達が目を丸くし、そのライダーを知るアメリ、アスモデウス、クララは「何故こいつを呼んだ?」というような視線を入間に向けた。
「……黒いエグゼイド?」
「いや、彼は……」
入間がそのライダーの名前を口にしようとすると、召喚されたライダーはそれを制止するように手を前に出し、自ら名乗りを上げた。
「私は名前は仮面ライダーゲンム………“神”だァーーーーーーーッ!!ダアアアアアァァーーーッハハハハハハ!!ヴェアァハハハハハハハハァ!!!」
「「「「……は?」」」」
高笑いし始めた黒いエグゼイド──【仮面ライダーゲンム】に、ユエ達は目を丸くする。雫な愛子などは、ゲンムの笑い声に若干引いている様子だった。
入間も、久し振りとなるゲンムのノリに苦笑しながらも、本来ならば戦闘時にしか呼ばない仮面ライダーに声をかけた。
「それで、黎斗さん。貴方を呼んだのは……」
「檀黎斗という名はもう棄てた!!今の私は……
……真・檀黎斗神だァァァァーーーーーーーーーッ!!!!」
再び笑い始めたゲンム…【檀黎斗】に、一部の女性陣は完全に怯えてしまっている。入間も、アナザーオーズ以来となる檀黎斗のノリよりも遥かに悪化していそうな様子に若干引きつつも、ゲンムに話し掛ける。
「あの、黎斗さ」
「真・檀黎斗神だァッ!!!」
「真・黎斗さん!兎に角話を聞いてください!」
入間は、エボルブラックホールフォームライドウォッチを見せながらゲンムに頼み込む。
「エボルトを倒すために、このハリケーンニンジャガシャットにエボルトリガーの機能を停止させてエボルの能力を初期化する機能を付与して欲しいんです!エボルの力はここにあるから、これを解析すれば貴方の力で出きるはずです!」
ガシャコンブレイカーⅡを自作したのは手先が器用さで技能を追加しただけで、優花達に渡したガイアメモリ等のアイテムは【仮面ライダーアークゼロ】の“ビームエクイッパー”の能力で複製したものなのだが、流石にライドウォッチから能力を解析して対抗するためのプログラムを組む事は出来ない為、この手の事に尤も長けた能力を持つゲンムを呼び出したのだ。
……しかし、ゲンムにそれが出きることと、ゲンムがそれをおこなうかどうかは別問題だった。
「……確かに、私の神の才能をもってすれば、エボル攻略のプログラムなど容易い……だが、そのガシャットにプログラムする必要はない!何故ならァ……私こそが、ぁ唯一神だギャギャギャギャッ!ヴェァァーーーアァッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「………アイツ、バカなの?」
「あの人、なんな勇者(笑)とは違う意味で気持ち悪いですぅ」
「自分が神なんていう人は初めて会ったよぉ」
「人の狂気を見せられた気がするのじゃ」
ゾンビのようなポーズを決めて笑うゲンムに、ユエがポツリと呟いた。檀黎斗をよく知らない面々は、ユエの言葉に同意するように頷いている。
「黎斗さん!これはハウリアがどうにかしないといけないんです!」
「ダン・クロト!ここは大人しく力を貸せ!!」
入間やアメリがどうにか説得しようとするが、ゲンムは高笑いを続けるだけ。やはりゲンムに何かを頼むのは困難極まるのを実感し、どうすれば良いのかと入間達が頭を捻っていると、入間の隣からポツリと小声がした。
「…本当は出来ないんじゃないの?」
そう呟いたのは、バビルの新メンバー、チマだ。
その呟きは、高笑いをするゲンムにも聞こえたようで、ゲンムはピタリと動きを止め、ユラリとした動きでチマに積めよった。
「貴様ァ……神であるこの私に不可能などなぃわァッ!この無礼者がァッ!!!」
動かない仮面でありながらどんな表情を浮かべているのかハッキリとわかる。気持ちの悪い動きで顔を寄せるゲンムに内心引きつつ、チマは気丈に答える。
「……自分で自分を神とか、頭おかしいでしょ?貴方なんかより、イルマ先輩の方が千倍凄いです」
「クロケル……よく分かっているな」
「それは私が神の才能を持つ男だからだァッ!!貴様のような愚民には理解し得ない事だァァッ!!!!」
「それなら、証明してみてくれますか?このガシャットでエボルに勝てるようにすることで」
