HarryPotter 魔法省魔法法執行部公安局   作:Firebolt08

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ネタバレ注意!原作改変や解釈違いなど苦手な要素ありましたら自衛するようにお願いします。感想を書いてくださった方、本当にありがとうございます!!


4話 逮捕騒動

<ダイアゴン横丁 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店>

 

ハリーはうんざりしていた。ハーマイオニーが“彼”に会えると黄色い声をあげていた時はこんな事になるとは思っていなかった。サイン会を開催していた人間にハリーポッターでは?と目をつけられたのが運の尽きである。よく分からん奴と肩を並べて写真を撮らされた挙句、よく分からん奴との写真が新聞の見出しになるなんて最悪だ。そして、よく分からん奴の本を無料で渡された所でお腹いっぱいだったがそのよく分からん奴がホグワーツの教授になると発表した所で限界だった。

 

酷い目にあったと上を向きながらその場を脱したハリーはなんとか気持ちを切り替え、貰った本はジニーにあげようと思いついた。

 

「これ、あげる」

そう言って本の山をジニーの鍋に入れていった。

 

「僕のは自分で買うから…」

 

「あっその………ありg」

ジニーが勇気を振り絞って顔の熱を無視しながら懸命に言おうとしたお礼の言葉はフォイによってフォイされてしまった。フォイは彼女にとって極めて不愉快な人物となった。25年後にハリーとマルフォイは共にキッチンをめちゃくちゃにするやもしれないのであながち間違いではない。

 

「いい気分だったろうねぇ、ポッター?」

 

ハリーはその声を聞いて憂さ晴らしをする事に決めた。

「最高の気分だよマルフォイ。よかったら代わってあげたいぐらいにはね」

 

一瞬、押し黙ったマルフォイだったがすぐに立て直した。

「有名人のハリーポッター。書店に顔を出すだけで一面大見出し記事かい?」

 

「ほっといてよ。ハリーが望んだ事じゃないわ」

ジニーが強い口調で返す。マルフォイをはっきりと睨みつけている。私の恋路を邪魔するんじゃねぇ!である。

 

「ポッター!ガールフレンドができてるじゃないか!」

マルフォイは驚いたとねちっこく言った。ジニーは途端に顔が真っ赤になった。

 

「こんなに可愛い子が彼女だなんて光栄だよマルフォイ。そんなに羨ましいなら君もあー、パンジーパーキンソン辺りとでも出かけたらどうだい。花でも見に行くといい。あとジニーの名誉の為に言っておくけど彼女じゃないよ」

 

ハリーが満面の笑みでそう返すとジニーはもっと真っ赤になってしまった。たちまち俯いてハリーの服の袖を掴みながら影に隠れる。すると会話が聞こえていたロンが戻ってきてハリーに加勢した。ハーマイオニーは参戦せずにジニーを心配して大丈夫?と後ろで声をかけていた。

 

「そりゃいいや。お互いの頭の中を見せ合うんだ。一面の花畑が広がっているだろうね。あと妹はハリーの彼女じゃない」

 

「なんだと…!」

 

「これこれドラコ、失礼をするでない」

 

「ですが父上…!」

途端にマルフォイ子は口を噤んだ。マルフォイ父の穏やかながら息子を諌める冷ややかな眼差しに。

 

「これはハリーポッター。イギリス魔法界の英雄様だ。お会いできて光栄の極み。ドラコの父のルシウスマルフォイです。以後、お見知り置きを。ポッター君」

 

ルシウスが手袋を外して手を差し出す。ハリーは警戒しながらもそれに応じた。

握手しながらハリーは返す。

 

「よろしくお願いしますマルフォイさん。息子さんにはいつもお世話になってますよ」

 

「そのようですな。しかし私に言わせれば…おっとこれこれはアーサーウィーズリー」

 

「ルシウス」

 

それから魔法省のいち局長と純血貴族の筆頭は簡単な舌戦を繰り広げた後、原始的な方法で決着を付ける事にしたようだった。アーサーとルシウスが書店で取っ組み合いの喧嘩を始めていた所に闇祓い数名が近付いていた。

 

