HarryPotter 魔法省魔法法執行部公安局 作:Firebolt08
新たな犠牲者が出てしまったことで忙しいのか、ミケルセンをなかなか捕まえられなかったハリーとロンはハグリッドから話を聞くべく小屋を訪れていたが別の訪問者がきた事で透明マントで隠れてやり過ごすことになった。
「こんばんはハグリッド」
ダンブルドアに続いてミケルセンも小屋に入り、ハリーの見知らぬ男も入ってきた。
ハグリッドは不安な表情で3人を出迎えた。
「魔法大臣だ…!パパのボスだよ。やり手だって」
ロンは若干興奮気味で教えてくれたが声が聞こえかねないのでハリーはロンを小突く必要があった。
「いやはや…こんな夜更けに押しかけて申し訳ない」
ファッジはため息をつきながら非礼を詫びた。
「いえとんでもないです魔法大臣閣下…」
4人はテーブルを囲んで椅子に座り込んだ。全員が深刻な表情でハグリッドは額に汗が滲んでいた。
「状況は決して良くない。マグル出身者が3人もやられた」
「お…俺は、決して」
「君が原因でない事は分かっているハグリッド。だが、ウィゼンガモットの老人共はそう考えていない。残念ながら君が学生時代にアクロマンチュラを校内で違法に飼育していたのは事実だ」
「それは…」ハグリッドは押し黙った。
「コーネリウス、わしはハグリッドに全幅の信頼を置いておる」
「それも分かっているアルバス。だがあの時は生徒が次々に石にされ、1人の女生徒が亡くなっている。言ってしまえば実にタイミングが悪かった」
「確か…女子トイレで死体が発見されたと記録にありましたね」
「そうだ。そして、今同じことが繰り返されている。念押ししておくがハグリッドの件は時期が重なった別件だというのは承知している。アクロマンチュラに生き物を石にする能力は少なくとも今まで確認されていない。しかし…」
ファッジは口を閉じると眉間を揉みながら苦悶の表情をしていた。
「理事会ですか」
ミケルセンはファッジに問いかけた。
「あらゆる方面から圧力をかけてきている。それを突っぱねて私の支持率が多少下がるのは一向に構わないが各所に飛び火するのは避けたい。預言者新聞はいつまでも大人しく待てはできないだろう。例の日記は未だ行方知らずか?」
「えぇ不気味なほどに見つからないんですよ。呼び寄せ呪文にも反応しなければ痕跡もない。荷物検査も空振りですね」
「ハリーが偶然拾った日記が何者かに盗まれて以降、所在が分かっておらん。じゃがスティーブンの言う通りただの日記であればとっくに見つかっているということでもある」
「かなり高度な魔法が用いられている可能性があるわけだな。しかし、それを聞いても世間は納得しないだろう。糸口を掴んではいるがそれを公表ができない以上、やりたくはないが別件で対応したパフォーマンスを取らなくてはいけない」
「それでハグリッドを連行すると?」
ミケルセンは穏やかながら少し冷ややかに尋ねた。
「連行…ま、まさかアズカバンじゃ」ハグリッドは絶望そのもの声だった。
「アズカバンではない。短い間、私の用意した省内の部屋で過ごしてもらうだけだ。分かってくれハグリッド。ウィゼンガモッドが執行部を介さず、君の拘束に動き出す可能性もある。ボーンズ部長の手続きの元、こちらの管轄で身柄を保護しておく必要がある」ファッジは疲れた口調で釈明した。
「確かにやりかねないですね」
「そういう話でしたら…分かった。俺がそうすればダンブルドア先生様に迷惑がかからないのでしょう」
「ハグリッド…」
「校長先生、留守を頼みます」
「その間の森番に関しても魔法省から代理の人員を派遣する。ただ問題は理事会だアルバス。何やらルシウスが些か強引な手で理事の取りまとめに動いている。先の圧力をかけているのもルシウスだろう」ファッジは小声でダンブルドアに理事会の不穏な動きを伝えた。
「噂をすればなんとやら…」
ミケルセンが杖を向けて振ると扉が開き、ノックしようとしてた手がそのまま止まったままのルシウスが立っていた。
「ルシウス」
「スティーブン。これはこれは校長に大臣までお揃いのようですな。鴨葱と言ったところか…結構結構」