「良いだろう……ならば証明してやろうではないかァッ!!そして私の神の才能の前に平伏すがいいィッ!!ヴェアァハハハハハハハハァ!!!!!」
チマの手からハリケーンニンジャガシャットを奪い取ったゲンムは、クララが取り出したパソコンやその他諸々の機材の前で、高笑いしながらキーボードを打っている。仮面ライダーの姿なので余計にシュールな光景だ。
そんなゲンムの姿を見て、チマは入間にムギュッと抱きつき、「私、頑張りましたよ」というような目で入間を見上げている。
「チマちゃん……!」
「あのダン・クロトを掌の上で転がすとは……」
「凄い……!」
「………のですか?」
「……やっぱりバカなの?」
入間、アスモデウス、アメリ、愛子、ユエが口々に呟く。しかし、これで本来の目的であるゲンムに対エボル用のプログラムを作ってもらうことは出来たので、入間は後ろにいたカムに向き直った。
「…というわけで、あのガシャットを使えばエボルを弱体化させられる。あとは、君達の実力次第だよ」
「お任せください陛下。この深淵蠢動の闇狩鬼──カームバンティス・エルファライト・ローデリア・ハウリアの実力をお見せしましょう!!」
「「「「「……」」」」」
ここにも頭のネジが飛んだ人がいたよ…というように、入間は揃って無言になった。
メガバガミールの映し出した映像から、エボルがブラックホールフォームからコブラフォームに戻るのを見て、ジオウは
何故か脳裏に「不可能を可能にする……それが神の…才能だァァァーーーーーー!!!!」という声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
どのみち、それを気にする余裕はない。
ジオウ、ウィザード、エグゼイドは……絶賛逃走中なのだから。
「ひょわぁ~~!滅茶苦茶ですよあのデカブツ!!」
「…ん。何処だろうとお構い無し」
ファントムクラッシャーがハードガーディアンと合体した機械の怪物は、ジェット機の特性で空を飛び、ミサイルを乱射してくる。
ジオウが今纏っているキバエンペラーフォームアーマーは核爆弾が撃ち込まれても傷一つつかない無類の防御力を誇る鎧とはいえ、合体状態のファントムクラッシャーの質量から繰り出される攻撃は驚異であり、高速で空を飛びミサイルを乱射してくるファントムクラッシャーから逃げ回っていた。
「それなら……これ!」
ジオウはジオウトリニティウォッチを起動してジクウドライバーに装填すると、ユナイトリューザーを動かして、ドライバーを回転させる。
ジオウの元に、腕時計のような形に変形したウォズとツクヨミが飛来してジオウの装甲となると、ジオウは仮面ライダージオウトリニティへと変身する。
「ひれ伏せ!我こそは仮面ライダージオウトリニティ!大魔王であらせられるイルマ様とその親友、アスモデウス・アリス!ウァラク・クララ!三位一体となって、未来を創出する時の王者である!!」
「「……」」
その瞬間、ジオウトリニティのなかにいるウォズが声を張り上げる。エリセンでも一度見たが、やはり戦いにおいては無意味な行動に、ウィザードとエグゼイドは共に無言になる。
「アズアズ~。これ一々やるの?」
「黙っていろ、右肩」
「アタシ、右肩じゃないよ!」
「二人とも、喧嘩しないで!突然呼び出して悪いけど、やろう!ユエとシアも一緒にね!」
「…ん!任せて!」
「はいですぅ!」
一人で言い合いをするというシュールなやり取りをした後、話を無理矢理切り上げた
各々の戦場で激闘が繰り広げられるヘルシャー帝国。そんな阿鼻叫喚ともいうべき国の一際大きな建物の屋上で、一組の男女が佇んでいた。
「久し振りに来てみれば……随分賑やかだな」
「どうするのよ?」
マゼンタのトイカメラを首に下げた白髪の男の言葉に、その隣に立っていた女性が声をかける。
ユエと同じ金髪紅眼の美女をチラリと一瞥した男──門矢士は、懐から数枚のカードの束を取り出し、それを彼女に手渡した。
「これって……」
「あの白いのにこいつを渡しに行け、デモンサンド」
「デモンサンドじゃなくてデモンサンダーよ!いい加減ちゃんと呼んでくれない?」
「どっちでもいい」
「はぁ、相変わらず人使い荒いんだから……それに、これ渡しちゃって良いわけ?」
