父父の名で帰ってきた   作:アママサ二次創作

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第7話

 不肖私、ライトは、馬主様から幼名ではなく競走馬としての名前をいただきました。

 

 改めまして、アフターザライト、『ヒカリの後に来るモノ』という名前をいただきまして。これからも良き競走馬となれるよう精進していく所存であります。

 

 いや、あの、血統的に走らない? まあ、そうですね……

 

 知るかボケェぇぇぇぇ!! 俺は走るぞ俺は!! SSの血がなんぼのもんじゃい!!

サラ系の血見せたるわーーーー!!!

 

 

 

******

 

 

 

 

『親父、今日もトレーニングしよう!』

『まだちびすけの癖に何を言うかあ!!』

『お父さん』

『はい! 頑張って教えます!! アイタッ! だから噛まないで!』

 

 先日、俺の馬主という人が来てから親父との関わり方が変化した。というか、親父がなんか人間の不器用な父親みたいで笑った。

 

 どうも親父が無口だったのは、俺との関わり方が分からない上に威厳のある父親になろうとしていたらしい。時折耳や尻尾が荒ぶっていたのは、話しかけたいけど話しかけたら威厳が、というジレンマに揺れていたとかなんとか。

 

 今となっては母さんの言葉に揺れて押し切られてまるでダメ親父みたいだ。

 

『と言ってもなあ。お前はまだ1歳になったばっかりだ、体ができあがってない。今運動しすぎると成長に影響が出る可能性があってだな』

 

 うんぬんかんぬん。ペラペラペラペラ口の回る親父は、馬というよりはまるで人の父親のようで。

 

 けれど以前聞いたときは、『ばーか、長い事この牧場にいると色んなことがわかるんだよ。ってかあいつら競走馬に普通に話しかけてくるんだぞ? 信じられなくね?』などという、いやその発言してる時点で馬じゃない視点だろうと言いたくなるような応えが返ってきた。

 

『ただ走るだけじゃ駄目なの?』

『ダメだね! 良いか、お前の足は、たくさんの筋肉がより集まって出来てるんだ。一つ大きいのがあるんじゃない、無数の細かいのがたくさん集まって出来てるわけだ。それをきっちり鍛え上げるには一方向の負荷じゃ駄目だ。あちこちから丁寧に丁寧に細かな負荷を繰り返しかけて、研ぎ上げられた鋼のような筋肉を作り上げるんだ。でっかい負荷はこれから育成牧場とかトレセンにいったら自然と調教でつく。だから今は、少しずつ刺激してサイズをデカくするんじゃなくて筋肉の質を向上させるんだ。豆腐を山程積んでも意味ないだろ? 一つ一つ鋼を積み上げる。そうやって高みを目指すんだ』

 

 話が長い。というかもうこれ絶対中に人間入ってて俺をからかってる。見てくれ母さんの顔を。『よく意味不明なこと言ってるわね』って顔してるぞ。

 

 とはいえ、親父の言うトレーニングは確かに適切なものだと思う。ゆっくり並走しつつ、とんだり、横にスライドしたり。足の歩幅を変えたり、地面に突き立てるようにしたり、あるいはひっかくようにしたり。

 

 かと思えば、今度は止まった状態から体を捻りながらジャンプジャンプ。着地の瞬間に体を捻って、足だけでなく胴にも負荷をかける。

 

「またやってる……」

「あれ、競走馬的には大丈夫なんですか?」

「むしろよそみたいにただ放牧するだけより遥かに良い」

「そうなんですか?」

「そもそも幼駒、育成牧場に行く前の放牧の目的に、適度な運動で体を作らせるってのがある。これは研究結果も出てて、この段階で運動してるやつとしてないやつだと、成長した後の骨の硬度とか筋肉や腱の発達に大きな差がある。けどよその牧場だと、調教も出来てない幼駒に意図的に運動をさせたりは出来ないだろ? その点こいつは父親が自然と教えてくれてる」

「他のここの馬は?」

「教える父親も稀にいるが、大体は人間が幼駒が生まれた段階から刷り込んで兄弟のように生活して、一緒に運動して教えていく感じだな」

「刷り込む、ってどんな感じで?」

「生まれたときから生活を一緒にするんだよ。寝る時間も起きてるときも側にいるし、飯も他の作業も馬の隣でやる」

 

 それはやりすぎでは? 

 

 学生君達とタクヤの話は結構ためになるので彼らが来たときは大抵耳を済ませているのだが、割と高い頻度で信じがたい内容の話をしてくる。俺自身人間だった頃に馬に詳しかったわけではないが、犬猫かと疑うような対応をしている気がする。

 

 人間の後ろについてくって何? 馬に芸でも仕込んでます?

 

「あ、ていうかライトの移動いつになったんですか?」

「4月の月末~」

「早くない?」

「方法の都合上、輸送した後に体調崩す可能性があるから早めになってる。それにここの牧場だとライトは他の幼駒との集団放牧出来ないから、そこも向こうでやらないと行けないし」

「え、集団放牧しないんですか」

「中央で走らせる以上はここのやり方に慣れさす他の馬と一緒には出来ないからな。地方に出す馬も毎年数頭いるかどうかだし、結構難しいところなのよ」

「普通って夏とか秋以降じゃないんですか?」

「セリで買われた馬とかだとそうだけど、まあ馬体の成長も早いし大丈夫だろってことで」

「日高ですか?」

「いや宮崎」

「「宮崎!?」」

 

 宮崎!? 俺宮崎まで行くの!? ていうか北海道以外に競走馬の牧場ってあったの!?

