父父の名で帰ってきた   作:アママサ二次創作

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中津競馬場救済プランの余波。


第18話

 新馬戦のレースも終わり。問題なく勝利することが出来て、騎手さんからも調教師からも、そして後からねぎらいに来た馬主様にも褒めてもらえた。

 

 レースの振り返りとしてはそれなりに満足、だが鍛錬を怠るべからずといったところだ。レース自体には問題無く勝てたが、この時期のレースということもあるし、まだ周りの馬も成長はまだまだだったはずだ。そして6月というのは必然そういう時期なので、期待馬もほとんど出てこないと思う。有力馬、クラシックを取ると期待されているような馬のデビューはその後のレースも考えて9月10月になるんじゃないか、というのが俺の想像だ。

 

 そしてそんな中での今日のレース。危なげなく勝つことが出来たが、大きく引き離すことは出来なかった。自分自身まだまだ成長の余地があると思っているし、トレーニングを怠るつもりもない。だからこそ、これから。勝って兜の緒を締めよ。明日からもトレーニング頑張るぞぞい。

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「それじゃあテキ、ライトは外厩ですね?」

「幸いオーナーから許可も貰えたからな。高原で存分に食わせて動かして、ついでにトレーニングさせてって感じだあな。俺もできるだけ顔出すわ。ちゃんと見極めろよ。この時期の外厩は鍛えるんじゃなくて見極めるのが大事だからな」

「わかりました。しっかりやってきます」

 

 レースの翌日、眠ってかなり回復した俺の様子を見たガミーと調教助手が話していた言葉だ。ちなみに調教助手は加賀美とかいうガミーとダブる名前なので調教助手とそのまま呼んでいる。

 

『ブルルル(何、俺放牧? 外厩って言った?)』

 

 外厩、というと、近年、つまり俺が前世生きていた2020年以降には有名だった、トレセン外の調教施設だ。何か違いがあるのか、という話だが、栗東美浦の両トレセンというのは、言ってみればJRAの直属なわけである。そのため、馬房の数などもJRAが決めているし、レースの直前10日間は絶対に両トレセンで過ごすこと公平さを担保する、という決まりがあった。

 

 それに対して外厩というのは、言わば私的なトレーニング場だ。社台グループのノーザンファームだとかの大きな牧場が主に持っていて、そこで馬のトレーニングを行う。またトレセンほど数が詰まっていないので放牧場も兼ね備えてたり、人の俺が死ぬ頃は栗東美浦両トレセンより外厩の方が充実してる、なんて話が出ていた。

 

 他にも色々と外厩によって変わった競馬界のことはあるし利点もある。そんなところに俺が送ってもらえる、というのは行幸だ。

 

 んでも多分俺の生まれた牧場、社台とかの大手牧場じゃない気がするんだよな。それともそういうのの1つだったのだろうか。なんというか独特な牧場だった気がするんだけども。

 

「よーし、ライトー、急で悪いけどまた移動だぞー」

「テキ、直接移動させなかった理由はなんですか?」

「あ? そりゃあ回復具合を俺の目で見ときたかったからだ。こういうのは、人に任せたらずれるんだよ」

 

 そういうことらしい。まあ阪神競馬場と栗東だと近いもんな。一旦そっちに戻す、ってことにもなるか。

 

 その後ザッキーに綱をひかれた俺は、改めて馬運車に乗り込んで、はるばる九州までの長距離移動と洒落込むことになった。運転手さん、お疲れさまです。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「以前お伝えした通り、アフターザライトは九州の外厩で最低2ヶ月過ごさせます。レースの疲労を抜いた後は適度に運動をさせつつ広い牧場で放牧をしていきます」

『わかりました。報告ありがとうございます』

「その後のレースについては、様子を見つつまた相談させてください。私もライトの様子を見に行きますので」

『外厩が伸びる可能性はあるんですか?』

「その判断も様子を見ながら、としか。馬体が成長するといっても、この成長を続けるだけ止めたくない、という場合もあれば、これだけ成長すれば十分だ、となる場合もありますので。年末までのレースには出せるように整えていきたいと思っております。外厩は放牧とは違ってそのあたりのトレーニングで調整していくことも出来ますので」

