HarryPotter 魔法省魔法法執行部公安局   作:Firebolt08

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12話 ドラゴン

<アメリカ合衆国魔法議会

国際魔法連盟主催安全保障会議>

 

「イギリスでの第一次魔法戦争が終わって以降、一時的な平穏は訪れたがここ最近で状況は一気に悪化している」

 

「それも直近の3年で急速にだ。日本での一件以来、各地に逃亡していた死喰い人も目立つ行動を取るようになった。先日にはルーマニアでのドラゴン盗難、由々しき事態だ」

 

「そしてそれがアメリカに潜伏している。例のあの人が消えて尚、この有様だ」

 

「極め付けはアズカバンからの脱獄…」

 

「シリウス・ブラックが逃亡中の死喰い人の旗頭にでもなれば事態は今よりも深刻になる」

 

「これを機会にディメンターを廃絶するようにしたら如何ですかな」

 

イギリス代表として出席したボーンズ部長代理は注がれる視線の居心地の悪さに顔を背けた。

 

議場の警護で話が聞こえてきたミケルセンとフランク・ロングボトムは渋い顔で口を開いた。

「踏んだり蹴ったりだな。分かってはいたが」

 

「仕方ないさ。言い方を悪くすれば今回の安全保障会議はイギリスを袋叩きにする為に集まったようなものだ。それに今回はダンブルドアも欠席している」

 

「学期も始まっているし、校長先生はホグワーツの警備強化で忙しいんだったな。ネビルが通っているから親としてはその方が安心だが」

 

「アルバスが会議に出る暇は無いだろうな。といっても実際はブラックそっちのけで校内へのディメンター侵入阻止に心血を注いでいるだろう。そして、それは正解といえる」

 

「司法部の対応も困ったものだよ。闇祓い局から警備派遣の申し出は突っぱねたというのに」

 

するとミケルセンはこめかみに手を当てて会話を中断した。

『局長、裏口から男が3人、入ってきました』

 

「マグル側だな?」

 

『はい。あっちの予定にも無いので念の為、報告しました。追跡しますか』

 

「いや…動かずその場で警戒を怠るな。こちらで対応する」

 

「何かあったのか」

フランクはミケルセンに尋ねた。

 

「今の段階では何とも。ただ確かめることが出来たからここは任せる」

 

「なるべく早く戻ってこい」

 

「あぁ」

ミケルセンが持ち場を離れてエレベーターで降りていってしばらくした時だった。かなり遠いが轟音が部屋に伝わる。

続いて耳に不快感を与える悍ましい咆哮が響き渡った。

 

「ドラゴンだ…」

 

誰かがそう呟いた次の瞬間に外壁が爆炎と一緒に吹き飛ぶと重厚感のあった一室は夜の空が見える開放的な空間に変わってしまった。場は阿鼻叫喚の嵐となり、逃げ惑う者と杖を掲げて立ち向かう者に分かれた。

 

会議に出席していた一部と傍聴していたアメリカ魔法議会の議長は杖を構えて前線に立とうとする前に闇祓いに囲まれて退避させられていた。

 

「ドラゴン襲来!!要人の退避を速やかに行う!」

 

「他職員は直ちに避難、マグルの記憶処理を最優先にアナウンスも急げ!」

 

一斉に警報が鳴り響く。マクーザの魔法漏洩脅威レベル計測器の針は完全に振り切れていた。

 

『緊急事態発生。ビル下層部の保護機構が確認されました。非戦闘員職員並びに来客された魔法使い・魔女の皆様は避難指示に従い、速やかに退避してください』

 

ビルは地面からありとあらゆる防衛呪文が何重にも張り巡らされていく。同時にエレベーターは避難する職員達を運ぶのに忙しそうに地上と地下を行ったり来たり忙しそうに稼働していた。

 

数分もしないうちに箒やセストラルに乗った魔法警察や闇祓いが一斉に外へ飛び出していく。

一斉にドラゴンへ失神呪文が放たれるが鱗が呪文を跳ね返し、赤い閃光は夜空へ消えていった。

ドラゴンはしばらくビルの下層部に爆炎を吐き散らかしていたが四方八方から大勢が近付いて来るのに気付くとビルへの攻撃をやめて火炎を辺りに撒き散らした。

 

「下がれ!!」

 

箒を思い切り、引いて丸焦げになるのはギリギリ回避したが箒の毛先が燃えだしてパニクった闇祓いの1人はバランスを崩して真っ逆さまに落ちていった。

そこに男が箒で急降下していく。自由落下していく闇祓いの襟を男がなんとか掴むと同じように駆けつけて来たセストラルの方に預けた。

 

