レースの見学をした後、3人で昼食を取りに街の少し高級な個室のある食事処に来ていた。英美里は横で小さくなっている。
「それで、さっきの話なんだけど」
「はい」
「無理が来てる、っていうのは、この街そのものの経済的な問題かい?」
「いえ、それは全く。そもそもここは馬産関係の利益をほとんど出してないので、そこの心配は無いです」
「ならどうやって経営を?」
「ここを作った創始者がいるんですけど、その人が経営とか経済にとんでもなく秀でてたみたいで、その人の遺産とか権利関係で稼いでる金を法人が持ってて、そこから全部この街での競馬のための活動に回してるんです。それこそ、稼いだお金を全部趣味に費やすみたいな感じで。それを街の首脳陣で運用して増やしたりしてるので」
「それで、馬産を、っていやあの数だよ? レースに出るのなんて若いごく一部だよね?」
「その、俺も詳細までは把握してないというか教えてもらってないんですが、本当にとんでもないみたいで。というかこの街も、オレンジの地面が敷いてあるエリアは全部私有地扱いらしくて。街というか企業の研究施設と寮みたいな扱いです」
「牧場だけじゃなくて街も……」
「はい、なのでお金関係の心配ではないです。というかむしろ逆で」
「逆?」
自分でもうまく説明できない、というか説明の難しいことだし、下手をすると瀧さんに失礼な話になってしまう。慎重に話を選ばなければならない。
「ここでは、競馬に対して無制限にお金をかけられるんです。加えて、レースに勝たなければならないなんてしばりも無いので、本当にやりたいことが全部出来る感じで」
「にわかには信じられないけど、あんな他に知られてない競馬場であんなレースをしてるのを見ると、信じざるを得ないね」
「そういう状態なので、中央とかで利益を考えつつレースのことも考えつつとかで色々制限があるのと違って全力で研究に費やせてしまうんですよ。そのせいで調教技術とか馬の扱い方とかの研究が進みすぎてて、海外や中央と比べてもとんでもないレベルにあるんです」
「そこまでのものなのかい?」
「はい。失礼かもしれないですけど、本当に見てもらえたらわかると思います。これは俺が思ったとかじゃなくて、街の上層部でもそういう分析がされてます。それで、でもここの一番の目的は競馬の保護とか、衰退しそうになったときのバックアップとかなので、究めた技術を表に出せないんですね」
「うん、それがわからないんだけど、ここの牧場を残したまま技術とか情報だけ出すのは駄目なのかい? 例えば中央の厩舎に伝えてそこで鍛える馬に技術を使ってもらうとか」
「一応街の目的を考えたら、情報だけの発信はありなんです。ですけどまず伝える相手をどう選ぶのかってのもありますし、この街でこれまで積み上げたものをいきなり発信したら、今中央とか地方で頑張ってる人がこれまで積み上げてきたものはどうなるのか、とか、そもそもそういうのが受け入れられうるのか、とかいう問題もあります。メリットとか置いといて気持ち的に受け入れられないっていうのも考えられます」
「……そう言われると、たしかにそうかも知れないね。せっかくできる限りの調教をして送り出した馬が、知らない技術を持ってるポっとでの相手に負けると考えると……受け入れがたいね。その技術も事実も」
「はい。なのでいきなり出ていくってのは無理だって話になってて。それこそ10年以上かけてじっくりやっていくような話になるだろうっていう感じです。上層部もまだどうするべきか決めかねてる状態なので、ここで鍛えた馬は出せないっていうのが正直なところです」
結局そこに行き着くのだ。この街では、柵も何もなくひたすらに探求が出来る。でも外ではそうではない。それぞれに生活があってそれぞれの思いがあって利益があって色々色々何十年も積み上げて今がある。強すぎる風は破壊を呼ぶだけだ。かと言ってその風を溜め込み続ければこの街を蝕む。
「ん、それで無理っていうのは?」
「この街と牧場が作られた目的自体に無理があったんじゃないかって。多分創始者はそこまで読めなかったんでしょう。いつまでも裏でひたすら技術と研究結果を蓄積するだけっていうのは、確かに資金面では出来るんでしょうけど、やってる側の精神的にも良くないですし、ここ20年ぐらいでインターネットが一気に広がったせいでこの街でも外の情報収集が出来たり簡単に情報発信ができてしまったりするので、今まで通りに隠れているってのも無理です。若い子らの中には外に出ていきたいって子も多いし、せっかく技術があるんだから発信して名誉を得たいみたいな子も少しずつ出てきてて」