「何の用だ?俺の家から出ていけ!」
「威勢がいいね。私とてここに立ち入るのは本意ではない。校長がここにいると聞いたから仕方なくというやつだ」ルシウスはハグリッドを一瞥すると小屋を見渡しながら嫌味たっぷりの口調で返した。
「それでわしに一体何の用があるというのかね?」
それからルシウスは羊皮紙の巻紙を片手に全理事の同意のもと、ダンブルドアの”停職命令”を告げた。
「ふざけているのかルシウス。この有事の際に」
「ルシウス、それは駄目だ」
「校長の任命、それに停職も理事会の決定事項ですよ大臣。それにダンブルドアは今回の事態を未だ止められていない」
「故にだ…このタイミングでの停職は良い選択とは言えない。魔法大臣としてもその決定には懸念を表明せざる得ない」ファッジは必死に言葉を選んだが返答は
「理事会に対する越権行為とも取れる発言ですな」
「そのような意図はない。しかし…」
「コーネリウス、理事たちが停職を望むなら、もちろんワシは従おう」
「ダメだ!!本当に誰か殺されるぞ!」
「しかし…覚えておくが良い……ーー
ダンブルドアはゆったりとした口調で続けると『ホグワーツでは助けを求める者には、必ずそれが与えられる』と締め括った。
「あっぱれなご心境で」
それからルシウス、ダンブルドア、頭を抑えるファッジ、ルシウスを睨みつけるミケルセン、今にもルシウスを殴りそうな顔のハグリッドが小屋を後にした。
ハリーとロンは会話の中の話からハグッリドは秘密の部屋には関与していなかったことと日記が鍵ということはすぐに読み取れた。多少時間はかかったが亡くなった女生徒は嘆きのマートルではないかという予測も立てた。こんな時、ハーマイオニーがいればと2人は嘆いていたが期末試験のお知らせにそんな思いは吹き飛んだ。
* * *
期末試験の3日前にマンドレイク薬の完成が近いというニュースを聞いた後にジニーがロンの隣にちょこんと腰掛けた。ハリーは会う度に声をかけていたがしばらく避けられていたので驚いた。
「どうしたのジニー?」ハリーは尋ねた。
ジニーは落ち着かない様子で口を開いては閉じていた。
「言っちまえよ」ロンが促す。
「わたし…言わなければならないことがあるの」ジニーは顔を伏せながら小声で言った。
「なんだい?」
「いったい何だよ?」
ジニーは口を開いたが声が出ない。
「もしかして秘密の部屋に関すること?何か知ってたり見た?」
ジニーは深呼吸したその瞬間、やってきたパーシーにジニーはビクッと驚くとそのまま走り去ってしまった。
ハリーとロンは嘆きのマートルに話を聞くべく、引率の列で最後尾に並んで角を曲がる時に抜け出すことに成功したがマクゴナガル先生に見つかってしまった。しかし、ハリーが咄嗟に言ったハーマイオニーのお見舞いに行きたかったという本音を混ぜた嘘が驚くほど効果的でハリー達はお咎めなしで医務室に行くこととなった。予定していなかったお見舞いでハーマイオニーが何やら紙を握っていたことに気づいたハリーはそれを何とか取り出すとそこには『バジリスク』についての記述と『パイプ』の書き殴りが書いてあった。
* * *
授業中に届いたニュートスキャマンダー先生からの速達ふくろう便。何故、見つからずに潜伏できているのか疑問は残ると前置きしながらも条件と合致するのはバジリスクだと書かれていた。ミケルセンはその名前で図書館で確認した本の破れていたページに書かれていた内容を思い出すと確信を得た。学生時代に読んだきりですっかり忘れていた。手紙が届いたことで最後の方から自習させていたがそのまま授業の終わりを知らせるベルが鳴った。
スリザリンの2年生と3年生の合同授業を終えて寮まで送るべく廊下に出る。ダンブルドア校長の停職を受けてドラコはかなりテンションを上げているようだった。他の引率の時とは違って和気藹々としている。理由はどうあれ一部の生徒が元気なのはいい事だ…