年老いてるとはいえない、初老なのか意外と若いのか判断の難しい風貌の男はスーツにコートを纏っていた。グレンジャー夫妻は映画に出てくる昔のアメリカマフィアがそのまま出てきたと思った。

 

「これはこれはアーサーにルシウス。相変わらず仲の宜しいことで」

 

「スティーブン…!いや違うんだこれは」

ミケルセンに気付いたアーサーは怒りとは別な思いで顔を赤くすると急いで立ち上がった。

 

「何が違うんだ?おっとそう急がなくてもいいだろうルシウス」

 

掴んでいた古本をジニーの大鍋に戻したルシウスはそそくさと息子を連れてその場からトンズラしようとしていたが足を止め、心底嫌だという顔を頑張って、しまいながら振り向くと微笑を貼り付けてどうせなら疑問を解消しようと口を開いた。

 

「失敬、気付かなかったのだよスティーブン。生憎この後用事が詰まってたものでね…して栄えある執行部公安局のミケルセン局長殿と御一行がなぜここに」

 

「書店に用があってな。丁度サイン会が開かれているだろう」

 

「ですな。だがまさか彼のサインを貰いに来たわけではないだろう」

 

「いやそのまさかだ」

 

「スティーブンがその…ファンだとは知らなかったよ。うちのモリーが彼にすっかり熱をあげていてね。あぁ申し訳ないアレックス」

 

部下の1人がアーサーの破れたローブを杖で治していた。ルシウスは丁重かつ冷たく断り、自分でやっていた。

 

「いや実はアーサー。部下も私も彼の大ファンでね。ハマったのはここ最近なんだが…午前出勤を終えてここまで足を運んだんだよ」

 

そう恥ずかしげもなく答えるとミケルセンは部下と書店へと足を踏み入れ、列に並ぶことなくギルデロイロックハートの座る机へと進んでいった。ミケルセンは後ろの部下と思わしき人から紙を受け取って、確認を取ると紙を部下に返した。

 

「ちょっと!列はこっちよ!最後尾はあっt…」

両手いっぱいに本を抱えたご婦人は最初こそ怒りを露わにしたもののどう考えてもファンではないことを悟ると口を閉じていた。

 

ハリーにウィズリー家は勿論、ルシウスまでもが訝しみながら様子を伺っている。ハーマイオニーはどこか不穏な気配を感じ取っていた。ドラコは1人で書店の奥まで入っていった。

 

「すいません。ちょっと急ぎなもので申し訳ないのですがこちらにサインを頂けますか」ミケルセンがサインを書いてるロックハートに話しかけた。

 

「おや…!列に並んでいただきたい所ですが男性のファンは少ないですからお急ぎというならこんk…いは…トクbっ!」

 

列を割って声をかけられたと思ったロックハートは強引な男性ファンが来たと途中だったサインを書き終えて顔をあげて応じたがその姿が目に見えると先程までのチャーミングな笑顔が一瞬で消えた。ロックハートは逮捕状を一瞥すると机に足をぶつけながら立ち上がり、苦しすぎる愛想笑いを浮かべて杖を抜いた。ミケルセンは杖を抜かなかった。ロックハートは今しかない!と姿くらましをしようとした。彼の姿が渦を巻くように消えていく。

 

そこにミケルセンが回すように手をかざして手を閉じると姿くらまし特有の渦が消えずにロックハートは巻き戻されるように元に戻ってしまい、逃走を阻まれた。杖を振ろうとしたロックハートだったが杖はすぐに武装解除され、ひとりでにミケルセンの左手に収まった。そのまま杖を抜かずに、手をかざして腕を下ろすとロックハートは膝を突かされて両手を背中に固定されていた。ハリーは杖なしで制圧する姿を見てダドリーが見てた映画を盗み見た時のスターでウォーズするジェダイみたいだと思った。

 

「ギルデロイロックハート。魔法使用による重過失傷害及び、詐欺の疑いで逮捕状が出ている。並びに公務執行妨害の現行犯でご同行願おう」ミケルセンは淡々と告げる。

 

「くっ…わっ私を逮捕するのか?この私を!」

ロックハートは悟ったように、しかし諦めきれないと声を張り上げた。

 

「サインは後でゆっくりたっぷりと書いて頂くとしよう。連れて行け」

 