「ああ、そういうことか。つまりここも変わるときが来ていると」
「そうです。なので、ここの幼駒を連れて行くのはともかく、鍛えた馬を今すぐ中央に持ってくのは無理だっていうのを理解してもらえたら助かります。それに、血統じゃなくて鍛え方でレースを勝っちゃうと、今の配合理論の邪魔になるのでそれも危惧してます」
「ああ、そういう話だったね。うん、とりあえずそれについては理解したよ。もったいないなとは思うけど、競馬はたくさんの人と馬とお金が動く世界だからね」
ひとまず瀧さんが納得してくれたのでほっと息を吐く。せっかくだからとレースを見せたつもりだったのにそこからこういう話に繋がるとは思わなかった。
「それでですね」
「うん?」
「その関係とはまた別でむしろこの街本来の目的にもかかる話なんですけど、いずれ馬産関係者に馬送り出したいと思ってまして」
「というと?」
「今種牡馬ってほとんどサンデーサイレンス系じゃないですか。そろそろ血の飽和が起こる可能性があるってことで、まずはここのSSが一切入ってない繁殖牝馬を出すべきだって話になってるらしくて」
「へえ、それは面白いね」
「それに俺が馬主になれるってことで、どうせなら日本の古い血統の牡馬を中央で走らせて、あわよくば勝たせれないかと」
「そう言えばそういう話で来たんだよね。衝撃が大きくてすっかり忘れてたよ」
「なんかすいません」
「いやいや、この歳で知らない競馬の世界を知れるってのはありがたいよ。ちょっと刺激的すぎる気もするけどね。それで、その馬も見せてくれるのかい? 血統は?」
「後で是非見てください。1歳馬で今育成牧場に行っているのが1頭で、血統は、ヒカリデュールの直系です。母父はナリタタイシンですね。後は当歳馬でトウカイテイオーの直系が1頭、それとサニーブライアン、ナリタブライアンのブライアンズタイム系の直系、個人的にはブライアンズタイム系の中だとサニーブライアンの直系の子が良い気がしました。今のところ両方ブライアンズタイム系なので片方にしようかと思ってます。来年だとビワハヤヒデとマヤノトップガンの子も生まれるらしいんですけど、それはまた来年見るつもりです。後はオグリキャップとオペラオーの直系もいます。ただこの子らは前の子らより俺の琴線には触れてないんですけど、ここの調教師さんかららしたらむしろ馬体は良いらしくて。せっかくだし走る気がありそうなら走ってみてほしいなと。場合によっては地方から初めてもらってゆくゆくはって感じも考えてます」
「待って待って待って」
俺が買おうと思っている馬を語ると、瀧さんが慌てて止めてくる。
「市宮くん、君ロマンを追うタイプだったのか?」
「え?」
「いや、どう考えてもロマン血統ばっかりというか。確かにオグリキャップやナリタブライアンの直系なんて今中央走ったら話題になるだろうけど……言っちゃ悪いけど、走らないだろう?」
「ああ……オグリキャップとオペラオーの直系の方は後から見せてもらったのであれですけど、トウカイテイオーとブライアンズタイムの直系の子は俺が自分で見て他の仔馬よりなんか良いなって思った子らなんですよ。後から血統見てたまげたんですけど」
「何を見てなんか良いなってなったの?」
「いや、見たというか、なんていうんですかね。バスケットをしてて背筋が冷たくなる瞬間みたいなのがあって、例えば『あこいつ今日絶好調だな』とか『このまま行ったら止められるな』みたいな。それに似た感じの。勘、ですかね。直感? 馬体は幼駒に関してはまったく知識が無くて、なんとなくでもこの子いいなと思ったら買おうって思ってたので」
そう説明すると、瀧さんは呆れた表情になった。
「もしそれが本当に良い成績を残したとしたら……とんでもないことだよ。普通そんなに幼駒を見て速く走れるかなんてわからないんだ」
「まあまだ勘違いの可能性もありますけどね。でも、バスケットをやっててこういう感覚って結構大事だなと思ってるので。人間も動物なんだよなって感じです」
「……確かに僕たちも馬に乗っていてそういう感覚になることもあるけど、他のスポーツをやってたからっていうのは初めて聞いたよ。でもそういう目があるなら、セレクトセールには参加しないのかい? こう言ったらあれだけど、君のNBAでの年俸調べさせて貰ったけど、かなりお金はあるんだろう? もし馬の素質を見抜ける自信があるなら良血馬を見て素質を見抜くなんてこともやってみたら良いんじゃないか?」
そう尋ねられるが、競馬を始めるときに最初はここの零細血統の馬でやっていこうと決めていたのだ。
