帰宅後、早速新聞作りに取り掛かった。
といっても、ペンもインクもない。
「どうしようかなぁ・・・」
「僕が書くよ!」
優はそういうと、目を閉じて念じはじめた。
すると、突然白紙だったはずの新聞に文字が現れた。
「えっ!?」
文はそれを見て驚愕の声を上げた。
それは古代の台湾において、妖怪が書き物をする時に使用した術であった。(民明書房<古代台湾における妖怪の伝承>より)
「そんな術どこで覚えたの?」
「人里の図書館にあった本を読んで勉強したんだよ。」
「へぇ~」
優は少し誇らしげだ。
「じゃあ、お願いできる?」
「任せて!」
優は自信満々に答えた。
優の書いた文章は読みやすいものだった。
漢字が多く使われているが、難しい表現などはなく、小さな子が書いたにしては良い出来だろう。
文はそれを記事としてまとめ、印刷することにした。
「優君。もうちょっと待っててくれる?」
「うん!いいよ!」
文は自分の作業机に向かい、原稿用紙を取り出し、鉛筆を手に取った。
そして、彼女はその作業を数時間続けた。
ようやく完成した時、優はすでに眠っており、文も疲れ切っていた。
「優君寝ちゃったか・・・。まあいいか。」
そう言って、文は優を抱え上げ、布団の中に入れた。「おやすみ。優君。」
翌日、二人は人里に向かった。
目的は優のための筆記用具を買うためである。
「こんにちは。」
「あら。射命丸さん。今日は弟さんも一緒なんですね。」
店員の女性はとても丁寧に応対してくれた。
「はい。」
「何か必要なものはありますか?」
「この子に合うものがあれば・・・」
「わかりました。」
数分後、商品を持って戻ってきた。
「これなんてどうかしら?」
それはボールペンであった。
「ありがとうございます。」
文は代金を支払い、店を出た。
「よかったね。優君。」
「うん!」
その後、文は様々な場所に優を連れて行った。
そのたびに優は楽しそうな笑顔を見せた。
数日後、射命丸家に一人の来客があった。
それは犬走椛である。
「文さーん。いますかー?」
「はいはい。今出ますよー」
文は玄関の戸を開けた。
「どうしたんですか?」
「いえ。大したことではないのですが、最近、弟さんを見ていないと思いまして・・・」
「ああ。あの子は元気ですよ。」
「なら良かったです。」
「心配してくれていたんですね。」
「はい。それにしても、本当にそっくりな兄弟ですね。」
「ふふん♪」
文は得意げに鼻息を出した。
「それでは、私はこれで失礼します。」
「あ。そうですか。わざわざどうも。」
「いいんですよ。また、機会がありましたらお邪魔させていただきます。」
「是非とも!」
文は笑顔で言った。