ミケルセンの後ろに控えていた部下がロックハートを囲むと書店から連れ出し、すぐに姿くらまししてしまった。静寂が訪れた。カメラマンの現場を納めようとシャッターを切る音だけが書店に響く。しかし、それは一瞬だった。

 

「「「「「ちょっとどういうことよーーーー!!??」」」」」

 

「あぁしまった…」

ミケルセンが絶望した表情でこぼした。

 

書店はご婦人達の叫びによって阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。列に並んでいた魔女達はミケルセンを壁に追い詰めながら抗議と困惑の叫びをあげていた。

 

「パパこれまずいんじゃないか」パーシーは冷静に父に告げる。

 

「さっきのはそういうことか…止めてくる。あールシウス」

 

「アーサー、まさか私が手伝うとでも?まっぴらごめんだ」

 

「頼みたくはなかったが……息子が巻き込まれてるぞ」

 

ご婦人達の波に現場を近くで見ようと近付いていたドラコはもみくちゃにされていた。フレッドとジョージは騒ぎを煽てようと近くに寄ったが潰されそうなドラコに気付くと笑いを堪えるのに必死になっていた。ハリーとロンはあまりの展開に惚けていたがドラコが目に入ると段々と笑いが込み上げ、口角は苦笑いも相まって上がっていた。罪状をはっきりと聞いてしまったハーマイオニーとモリーは本の表紙に燦然と輝くロックハートの写真を呆然としながら見つめていた。グレンジャー夫妻は何が起きたのかさっぱり分からなかった。

 

*  *  *

 

「それで?書店の時より詳しいご説明をして頂けるんでしょうな」ため息をついたルシウスが口を開いた。何故かグレンジャー家、ウィーズリ一家、マルフォイ親子にハリーにミケルセンというメンツで漏れ鍋でテーブルを囲っていた。

 

アーサーやルシウスは髪が少し乱れており、ミケルセンは引っ張られたせいかコートがところどころ破けており、心底疲れたという顔でそれを杖で治している。

 

ドラコはミケルセンが子供達にと渡してくれたバタービールのジョッキを顔から離さず、恥ずかしさでそのまま顔を突っ込みそうな勢いであった。ハリーやロン、フレジョにジニーはデザートもご馳走してもらって嬉しそうにそれを頬張っている。ハーマイオニーとパーシーは申し訳なさそうに飲み物だけを頂いていた。モリーはまだ表紙を見つめている。

 

「ルシウス。いちばん酷い目にあったのはスティーブンだろう」

 

「貴様は黙っていろアーサー。こっちは息子が死ぬ所だったんだ!」

 

その言葉にフレッドとジョージは吹き出しかけ、ハリーは咳き込んでしまい、ロン達も口元を隠しながら顔を背けた。ドラコは完全に机に突っ伏してしまっている。

 

「息子を巻き込んでしまって申し訳なかったルシウス。彼はあれでも逃げ足の早い奴でね。あの場で今日、逮捕する必要があったんだ」

 

「確か…本人がホグワーツの防衛術の教授に就任したとか言っていたな」

 

「理事会で名前は既に聞いていた。私個人としても理事会としてもできれば認めたくない人選だったが他にいなかった故、何も言わなかったが」

 

「そう、自治権の認められているホグワーツの教授にロックハートは内定していた。正式に採用され、ホグワーツの教授に就任してからでは極めて面倒な手続きを重ねる必要が出てくる。本来、省庁による教育機関への介入はあってはならないからな。いわゆる不逮捕特権が付く前に解決しなければならなかった」

 

「かなり物騒な罪状だったが彼は何をしたんだ」アーサーは重い罪状に真相が気になっていた。

 

「これだ」ミケルセンは机に重ねられているロックハートの自伝を一冊取ってみせた。

 

「まさかその自伝が闇の品だったとでもいうのかね」ルシウスは不機嫌たっぷりに尋ねた。

 

「それはある意味正解といえる。これらの自伝にあった出来事は全てが創作ではなく、大筋は実際に起きた出来事だ。だがそれを成し遂げた人物は違う。奴は他人の武勇伝を文字通り自分のものにしていた。しかも話を聞いた後にその人物から記憶を全て奪ってな」