「俺にはコスプレの趣味はないんでな」
「バリアジャケットをコスプレっていうな!」
士の言葉にイラッとした美女──デモンサンダーは反論するが、彼の性格をある程度知っているため、ぶつぶつと文句を言うような事はせず、士の少し前に出ると、金色の三角形の物体を取り出した。
「バルディッシュ、セットアップ!」
その言葉と共に、デモンサンダーの服装は一瞬で白い軍服にマントを羽織ったツインテールの姿となり、三角形の器具は黒みがかった黄色の宝石を携えた機械的な斧となった。
姿を変えたデモンサンダーは、黒みがかった黄色の閃光となって、帝国のメインストリートに向かって飛び出していった。
メインストリートでガーディアンの軍勢と戦っていたG電王、エターナル、ゼインは、湯水の如くやって来るガーディアンの軍勢に苦戦していた。
「数が多い……!」
「もう、何体いんのよ……!」
「私も、あまりカードを使うわけには……」
ガーディアンやハードガーディアン一体ずつならば問題ないかも知れないが、些か数が多すぎる。ゼインは一度しか扱えないゼインカードを無闇に使うことが出来ず、攻めあぐねていた。
《Photon Lancer》
その時、聞き慣れない電子音と共に、槍のような光がガーディアンを貫いた。
爆発を起こすガーディアンを見て、ゼイン達はその槍が飛んできた方向に顔を向けると、そこには機械的な斧──バルディッシュを手にしたデモンサンダーが、漆黒のマントを風に靡かせながら佇んでいた。
「アンタは……!?」
「だ、誰ですか?」
彼女と対峙した事があるエターナルは目を見開き、彼女を知らないゼインとG電王が困惑し、ゼインが思わず彼女名前を尋ねると、デモンサンダーはダークディケイドライバーを装着し、ディケイドのカードを構えながら、ゼインの言葉に答えた。
「通りすがりの仮面ライダー……アイツの旅について行く者よ」
そう言いながら、デモンサンダーはダークディケイドライバーにライダーカードを装填する。
「変身!」
電子音と共に、無数の鏡像が重なりプレートが顔に突き刺さり、デモンサンダーは【仮面ライダーダークディケイド】へと変身すると、バルディッシュを鎌のような形状の“ハーケンフォーム”に変形させる。
変身と同時にガーディアンやハードガーディアンがダークディケイドを驚異と認識したように一斉に襲い掛かる。
「…はぁっ!!」
その瞬間、走り出したダークディケイドは漆黒の閃光となり、ガーディアン達の間を走り抜ける。そして、彼らの背後にその姿を現した瞬間、体に亀裂を入れられたガーディアン達は最初から示し合わせたように爆発を起こした。
「は、速い…!」
ゼイン達はその速度に眼を見開く。クロックアップには及ばないが、あの速度はどう見ても雫の“無拍子”を遥かに越えているだろう。
その時、残っていた全てのハードガーディアンの軍勢が一斉に集まりだし、深緑色の巨大な姿【ハードガーディアン(合体状態)】となり、その巨大な足でダークディケイドを踏み潰そうとする。
流石にこの巨体から繰り出される攻撃は防御力の低い自分にはひと溜まりもないと、ダークディケイドは高速移動を発動して走り出し、放たれる機銃やミサイルを避け続けていると、一定の距離を取る。
「面倒な……ならこれだ」
立ち止まったダークディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出し、それ。ダークディケイドライバーに装填する。
ダークディケイドの前後に蜘蛛の巣状のスナップビルダーが広がり、それに挟まれると、中心の空間が歪んで変身が完了する。
ブラッドスタークとビルドを合わせたような見た目。全体的に赤・黒の二色で塗装されており、脚等に真っ赤な毒が泡立っているかのような模様が見られる。顔と胸の前から見たクモのような意匠、肩や腰のクモの脚のような飾りが特長の戦士──【仮面ライダーキルバス】に変身する。
「…ハーケンセイバー!!」
キルバスはバルディッシュから三日月状のエネルギー刃を飛ばし、ハードガーディアン合体状態の右足を切り落とした。
片足を失ったハードガーディアンが民家を破壊しながら崩れ落ちると、キルバスはバルディッシュを地面に突き刺し、ファイナルアタックライドのカードを装填する。
