Re:Roseliart Online 作:ユイトアクエリア
「それじゃあ、今から行く村のクエスト説明をしますね」
向かってくるモブは俺が対応してる間、りんりんさんはパーティメンバーにクエストの説明をしている。
目的地は《ホルンカの村》。
クエスト名は森の秘薬。
概要としては、娘の病を治すための薬は、森にいる危険な怪物からしか取れない貴重な胚珠からしか調合できないから、取って来てくれたらうちに伝わる秘剣をあげる、というものだ。
その報酬の剣こそ、《アニールブレード》。
見た目こそ地味なものの、それさえゲットしておけば、攻撃面・耐久面共に3,4層でも十分戦えるようになる、片手剣士にはうってつけのクエストだ。
りんりんさん率いるパーティからは3人+俺、合計4人がそのクエストを受け、全員ゲットできれば最高、出来なくてもパーティ側に2本ほどあれば御の字。
しかし、このクエストの骨の折れる部分は...
「リトルネペントの胚珠ドロップ、だもんなぁ...」
「胚珠、というのは、モンスターを倒して手に入れるものなんでしょうか?」
「あぁ、レアドロップ品だ。いっぱい倒さないといけないから、武器の耐久値、気を付けてね」
そう言うと。
「なんか、倒しちゃうの、可哀そうだよね...」
と、聞こえてきた。
寂しそうな顔で呟いたリサに、俺は無表情で返す。
「そんな甘いこと言ってると、すぐ瀕死になるぞ。あんまりこう割り切るのもよくないけど、プレイヤー以外はプログラムの集合体だ。同じようなやつが大量に沸いて、俺たちを害敵とみなして襲ってくる...まぁ、そいつと同じ思考のやつは二度と生まれないけどな」
「そう、だね。ごめん」
「謝ることじゃない。いつかその考えが、パーティを救うことになるかもしれない。例えば、護衛系クエストとかな」
打って変わって笑顔で言ってから、後ろに沸いた狼型を屠る。
森の秘薬クエストだが、厳密に言えば、ドロップした胚珠をクエスト依頼主NPCに渡すことがクリア条件ではあり、24時間ごとに一人しか渡せない、という制限こそあるものの、さしてそこは問題ではない。
「レアドロップってとこが鬼門だよなぁ...」
「そう、ですね。私も、βの時はだいぶ苦労しましたから...」
レアドロップというのは、ごく低確率、何百、何千分の1という確率でしかドロップしないものである。
「確かにβの時の一層ボス攻略の時は半分ぐらいのやつが報酬の剣使ってた気がするけど...」
「ドロップ率、ナーフされててもおかしくないですからね...」
ノーマルドロップ品を○個集めるクエスト、というようなクエストであれば、根性でどうにでもなるが、レアドロップじゃそうはいかない。
システムが設定した確率はもちろん、自分の幸運パラメーターや運命力が機嫌を損ねれば、いばらの道間違いなし、という訳だ。
「ドロップ率が変わってなきゃ、100倒せば1個は確実に出るから...400は覚悟しといたほうがよさげかな...」
「そうですね...」
20分ほど歩いて、開けた部分が視界に入ってきた。
「到着っと。ここがホルンカの村だ」
足を踏み入れると《
「...犯罪の反対...?」
「圏内だからね。あらゆる犯罪行為や嫌がらせは全部システムコードで弾かれる。まぁ、嫌がらせは圏外でも発動するけど」
圏内ではあらゆる犯罪行為はコードによって阻まれる。
まぁ、そんなことは今話すことでもないんだけども。
「村、というだけあって、あまり大きくないですね」
「あんまり大きいと村じゃなくて街になるからね。でかい街も1層に1つしかないよ」
観光もそこそこに、一行はクエストを始めるためのキーNPCを求め、一軒の家に入った。
「勝手に入ってよろしいのでしょうか...?」
「サヨさん...だっけ?この世界で勝手に入れないのはプレイヤーが所持してるプレイヤーホームだけなんだよ」