 

これには全員が差異あれどショックを受けた。ハーマイオニーはがっくりしており、娘からすごい人がいると話を聞いていたグレンジャー夫妻は娘を慰めながら魔法界の汚い部分を見てしまい、複雑な気持ちになっていた。ハリーはさっきジニーにあげた本が汚い手で生み出された詐欺本だと知り、気持ちが下がっていた。モリーの手からロックハートの本が離れ、床に落ちる。アーサーがそれを拾い、妻に声をかけるがモリーは返事をしなかった。

 

「なるほどなるほど…それでどうやって証拠を揃えたのかは聞いても構わないのかな」ルシウスはどこか機嫌が良くなっていた。

 

「ざっくりなら。簡単にまとめればその出来事とロックハートに関する記録の矛盾が指摘された。現地で確認をとったら必ず評判が落ちた人物がいて揃って記憶を失っていたんだ。その時点で公安局にこの案件が回ってきた。あとはもういいだろう」

 

「そうかそうか…いや貴重な話を聞けたよ。そのような凶悪な闇の魔法使いを採用しようとしていたダンブルドアもさぞお喜びだろう」上機嫌の理由はこれである。しかしその直後に思わぬ返しが待っていた。

 

「あぁお陰で私が1年間、闇の魔術に対する防衛術の教師になる事になったんだ。闇祓い局長と校長にしてやられた。ルーファスにアルバスめ…ルシウスからも局長に文句言っといてくれ」

 

「なんだと…?」

 

「なんとスティーブンが?それは心強い。パーシーはイモリ試験も近いわけだし、それなら安心だ。あ…だがすると教材が変わるわけか」

 

「文句の件は冗談。理事会にも追って連絡があるはずだ。受けたからには精一杯やるよ。アーサー、教材に関しては大丈夫だ。明日の朝刊に詳しく載ると思うがロックハートの本にかかったお金は申請すれば返金される。あれは無駄に高いからな。新しい教材についても魔法省とホグワーツで負担する事になっている。学年別に用意して授業の最初に配る予定だ。さっき買わされたロックハートの本は暖炉の薪にでもしてくれ。おっとモリー、今のは無遠慮な発言だった。申し訳ない」

 

「グスッ…いえ大丈夫よ。その…返金の時に現物がなくても大丈夫なのかしら…」

 

「返金はホグワーツに通う生徒を持つ親の申請のみに限定されている。その上で教材に指定されていた本の分に関しては現物がなくても対応可能としている。家庭用に買っていたものに関しては申し訳ないが」

 

「いやそれだけでも大助かりだ。なんなら明日にでも出勤した時に私が申請してこよう。モリー、まだ使ってないハンカチだ」

 

「ありがとう、あなた…」

 

「魔法省としてはもう少し広く対応したかったらしいが下手すると今度はロックハートの本で一儲けしようとする輩が現れるという事でホグワーツの教材に限定されたんだ」

 

「確かにその通りだな」

 

「それでも私としては明後日ぐらいには100人以上のホグワーツに通う子供を抱えるビッグダディとなったマンダンガスが現れると踏んでる。おやルシウス、あまり顔色が優れないようだが」

 

「いや妻との約束の時間をとっくに過ぎている事に気付いてな。これで失礼する。息子が飲み物をご馳走になった。行くぞドラコ」

 

「ルシウス、教材の件と一緒にナルシッサ夫人によろしく伝えておいてくれ」

 

「勿論だ…」

ルシウスは急に静かになったと思うとすぐに立ち去ってしまった。ジニーの大鍋を見つめて後悔を滲ませている事には誰も気付いていなかった。

 

「ルシウスの貴族気質もなかなかものだ。そうだハリー、君の言ってた浮遊呪文の件だが安心して欲しい。この前アーサーが持ってきた君の杖だが最後に使った魔法は変身呪文だと確認が取れた。杖はこの前、返して貰ってるね?その時点で無罪は確定していたがしもべ妖精のくだりは解明する手段がなくてね。これが警告取り消しと魔法省から謝罪の手紙が入っている」

 

「ありがとうございます!そのしもべ妖精ってみんなあんな感じなんですか?」

 

