え?一年後にメス奴隷にされるんですか?   作:胡麻野すり子

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1話

 えっ? せっかく転生したのに一年後にメス奴隷として出荷されるんですか、私?

 そんなことを思ったのは数日前、母から回避不能の縁談を食らったときのことでした。

 

「マジで快楽堕ちバッドエンドだけはごめんですね……」

 

 春香る五車町を歩きながら、呟きます。

 落ち着いたやや低めの私の声は、誰にも拾われることなく、晴天に溶けました。

 

「名目上は、妻となれ、ですが……。

 やらせてることは……普通に人柱なんですよ……」

 

 困ったと頭を抱えながら、私は稲毛屋という甘味処に寄ります。

 それから私は、考え事のお供に、あるいは現実逃避の道連れに、アイスを一つ買いました。

 

 

 ――――『市蓮(いちはす) 結々楽(ゆゆら)

 それが私という人間の、今世での名前でした。

 

 今世、という言葉を使ったのは、私がいわゆる転生者だから。

 ちょっと死んでしまって、その後なんやかんやあって、私はこの世界に転生しました。

 そう―――この『対魔忍』の世界に。

 

 対魔忍アサギ、あるいは対魔忍シリーズとでも言いましょうか。

 感度3000倍やくノ一輪姦調教などで有名な、あの対魔忍です。

 

 そのことに気づいた瞬間はまぁ絶望しました。

 ついでに転生後の私の容姿が結構美少女だったので、追加でちょっと絶望しました。

 

 今の私の姿は、編み込んだミルクティー色のショートヘアに、白くきめ細かい綺麗な肌。

 きらきらと透き通るような紫色の瞳に、溢れそうな巨乳に大きくも形の整ったヒップという、魅力的なクール美少女そのものでした。

 

 容姿が優れていると、この世界の男やらオークやらに襲われそうで怖いんですよね……。

 いや、美少女に転生できたのはとても嬉しいのですが。

 

「……美少女も、穢されるために生きているのではありませんからね」

 

 垂れた棒アイスをつぅ、と舌でひと掬い。

 冷たい甘さを楽しみつつ、制服のスカートに視線を落とします。

 

 私は今年で五車学園高等部一年生。

 五つの時に自意識を得てから、随分と大きくなったものです。

 

「成長も、あまり嬉しいものではありませんね……。

 育たなければ……悪辣な政略結婚の人身御供にならずに済んだでしょうから」

 

 そう、私は今、結婚させられそうになっています。

 自分が望んだことではありません。

 家の取り決めというやつで、好きでもない男のモノになろうとしているのです。

 

 市蓮結々楽の生家、つまり私の生まれた市蓮家は、上忍の家系でした。

 もっとも、当主にして優秀な対魔忍であった父が死んでからは落ち目になっていますが。

 

「落ちたからこそ、他家との縁談なんて取り付けてきたのでしょうけど」

 

 市蓮家が滅亡を免れるために選んだのは政略結婚でした。

 その話を聞かされたのが、今から数日前。

 そして差し出されることになったのが、市蓮家現当主である私、市蓮結々楽です。

 

 まぁ、家のためだというのなら、非常に不服ではありますが、嫁ぐくらいはしてやってもいいかとは私も思っています。

 ついでに言えば、お相手が高収入高身長甲斐性バリバリのスパダリのイケメンだったらやぶさかではありませんでした。

 が、あいにくと私が嫁ぐのは家柄と血筋しかいいところのない、最低な類の男でした。

 

「相手方のお坊ちゃん、明らかに女の子を玩具と見ているんですよね……」

 

 正義の組織の対魔忍といえど、中にはろくでなしもいるもの。

 元々18禁だからでしょうかね。

 女性を犯し、虐げ、辱め、人間からメス奴隷に貶めるような、そういう対魔忍もいるようで。

 

 そして私の婚約者は、“ソレ”でした。

 任務先で遭遇した女性の魔族や敵対勢力の女性、はたまた自分が気に入った女性を、欲望のままに穢して弄んでいる。

 彼は、そういう男でした。

 

「嫁ごうものなら、私もぐちゃぐちゃに犯されて、性欲発散用の畜生女にされるのでしょうね」

 

 彼、身の回りの女の子を何人かそうしてましたしね。

 証拠は消してましたけど、配下の男と一緒に女の子をマワしてましたし。

 

「というか私も、物陰で襲われかけましたし……」

 

 どうにか切り抜けましたが、そのときは危なかったです。

 いきなり壁に押さえつけられて、胸やお尻を触られて……。

 とても不快で、怖い経験でした。

 

「嫁がされるまでの、この一年……。

 その間に、回避する手立てを見つけなければ……」

 