3階の女子トイレを通り過ぎて角を曲がったところでミケルセンは言い表せない違和感を感じた。左手を下げて談笑していた生徒達を制す。生徒は急に立ち止まったミケルセンを何だコイツという目で見ていた。ドラコは道に迷いましたか?と調子がよかったがミケルセンはお構いなしに廊下を見つめていた。
十秒も経たないうちにしびれを切らした生徒たちがミケルセンを追い越して廊下を進んでいく。
「待て…!」という言葉に従ったのは数人と面白がったマルフォイ達だけだった。何も起きない。その瞬間だった。
廊下の壁から何かが飛び出したのだ。壁は粉砕され、ひしゃげたパイプが廊下に顔を出し、水が吹き出す。きた道からも水道管が破裂した音が響く。マルフォイが振り返ると道は見事に塞がれていた。
「伏せろ!!!」
ミケルセンは咄嗟にかざした右手を大きく払い、前に出ていた生徒を雑に横に動かした。バジリスクである。その巨体は天井を這うように蠢いていた。
「バジリスクだ!目を閉じろ!!絶対に上を向くな!!!」ミケルセンは警告の声に魔力を乗せて言葉に少しの強制力を持たせた。
するとバジリスクの頭部がこちらに振り返ろうと体を捻り始める。ミケルセンは壁のタペストリーやら近くの生徒のローブをありったけ操り、目が合う前にバジリスクの頭に覆わせた。杖で円を描くように手首を素早く捻ると鎖がバジリスクの頭をキツく締め上げた。そのまま杖を大きく振り上げるとバジリスクは天井にめり込んで一時的に動けなくなった。
その間に胸ポケットから何も見えなくなるサングラスを取り出して増殖させるとそれを杖で飛す。ひとりひとりの生徒の顔におさまっていく。
「そのサングラスを絶対に外すな!道も教えてくれる!近くの人と手を繋いで!走れ!!!」
その声に突き動かされるようにスリザリンの生徒達は阿鼻叫喚しながらも逃げていった。後ろにいた生徒を追い立てながらミケルセンも続いた。だが廊下を抜ける途中で天井から抜け出したバジリスクが瓦礫と一緒に文字通り降ってきた。
マルフォイ達と数名を庇いながら壁沿いに避けたミケルセン。
「なっ…一体どうなってるんだ!」
「見えないから見えない!!」
壁を背に蹲っているマルフォイ達を引っ張り上げ、逃げるべき方向に押し出す。ミケルセンは再び、「そのまま走れ!行け!!」と叫びながら手当たり次第に暴れ出したバジリスクを相手にしていた。
しばらく巨体を左右に振りながら壁やら床を粉砕していたバジリスクは顔の拘束を自力で解きかけていた。急いで自身もサングラスをかけて目を閉じる呪文を自身にかける。存在そのものが魔法というホグワーツのような場所でならギリギリ使える魔力による空間探知を使いながらバジリスクの攻撃を捌いていく。
ドラコ達は指示に従って必死に走っていたがクラッブが水溜りで足を滑らせて転んでしまう。水音と小さな叫びが聞こえたマルフォイは自分でサングラスを取って下を向きながらクラッブを起こした。すぐにその場を離れようとした時、マルフォイは水たまりに映る黄色の巨大な目を見てしまった。クラッブは何故か突き飛ばされた感覚を覚えて声をかけるもマルフォイが返事をしない。
「…ドラコ!ドラコ!おい!返事しろ!」クラッブの悲痛な声が廊下に響く。
一瞬、振り返ったミケルセンは状況を理解して心の中で悪態をつきながら叫んだ。
「行けクラッブ!こっちで何とかする!先生に伝えるんだ!バジリスクの攻撃だと!行くんだ!」
泣き叫びながら走り去っていくクラッブ。周りにどんどん増えていく瓦礫を操ってバジリスクを襲わせる。「Protego Maxima!!」
ほぼ意味を成さない防衛呪文を付け足して足止めしてから石となってしまったマルフォイを壁に退かし避難させるとバジリスクは防御呪文を突き破って大きく薙ぎ払おうとしてきた。ギリギリで避けて爆発呪文を何発かお見舞いするもまるで効果がない。避けては反撃の堅実なスタイルで戦っていたが安定する事はなく、はっきりいえばジリ貧だった。
「Sectumsempra!!」