 

『おん、どした?』

『え、いや、なんかタクヤが俺の育成牧場宮崎だって』

『まーじぃ? 何があったの』

 

 親父も目を見開いて驚いている。ついでに尻尾もぴーんってなってる。感情表現豊だなおい。

 

「普通に日高じゃ駄目だったんですか?」

「ライトのオーナーが忙しくてさ。ほんとは日高の牧場にちゃんとアポとって厩舎もJRAと相談してってする予定だったんだけど」

「だけど?」

「1年現役が伸びたから馬主申請も含めてもろもろの手続きも出来なくて、こっちで伝手のある宮崎の牧場に送ることになった」

「……移動距離長すぎませんか?」

「ルートはある。乗りっぱなしも運転もきついのはわかってっから、途中何箇所か地方競馬の厩舎とか生産牧場で泊めてもらいつつ移動、ってな。ライトの体調も見つつだが、1週間じゃつかんだろな」

「ええ!? そんなことするの!?」

「九州の地方競馬にうちの馬送るときなんかもやってる方法だ」

「ええ……」

「船とかじゃ駄目なんですか? 後は飛行機も」

「馬の負担が一番軽いのが車なんだよ。つか国内だと船も飛行機も北海道から九州の馬の輸送はやってないよ」

「どれぐらいかかるんですか? 今回の輸送費」

「オーナー持ちで500万! まあ大変だからっていう手当がでかいから実際の費用自体はここまでじゃないんだが」

「NBA選手なら余裕で出せるか……」

 

『……大変そうだな、お前も』

『車に乗るってどうなの?』

『慣れれば気にならん。けど慣れんとうるさくてなあ。音楽流してもらうと楽しいぞ』

 

 親父も一応馬運車に乗った経験はあるらしい。何日も乗るのはちょっと大変そうだけど、幸い俺は元が人間なのでストレスというのはある程度軽減できるだろうと思う。

 

「というわけで、明日から登山に参加させることになった」

「登山?」

「ああ、あの山道坂路ですか?」

「なにそれ?」

「ここの調教見せてもらったときに見た。直線の坂路じゃなくて、あそこの山あるだろ? あれにこうぐねぐねと道が出来てて、それを歩いたり駆け足で馬が登ってた」

「そんなのあるんだ」

「知らんのかお前ら、あれうちのトレセンの目玉施設だぞ? ここの馬が血統の割にめちゃくちゃ走るのもあれのおかげも結構あるしな」

「そうなんですか?」

「馬の心肺機能が強化されるんだって。カブラヤオーとかテイエムオペラオーみたいに心肺機能おばけな馬をトレーニングで育てられるらしい」

「あれは上ブレだけどな。けど近いレベルなら割といくらしい。そもそも心肺機能ってのは有酸素運動で伸びるもんでな。調教で追って短時間走らせるよりは、のんびり坂登ったり降りたりしてたほうが足の負担にもならんし長時間の有酸素運動にもなる」

「プールはどうなんですか?」

「あれは良いな。けど人間と違って馬は顔を沈めないから人ほどの効果は期待出来ないのと、そもそも馬は泳ぐよりは歩いたり走ったりするほうが好きだ」

 

 プール。俺もいつかは行ってみたいと思っている。プールは全身運動つって負荷がでかいらしいし、浮力と抵抗があるので筋肉だけにきっちり負荷をかけれる。あとは体におもりつけて運動とかもしてみたいんだけど、それはもうちょっと成長してからなんだろうと我慢している。背中に人乗せるだけじゃなくて足とかにつけたら足振る力とか踏み込む力も鍛えられそうなんだけど。

 

『プール行きたいのか?』

『うん? うん、行きたい。トレーニングに良さそうだから』

 

 親父が話しかけてくるので、そっちに顔を向ける事無く応える。

 

『よし! なら行くか!』

『うん……え、なんて?』

『そーらついてこい息子よー!!』

 

 生返事をしてから思わず振り向いたが、すでに親父は柵に向かって突撃していた。

 

「ちょっとー!?」

「勢いよく脱走するなあいつ」

『何をやっている! 早く行くぞ息子よ!!』

『ええ……』

 

 学生君たちも俺より脱走グセのある親父に慣れたのかあまり慌ててないが、だからといって目の前で脱走して良い気もしない。

 

 でもプールも気になる。

 

 悩んだ結果、俺は親父について脱走することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 後でめっちゃ怒られた。




デビュー年は2014年、キタサンブラックと同じ年になりました。現状で同年にメジロの新星がデビューしてライトキタサンメジロの3頭で古馬中長距離を競う感じになりそうです。

また翌年以降に色々な有名馬の直系(産駒じゃなくて間に父を挟んでの爺孫の関係が大半)が出てきて色々な路線を走る予定です。無双にはならないように気をつけますが、G1の一つ2つ、あるいはG2複数などは取っていくと思うので、その世代の史実馬の勝ち鞍が減ることになります。

今のところ16話まで書き溜めてるんですが、どんどん出したほうが良いでしょうか。

【取り直し】   現在書いているアフターザライトが本作の馬主の方の主人公の第一世代の馬になり、それ以降の世代に何頭も馬が登場していくことになります。馬主の持ち馬は全て架空馬です。 そのアフターザライトのデビュー年を何年にするかをアンケート取ります。デビューは2歳なので、デビュー年の翌年のクラシック世代に割り込んでいきます(勝つかは未定)。これによって史実馬の勝鞍が変わります

  • 2歳で2014年デビュー
  • 2歳で2015年デビュー
  • 2歳で2016年デビュー
  • 2歳で2017年デビュー
  • 2歳で2018年デビュー
  • 2歳で2019年デビュー
  • 2歳で2020年デビュー
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