「はっきり言ってお金はあります。億を超える馬でも買えると思います。でもそういう馬って、中央の馬主さんだったり、今だとクラブでも購入されるでしょう?」
「まあ、そうだね。けど勝ちたいなら、そういう馬こそ見るべきだと思う」
「ああ、そこですね。俺、少なくとも今は競馬で勝ちたいと思ってないんです」
「え?」
驚く瀧さんに、自分の考えを説明していく。
「バスケットの話になるんですけど、俺、別にバスケットで有名な選手になりたいとか無かったんですよ。ただバスケットをしたくて、それも出来るところまで突き詰めたかった。そしてそれをするためには生活費+αのが必要で、稼ぐにも鍛えるにも良い環境がアメリカだったんです。だからアメリカに行って、NBAのスカウトに運良く見てもらえて。だから俺があそこまで行ったのは結果であって、根底はバスケットがしたい、だったんですよ。そりゃあ相手は強い方が自分もうまくなれるし楽しいし、優勝できたら嬉しかったですよ。でも一番根本は、ただバスケがしたかったんです。だから誰かが衣食住の世話を一生してくれるなら、1人でひたすらリングに向かって遊んでました」
「……それが馬主と関係ある、と?」
「ですね。俺にとって重要なのは、馬が勝ってくれることじゃなくて、レースを走ってくれることなんです。中央の馬って、多かれ少なかれ走らせてもらえるでしょう。良血なら特に欲しい人は多いはずですし当然レースにも出してもらえます。まあ色々試して貰えなかったりで本領を発揮できないまま引退するのはもったいないなと思いますけど。でもここの馬は違う。確かにこの街のレースには出れるでしょうけど、表舞台には誰かが引きずり出さないと出れない。だから、俺が引きずり出すんです」
そう伝えると、瀧さんは納得した表情を見せる。
「……確かに、セリで競られるような馬は、君が買わなくても走らせてもらえる、か。それはそのとおりだ」
「もともと、勝たせたい、より、表舞台で走ってる姿を見たい、だったので。そりゃあ、トウカイテイオーの直系の馬がトウカイテイオーを越えたり、あるいはトウカイテイオーの忘れ物を取っていったりするみたいなドラマは見てみたいですけど、でも、そんなことにならなくても、楽しく走ってる姿を見せてくれたら、って思います。オープンぐらいまで上がらないと注目してもらえないと思うので、上がってほしいですけどね。まあその前に走る気になってくれるか、っていうのもありますけど」
「……君、本当に馬が好きなんだね」
「そりゃあもう。この街で育った人で馬がキライな人はいませんよ。魂に刷り込まれてますから。後ですね。さっきロマン、って話しましたけど、俺、ロマンも好きなんですよ」
「あ、やっぱり? 流石に名馬の直系ばかりっていうのはそうだと思ったよ」
「いやまあここ今どきの血統の馬がいないので大抵何か名馬の直系にはなるっていうのもありますけどね。俺自身、バスケットじゃあ小柄ですし、とても活躍するとは思われてなかったところからここまで来ました。だからこそ、そういうやつが見返すのが好きです。だから、今どきの良血馬を引きちぎって古い血の馬が走ってくれたら、最高に楽しいなとも思ってます」
「ああ、そういう……たしかに、そういう夢を見る馬主さんもいるね」
「まあお金があるからこその遊びですよ。俺贅沢したいこととか本当に無くて、自分で焼いた目玉焼きをご飯に乗せて食べて満足できる人間なんです。欲しいものも、漫画とか小説は買いたいですけどグッズ欲は無いし、そんな馬鹿みたいにお金使う予定無いです。今の俺ならバスケットなんてどこででも出来ますしね。だから馬が勝ってくれなくても問題ないし、寿命で亡くなるまでの面倒は数が多すぎなければみれます。そのうちバスケットにも何らかの形で返したいですけど、まだどうするのが良いか思いついてないんで、今は本当に馬に使おう、って感じで」
元々、現役だったころもバスケに全てを費やしてたためにパーティーに参加したり贅沢をしたりといったことが一切無かった。アメリカでの自宅もセキュリティはしっかりしてたもの設備自体は最低限ですませていた。日本に戻ってからは実家住まいだし。
加えて色んな投資で金が増えたために、今俺はかなりどころではなく裕福なのだ。
「そこまで決めてるなら僕が何かを言うのは野暮だね。ああ、でも一応これも聞いておくけど、厩舎や騎手の予定はたってるのかい? もしないなら僕から紹介する事もできるけど」
「1頭目は、ちょっと事情があって……正直に言いますけど去年の段階で引退するつもりで種付けをしてもらってたので、現役続行になったせいで馬主申請する暇が無くなったんですよね。なのでとりあえずこの牧場の伝手で厩舎は決まりました。問題は当歳馬の方なんですけど、さっき言ったような血統の馬って預かってもらえると思います?」