「いや話を聞く限りはかなり特殊な個体と言えるだろう。昨日、ダースリー家には私の部下が直接説明してきた。幸い私がダーズリー夫人とは知り合いでね。部下が門前払いされる事は避けられたよ。話によるとあまり穏やかじゃない方法で家を脱出したようだね」

 

「………」

気まずい。フレッドとジョージは食べこぼしたものを拾おうとして机に潜って出てこなくなった。アーサーも顔を背けている。

「えっ…えっとペチュニアおばさんと知り合いなんですか?」

ハリーは露骨に話を逸らしたがミケルセンはそれに乗ってくれた。

 

「君の両親と親交があったように何度かペチュニア夫人とは話しているんだ。年度末には君が帰ってくるのを待っているそうだ」

 

「ほ…ほんとに?」

 

「ほんとだよ。バーノン氏もね。君が突然、出立してしまったことを心配し過ぎたのか車が飛んでいたなどと少々、錯乱しているようだったという報告を受けたが…」

 

ゲホッゲホ!

アーサーは咳払いをした。モリーは泣きながらアーサーの足を踏ん付けていた。

 

「これ以上はやめておこうか。それでは私も魔法省に戻るとするよ。まだホグワーツに行く荷物をまとめてないんだ。取り調べもこれからで時間がいくらあっても足りない…アーサーこれで払っておいてくれ。釣りは、」

 

「もちろん返すよ。公安局に持っていけばいいかな?」

 

「そうだな。最近は局長代理への引き継ぎで残業ばかりだから仕事帰りでも寄っててくれ」

ミケルセンは立ち上がりながら硬貨を数枚机に置く。

 

「悪いな、子供たちがご馳走になって」

 

「いいんだ。それではホグワーツで会おう。ウィーズリーチルドレンとハリー。ミスグレンジャー」

 

「「「ありがとう(ございました)」」」子供達は一斉に感謝を述べた。

 

「あぁグレンジャー夫人。いいんですよ飲み物代は、グレンジャーさんも。いえいえ機会があったら是非ご一緒させてください」立ち去る前にグレンジャー夫妻にミケルセンは呼び止められた。

 

「あのそういう事でしたら、娘がご馳走になりました。あのひとつお伺いしたいのですが」

 

「何でしょうか」

 

「うちはそのマグルで職業は〜ただの歯医者ですのでそちらの新聞は取っていなくて。先ほど聞いた申請をどうすればよいかお聞きしたくて」

 

「あぁそれなら新聞を読まれてないマグル生まれのご家庭には魔法省から個別に必要書類と共に手紙を送る事になっていますから大丈夫ですよ」ミケルセンは安心してくださいと答えた。

 

「そうでしたか」

グレンジャー夫人はそっと胸を撫で下ろす。

 

「話を変えて恐縮なのですが、もし良ければそのお勤めになってる歯科医院の住所を教えて頂けませんか。イギリスに帰ってきたら通っていた所がなくなってしまって新しい所を探していたんですよ。歯医者で定期的に歯を磨いてもらってたんですが」

ミケルセンは歯医者をやっていると聞き、いい機会だと思った。

 

「わ、私のクリニックですか。それは勿論構いませんがそのマグルの医療は敬遠されているのでは…」

グレンジャー氏はあからさまに驚く。

 

「確かに魔法界はそういう風潮がないとは言えないですが私の場合は母がマグルで大学教授をしてたんです。ですからそのあまりこだわりがないんです。仕事の関係上、マグルの方で働く機会もありますので。勿論、魔法使いなんかが来るのは迷惑でしたら…」

 

「いえいえ!大丈夫ですよ。でしたらホグワーツの学期が始まる前に来られますか。宜しければ予約を入れておきますよ」グレンジャー氏はそういって手帳を取り出した。

 

「それはありがたい。あーただ平日は厳しくて第3か第4の土曜は営業されてますか」

 

「午前診療のみですがえーと第4ならまだ空きがあります。10時半からになりますが」

 

「ではそれでお願いします。スティーブン・サム・ミケルセンです」

 

「はい確かに。裏に住所と電話番号が載ってます。お待ちしてますね」

グレンジャー氏は空いていた予約欄を埋めるとポケットから名刺を取り出してミケルセンに渡した。ミケルセンも自分の名刺を渡した。

 