「それでは、それ以外の家には勝手に入れると?」
「乱暴に言っちゃえばそうだね。もっとも、クエスト以外で入ろうとは思わないけど」
俺はそう言って、部屋の奥にいた女性NPC...もといお母さんと目を合わせた。
その行動を不審に思ったユキナが、りんりんに尋ねる。
「りんk...りんりん、彼はいったい何をしているの?」
「NPCをターゲットして、話をしようとしているんです。このクエストは、向こうから話しかけられないと始まらないので...」
注釈ありがとう、りんりんさん。
『こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう。お食事を出してあげたいけれど、今は何もないの。出せるのは、一杯のお水ぐらいのもの』
「ありがとうございます、それで大丈夫ですよ」
俺はお母さんから水を受け取ると、椅子に座ってから少し息をついてその水を飲み干す。
人からもらったものをすぐになくしてしまうのはどうかとは思ったが、クエスト進行のためなのでやむなし。
コップをテーブルに置くかどうかのタイミングで、隣の部屋から咳込む音が聞こえた。
「え、今の誰?風邪?」
どうやらさっきの咳をプレイヤーの誰かだと勘違いしたらしいリサが、心配の声をかける。
「クエストの進行度が進んだ合図だよ、リサさん。隣の部屋に娘がいる、っていう設定なんだ。見たことないけど」
「βの時には入ることが出来なかったので...」
咳が聞こえたタイミングで、お母さんの頭の上に黄色い?マークがついた。クエストを受けられる証だ。
「何かお困りですか?」
『えぇそうなんです、娘の病気が治らず...特効薬に元になるものさえあれば...』
お母さん曰く、
『自分の娘は重病に侵され、市販の薬では延命はできても完治までには至らない、特効薬は森に出る怪物が持っている胚珠だというが、胚珠は花付きしか持っておらずそのうえ必ずとれるとも限らない。だから代わりに取ってきてくれれば先祖代々伝わる宝剣を御礼にしたいと思う』
ということだった。
「なるほどね、わかりました。ってわけだ。じゃ、俺は先に」
「私たちも、すぐに追いつきます」
その言葉にグッドサインで応え、家を飛び出した。
「二時方向に『実付き』!」
「五時方向に『花付き』。どうするキリト!」
「ほっとく分には問題ないから、先に花付きをやるぞ!」
「了解!」
暫定的にパーティを組んではいるが、基本スタイルはソロの俺が、どうしてパーティ外の他プレイヤー名を呼んでいるのか。
それにはこのクエストの一番のネック、胚珠のドロップ率が主な理由だ。
森の秘薬クエを受けた俺は、一心不乱にリトルネペントを屠っていた。
花も実も持たない、いわゆるノーマル個体というやつは、クエストMobではないので、無視していてもいい。
しかし、ノーマルを狩ってれば花付きのポップ率も上がるので、戦闘自体は無意味じゃない。経験値が貰えるからレベルも上がる。
しかし、無限に戦闘ができるわけではない。なぜなら武器には耐久値が存在する。
そこで出会ったのが、同じく森の秘薬クエストを受けているプレイヤー、キリト。
現在俺とキリトは、互いの胚珠ドロップを邪魔しないという条件の下、リトルネペントを手あたり次第切り捨てている。
「ちなみにキリト、お前ラックは?」
「ゲームでもリアルでも、ビギナーズ以外は悪いよ、すこぶるな!スイッチ!」
「ラストアタックいただき!!」
花付きの脳天――人間なら脳天にあたる場所、を叩き切り、ドロップを確認する。
「...やっぱナーフ入れただろ茅場...」
「文句垂れてないで、もっと行くぞ」
「へいへい」
このあたりのネペントを狩りつくす頃には、パーティ全員分の胚珠が手に入るのではなかろうか。
そんな勢いのまま、ネペントを刈り続けた。