電子音と共にキルバスは必殺技を発動し、ハードガーディアン合体状態の周囲を超高速で走り回りながら蜘蛛の糸を射出し、ハードガーディアンを蜘蛛の巣状になるように縛り上げる。
強靭な糸に絡め取られて動けなくなったハードガーディアン合体状態の前で動きを止めたキルバスは、背中から紅く巨大な四本の蜘蛛の鉤爪を展開する。
「はァッ!!」
四本の鉤爪がハードガーディアンに突き刺さり、さらに追い討ちをかけるように何度も突き刺さる。身動きが取れないハードガーディアンにはこの攻撃を避ける術はなく、機械の怪物は、破壊の蜘蛛の蹂躙劇の前に、呆気なく爆発四散した。
全てのガーディアンを破壊したことを確認したキルバスは地面に突き刺したバルディッシュを引き抜くと同時にダークディケイドの姿に戻った。
「あの数を、あんなに簡単に……」
「す、すごい……」
あれだけの数を一瞬で殲滅したダークディケイドに、ゼインやG電王が呟いた。口にこそ出さなかったが、エターナルも同じ気持ちだった。
その時、ダークディケイドはチラリとゼイン達の方に視線を向けると、ツカツカと此方に向けて歩き出す。エターナルはその様子にビクッと肩を震わせ、ゼインとG電王を守るように前に出てエターナルエッジを構える。
そして、エターナル達の前にやって来たダークディケイドは、エターナルを無視して、ゼインにあるものを差し出した。
「……はい」
「え?えっ?」
「…良いから、受け取って!」
「ひゃわっ!?」
差し出された物に困惑していたゼインだが、やがてダークディケイドが押し付けるようにそのカードを渡すと、ゼインは戸惑いながらそのカードを覗き込んだ。
「これ、ゼインカードですか?……でも、この絵柄……女の子……?」
それは、複数枚のゼインカードの束だった。しかし、そこに描かれているのは仮面ライダーではなく女の子の顔であり、一番上にあるカードには栗色のツインテールの少女の顔と「TAKAMACHI NANOHA」という名前が記載されていた。
「それを渡したら、私の役目は終わりよ。じゃあね」
ダークディケイドはそれだけ言うと、アタックライドのカードを装填し、エターナルが呼び止める暇もなく、その場から煙のように姿を消してしまった。
突然現れて消えたダークディケイドの存在にゼインやG電王はついていけずにオロオロしていると、メインストリートの方から大きな音が聞こえて振り替える。
そこには、メガバガミールが写している映像で、風魔がエボルを追い詰めている光景があった。
帝城の一室にいた惑星の破壊者──仮面ライダーエボルは、ウサミミの忍者集団──仮面ライダー風魔と量産型ライダー達と対峙するなかで、自分の身に起きた異変に困惑していた。
『何が、起きている……ッ!?』
仮面ライダーゲンムがガシャットに施した細工を知らないエボルは、何の脈絡もなく自身の力が弱体化したことに混乱していたが、その隙をついた風魔や忍者プレイヤーの斬撃を受け、地面を転がる。
『それなら……これだ!』
エボルはトランスチームガンとスチームブレードを召喚して立ち上がる。同時に、闇に隠れたハウリアが剣を手に襲い掛かり、四方八方から銃弾を飛ばしてくる。
強力な銃弾にハウリア達は吹き飛ばされ、斬りかかろうとした風魔はスチームブレードとトランスチームガンを連結させたライフルモードの銃口を腹部に突きつけられ、強力な紅いエネルギー弾を撃ち込まれた。
「ぐぁ……っ!」
『小細工したから、俺に勝てるとでも思ったのか?さぁ、お前を殺してゲームクリアといこうか……』
地面を転がる風魔に、エボルが現実を突きつけるようにそう言って、エボルドライバーのレバーを回転させる。確実にここで仕留めるつもりなのだろう。
「上等だ。返り討ちにしてやる……。
風魔はゲーマドライバーのレバーを閉じ、他とは形状の異なる黄金のガシャット──ハイパームテキガシャットを取り出し、ゲーマドライバーにセットした。
ゲーマドライバーを開くと、風魔の体が黄金の光に包まれた【無敵モード】に変身すると、風魔はハリケーンニンジャガシャットをキメワザスロットホルダーに装填した。
「これで終いだ!」