「外務省…?」グレンジャー氏は疑問を口にしていた。

 

「えぇそこで仕事をする事もありますから。2回ほど名刺を振って頂くと本業のになります」

 

言われた通りに2回振るとそこには代わりにイギリス魔法省・魔法法執行部公安局局長・闇祓いの文字が肩書きの欄に浮かび上がった。

 

「大したものじゃありませんが何か入用の際はこの名刺で魔法省か外務省に問い合わせてください」

 

「ありがとうございます…」

グレンジャー夫妻は訳が分からなかったがとりあえずお礼を言う事にした。

「そうだミスグレンジャー。もしよければその際に教科書を渡すこともできるが要るかい?グレンジャー氏に預ければひと足先に読めると思ってね。どうかな」

 

「是非!!お願いします。ミケルセン先生」

ロックハートショックで意気消沈してたハーマイオニーだったがみんなより一足早く教科書が読めると少し元気を取り戻していた。教科書を先に読めると知り、嬉しそうにしているのを見て、ハリーは流石ハーマイオニーとなり、ロンは信じられねぇとなっていた。

 

「わかった。2冊あるんだ。持ってくるよ。それではグレンジャーさん。失礼します」

礼儀正しく一礼したミケルセンは漏れ鍋の正面出口から出て行った。

 

グレンジャー夫妻はあんなマトモな、いやマグル的な魔法使いがいるのかと驚いていた。アーサーさんは礼儀正しいし、本当にいい人だというのも伝わってきたがマグルの世界に対する情熱と少々ズレた認識に全く困らなかったといえば嘘になる。ルシウスと呼ばれていた貴族のような親子からはマグルに対する敵意さえ感じた。だが後で娘と話した時にあの人はきっと珍しいタイプでそういう魔法使いはそうそういないと思うと言われ、少しがっくりした。

 

もっともアーサーから公安局は魔法省の警察機構の一部門のトップで諜報機関の側面も強いと聞かされ、そんな人物に自身の歯科医院を教えていたグレンジャー氏は頭を抱える事になった。ミケルセンが魔法省に戻り、デザートを食べ終えた後、乙女な魔女たちの啜り泣く声に耐えかねたウィーズリー家とグレンジャー家はさっと別れの挨拶を済ませ、帰路についた。アーサーは仕事が入ってしまい、魔法省に呼ばれて家にはすぐに帰らなかった。

 

無事に隠れ穴へと帰ってきたハリーとウィーズリー家だったが人前じゃなくなったことでモリーはわんわんと泣き出した。パーシーがリビングまでモリーを支えたがその後はそっとしておこうというパーシーの言葉にフレッドとジョージでさえも逆らわなかった。それから荷物を整理したり、家事をしたり各々できることを済ませ、ほぼ男だけで頑張って晩御飯を作ったりした。主にパーシーとジニーが率先してハリーとロンは手伝えることは手伝った。頑張ったのは隙あらば包丁を使っている時など危険な時以外のタイミングで隙あらばふざけるフレッドとジョージを対処する時だった。パーシーは2人をキッチンに入れた事をかなり後悔した。結局、油ものが多くなってしまったが悪くない出来だった。

 

なんだかんだで充実した午後を送っていたがそこで事件が起きる。モリーが家中のロックハート著の本を片っ端から暖炉の炎に放り込んで処分したのである。それはハリーがジニーにあげた本も含まれていた。

 

ハリーはジニーに渡した本が炎の中に消えていったと知って、どこか寂しいような、でもなかった事にできてほっとしたような少し思うところはある程度だったがジニーにとってはそうではなかった。その事実を知ると涙を目に溜めてキッチンから出て行ってしまった。

 

去年のキングズクロス駅で初めて会って初めてかっこいい(かわいい)と思った男の子。それが後からハリーポッターだと知って夢中になった。そして、あろうことか兄の友達で彼が家に滞在している。恥ずかしくて喋れなくなってしまう私にも顔を合わせる度に挨拶してくれて何度も話しかけてくれた。ますます好きになった。書店では私のことを庇ってくれてしかも可愛いと言ってくれた。そんな彼から初めてもらったプレゼント。たとえ中身があれでも今のジニーにとって最も大切なモノだった。一生取っておこうと思ってたし、何なら死んだ時に墓に一緒に入れてもらってもいいぐらい大事だったのだ。