学生時代にいっとき流行っていた闇の魔術に片足を突っ込んでいる魔法の後に爆破呪文を叩き込むとようやく傷は与えられた。だが廊下にドス黒い血が多少流れたところでバジリスクの動きは止まらなかった。ミケルセンはその後、結膜炎の呪いをクリーンヒットさせたがこれは悪手だったとすぐに後悔した。バジリスクは叫び声を上げながら壁や床、天井をさっきまで以上に破壊しながらのたうちまわりはじめ、動きが予測できない攻撃になってしまった。必死に避けるミケルセン。すると廊下の角に生徒の魔力を感知した。
避ける為にも逃げるように促す為にもそこに近付いたミケルセンだったがその生徒は杖を向けていた。反応が遅れてしまったミケルセンはサングラスを壊され、かけていた魔法も解かれて目が開く。そこにいたのはジニーウィーズリーだった。片手に本を抱えている。口角は不自然に上がって不気味な笑顔を浮かべていたが目は虚で何かに操られているようだった。
あれが日記か…!とジニーウィーズリーに近付こうとしたミケルセンだったが後ろでバジリスクが石像と化したマルフォイを粉々にしようと動き出していた。まずい!と咄嗟に体が動いたのはいいもののバジリスクの血も混ざって赤く染まった水たまりでミケルセンはバジリスクと目が合ってしまい、そこで意識が途絶えた。
泣き叫びながら走ってきたスリザリンの生徒達から事情を聞いた先生数名は生徒が掛けていたサングラスを借り受けて現場に駆けつけた。教師全員がサングラスを付けてやってきた為、スネイプやマクゴナガルのサングラス姿などその絵図だけを見れば面白かったのだが状況は全く面白くなかった。魔力の反応がない事を確認し、サングラスを外すとそこには地獄絵図が広がっていた。
壁から天井までがどこもかしこも砕けて装飾の柱も折れている。パイプがあっちこっちからひしゃげて飛び出し、床は水と血が混じって血の海と化していた。全員が言葉を失っていると壁際に驚愕の顔を浮かべながら石になっていたマルフォイとそれを庇うような姿のまま石にされたミケルセンが目に入った。極め付けは壁に書き殴られていた血文字だった。
『彼女の白骨は永遠に“秘密に部屋”に残るだろう』
* * *
ハリーは今まで聞いた声がバジリスクだったと確信を得た直後に生徒は全員、寮に戻るように放送があった。そこで職員室での会話をハリーとロンは寮に戻らずに盗み聞きしていた。
「とうとう起きてしまいました…」マクゴナガルは悲痛な声で話した。
「スリザリンの生徒を引率していたスティーブンが怪物に襲われました。生徒はほとんどが無事に逃げられましたがスティーブンとドラコ・マルフォイは石にされてしまった」
これにハリーとロンは驚愕した。犯人ではないかと疑っていたマルフォイが石にされたというからだ。マグル生まれを狙うんじゃなかったのか。
「生徒から話を聞いた所、スティーブンは逃げる生徒に怪物はバジリスクだと警告していたとのこと。石化やスリザリンの怪物という点で条件に合致する」
「倒壊した壁やひしゃげたパイプの状況から管を道にしていた可能性は高いでしょう。ですがたとえそれが分かっても我々に出来ることはありません…継承者はまた伝言を残しました。秘密の部屋に生徒が連れ去られたのです」
「誰ですか…?どの子なんですか」
「ジニーウィーズリー」
その名前を聞いたハリーは3階の女子トイレに行くべく駆け出していた。ロンもハリーを追った。息切れをものともせずハリーはマートルを見つけるとものすごい勢いで尋ねた。
「マートル!君が死んだときの様子を聞きたいんだ!」
「なっ…急にどうしたっていうのよ」
「いいから!」
ロンはここまで必死なハリーを初めて見た。だがそれは自分も同じだった。
「怖かったわ…ー
それからマートルは女子トイレにいた謎の男子に文句を言うべく個室の戸を開けたら死んだと説明した。更に詳細を詰めていくと手洗い台に目星がついた。しばらく手洗いを調べると壊れた蛇口に蛇のような模様を見つけた。何度目かで蛇語で喋ることに成功すると手洗い台は動き出して最終的に太いパイプがむき出しになった。
「僕はここを降りて行く」
降りない選択肢はなかった。どれだけ可能性が低くてもジニーが生きてるかもしれない以上、行かなければ
「僕も行く」ロンも言った。
