HarryPotter 魔法省魔法法執行部公安局 作:Firebolt08
最初に談話室でディーンやシェーマス、ネビルと寮室のみんなにも車で暴れ柳に突っ込んだ話で盛り上がっていたハリーとロン。ハーマイオニーの手前あまり態度に出さなかったがジニーも結構テンションが上がっていた。
しかし、翌日はそうもいかなかった。大広間での朝食で状況は絶望的だったといえる。フクロウ便でエロールが届けたのは吠えメールだった。手紙は封を開けるとひとりでに口の形になり、空中に浮かんだ。
「ロナルド・ビリウス・ウィーズリー!!車を盗み出して運転するなどもってのほか!退校処分になってもあたりまえです!あろうことかマグルに見られて!すぐに気付いた闇祓いが対処してなければあなたは新聞の一面記事になってたでしょう!!お父さんは役所で尋問を受けたのですよ!」
ウィーズリー夫人の怒声が大広間に響き渡る。空間全体が震える怒号に食事をしようと入って来た生徒は引き返していった。既に席に着いていた生徒の殆どが耳を塞ぎ、遠くのスリザリンのテーブルでは一言一句聞き逃さんとマルフォイ一行はわざとらしく耳に手を当てるポーズをしては爆笑していた。
「昨夜に校長先生から手紙が来て暴れ柳に突っ込んだあなた達の車をスティーブンとスネイプ先生が引き上げて助けてくれたと知りました!お父さんは恥ずかしさのあまり死んでしまうのではと心配……
それからハリーの名前も出て2人は縮こまって叫び散らかす手紙に頭を上げられずにいた。二言、三言の警告を重ねてからウィーズリー夫人の声が落ち着くと先生方に謝罪と御礼を述べてジニーのグリフィンドール入寮を祝い、手紙はロンの目の前で爆発してチリチリと灰になった。
罰則よりも厳しい罰を受けたことでハーマイオニーが以前のように親しく接してくれるようになったのは2人にとって不幸中の幸いであった。最初の授業は薬草学の為、温室の近くまで来ると、他の生徒がスプラウト先生を待っていた。
遠くの方から先生がすぐに芝生を横切って小走りで歩いてくるのが見えた。ミケルセン先生と一緒だ。スプラウト先生は腕いっぱいにガーゼや包帯を抱え、ミケルセンは殆ど空になった大量の魔法薬の瓶やフラスコを絶妙なバランスで持っていた。遠くの方で枝のあっちこっちに吊り包帯がされてしもべ妖精たちが包帯を補強しているのがハリーには見えた。
「おはようみんな、少し待たせてしまったかな。あぁ包帯もこちらで戻しときますからスプラウト先生は授業の方に」
「手伝ってもらって助かりましたミケルセン先生。その持てます?」
「いいんですよ。授業までまだ余裕がありますから。何か…あぁそこの鞄に放り込んでおいてください」
隅で土を被っていた鞄を清めたスプラウト先生は包帯類を鞄に全て入れて身軽になると普段通りの快活な声で生徒に呼びかけた。
「みんな、今日は3号温室へ!」
ぞろぞろと温室に入っていく前にハリーとロンはミケルセンの元に駆け寄る。
「その…本当にすいません」
「すいませんでした」
「まぁ起きたものはしょうがないね。あんまり気にしすぎないように。午後の授業で会おう」そういってミケルセンは鞄を抱えると城に戻っていった。
それからマンドレイクの苗を移す作業をやったが吠えメールが意図せずに予習になったのかハリー達は全く気絶せずに授業を終えられた。変身術ではあまりに上手くいかないロンにマクゴナガル先生が杖を買ってもらうように手紙を私が書きましょうか?と提案したがロンはものすごい勢いで首を横に振ってしまい、朝の吠えメールを聞いていたマクゴナガルもそれ以上は言わなかった。
* * *
「午後の最初のクラスはなんだっけ?」
「闇の魔術に対する防衛術よ」
なんて話をしていると新入生のコリン・クリービーがハリーに写真を撮ってサインしてくれないか頼みこんできた。はっきりと断れずにいると我らがマルフォイが参戦。ハリーポッターがサイン入り写真を配るそうだぞみんな並べと大声で宣伝し始めた。そこでハリーも負けじと叫んだ。死なば諸共である。
「その隣に並べばドラコ・マルフォイのお見合い写真が貰えるそうだ!サイン付きで裏面には直筆のメッセージが書いてあるぞ!」
「な…やめろポッター!」
「先に仕掛けたのはそっちだマルフォイ。今ならマルフォイ家次期当主とのお見合い写真が貰える大チャンス!何と1日デート券まで付いてくる!」
その声にパンジーは筆頭にスリザリンの女生徒数人は思わず並ぼうと足が前に出ていた。ゴイルも後ろで笑いそうになっている。クラッブは全く笑いを隠せていなかった。
「黙れ!」マルフォイはさっきまでの調子は何処へやら顔は真っ赤だった。