『上等だァッ!!』
風魔とエボルは同時に走り出し、足にエネルギーを溜める。数メートル手前で飛び上がり、空中でキックの体制を取り、衝突した。
無敵の光を纏う蹴りと、空間を破壊する蹴りがぶつかり合い、帝城全体を襲う程の衝撃波が巻き起こる。
『ぐぁあああああっ!!?』
やがて、風魔の蹴りが、エボルの蹴りを打ち破り、エボルは爆発を起こしながら吹き飛ばされ、地面を転がった。同時に、エボルが隠し持っていた10本のロストボトルが収められた黒いパンドラパネルが、地面に転がり落ちた。
『ロストボトルが……ッ!?』
エボルは直ぐ様パネルを拾おうとするが、その瞬間、闇の中から飛来した弾丸が、キャッスルロストボトルを弾き飛ばし、パネルから弾き飛ばした。同時に、宙に舞ったキャッスルボトルを、闇から飛び出した仮面の兵士がそれをキャッチした。
「へっ!」
「……フフッ」
ボトルを狙撃した者──パルが変身した仮面ライダーデモンズトルーパーαがガッツポーズし、ボトルをキャッチした者──ラナが変身した仮面ライダーアバドンがボトルを手にしながら再び闇の中に隠れた。
してやられた、とエボルが悟った時には、既にボトルを持ったアバドンの気配は何処かへと消えていた。
『……ウサギ風情が……ッ!』
惑星の破壊者である自分がいいようにやられた事に対する屈辱の声を漏らしながら、エボルは紅い光と共にその場から姿を消してしまった。
(恐ろしい、相手だったな……)
ハイパームテキの無敵モードが解除され、風魔は大の字になって寝っ転がりたい気持ちを押さえながら、ゲーマドライバーを閉じてガシャットを引き抜く。変身が解除され、ウサミミ忍者という忍ぶようで全く忍べていない姿に戻ったカムは、自身の前にやって来たバッタ型ロボット──“バッタカンドロイド”に気付いた。
そして、バッタカンドロイドは、見ている映像をメインストリートにいるメガバガミールに送るために、カムを見上げて目を光らせた。
ヘルシャー帝国で、ダークグリーンの機械の怪物──ファントムクラッシャー合体状態が、全身が『樹木』で出来た竜に体を縛られていた。
ファントムクラッシャーを縛っている竜は“
「カム達がやったみたいだね……皆、決めるよ!」
「ん!」
「はいですぅ!」
『勿論です!』
『やったるぞー!』
ジオウトリニティはトリニティウォッチのボタンを三回押し、ウィザードはウィザードリングをベルトにかざし、エグゼイドはガシャットをキメワザスロットホルダーに装填した。
ジオウ、ツクヨミ、ウォズの幻影を背後にしたジオウトリニティと、水流を纏わせたウィザード、グラフの上を滑るエグゼイドの蹴りがファントムクラッシャーに炸裂し、ファントムクラッシャーと無数のハードガーディアンは、断末魔のような爆発音を響かせながらその破片を四散させた。
着地したジオウトリニティ達は変身を解除する。
「さて、裏方作業part2だね」
入間はオーロラカーテンを発動させると、ユエ、シア、アスモデウス、クララを連れてオーロラを潜り抜け、ヘルシャー帝国のメインストリートに移動した。
そこには、既にガーディアンが全滅したことで変身を解除したリリアーナ、愛子、優花の姿があった。更に入間達が転移したと同時に、別の箇所でガーディアンを全滅させたアメリ、ミレディ、ティオ、チマが駆けてきた。
「鈴木君、実は……」
「すみませんが、それは後です。その前に……」
ゼインカードの束を手にした愛子が何かを言おうとするが、入間はそれを遮ると、リリアーナの襟首を掴み、手を伸ばした先に2つのオーロラカーテンを出現させた。
「す、鈴木君!?何を……」
「はい、いってらっしゃい!」
「ちょっ、待っ、せめて何をする気なのかの説明をぉ~~~!!」
入間がリリアーナを片方のオーロラカーテンに放り投げ、彼女の姿がオーロラの向こうに消えていくと、もう片方のオーロラカーテンが動き、そこから鬼の戦艦に放り込んだ光輝達が現れた。
「ここは……って、おい鈴げふっ!?」
「騒ぐな。ここからがクライマックスなのだから見届けろ」
突然転移したことに困惑していた光輝は、自分達を鬼の戦艦に放り込んだ入間に文句を言おうとするが、直前でアメリの拳骨をくらい地に沈むと、メガバガミールが映す映像の方に目を向けた。