 

ジニーは今まで抱いたことない感情に戸惑いながらも経験した事のない怒りが湧き上がっていた。今すぐ母に泣き叫んで文句を言いたかった。でも暖炉の前で声を抑えながら泣いてる母を見て言葉を吐き出せなかった。幼いながらも今、怒りをぶつけても追い討ちになると分かっていたのだ。そんなやり場のない感情をどうすればいいのか困り果ててるとアーサーの針が帰宅を指していた。ジニーは外に飛び出すと帰ってきた家の主に泣きながら飛び付いた。

 

可愛い顔をぐずぐずにして泣き腫らす娘を受け止めたアーサーは一瞬、ジニーもロックハートファンだったか考えたが表情とママが…!と途絶え途絶えに喋ろうとしてる様子で察すると娘の手を繋いですぐには家には入らずに庭のベンチに向かった。

 

娘はひとしきり泣いた後に嗚咽を抑えながら語り出した。ハリーに本をもらって嬉しかったこと。その内容がどうあれ初めてもらったもので大事にしようと思っていたこと。それをママが全部燃やしてしまったこと。言いたいことを言い切った娘は再び泣き出してしまう。

 

アーサーは少し間を置くとまず人からもらったものを大事にしようとする気持ちは素晴らしく、これからも大切にしなさいと告げた。モリーにそのまま感情をぶつけずに父に打ち明けたことを褒めた。ママには私からそれとなく伝えておくからと加えてジニーに落ち度はない旨をしっかり伝えた。

 

少しして泣き疲れたジニーは眠ってしまった。久しぶりにアーサーは娘を背負うと前とは違う重みを感じ、成長の早さと時の流れをひしひしと感じた。玄関に向かうとハリーが少し申し訳なさそうな顔で待っていた。

 

「お帰りなさいアーサーおじさん」

 

「ただいまハリー。娘から聞いたよ。一緒に夕飯を作ってくれたそうだね」

 

「僕はちょっと手伝っただけですから。そのジニーは大丈夫ですか」

 

「泣き疲れて眠ってしまったようなんだ。その…モリーがすまなかったね。彼女はどうしてる?」

 

アーサーは階段を登りながらハリーに尋ねた。

 

「ずっと暖炉の方で座ってます。だいぶ落ち着いてきたようなんですけど。アーサーおじさん。僕が逆に謝りたくて…その僕がジニーにロックハートの本を渡しちゃったので…」

 

「君が謝る必要はないんだよハリー」

 

「はい。パーシーにもロンにもそう言われました。確かにあの後そうなるとは知らなかったです。けど僕がジニーに本を渡してそれが暖炉で燃えたって聞いた時、僕はちょっとほっとしちゃったんです。最初のプレゼントがあの本なんてって思ってたので。でもそれを聞いたジニーは辛い顔をして部屋に戻ってしまったので申し訳ないことをしてしまったと思って」

 

「そうか…ハリー、その話を明日ジニーにしてあげてくれないか。あぁそっくりそのまま話してとは言わない。ただ君が本が燃えたこと自体は気にしてないことを伝えて欲しいんだ」

 

「分かりました。あとミケルセンさん?についてひとつ気になったんですけど」

 

「何だいハリー」

 

「あの人書店でロックハートを捕まえる時に杖を使っていなかった気がするんですけど見たことなくて気になって」

 

「あぁ確かに最近じゃ珍しいらしいからね。あれは俗に杖無し魔法と呼ばれている。大人の熟達した魔法使いは個人差はあれど無言呪文や杖無し魔法をある程度使いこなせる者が多い。勿論、杖があった方が安定するけどね。スティーブンは特に瞬間的な魔力の操作が得意なんだよ。ダンブルドア校長とまではないが他の魔法使いとは一味違うんだ。例のあの人がスティーブンを直接狙っても彼は無傷で逃げ切っている」

 

「やっぱり強い人なんですね」

 

