HarryPotter 魔法省魔法法執行部公安局 作:Firebolt08
3話 会議&隠れ穴
1992年8月
<魔法省 闇祓い局局長室>
魔法省の一室ではアルバスダンブルドア、ルーファススクリムジョール、スティーブンミケルセンが会議を行っていた。
「「「……………」」」
「はてさて困った事になったのう…」
「しかしダンブルドア。まさか1年逮捕を待ってくれと言うわけじゃないでしょうな」
「いやいや、ここまで確実な証拠を揃っている以上はこの男を教授として迎え入れる訳にもいくまいて」
「他に応募はいなかったんですか?」
「あったはあったのじゃが」
ゆったりとした所作で杖を振るとポンと書類が現れる。書類に目を通していくうちにスクリムジョールは眉間を指でつまみながら呆れ果て、ミケルセンはおでこに手を当てながら顔を伏せた。
「なるほど…ロックハートの方が遥かにマシだった訳ですな」
「出所したばかりの元死喰い人に、ドイツで指名手配されてる吸血鬼…あぁ体罰に汚職のダブルコンボでクビになったダームストラングの元教師ですか」
「イゴールから手紙が来ての。死喰い人とベクトルは違うが負けず劣らずのクズ男なので応募にあったら気を付けるようにとな」
「流石!元死喰い人のお言葉だけあって説得力がある。あのカルカロフがわざわざ貴方に手紙をよこしたんですからよほど酷いんでしょう。これならどこの森に潜んでいるんでしたかなトムリドルを採用した方が学びがあるでしょう」
「アルバニアの森じゃ。冗談としてはちとキツすぎるが正面から否定できる自信はないと言わざる得ないの」ダンブルドアは流石にそれはないとしつつ苦笑いを隠せなかった。
「そもそも去年にそのトムリドルが半分教授のような……」
「それを言われるのは耳が痛いの」
「ファッジ大臣も教師の人材不足を懸念されて省内で内々に応募をかけたとの事ですがこちらもアテが外れてまして筆頭候補はえードローレス…ジェ」
スクリムジョールは不愉快を隠す気のない表情で手を挙げて制した。ダンブルドアも苦笑いが若干引き攣っている。
「アンブリッジだと?それこそ例のあの人の方がマシだ。私が大臣ならまず最初にあの女をクビにする。変な後ろ盾が付く前にあの女をなんとかしないと後々厄介な…失礼。独り言が大きくなりすぎたようです」
「最近どうも歳での。ルーファスが何を言ったのかさっぱりわからん」
「しかし困りましたね。このままだと理事会が黙っていない。ルシウスがこれ幸いとあなたにクビを迫るでしょう」
「ルシウスは茶目っ気が強すぎるからの。十分にあり得る話じゃ。正に参った。お手上げじゃ」
「ミケルセン」
「何ですか局長」
「闇の魔術に対する防衛術の教授として1年間ホグワーツで教鞭を取りなさい」
「は?」
「君は臨時講師の期間、評判が良かったと聞いている。大臣には君からの申し出があったとして伝えておく。君が教授となればファッジ大臣を立役者としてそのまま彼の功績にもなる。それで構わないかダンブルドア」
「私の意思は?」
「スティーブンが勤めてくれるなら心強い限りじゃ。1年間よろしく頼むぞ」
「これを機会にしばらく休みなさい。授業がない日もホグワーツでゆっくりするといい。君の有休の消化率が悪いと苦情が来ていてね」
「いや休めないでしょう。魔法省に戻ってから色々と溜まっていた仕事もそうだし皺寄せもあったんですから。というか局長が大臣の護衛として日本に行ったはいいもののすぐに帰らず、観光してる間に後回しにされていた案件を片付けたのは私です」
するとスクリムジョールはあーそういえば忘れてたと杖を振ってお土産を取り出し、ダンブルドアに渡していた。京都の老舗で買ったという金平糖が詰まった大瓶にダンブルドアは大喜びしていた。
「1800年代から続いてる金平糖の専門店だそうだ」
「え?ちゃっかり京都まで行ったの?」