「まぁ!なんてお得なんでしょう!一緒に箒に乗ってお空のデートなんていかが?スリザリンの談話室での熱いひと時を!」
ロンもウッキウキで声を張り上げた。
「いったい何の騒ぎですか。サイン入り写真がどうとか」顔を怒りで染めながらハリーとドラコが大声を張り上げている現場に来たのはマクゴナガルだった。
「ま、マクゴナガル先生…」
「Mr.ポッター、サイン入り写真を配っているのですか?」
「いいえ」
「Mr.マルフォイ、お見合い写真を配っているのですか?」
「いいえ」
「それならもうすぐ午後の授業が始まりますから各自、教室に向かいなさい。あぁMr.クリービー。相手が快諾しなかった場合は無理に写真を撮ろうとしてはなりませんよ。カメラマンならその謙虚さも持つべきですからね。話は以上です。さ、全員行きなさい」
すぐに午後の授業開始を知らせるベルが鳴り、生徒は駆け足で動き出した。
防衛術の教室に生徒が続々と入っていき、全員が着席すると教室に入ってきたミケルセンは挨拶すると簡単に自己紹介を始めた。
「去年の年度末に少しホグワーツにいたのでこの学年は知ってるだろうが私の名前はスティーブン・ミケルセン。魔法省魔法法執行部公安局の現局長で闇祓い。その他の長ったらしい称号や資格は省かせてもらう。私の任期は1年間のみだが現場の人間として実用的な授業ができるように進めていきたいと思っている。という訳でみんなよろしく頼むね。まずは机の上に教科書が2冊と冊子があるか確認して落丁や白紙のページがあったら申し出るように」
「先生、この冊子は?」
既に教科書は渡してもらっていたので冊子だけが置かれていたハーマイオニーはミケルセンに尋ねた。
「端的に言えば教科書の解説。要点や例題のより詳しい説明なんかが記載されている。数年後に控えるフクロウ試験にも役立つ部分をまとめたりとかね。同僚と私で作成したものなので今の所は非売品だ」
「ありがとうございます!」ハーマイオニーは目をキラキラさせて冊子を捲り始めた。覚えた教科書の内容と照らし合わせているのだろう。
「大丈夫そうだね。それではこの1年間の授業の流れをまずは確認していこうか。基本的には導入された指導要領に沿った授業内容になる。座学と実技をバランスよくだ」
ハーマイオニーは手を挙げた。
「どうぞミスグレンジャー」
「指導要領の内容を生徒が見ることはできますか?」
「もちろんだ。それなら授業終わりにでもコピーを渡そう。それで実技の方ははこっちの「闇の魔術に対する護身術」を主に取り扱う。基礎的な呪文の実践や回避行動に即した体の動かし方等が中心になるだろう。座学はもう一冊の方。たまにはグループディスカッションやディベートなんかも出来てたらいいと思っている」
授業の進め方なんかをひと通り喋り切ったミケルセンは闇の魔術に対抗するとは何かを独自の視点を混ぜて解説し、元上司の口癖であったという油断大敵!の四字熟語を生徒に送って締め括った。
それから机をどかして防衛呪文と武装解除呪文のデモンストレーションと練習の時間を設けると最初の授業は終わりを迎えた。宿題として文字数は指定せずに今の自分と将来の自分が闇の魔法使いと対峙したらどうすべきか意見を羊皮紙にまとめる課題を出した。余裕のある人は前の教授内定者が取り寄せていたコーンウォール地方のピクシー小妖精があるのでそれを用いてどのような防衛術の授業ができるかアイデアを書いてくれればこちらも加点すると付け加えた。
「本人も強調してたけど現場の人間が教えていくって感じだ。学問というよりは訓練?」
「そうだね。あと何というかマグルの授業も参考にしてる?」
「確かに。そういえばダイアゴン横丁で母が大学教授って言ってたわ。だからじゃない?」
* * *
それから数日が経ってハリーは朝からウッドの作戦を嫌になる程聞いた後ようやく競技場に移動したがそこでニンバス2001を見せつけるスリザリンチームと揉めた。マルフォイの差別発言にキレたロンだったが放った呪いが自分に逆噴射してしまい、ナメクジを吐き出す憂き目にあった。それから3人がハグリッドの小屋に滞在していると戸をノックする音が聞こえた。
「出直そうかハグリッド」
「いや入ってくれて構わん。ロンがちと大変な目にあったんだ。ハーマイオニーもな。スティーブンも聞いてやってくれ」
それから騒動を聞いたミケルセンはあまり良い顔をしなかった。
「内心どう思うかは勝手だが少なくとも公然での発言に気を使うべきだな彼は。スリザリンから20点減点しておこう。ウィーズリー君。2秒耐えろ」