「先に降りる」そう宣言したハリーに続いてロンもパイプを降りていった。曲がりくねったパイプに身を任せていると辿り着いたのは真っ暗なトンネルだった。床にはネズミや小動物と思わしきものの骨、頭蓋骨が散らばっていた。それから少し進めるとそこにあったのは巨大な抜け殻だった。
ハリーが抜け殻を跨いで先行すると突如としてトンネルが揺れ始めた。上を見上げると巨大な塊が崩れながら瓦礫と化してハリー達に降り注いだ。
「ロン!!大丈夫か!!ロン!」
「ここだよ!!でも道が完全に塞がれた!そっちに行けないよ」
「僕が先に進む」
ロンは岩を少しでもどかしてみると言い、後で会おうと心細い約束をしてハリーは秘密の部屋へと進んでいった。
* * *
「ジニー!お願いだから!」
部屋の奥で横たわるジニーに駆け寄って懸命に声をかけていたハリーだったが柱の影から出てきた姿にジニーを庇うように立ち塞がって杖を向け、失神呪文を放った。
「その子は目を覚さない」
呪文は素通りして出てきた人の後ろの壁に消えていった。
「トム・リドル…?目を覚さないってジニーは…」
「まだ生きているよ。かろうじてね」
「なぜだ。その姿は…君はゴーストなのか」
「記憶だよ…Expelliarmus」
するとあっけなく杖はハリーの手元を離れ、トムリドルの手に収まった。
「なっ…」
「勇ましいねハリーポッター…。気付いていたのかい?」
「何のことだ」
「私のことさ。日記だよ」
「聞いたんだ。秘密の部屋に日記が関わっているかもしれないと。ミケルセン先生はずっと探していた」
「忌々しい闇祓いだ。ダンブルドアの次に邪魔だった。多少無茶をして襲ったのは間違いじゃなかったよ。殺せなかったのは残念だった。純血のスリザリンの生徒が巻き添えを喰らったようだがそんなのはどうでもいい」
「やはり君がやったのか」
「やったのはジニーさ」
それからトムリドルはいかにしてジニーウィーズリーの魂を侵して力を得て彼女を乗っ取ったのかを意気揚々と語り、今までジニーがしてきたことを事細かに語った。
「まさか」
「そのまさかだよ。最初は何も自覚していなかった。空白の時間、意識のなかった時間が何なのか分からなかった彼女はそれを私に相談してきたんだ。実に滑稽だろう。それでもあのダンブルドアとミケルセンが揃っているうちは下手な行動は取れなかった。何の意味もない荷物検査に何度も付き合わされた」
「ジニーは日記を先生に見せずに隠した?君がそうするように仕向けたのか」
「最初はそうしたが彼女も反抗的でね。次からは日記も入った鞄を先生に出したのさ。この子は日記が見つかればいいと思っていたが気付かれなかった。力を得た私にとって日記1冊が認識できなくなるようにするのは造作もない」
リドルは楽しそうに冷酷な笑いを交えて続けた。
「検査が終わる度に絶望していく彼女はまさに見ものだったよ。あぁホグワーツの教師を責めないでくれよ。この日記を見つけたいと思っていればいるほど見つけられないように条件を付けたんだ。たとえダンブルドアでもそれを発動しているうちは目の前にあっても認識できない。その条件だからたまに気付いた何も知らない同学年の子が彼女に尋ねるんだ。『この日記は何?』ってね」
ハリーはあまりに酷すぎる所業に憎悪と呼べる思いを抱いていたがそれは正しかった。
「どんどん疑心暗鬼になって何も信じられなくなったジニーは日記をトイレに捨てた。それを拾ったのは何と君だった。ハリーポッター…生き残った男の子。私がずっと会いたいと思っていた君の方から…!」
「どうして…僕に会いたかったんだトムリドル…?」
ハリーは怒りに身を震わせながら尋ねた。
「君の話を色々聞いたのさ。実に興味深いことだ君のやってきた事は…信用を得たかった私はあの記憶を君に見せた。最も、ミケルセンのせいで何の意味も成さなかったが。私の興味は今や君にしかない。この際、マグル生まれだろうが純血だろうがグリフィンドールだろうがスリザリンだろうが心底どうでもいい」
「何だって…?」