メインストリートに避難し、その映像を目にしていたヘルシャー帝国の住民達は、メガバガミールが映していた怒涛の展開が起こりまくった映像に混乱していたが、やがて風魔が変身を解いて、皇帝が変身した紅い戦士を打ち倒したのが兎人族だということを知ると、誰も彼もが信じられないというような表情を浮かべた。
そして、変身を解いたカムは、入間が予め送り込んでおいたバッタカンドロイドに向き直ると、マスクで隠した口を開いた。
『ヘルシャー帝国に住まう諸君、我等は兎人族ハウリア。たった今、ヘルシャー帝国に敗北の歴史を刻んだ者だ』
カムのその言葉で、否が応にでも理解できてしまう。その事実は、人から言葉を、あるいは思考自体を奪うには十分過ぎる衝撃だった。
『この瞬間をもって、我等はこの帝国に君臨する者よりも強いことが証明された。そしてその後釜も、既に我等が始末した』
そう言って、ハウリアの数人が闇の中から現れ、松明の炎であるものを灯し、ガハルドの親族である皇女や皇太子の生首を露にすると、それを見た民衆は悲鳴を上げる。
作戦開始前に捕らえていた皇帝の親族は、既にハウリアの手によって殺されていたのだ。皇帝の血を根絶やしにし、それを民衆に突きつければ、よりショックは大きいだろうというサイコパスな考えだ。因みに、ガハルドの後釜であるバイアスは、エボルト以外にも帝城に潜り込んでいたワームの擬態であり、エボルのもとに駆けつける途中でハウリア達に刈られていたりする。
『我等が帝国に要求するものは四つだ。一つ、現奴隷の解放、二つ、樹海への不可侵・不干渉の確約、三つ、亜人族の奴隷化・迫害の禁止、四つ、その法定化と法の遵守だ』
その言葉を言い終えた瞬間、当然ながら帝都民達は猛反発の声が上がる。今まで身近にあって当然の如く便利な道具扱いしてきたものが一気になくなるのだ。しかも、今後、手に入れることも禁止されるというのだから、そんな声が上がるのも当然だった。
その瞬間、
「ぐぺっ!?」
「ひぎゅっ!?」
「ちばっ!?」
声を上げていた者達が、突如として額に穴を空けて噴水のように血を噴き出し、疾風のように跳び跳ねる影によって一瞬で首が体から分離した。
突如として目の前で起きた惨劇に悲鳴を上げたり絶句する帝都住民達。すると、ガーディアンの驚異から逃げるためにメインストリートに集まっていた彼らを囲うように、無数の忍者プレイヤーが現れた。
『反対することはお勧めしない。既に我等の同志が帝国全域に潜んでいる。貴様等が軍を整えてフェアベルゲンに侵攻するか、我等の刃が貴様等を根絶やしにするのが早いか、試してみるか?』
カムの言葉は、半分事実で半分嘘だ。
帝国全域に忍者プレイヤーが潜んでいることは事実だが、そもそも忍者プレイヤーはNPCであり、変身者がいない。自立行動する兵士でスペックも高いため、ある意味においてハウリアよりも質が悪いが。
しかし、実際に数百単位の忍者プレイヤーに民衆を囲わせる策は効果覿面であり、先ほどの光景を見せたこともあり、既に殆どの者が戦意を喪失していた。
『要求は以上だ。明日の朝までに、帝都にいる全ての奴隷は解放してもらう。一分でも遅れればどうなるか、想像に任せよう。さらばだ』
そう言って、メガバガミールは映像を終了させ、目にも止まらぬ速さで何処かへと走り去っていった。
民衆は大混乱だ。事態についていけず呆然としているものが殆どだが、何かの間違いだ亜人が生意気などと騒ぐ者が出てくる度に、忍者プレイヤーが一瞬にして首を刈り取るというホラーが起きていたりする光景を目にしていた騒動の立役者である入間に通信が入る。
──陛下。こちらアルファワン。全隊撤退します。数々のご助力、感謝のしようもありません
──シアのためだよ。それに、まだ全て終わったわけじゃない。まだシナリオはあるんだから。むしろ、これから先こそが本当の戦いだよ
──心得てます。元より、戦い続ける覚悟です。この道が、新生ハウリア族が歩むと決めた道ですから
覚悟と覇気に満ちたカムの言葉に、入間の口元が吊り上がる。そして、混じりけのない純粋な称賛を贈った。
──覚悟があるなら是非もない。全ハウリア族、見事だった!