杖を向けられたロンは少し驚いたようだがゆっくり頷いた。ミケルセンは杖を一振りすると途端にロンは瞬間的にナメクジを大量に吐き出した。その光景にハリーとハーマイオニーは呪文を間違えたのではと心配になったがすぐにナメクジの滝は止まった。顔を上げたロンはげっそりしていたがどこかスッキリした面持ちだった。
「長引くよりはいいだろう。今後は折れた杖の使用は控えるべきだ」
バケツの中には大量のナメクジが蠢いていたがミケルセンが再び杖を振るとそれは綺麗さっぱり消えてバケツも新品同様になっていた。
「ゲプ…そのありがとうございます」
「流石にナメクジを吐き出しながらトロフィーや盾を磨くのは忍びないからね」
「え…それってもしかして罰則?」
「2人とも今日だと聞いているよ。心配だったらこれを飲んでおくといい。主成分は塩だからかなりしょっぱいだろうが」
コートのポケットから小瓶を取り出したミケルセンは瓶を何回か振ると白い錠剤をロンに渡した。瓶を振る度に中身が変わっていた。
ミケルセンが杖をゆっくり振るとキッチンの方から水の入ったコップがスライドしてきてロンの空いていた手に収まった。ロンは錠剤を迷いなく口に入れて水を流し込んだ。
「その錠剤は魔法薬なんですか?先生」
ハーマイオニーが興味津々とばかりに尋ねる。
「呪文で効果を消せない性格の悪い呪いを緩和するものだよ。内側からなら多少は効くってやつだ。さっきも言ったように塩が主成分だからナメクジの呪いに関してはたまたま特効薬でもある。ハリー、君のお母さんが開発した薬だよ」
「そうなの?!あぁすいません。その学生時代に?ダンブルドア校長がお母さんの先輩だって言ってたので」
「実用化したのは卒業してからだけど原案はそうだ。昔の魔法薬学の教授と君のお母さん、私ともう1人の4人で色々作ってたんだ。他にもメンバーは居たけど魔法薬学クラブがあってね」
「もう1人って?」
「本人から名前を出すのを禁止されてるんだ。それよりそろそろ城に戻った方がいいだろう。マクゴナガル先生が君たちを待っている。ハリーは後で会うかもしれないね」
ハリーとロンは今日が罰則だと知って動きたくなさそうにしていたがハーマイオニーが引っ張っていき、それから3人は来た道を戻っていった。ハリー達が城に着いたのを確認するとミケルセンはハグリッドに聞いた。
「それで何があった?」
「鶏がみんな殺されちまってる。ひでぇ有様だ。犯人に心当たりはないしイタズラにしちゃタチが悪すぎると思ってな。獣かなんかが森から出てきたのかとは思ってるんだが念の為に鶏小屋を見てもらおうと思って呼んだんだ」
ハグリッドとミケルセンは外に出てそれなりに歩くと血生臭い匂いに顔を顰める。鶏小屋は羽と血でべっとりだったがかなり乾いていた。最初は森から何かが出てきたのかと思ったが調べていくとそうではなかった。
「かなり手際良く殺しているな。この切り口は…獣の類ではない。魔法によるものだろう」ミケルセンは魔法の練度の高さを読み取っていた。これは下級生にはできないレベルの高さだと。
「これを人がやったっちゅう訳か…」
「断定はできないがホグワーツの敷地内である以上、外部犯の可能性は低い。かなり昔には密猟者なんかも居たらしいが」
「生徒がやったんか」ハグリッドは信じたくないとばかりに言った。
「教師に容疑者がいない以上は残念ながらそれが最も疑わしい。それも上級生など魔法が熟達している人間じゃないと早々こうはできない。気付いたのは」
ミケルセンはこれ以上分かることはないと判断すると鶏小屋に杖を振った。血や羽が消え去って、臭いも無くなり、鶏の亡骸だけがポツンと残った。
「気付いたのは今日の朝だ。だが血がかなり乾いていたから昨日か一昨日にはやられてたかもしれん。ここは他とはちーっとばかし離れてるからな」
「見かけた人物で心当たりは…無いんだったな。上級生は誰か見たか?」
「俺の手伝いをしてくれた6年生はおったが鶏小屋には行っとらんし、双子も来とらんかった。何よりあの子達が犯人のはずがねぇ」
「そうだな…この件は私から報告しておこう。外部犯の可能性もゼロでは無いからな。もし、同じような事があったら直接、ダンブルドア校長に伝えてくれ」
「わかった。わざわざ済まんかったな来てもらって。綺麗にしてもらって助かったスティーブン」
「いいんだ。それじゃ今夜はハリーの罰則に付き合うから先に戻るよ」
「暴れ柳でだったか?」
「包帯を替える作業を手伝う罰則だそうだ。セブルスと一緒に」
「それはちょっとばかし気の毒だ」
「否定はできない」
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