「君が生き残った男の子と呼ばれているように彼は逃げ切った男として一時、有名だったんだよ。最もスティーブンは普通に格好つかないからやめてほしいとボヤいてたけどね。これは彼には内緒だよ」

 

「あはは、気を付けます。教えてくれてありがとうございました。それじゃジニーと明日話してみます」

 

「ありがとう。君もこのまま寝るだろう?」

 

「はい。ロンの部屋に戻ります」

 

ジニーの部屋の前に着いた2人はそこで別れた。

 

「おやすみハリー。いい夢を」

 

「おやすみなさい。モリーおばさんにもおやすみなさいと伝えてください」

 

「勿論だ。ジニーにも伝えておこう」

 

ハリーはロンの部屋まで階段を上がっていき、アーサーはジニーの部屋に入ると彼女をベッドまで運び、布団をかけた。

 

*  *  *

 

それから妻を慰め、本の一件を伝えると娘とハリーに申し訳ないことをしたとモリーは反省していた。アーサーは翌日、返金の手続きを取る為に窓口にいくとミケルセンが身を潜めるようにそこにいた。

 

「スティーブン」

 

「初日なだけあってあの手この手で金を貰おうとする輩がちらほらいてね。さっき女装して来たマンダンガスを叩き出した所だ」

 

「そうか…奴も懲りないな」

 

「あぁ。といってもそれは建前である女から逃げてきたんだ」

 

「君が女性と遊んでいるイメージはなかったのだが」

 

「違う…!なんて恐ろしいことを言うんだアーサー。げ…来やがった。誤魔化しといてくれ」

ミケルセンは世界でそんな恐ろしい話も早々ないと小さな叫びを上げていた。アーサーが振り返ると目に悪そうな全身ピンクの大臣の下級補佐官が鼻をフンフンさせながら近付いてきた。

 

「ど…ドローレスどうかしたのかい」

 

「あらご機嫌ようアーサー。スティーブンがどこにいるか知らないかしら」

 

「申し訳ないが今日は見てないな。私は手続きの為にこのフロアに来たばかりでね」

 

「そうなのね。あぁロックハートの…それは災難だったわね」

 

「どうも」

 

「それでは失礼しますわ」

 

不機嫌なのを隠さず立ち去っていくアンブリッジ。彼女が歩いて行った角からエヘン エヘン!とゾッとする咳払いが聞こえてきた。

 

「チッ、新種のドブガエルが…」

目くらまし術を解除したスティーブンが毒を吐く。

 

「何があったんだスティーブン。まさか彼女と…?いや何でもない。二度と言わない」

少しのからかいも含んでいたがアーサーだったがそんなことならヴォルデモート卿の磔呪文を浴びた方が遥かにマシという顔に即刻、撤回した。

 

「そうしてくれ。どうやら私があの女を差し置いてホグワーツの教授になったのが気に食わないらしい。ロックハートの容疑が固まった時点で防衛術の教師がいないとなった。それで大臣が内々に募集をかけたんだ。それに名乗りを上げたのがアンブリッジだ」

 

「それは彼女もおかんむりだろうね」

 

「私だって自ら志願した訳じゃないんだが…流石に大臣もボーンズ部長もアンブリッジには難色を示していた」

 

「ルーファスは?」

 

「アンブリッジの名を聞いてから私をねじ込んだのがルーファスだ」

 

「失敬、そう言ってたな。なんというか大変だな色々と」

 

「全くだ。このまま逃げ切ってホグワーツに籠るとするよ。迷惑かけたな」

 

「いいんだ。あぁ、これ昨日のお釣りだ」

 

「どうも。それじゃそのルーファスの部屋で匿ってもらうとするよ」

 

そこから守備よく逃げたミケルセンだったがエレベーターに乗ったところで遠くに居たアンブリッジと目があってしまう。鼻で息をしながら小走りでやってくるアンブリッジから目を離してミケルセンはエレベーターのボタンをこれでもかと連打した。

 

シャッターが降りてエレベーターが体幹が鍛えられる速度で後ろにスライドしていく。エレベーターの入り口ではアンブリッジが何やら騒いでいたが何も聞こえなかった。エレベーター内に居合わせたパイアス・シックネスが失笑していたのでミケルセンは肩を叩いて黙らせた。




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