「何と!この店はドージと卒業旅行で行こうと思ってたとこだったんじゃよ。ドージがここのを送ってくれて以来、大ファンでの。ここ数年は買いに行く暇がなかったんじゃが。素晴らしいお土産じゃ。ありがとうルーファス」
「少なくとも1年の後任はどうされる。というか私へのお土産は?」
「キングズリーを公安局でも鍛えようと思っていてね。局長代理にするから心配しなくていい。早速、大臣に伝えてくるとしよう。失礼する」
「局長?スクリムジョール局長!おいルーファス!私にもお土産寄越せ!」
バタン
「フォッフォッ…それではホグワーツで会おうぞスティーブン」
ホクホク顔のダンブルドアは金平糖を大事そうに抱えると姿くらまししていった。魔法省内は姿くらましできないはずだがダンブルドアには関係ない。
「勘弁してくれ」
ガチャ
「さっきルーファスが…」
「ボーンズ部長。なんとかなりませんか」
「ならないわね。私になんの断りもなく大臣室に向かった彼には厳しく言わせてもらいますが。まぁ京漆器に和菓子までお土産を貰ったあとで少し言い辛いのだけど」
「全然、厳しく言う気ないですね。代わりに1年の間、キングズリーが局長代理を務めるそうです。今のうちに経験を積ませると」
「あらならそこは問題ないわね。ただルーファスは執行部の部長の座を狙っているのではないかと邪推してしまうわ」
「もし仮にそうなったら、あなたは魔法大臣になっているでしょうよ」
「聞かなかったことにします。それより例の件は進んでるかしら」
「とりあえず来週には落ち着くと思います」
「頼んだわよ」
* * *
ハリーはプリベッド通り4番地から隠れ穴への劇的な脱出を果たし、一夜が明けた。助けにきてくれたロンと双子がモリーに怒られている中、自分だけはお咎めなしの状況に有難いやら申し訳ない気持ちが混在していたがお皿に10本弱乗せられたソーセージに続いて目玉焼きが皿に盛られていくのを見て考えるのをやめた。久しぶりのまともな食事を食べられる。今はそれでいい。
パンを切ってバターまで塗ってくれたモリーにハリーが感動しているとみんなの視線が台所に映った。
ネグリジェ姿の赤毛の子が、あくびをしながら台所に現れたのだ。ハリーはキングズクロス駅で会った子だとすぐに思い出して控えめに手を振ったが挨拶する前にジニーは「キャッ」と小さな悲鳴をあげると階段を駆け上がって走り去ってしまった。
「ジニーだよね?」
ハリーが振っていた手をゆっくり降ろしながらロンに聞いた。
「そう妹だよ。夏休み中ずっと君の話ばっかりで僕も質問攻めにあった。あれ名前教えたことあったけ?」
「いやその去年、駅でロン達に声をかける前、名前を呼ばれていたのをたまたま聞いて覚えてたんだ。可愛い子だなと思って」
最後のひと言にロンはフォークを皿に落とし、フレッドとジョージは驚きとニヤニヤが混ざった顔を見合わせた。これは夏休みに新しいネタを手に入れたぜと言わんばかりだった。
「あぁハリー、君のサインを欲しがるぜ」
フレッドはどこから攻めようか長い目でワクワクしていた。
「ハリーの写真にサインしてチェキにしてもいいかもな。棺に入るまで大事にすると思うね」
ジョージが続けた。
「朝から何て不謹慎なんですか!ごめんなさいねハリー」
「ママ、今のは比喩表現だよ」
「関係ありません。余計なことを言うなら黙って食べなさい」
「はいママ」
「何だか疲れたよ」
それからは誰も喋らず、黙々と朝食を食べた。フレッドとジョージはもう少しからかいたかったが疲れもあって口を開く事はなかった。一方、ロンはハリーの妹を可愛いと言った発言を頭の中で反芻していた。それから今までハリーが他の女子にはそういう発言をしていないか思い出していたが気ほども思い当たらなかった。何故、自分が猛烈に心配になっているのかその時は分からなかったが朝食を食べ終える頃にはロンも深く考えるのをやめていた。皆、眠気に襲われていたのだ。
しかし、そんな願いはモリーの一喝で叶わないことになった。庭小人の駆除などたまったものじゃない。逆にハリーは興味深々でむしろ顔を輝かせていた。