そう尋ねると、瀧さんは難しげな表情をした。
「……大手厩舎は厳しいね。特に走るか怪しい零細血統の馬だと、長年の信頼があってようやく預かってもらえるかどうかってレベルになると思う。昔から馬主をしている人とかだと懇意の厩舎があったりする世界だからね。騎手も、有名どころは受けてくれないか、受けてくれても他の馬と被ったときには優先してもらえないかもしれない。そもそも初見の相手を信用しない人も多い世界だから」
「あまり大手じゃないところはどうですか?」
「それなら預かってくれるかもしれないけど、大手の方が経験が高いからノウハウもしっかりしてる。当然だけどね」
「そうですか。……個人的には、零細厩舎の方が良いかなと思ってます」
「……それは何故か聞いても?」
「血統と同じですね。自分が競馬をするなら、トップを走るんじゃなくて下支えをしたいと思ってたので。騎手もあまり大手の人には頼もうとは考えて無いです」
「……儲けや勝ちは考えてない、ってことかな」
「そういう面もありますね。この街で中学生まで過ごして競馬のことも勉強して、今あらためて競馬のことを調べても、そういうのも大事だなと思ったので。トップが頑張っても下がついていけないと、全体としてレベルアップは出来ないです」
「……さっきの話とか君の馬に対する思いなんかを聞くと、言いたいことはわかるんだけどね」
うーん、と考え込む瀧さん。厩舎を紹介してくれるといった手前何かしら俺にとって利益のある話をしようとしてくれているのかもしれない。というか、瀧さんほどの人だと、俺の馬に乗らなくても良いだろうし、勝ちの薄い馬を避けたいとは思わないのだろうか。
「後はそっちが良いっていうポジティブな理由もあります」
「ポジティブな理由?」
「はい。ネガティブ、というとあれですけど、あえて零細厩舎や騎手に馬を預けるというのは、たしかに俺にとって利益はないです。それこそ慈善事業みたいな面もある。ですけど、まずさっき言った通り俺はロマンが好きです。勝つべくして勝つよりは、弱者が下剋上をしたほうが見てて楽しい。それは厩舎や騎手も当てはまります。瀧さんには失礼かもしれないですけど、瀧さんや横川さんみたいな勝ってきたベテランよりは、勝てない中で続けてきたベテランや、若手に馬を預けて一緒に成長して、あわよくば初めてのG1制覇の馬主になりたい、なんて思います」
「僕はそれを聞いてどういう反応をすれば良いの?」
「すいません。後は、そういう厩舎や騎手の方が、俺の馬を見てもらえるかなと思ってます」
「というと?」
「極端な話ですけど、瀧さんに僕の馬の騎乗依頼をしても、それは年間何十頭何百頭乗る中の1頭でしかない、でしょう?」
「……そうだね。1頭1頭真剣に向き合ってる自負はある。でも、確かに1頭に割ける間は短くなるし、レースのときに初めて乗る馬もたくさんいるのは事実だね」
「それが悪いことだとは言いません。腕がいい人は当然です。でも、所有することを決めた以上は俺にとっては家族のつもりです。というかこの街だと、各家庭が馬を家族みたいに飼ってたり、幼駒に対しては厩務員や騎手が1対1で兄弟みたいに接したりします。そういうイメージが俺の中にどうしてもあるので、預けるなら、そういうふうに見てくれるところが良いな、と。少なくとも、馬の数より中央の馬房の数が大幅に少ない厩舎は無いです」
そう伝えると、瀧さんは納得したように頷いてくれた。
「そう言われると、何も言えないね。でも、うーん……厩舎探すの大変だよ? 血統がもう無いような馬だと、流石に僕でも紹介しづらいしなあ。せめて1歳になって馬体が素晴らしかったりしたら良いんだけど」
「そういうのって、JRAの人が手伝ってくれたりは無いんですか?」
「一応相談は出来ると思うけど……。どうなるかな。まあ相談してみないとわからないね。こう言うとあれだけど、市宮くんお金持ちだから、あ、一般論としてね? 年俸とか公開されてるのを見ても凄いから。JRAとしても逃したくは無いと思うんだよ。ちょっと失礼な表現かもしれないけど」
「ああ、言いたいことはわかります。馬主がいないと競馬が始まらないって話ですね」
「うん。でもその中で市宮くんが馬を全部この牧場から出すってなると、あっちの馬産にとっては美味しくない、ってことになっちゃうからなあ」
「そこも一応考えてはいるんですけど、なんとも」