 なにもせずにいれば間違いなくロクなことになりません。

 まぁメス奴隷にされるかはまだ分からないので、最終的になんやかんやラブラブ夫婦とかになるやも……いやグロいですね。

 快楽堕ちして相手に屈服惚れ込みエンドはオカズにする分には好きですが、自分がやるのはマジで嫌です。

 

 そもそも、数多の女を食いつぶしてきた男に、自分だけは大切にされると考えるのは(大切されたいとも思いませんが)楽観的が過ぎるというもの。

 バッドエンドのフラグは立っている。その前提で考えるべきです。

 

(告発でもなんでもしてぶっ潰してあげたいですが……。

 如何せん、私は政治的立場が悪いですしね……)

 

 結局、私は政治的な力を持たない学生対魔忍です。

 なにを叫ぼうが、周囲の人間にもみ消されて終わり。

 

 最強の対魔忍であるアサギ校長先生に頼るのは手ですが、長である彼女がどれだけ早く動いてくれるかは不明ですし。

 というか、彼女がお家騒動にどこまで介入できるかも定かではありませんね。

 アサギ先生が全部を解決する前に、私は肉オナホになって死んでるというのもありえる話です。

 

「孤立無援、四面楚歌、形影相弔……。

 味方なし、未来なし、希望なし。転生特典だかでもらった()()()()()も役立たず、ですか」

 

 うーん、詰みです。

 アイスの最後の一欠片を噛み砕き、無情な現実にため息をつきます。

 

「私にあるのは、アタリのアイス棒くらいですか」

 

 これが吉兆ならいいのですがね。

 そんなことを思いながら、私はアイスの棒を洗おうとします。

 

「結々楽様」

 

 そのとき、背後から私を呼ぶ声が聞こえました。

 振り返れば、そこには対魔忍スーツに身を包んだ3人の男の姿。

 彼らは市蓮家の者たち……私の家に仕える者たちです。

 

「あぁ、うちの者ですか……どうしましたか?」

 

「婚約者様が結々楽様をお呼びでしたので、お伝えに参りました」

 

「……要件はなんでしたか?」

 

「逢瀬の誘いと仰っていました」

 

「…………ただのデートで済めばいいんですけど」

 

「私どもとしたら、早く既成事実でも作っていただきたいのですが。

 子を孕むくらい簡単でしょう」

 

「……畜生のように犯されてこいと?」

 

「それが結々楽様の役割かと」

 

「………………」

 

「あなたは我々のために頑張っていただけれなければならないのですから。

 いい加減、大人になっていただきたく思います」

 

 舐め腐った態度の家臣たちに出そうになった舌打ちを飲み込みます。

 今、目の前にいるこいつらは、私に仕えているふりをしているだけで、忠義などほんの少しも持ってはいません。

 こいつらはただ、保身のために私を犠牲にしようとしているだけです。

 

 私の周囲にいるのはこういった者ばかり。

 だからこそ、私は政略結婚という体で出荷されそうになっているのですが。

 

「デートの誘いは断っておいてください」

 

「駄々をこねるのはおやめいただきたい。

 あなたはただ、相手方のご機嫌取りを……」

 

「先にアサギ先生から任務の話をいただいています。

 この後、任務に赴くため、一緒にいる時間などないと伝えてください」

 

 そう言ってやると、家臣の男はなにか言いたげに口をもごもごとさせました。

 

「……婚約者のご機嫌取りと、対魔忍の総隊長のご機嫌取りなら、どちらが家にとって有益か、分かるでしょう?」

 

「……御意」

 

 忌々しげに吐き捨て、男たちは消えていきました。

 それを見送った後、私は改めてアイス棒を水で洗います。

 

「結婚……というかメス奴隷にされるまで、あと一年ですか」

 

 さて、どうしたものか。

 なにもしなければ私はこのまま玩具にされ、最終的には精液便所にでもなるでしょう。

 あぁ、飽きて捨てられオークの苗床になるというルートもありそうですね。

 調教され対魔忍性奴隷になって高値で売られる可能性もありですか。

 どの道バッドエンドには違いないですね。

 

「起死回生の一手は何処に……。

 ふむ……頼れる仲間でもいれば、変わりますかね」

 

 近頃話題のふうまくんもたくさんの仲間に支えられて頑張っていますし、私にもそういうのが必要なのでしょうか。

 とはいえ、仲間などそうそうできるものではありませんからね……。

 

「まぁ今は、目先の任務をこなしましょうか」

 

 アタリのアイス棒を制服のポケットにいれ、稲毛屋を後にします。

 今日はほんのちょっとでもいいことがありますように。

 なんてことを、私はちっちゃな棒切れに祈るのでした。

 

 

 




読んでくださりありがとうございます!
最近、対魔忍をはじめたので書いてみました!
よければ感想、評価などいただけますと嬉しいです!
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