「ジニーウィーズリーを餌にすれば君はここに来ると踏んだ。憐れなジニーウィーズリーはハリーポッターへの叶わない片想いを日記に記したが私はこれは使えると思ったよ。私にとってこの理解し難い非生産的な考えに沿って物事を考えるのは実に嫌な気分だったけどね…」
「何が言いたいんだ」
「君もジニーウィーズリーに惹かれている。それも何かに引き寄せられるように。君は彼女が入学して以来、常に気にかけて心配していただろう。彼女の文章から伝わってきたよ。特に私が力を得てジニーの様子がおかしくなってからはね。おかげでジニーは君に何度もこの日記を打ち明けようとしてた。っくっくく…体を乗っ取ってハリーを殺すと脅さないといけなくなるほどに…愛とやらは偉大だね。理解に苦しむよ。君がそれを自覚しているのかは心底どうでもいいが彼女への他とは違う“執着”はこの場を整えるのに打ってつけだった。だろう?こうして邪魔者のいない状況を作れたんだ。君は彼女が秘密の部屋に連れ去られたと知ってどう思った?」
「なっ…」
「居ても立っても居られずにここに来たんだろう?あぁ…友達?のジニーの兄も一緒に来てたね。邪魔でしかないからトンネルで分断させたが岩に潰されなかったかい?」
「残念だったなロンは無事だ!」
「そうか。残念だよ」
「そもそも何で僕と2人きりになりたかったんだ?」
「聞きたいことがあるんだ。君がかの偉大なヴォルデモート卿をいかにして破ったのか…ほんの赤子の君が」
「なぜ君がそれを気にするんだ?ヴォルデモートは君より後に出てきた人だろう」
するとトムリドルは空中に文字を書いて並び替えた。そのアナグラムはトム・リドルがヴォルデモート卿であることを指してた。それから身の上を簡単に語って穢らわしいマグルの名前だと自身の名前を吐き捨てるように断じた。そして、自身が最も偉大な魔法使いになるのだと声高に宣言した。それにハリーは異議を唱えた。
「違うな」ハリーは静かに憎しみを込めて続けた。人の心を思いを踏み躙ることに何の罪悪感も感じない輩が偉大な魔法使いになる訳がない。
「何が?」
「君は世界一偉大な魔法使いでも何でもない。人としての何かが欠落してしまった出来損ないの殺人鬼だ。人間以下の下劣そのもの」
「何だと……!」
トムリドルは青白い端正な顔を怒りで染めた。
「聞くのが辛いかもしれないけど世界一偉大な魔法使いはアルバスダンブルドアだ。マクゴナガル先生やミケルセン先生だって偉大な魔法使いだ。君がその輪に一生入る事はない」
「ダンブルドアは記憶に過ぎない私に追放された!ミケルセンとやらは物言わぬ石だ。お望みなら他の教師も狙おうか?」
「ダンブルドアは君の言うほど遠くに行ってないぞ!石になった人もマンドレイク薬ですぐに治療される。君の思い通りになると思ったら大間違いだ」
ハリーは夢中で思いついた言葉と事実を突き付けた。
リドルが顔を歪めながら口を開いたその時だった。不死鳥が組分け帽子を運んできたのだ。拍子抜けしたとばかりに鼻で笑ったトム・リドルは話を戻してどうやって生き残ったのかを聞いた。マグル生まれの母が守ってくれたことを強調して説明したハリーにトムリドルは納得したように愛の呪文で守られたに過ぎないのかと告げると境遇や外見、更には蛇語が話せる事までどこか似通っていると述べた。
* * *
それからトムリドルが蛇語で召喚したバジリスクと杖もなしで戦うことになったハリー。
目を見てしまったら終わりという状況は絶望的だと思ったがフォークスがバジリスクの目を潰したことで少しの可能性が生まれた。それからは防衛術で習った実技が活きた。2年生が教わったのは基礎的な部分が多かったが物理攻撃に対しての回避や距離の取り方は学んでいたからこそ実践できたことだ。
しばらく逃げ続けているとどこかバジリスクの動きが鈍っていた。トムリドルはその様子に苛立ちを隠せないようだった。
「チッ…あの闇祓いめ。なぜ傷が塞がらない。だがいつまでも逃げ続けられないぞハリーポッター!」