一応この街以外の馬産にも貢献したいので、そっちの馬を買うことは考えてはいる。というか、この街は馬産で稼がなくてもやっていけるので、競馬という興行を考えるならここ以外の馬を買ったほうが良いのは当然だ。
「何か問題でもあるの?」
「いやあ、単純な話で、馬の数が増えたときに俺が全部を同じぐらい愛せるかっていう。今回5頭になるのも、1頭だけ特に惚れ込んでる子と他の子の差で悩んだくらいですし」
「ああ……まあ、そうだね。うん。馬そのものが好きで馬主を目指してる市宮くんにはそれが気になるか」
「一応案も考えてはいますけど……うまくいくかどうか」
「聞かせてもらっても?」
「まだおおよその妄想だけですけど。英美里、タブレット出してもらえる?」
「は、はい」
横でちびちびと食事をつまんでいた英美里が、肩をビクリと揺らした後タブレットを操作して渡してくれる。
「こんな感じです」
簡単にまとめたページを表示して、瀧さんに見せる。
「俺が愛せないのであれば、他の人に愛して貰えば良いんじゃないだろうか、って思いまして」
「なる、ほど……」
「ただこれかなり新しい試みになると思うし、今のクラブとかとも立ち位置的に揉めないかなと思って」
「お金は全部君が出す、と。大丈夫なの?」
「瀧さんだから話しますけど、仮想通貨とか株とか跳ねまくってて、後は投資した事業とかも凄い伸びてて、管理運用は友人に任せてるんですがすごい、どんどん増えてる状態で……。具体的な数字はあれですけど俺の総年俸の数倍まで膨れてると思ってもらえれば……。流石に全部競馬ではないですけど、それでもかなり出せるので、競馬ならではのそういう貢献もありなのかなと」
「ああ、それは、たしかに今までの話もわかるね。金銭的余裕のおかげで精神的に余裕がかなりあるのか」
「ですね。後はやっぱり贅沢したいって考えが無いので、そもそもそんなお金を使わない、っていうのもあって。かといって普通に馬主さんとか騎手とかに支援としてでもお金をばらまくみたいなのは興行として不健全ですし、なら出来るのは馬主として頑張るぐらいなのかなと」
「……すごく、面白い話だと思う。でも、既存の馬主やJRAがどう思うかはわからない。それこそJRAだったり大手馬主やクラブに聞きに行くべきだと思う」
「……やっぱりそうですか。ご存知かわからないんですけど、俺が現役の頃に人を雇って動画撮影と発信をして貰ってたんです。俺の近況とか練習の様子を、出せる限りは。そういうので興味を持ってもらったり親しみが増えればバスケの人気に繋がるかなと思って。実際多分それなりに効果はあったと思ってて。そういうのを競馬でも出来ないかなと思って考えてみたんですけど……」
「……市宮くん、本気で競馬盛り上げようとしてくれてるね?」
「当たり前じゃないですか。競馬に限らずですけど、色んな娯楽が盛り上がるのは大事だと思ってますし、その娯楽の中のスポーツの中でも競馬は俺の好きなものですから」
食事を終えても瀧さんとはそういう話でしばらく盛り上がって、瀧さんも色々と考えていてただ馬を調教し乗るだけではない、競馬を背負っているものとしての思いを感じられて嬉しかった。
【取り直し】 現在書いているアフターザライトが本作の馬主の方の主人公の第一世代の馬になり、それ以降の世代に何頭も馬が登場していくことになります。馬主の持ち馬は全て架空馬です。 そのアフターザライトのデビュー年を何年にするかをアンケート取ります。デビューは2歳なので、デビュー年の翌年のクラシック世代に割り込んでいきます(勝つかは未定)。これによって史実馬の勝鞍が変わります
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2歳で2014年デビュー
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2歳で2015年デビュー
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2歳で2016年デビュー
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2歳で2017年デビュー
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2歳で2018年デビュー
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2歳で2019年デビュー
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2歳で2020年デビュー