Re:Roseliart Online 作:ユイトアクエリア
フィールドを駆けながら敵モブを切り倒しながら、俺はあの赤ローブの言葉を思い返していた。
正直、赤ローブが言ったことを、俺はもうあまり覚えていない。
衝撃の連続で、脳がキャパオーバーしていたのかもしれない。
はっきり残っているのは、「ここは現実である」「HPが無くなれば本当に死ぬ」「クリアの条件は100層まで登り詰め、ラスボスを倒すこと」。
「そんなの...」
不可能に決まってる、という言葉は飲み込まざるを得なかった。
言霊は力、たとえ仮想世界であったとしても、人の意思による力は働かないとは言えないから。
しかし、無謀だとは思わせてほしい。βの時は1000人しかいなかったとはいえ、最前線は6層だったんだ。
それが10倍になったところで、最前線の層数も比例するかと言われれば、NOであることはバカの俺でも分かった。
正直βテスターたちは、MMOゲームというジャンルをフルダイブでやりたかったと考えていた、所謂廃人ゲーマーだった。
もちろん、俺もその一人ではあるが、そんな人間が1000人集まって6層までしか行けなかったのだ。
ゲーマーでもない、フルダイブゲームが初めてなんていう人だっていっぱいいるだろう。
故に、動き出す様な人間は、βテスターかつ廃人ゲーマーか、初心者のくせに妙な自信を持って散っていくような人間しかいないと思った。
そして、思った通り、広場にいたプレイヤーの内、半分ほどがフィールドに出て、モンスターを狩っていた。
さっきまでフィールドに出ていた手練れプレイヤーと、そうじゃないプレイヤーもちらほら見えた。
「ゲーマーばっか...」
これはブーメランだな、と自虐し、次に向かうべき村を脳内マップで検索する。
村の名前は《ホルンカの村》。
クエストを受けて、クリア出来れば《アニールブレード》という4層上ぐらいまでは余裕で前線を張れる、ぶっ壊れ武器が貰える。
フィールドの安全地帯、というかモブがポップしない場所で息を整えていると、声がかけられた。
「あの...βテスターの...方ですよね...?」
驚いた。
ここにいるだけで、βテスターと見抜くなんて。
そして、そう聞くということは。
「はい...あなたも、ですよね」
「はい。えっと...良ければ、一緒に行きませんか?戦力としては、十分だと思うので...」
そう言いながら、彼女は自分の後ろの方に目をやる。
彼女を含めて5人、レベルは考えない事として、武器が標準的な盾持ち剣士1人、レイピア使いが2人、話しかけてきた彼女ともう1人は盾を持たない剣士スタイル。
見た感じ、AGI型が2人、STR型が2人、標準型が1人、タンクも前線もいる、バランスのいいパーティだ。
俺はといえば、STRとAGIを7:3で割り振っている。
要は脳筋ってことだ。手数より1撃の重さで決めるスタイルが、俺には合っている。
「うーん...」
「あ、あの...無理にとは言いませんので...」
ちょっと考える。
俺がここに入ると、前線は3人。
このゲームにヒーラーやウィザードと呼ばれる後方支援役は存在しない...訳でもないが、非常に稀だ。
「いや、一緒に行きましょう」
「そうですよね...って、え?」
「一緒に行きましょう。6人なら対多数でも有利だと思います。それに、目的地も一緒でしょうから」
「あ、は、はい。宜しく、お願いします」
彼女は戸惑ってはいたが、直ぐにパーティ申請を送ってくれた。
挨拶と同時にパーティ参加申請に《OK》とタップし、左上をちらっと見る。
俺の名前の下、1番上がRinRin...きっと声をかけてくれたプレイヤーでパーティリーダー、その下にYukina、Sayo、Lisa、Akoと続いている。
「Yuito...ユイトさん、でいいですか?改めて、よろしくお願いします。」
「りんりんさんでいいのかな。こちらこそよろしく。パーティのみんなも、よろしく」
パーティメンバーの皆さんはとても気楽に話せる人たちで、りんりんさんとフレンドにもなった。
やっぱMMOの醍醐味って多人数攻略だよなぁとかぼんやり思いつつ、雑談を混じえながらゆっくりとホルンカの村へと向かった。