ドラゴンはビルの周りを飛び回り、手当たり次第に暴れていた。空中で火炎と閃光が飛び交い、怒号と悲鳴が響き渡る。

 

「ドラゴン・キーパーはまだか!!」

 

「あと10分程度かかるそうです!」

 

「…それまで持たせるぞ!っち!避けろ!」

 

*  *  *

ビル内はけたたましい警報と非常ランプで騒がしくしていた。部下とフランクに上を任せて無線魔法を切ったミケルセンは早足で目的地に向かっていた。

 

議長室の近くでミケルセンは小走りで去っていく清掃員とすれ違った。帽子を深く被って会釈をしていく1人目をスルーしたミケルセンだったがワンテンポ遅れて服装がマグルのものだと気付くとすかさず2人目の頭を掴んで壁に叩き付けた。

 

「ゴハッ!!」

ずるずると壁を伝って床に倒れ込む男。先頭の1人は振り返ると腰から拳銃を抜いた。しかし、引き金を引く前にミケルセンの失神呪文に天井まで吹き飛ばされていた。そのまま床に叩きつけられる。胸部に受けた衝撃に体が悲鳴を上げていた男は呻き声を上げた。這ったまま、男は手から離れた銃を探っていたが顔を上げた時にはミケルセンにその銃を突きつけられていた。

 

「誰に雇われた」

眉間に銃口を当てたままミケルセンは尋ねた。男は口を開けず、弾丸の恐怖にだけ怯えていた。

 

「そうか…」

ミケルセンは人差し指をかけて…

目の前で銃をバラして弾を全て抜くと側頭部を蹴り付けた。男はそのまま床に蹲り、気を失っていた。

すると背後から頭を抑えながらも立ち上がったさっきの男がナイフを片手に飛び込んできたが流れるような武装解除呪文でナイフが手元を離れ、直後に壁の中に閉じ込められていた。

壁の中でもがく男を横目に議長室に近付いていくミケルセン。部屋の中から声が聞こえてくる。

 

「おい!もう行くぞ…」

「こんなんでいいのか?」

「いいんだ。これで椅子に座った瞬間にドカンよ」

 

バン!

扉を吹き飛ばすと中にいた死喰い人は一斉に振り返った。

 

「爆弾パーティーか?楽しそうだな」

 

「くそっ…!Avada Kedavra!!」

緑の閃光を避けてミケルセンは勢いよく部屋の壁を蹴ると距離を詰めて3人のうちひとりの顔面に膝を叩き込んだ。杖を上げた死喰い人だったがミケルセンが杖を振ると仮面の隙間が無くなって取れなくなり、直後に回し蹴りが腹部にめり込んでその場に伏した。

 

最後のひとりとなったラバラン・レストレンジは部屋の奥に後退るとギラついた目で手に抱えていた爆弾に自身の杖を向けた。

 

「近付くなミケルセン」

 

「やめろ…」

 

「我が君よ、永遠なれ」

 

「チッ…!!」ミケルセンは足元で気絶している死喰い人の胸ぐらを掴むと防衛呪文を球体のように自身の周りに纏わせながら部屋の外に飛び出した。部屋の方に盾の呪文を唱えると同時に議長室を中心に熱と衝撃が押し寄せた。

 

廊下の行き止まりまで吹き飛ばされたミケルセン。

血反吐を吐きながら立ち上がり、回収した死喰い人に息がある事を確かめるとその場に座り込んだ。胸ポケットに入れてた小瓶が割れて色取り取りの薬品が外にぶち撒けられる。ため息をつきながら目当ての薬を選り分け始めた。

 

*  *  *

 

「まさか…ドラゴンが陽動とは」

フランクは消し炭と化した議長室だった所を見渡しながら言った。

 

「奴らはマグル側と両方の入り口から侵入していた。マグル側に付けてた見張りもここの爆発のあとに何者かに意識を失わされていた。つまりは」

 

「誰かが逃げている」

 

「そうだ。議長室には緊急時の脱出用にマグル側に繋がる秘密の通路がある。そこから入ってそこから出ていったんだろう。ただ逃走したのか、何かを奪ったのか、議長室が跡形もなく吹き飛んでしまった以上は分からない」

通路があった部分は見事に塞がっていた。

 

「奴らが欲しがるものは…手っ取り早く回収できるのは書類だろうね。闇祓いの個人情報からあらゆる可能性がある。例のあの人関連からグリンデルバルドの残党に関するものまで」

 

「シリウス・ブラックの捜査資料。あるいは来年のクイディッチワールドカップの警備計画書とかだな……」

 

「残業の増えそうな話だ」

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