ハリーは偶然飛んできた組分け帽子を藁をも掴む思いでそれを握りしめた。すると祈りに応えるように帽子の中から剣が現れた。それを構えると同時にバジリスクがハリーを捕捉した。何度か攻撃をかわしたその瞬間、緩慢な動きに生まれた隙をハリーは見逃さず、バジリスクの頭に剣を突き立てた。
バジリスクを無傷で倒して戻ってきたハリーにこっちの方が都合がいいとトム・リドルは杖を向けて振り上げたが同時にフォークスが再び舞い戻ってハリーの足元に何かを落とした。日記だ。
お互いの動きが一瞬、止まる。
ハリーは無我夢中で先に剣をトムリドルに向かって投げた。最初に呪文が通り過ぎたように剣もどこかに飛んでいくと思いきや剣はトム・リドルの胸を貫通するように貫いた。リドルは手に持っていた杖を落とし、膝を付いた。苦しそうにハリーを睨み付ける事しかできない。
それと同時にハリーは近くに落ちていたバジリスクの牙を拾って日記に突き立てた。
やめろ!という叫びの直後に恐ろしい悲鳴をあげたトム・リドルはそのまま倒れ込み…消えた。
それと入れ替わるように目を覚ましたジニーは震えながら身を起こし、返り血でべっとりのローブを着たハリーと日記が目に入るとダムが決壊したようにドッと泣き出した。
「ハリー、あぁ、ハリー!私…その何度も打ち明けようとしたの!でもあの日記に脅されていっ…言えなかった!ハリーが心配して何度も話しかけてくれたのに!私のせいでみんながごめんなさい!ごめんなさい…!」
「ジニー!落ち着いて…」
ハリーは過呼吸になりかけていたジニーの背中をさすりながら落ち着かせようと言葉を紡いだ。
「でも…でも…、」
「全部終わったんだ。トムリドルはもういない。大丈夫だ」
「私!退学になるわ」
「ならないよ。ジニーは操られてただけだろう?」
「ハリー…!わたし…本当にごめんなさい!」
ジニーはふらついてしまってハリーの胸の中に意図せず、体を預けた。そのまま肩に顔をぐりぐり押し付けながら泣きじゃくるジニーをハリーは受け止めながら頭をなでた。ホークスも彼女に寄り添っている。
しばらく頭をなでて背中をさすっていると嗚咽が少し落ち着いてきたジニーは立ちあがろうとしたがしばらく意識を失って命そのものを吸われていたことも祟ってかおぼつかない足取りで危うかった。
「無理しないでジニー。僕が背負うから掴まれる?」
「ありがとうハリー…」
剣と帽子を丁重に拾うとくそったれの日記をローブのポケットに放り込んだハリーはジニーを背負いながら秘密の部屋を後にした。
バジリスクの抜け殻が転がる洞窟まで戻るとロンがちょうど子供1人抜けられる程度の穴ができるまで瓦礫をどかし終わった所だった。
「ハリー!大丈夫かい!」
「大丈夫だロン!ジニーもいるよ!」
ジニーの無事を確かめると剣や鳥の疑問を後回しにした所でホークスが掴まるように合図した。
ハリーは帽子や剣をロンに預けるとジニーが落ちないようにしっかりと抱きしめながらホークスの片足をジニーに掴ませてその上に手を重ねた。その距離の近さに兄として口を出したい所だったがどっちかというとジニーが力が出ないなりにしがみついてる感じだったので流石に何も言わず、もう片方の足に掴まった。ホークスは力強く羽ばたき、3人をものともせずに飛翔した。
グイグイと高く登り、あっという間に女子トイレまで戻ると少し残念そうなマートルが待っていた。ポリジュース薬は結局、このトイレで作らなかったが度々トイレを訪れていたので密かに期待されていたらしい。
マートルがハリーにお熱だ!ジニーとライバルだというロンのユーモア溢れる励ましにジニーはハリーの背中でわんわん泣くだけたった。
ハリーとロンは全く効果のなかった励ましに若干、苦笑いしているとホークスが静かに鳴き、着いてくるように促した。
「行こう」
「あぁ急がないと」
優雅に廊下を舞う鳥に着いていくとそこはマクゴナガル教授の部屋だった。
「降りるかい?」
「うん」
「大丈夫かジニー」
「ありがとうお兄ちゃん」
自分で歩けていたが未だ震えるジニーにハリーとロンは肩を貸しながら部屋の扉を開いた。
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