すると髪を整えてとびっきり可愛いワンピースに着替えたジニーが恐る恐る台所に戻ってきた。モリーに小声でおはようと伝え、フレッドとジョージと視線を移してロンはほぼ素通りするとハリーと目が合ったジニーは口を開こうとしたがその場で固まっていた。
「おはようジニー。その…去年、駅で会ったんだけど覚えてる?僕ハリー。よろしくね」
自分から喋ることにしたがハリーだったが自分もどこか緊張していたのか今回に限ってはあまりに白々しい内容を述べてしまったと自省した。何故ならジニーは確実にハリーのことを覚えてるだろう。
一方、ジニーはハリーポッターが自分の事を覚えていた事実にフリーズしていた。目を見開くとさっきまでも頬に赤みが差していたがみるみる顔全体が真っ赤になってしまい、後退りすると顔を両手で覆いながらまた走り去ってしまった。ハリーとしては顔をしばらくガン見されてから逃げられたようなもので
「き…嫌われたかな」
と少し心配になっていた。
「それはないぜ。ハリーが自分のことを覚えてたのが嬉しすぎたの間違いだろうね」
「違いない」
フレッドとジョージは今からホグワーツに行くのが楽しみで仕方がなかった。
「ハリー、庭に案内するよ」
話題を変えるようにロンに促されたハリーはファンタジーの王道でもある小人への期待に胸を膨らませたがお世辞にもそれは可愛い存在ではなかった。駆除の仕方に可哀想と感じたが指を噛まれたところで情はなかった。駆除を進めていると家主が遅い帰宅をしたようで4人が戻った時にはソファに座り込んであからさまに疲れた様子だった。
「十数件の抜き打ち調査だったよ。その内5件は公安局と合同でね。違法薬物と魔法薬を掛け合わせた悍ましい代物を除けばあまり収穫はなかったよ」
「魔法薬?」
「危険なが最初に付くがそういうことだ。それとは別件だったがマンダンガスフレッチャーの奴め。私が背を向けた時に呪いをかけようとし…まぁスティーブンにどつかれていたが」
それから仕事の愚痴を聞き、息子達が車を飛ばした話を聞いて目を輝かせたアーサーだったがしっかりとモリーに諌められていた。ハリーとアーサーはお互いに挨拶するとハリーが浮遊呪文の一件を伝えた。
「それはおかしい話だね。そうだな…何日か君の杖を借りても大丈夫かな?直前呪文で検証すれば君が魔法を使っていない事は証明できるはずだ。私から話を通してみるよ」
「ありがとうございます!」
「いやいや、当然のことだよ。冤罪であればそれは取り消して謝るのが行政機関の果たすべき責務だ。ホグワーツの学期が始まるまでここでゆっくりしていくといい」
「はいお世話になります。あのこれが僕の杖です。よろしくお願いします」
「確かに預かったよ。あぁモリー、杖の空箱は残っていたかな」
「物置にあったと思いますよあなた」
モリーはハリーの大事なことなので一旦、矛を収めたが未だ怒りが鎮まった訳ではない。
「あぁもちろん、自分で取りに行く」
「当たり前です!」
「2人にやらせとけばいい」
ロンがハリーにそう囁くと部屋に招いた。2人で台所を抜け出して、階段を登っていくと半開きになっていたドアから明るい鳶色の目がハリーを見つめていた。
「あぁ閉められちゃった…ここはジニーの部屋?」
「そ。妹はいつもだったら家の中で喋り倒してるんだけど…」
部屋を案内されると色々な本やポスターに囲まれてハリーはロンの部屋に隠れ穴にも改めて感動した。
ホグワーツ以外で魔法界を堪能できるこの場所はハリーにとってリゾートホテルにも勝る。
1週間が経った頃、ジニーはめちゃくちゃ小さい声だったがハリーの挨拶を返すようになっていた。顔を合わせるたびにハリーが手を振ったり声をかけていたのでちょっとづづ慣れてきたらしい。それからホグワーツの手紙が届き、ダイアゴン横丁へ買い物に行く事となった。
誤字脱字や文法の間違い等ありましたらご容赦ください。