 

 ライトが九州に向けて出発したのを見送った戸上は、改めて馬主の市宮に電話で報告をしていた。

 

『なるほど、わかりました。調教に関してはおまかせします』

「ありがとうございます。では」

『あ、すいませんが1つ』

「はい? なんでしょうか」

『外厩に行ってライトに会うことは出来ますか?』

 

 話が終わってからオーナーに切り出されてどきりとしたが、その内容に戸上は少し呆れたため息を飲み込む。このアフターザライトの馬主である市宮という人は、馬をしっかりと愛しているし、調教師のやり方にも文句を言わない、かなり良い馬主ではある。

 

 ただ、この馬に対する強すぎる愛情と、競馬を学ぶという情熱が少しばかり、聞かれる側としては鬱陶しくなってしまう。こちらもこちらで熱意はあるが、それは調教に向けるものであって人に教える熱意ではないのだ。

 

「可能です。うちの厩務員がライトに1人ついてますので、事前に連絡を貰えたら案内します」

『そうですか、ありがとうございます。ああ、それともう1件』

「……なんですかな?」

 

 深い深い溜め息をなんとか飲み込んだ戸上は、努めて冷静にそう切り出した。

 

『今の1歳世代の子たちをそろそろ育成牧場に入れるんですが、1頭預かっていただけないかと思いまして』

「来週の月曜日に伺わせていただきます」

 

 商売チャンスに飛びついてしまい、戸上の北海道行きが決まった。

 

 

 

******

 

 

 

 

はるばる半日以上かけて到着した九州だという外厩。生前は九州生まれだったもので、その夏場の半端ない暑さは馬の身には答えるだろうと思ったが、いざ馬運車を降りるとそんなこともなかった。

 

「意外と涼しいっすね」

「高原だからな。そういう場所じゃないと夏場の九州じゃあ馬が参るよ」

『ブルヒン(あー、風が気持ちいいんじゃあー)』

 

 一緒に来た調教助手とザッキーも驚いている。そう言えば、前世の部活の合宿で高地に行ったことがあったっけ。

 

 馬運車から降りるのは当然外厩の中。そしてその建物越しに、蒼天にそびえる山が見える。キレーだなおい。

 

 そしてそのまま綱をひかれて、馬房ではなく放牧場の方へと連れて行かれた。

 

『ブルル(ワーオ……)』

「すっげ……」

「いや凄いねここ。絶景かな」

 

 おそらく俺みたいに輸送されてきた馬を一旦入れておくためであろう小さな放牧場。その向こう側に、なだらかな坂の下に広がる広い牧場と、ところどころにある厩舎や畑がはるか向こうまで続いている。そしてそこで、複数の馬の群れが楽しそうに走り回ったり草を食んだり。

 

 高い位置からだからこそ見下ろせる風景。牧歌的な光景、というのだろうか。北海道、俺の生まれた牧場も広かったが、あっちはウレタンチップの舗装路など妙に近代化されていて。だがここの光景は、まさに自然の、大自然の中のように見えて。

 

 なんか好きだわ、と思う。うずうずして思わず体を揺すると、呆然としていた厩務員君が慌てて綱を引く。

 

「どうどう、いや、凄いっすねここ」

「すごいなあ。大自然、って感じだ」

 

 そんな話をする2人は、俺を放牧場に入れたあとしばらく、高台にあるらしい俺の放牧場のすぐ脇から、眼下に広がる雄大な風景を見下ろしていた。

【取り直し】   現在書いているアフターザライトが本作の馬主の方の主人公の第一世代の馬になり、それ以降の世代に何頭も馬が登場していくことになります。馬主の持ち馬は全て架空馬です。 そのアフターザライトのデビュー年を何年にするかをアンケート取ります。デビューは2歳なので、デビュー年の翌年のクラシック世代に割り込んでいきます(勝つかは未定)。これによって史実馬の勝鞍が変わります

  • 2歳で2014年デビュー
  • 2歳で2015年デビュー
  • 2歳で2016年デビュー
  • 2歳で2017年デビュー
  • 2歳で2018年デビュー
  • 2歳で2019年デビュー
  • 2歳で2020年デビュー
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