自分達を導いた敬愛する王の賛辞に、全ハウリア族のウサミミがピンッ!と毛を逆立てながら真っ直ぐ伸びた。噛み締めるような間が一拍。
次の瞬間には、念話石を通して、盛大な雄叫びが上がった。
──オォオオオオオオオオオオオ!!!!
それは勝利の雄叫び。数百年の間、苦汁を舐め続けた敗北者の中の敗北者が、初めて巨大な敵に一矢報いた歓喜の叫びだ。
その夜、帝都は大騒ぎだった。
帝国の重鎮達が集められ、夜中にもかかわらず急遽開かれた緊急会議で、ハウリアの要求に対する話し合いが行われていた。重鎮の何人かは、亜人ごときの要求に耳を傾ける必要はないと嗤った瞬間……
会議室の明かりが数瞬消えて、再び明かりが戻った時には反対した男の部下の生首がテーブルに乗っているというホラーが発生。男は青褪めたままただ頷くしかなかった。他の重鎮達もガクブルと震えながらその後の話は実に迅速に纏まったようだ。
各所から被害報告を纏めつつ、亜人に対する法律を急ピッチで作成していく(草案はハウリア族の方で用意しておいた)。
そして、夜中の内に、ガーディアンやハウリア騒ぎで叩き起こされていた兵士達によって、個人所有の亜人奴隷達が、先の魔物騒ぎで更地となった場所に急遽立てられた無数の仮設テントへと案内されることになった。復興に駆り出されていた亜人奴隷達が収容されている建物のすぐ隣だ。
当然、猛反発が起きるに決まっている。特に、奴隷商会においては、商会が潰れるのと同義である。金銭的補償は後からなされるとはいえ、容易には納得できないことだ。
それでも、国からの命令である以上、最後は折れなければならないわけだが……あの手この手で時間を引き伸ばし、駄々を捏ねる者もそれなりにおり、そういう者は大体、翌朝に生首で見つかることになった。
そして約束の一日が過ぎた翌昼過ぎ、帝都中の亜人奴隷が一箇所に集められていた。帝都でも、奴隷の解放に反発するものが大多数だったのだが、その意思を見せた瞬間、虚空から現れた忍者プレイヤーが現れ、魔法も武器も一切効かずに四肢の一つを切り落とされるという仕打ちを受けては、誰も彼もが奴隷を差し出すしかなかった。
すると、集まる帝都民を前にして、帝国側からの発表がなされた。誓約の内容と、更に細かく定めた法の内容と、ある報告と決定だ。
「今日から、このヘルシャー帝国を治めることになります……リリアーナ・S・B・ハイリヒと申します」
勇者である光輝の生存発表と共にリリアーナが、帝国のトップに立つということだった。
実は、帝国の血筋を根絶やしにして、リリアーナを帝国のトップに立たせるというのは入間の策だったりする。
真面目な理由は、帝国の一族を根絶やしにしても、第二第三の皇帝が現れて同じことが起こることを予見していた入間は、ならば奴隷制度を敷かない人物を皇帝にすれば言いという策を思い付いていたのだ。
リリアーナもまた敬虔な聖教教会の信徒であったから、関わることは無かったとはいえ亜人族への差別意識は当然あった。しかし、その創世神エヒトの本性と狂気的な手口を知った今となっては、不思議なほど亜人族への差別意識がなくなっていた事を入間は見抜いていた為、王女として多少なりとも政治に関わっていた彼女に奴隷解放と法定化やらその他諸々を丸投げしようという考えだ。実力主義の帝国のやり方に関しても、今や仮面ライダーG電王となった彼女には、帝国でハウリア以外に敵うものは一人もいない。実際、会議の最中に自分が新たな皇帝になると言い出す輩が後を立たず、そこでハウリアが入間がオーロラカーテンで送り込んだリリアーナを立候補させ、皇帝を決める為の戦いで、G電王に変身したリリアーナが触れられることもなく立候補者を全滅させたのは入間達も印象に強く残っている。
不真面目な理由としては、本来ならばハイリヒ王国と共に滅ぼすつもりだったリリアーナが、なんやかんやで同行することになり、愛子や光輝達と違い入間の旅に同行する明確な理由もない彼女には、いっそのこと帝都の面倒事を全部押し付けてしまえと言う適当な考えによるものだったりする。
尤も、説明もされずに女帝になれなんて大役を背負わされ、意見も聞いてもらえずに候補戦に参加させられ勝ち抜いてしまったリリアーナは涙目だったが……。
数千人規模の奴隷達は、未だに何が起きているのか理解できない、理解できても信じられないと言った様子だ。ただ、呆然としたまま帝都の外に先導する光輝に従っている。帝都の外に出ても、何度も帝都を振り返り、これは帝国側の新たな遊びか何かでは、逃げ出した途端、酷い目に遭うのではと、戦々恐々としている。
そんな亜人達の度肝を抜く事態が発生。
空から、巨大な船が降りてきた。鬼の戦艦だ。
ポカンッと口を空けて硬直する彼等は、直後、甲板の上で元気に手を振る一人の兎人族の少女を見た。
彼女──シアは、凛と響く声で、亜人達が心の奥で期待していた言葉を叫んだ。
「みなさぁ~~ん!助けに来ましたよぉ!みんなでっ、お家にっ、フェアベルゲンにっ、帰りましょう~~~~!!」
癒された傷、背後の帝都、外れた枷、先導する勇者、未知の乗り物、そしてそんな乗り物の上で、迎えに来たと言う同族の少女。
現実が、あり得ないと諦めたはずの未来が、彼等の心に押し寄せた。
一泊。
──ワァアアアアアアアアアアッ!
大地を揺るがすほどの大歓声が上がった。誰もが涙を流し、隣の者同士抱き合って喜びを露にしている。
「……フフッ」
操縦室で、ディスプレイ越しにその光景を眺めていた入間は、薄く笑みを浮かべた。
そんな入間に、ミレディが思わず呟いた。
「……やっぱり、イルくんも良くんと同じなんだね」
「?」
振り返り、どう言うことだと訪ねる入間。
「いやさ、さっきのイルくんのくしゃっとした顔、どことなく良くんと似てたからさ~。やっぱりイルくんも良くんとねっこはおんなじなんだな~って」
「僕が、
そんなこと、入間は思ったことはない。
自分のエゴのために、人間だろうとなんだろうと刃を振り下ろすことを躊躇わない自分が、“人間の自由の為に戦う英雄”である彼等と同じと思ったことはない。なれる筈もないと、入間はとっくの昔に受け入れている。
だが、もしも本当に、入間がかつて憧れ、力を託してくれた英雄達と共通する部分が、自分にあるなら……
「………だといいね」
そう呟きながら、入間は亜人達を迎えるために鬼の戦艦の操縦に集中した。
さんな入間を、隣に立つユエだけでなく、アメリもチマも、ティオもミレディも、アスモデウスもクララも、愛子達も、何処か暖かい眼差しで見溜めるのだった。
・キャラクター紹介
デモンサンダー イメージCV.水樹奈々
【概要】
pixivにて執筆している『ガッチャし魔す!入間くんStrikerS』に登場するキャラクター。詳しい詳細はpixivの方を読んでくれると分かりやすいと思います。
使用しているダークディケイドライバーは、本作で59話から62話まで登場していたオリジナルハンドレッド、シンゲツが使用していたもの。
名前の元ネタは、『爆上戦隊ブンブンジャー劇場BOON!プロミスザ・サーキット』に登場するハシリヤン捕物隊長デイモンサンダーから。
第八章はこれで終了です。
次章はハルツィナ樹海編に入る前に少しだけ特別な回をしてから第九章に入ります。
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