魔法少女リリカルなのはA's〜紅い蛇と魔導神〜   作:ZERO 紅 零

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高町なのは
高町家の次女で私立聖祥大附属小学校3年生(9歳)。父・士郎、母・桃子、兄・恭也、姉・美由希との5人家族。自称「平凡な小学3年生」。『A's』時にはAAAクラスの魔導師。左利き。

明るく優しい性格で強い正義感を持つが、辛いこと、悲しいことを抱え込んでしまう癖があり、一時期はそれが原因で彼女を心配する友人のアリサとケンカ寸前にまでなった。学校の成績は良い方で理数系が得意(アリサ曰く自分より成績が上と言われるほど。魔法を知ってからはさらに良くなっている)ただし文系(アリサ曰く中の下)と体育が苦手と本人はいっているがどれほどなのかははっきりしない。


第六話

 

 管理局との戦闘から数日。警戒していた仮面の男の気配は八神家周辺からピタリと消えた。どうやらメビウスが警戒を強めていたことを知ったらしい。そんな中今日は、珍しく全員が揃うという日。いつもなら朝から蒐集に出ることもあったのだが、一家団欒。はやては嬉しそうにしていた。

 

 

 

はやて「せや、今日は検診やったな」

 

 

 

シャマル「そうでしたね、急いで支度しましょう」

 

 

 

 毎回、定期的に病院へと検診へ赴くはやて。その付き添いは毎回シャマルである。彼女が回復魔法を使うこともあってか、石田先生の話を一番理解できるということも理由の一つだろう。

 

 

 

はやて「あ!」

 

 

 

しかし、そこではやてが思い出したかのように声を上げる。

 

 

 

シグナム「どうしました、主はやて」

 

 

 

はやて「買い物のことすっかり忘れとった。今日タイムサービスやん」

 

 

 

シグナム「そういえば…」

 

 

 

 聞いたシグナムも、その重要な行事を思い出す。八神家では現在、6人が生活の中で食事をしている。今まで1人であった食事が6人分になるということは、結構な食費となっている。なので、はやては買い物をする時いつも極力安いものを選んでいる。どうしようかと唸っていると、他の4人も考え込む。

 

 

 

ヴィータ「でも今日はあたし老人会でゲートボール大会だし…」

 

 

 

シグナム「私は剣道の道場で稽古を指導することになっている」

 

 

 

シャマル「私ははやてちゃんについていかないと…」

 

 

 

ザフィーラ「私では人型でも怪しまれる」

 

 

 

 ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラはそれぞれの理由で買い物に行くことはできない。ザフィーラ以外、今日彼女達が家にいる理由は近所の人やはやてについての用事によって家にいるためだ。そんな話をしていると、5人の視線が一斉にメビウスへ注がれた。

 

 

 

メビウス「…まさか私?」

 

 

 

シグナム「ほかに誰がいる?」

 

 

 

メビウス「……」

 

 

 

 シグナムの言葉に無言のメビウス。確かにそのようだ。この中で近所の付き合いが一番薄く、かつはやてと共に行動する利点が無い人物といえば、もはやメビウスしかいない。メビウスは小さくため息をついた。

 

 

 

メビウス「メモと財布…行ってくる」

 

 

 

はやて「これも任務だと思えばいいのよ、メビウス」

 

 

 

 こんな理不尽な任務があってたまるかと、メビウスは内心で想う。メモと財布をはやてから受け取ると、メビウスは家を出るのだった。

 

 

 

とあるスーパー

 

 

 

メビウス「(次は人参。あの右はじの奴がいいかな)」

 

 

 

 

 

 メビウスは過去の経験と弟子であったライセンどの記憶で探している。

 

 

 

 

 

 

メビウス「(シグナムの愛用の茶葉は上から2番目、真ん中のメーカー…)」

 

 

 

メビウス「砂糖とこれは…なんだ?」

 

 

 

メビウス「(シャマル、今度は何を作るんだ…)」

 

 

 

 メビウスが取ったその得体のしれない外国の食材。

こればかりは、メビウスも入れたくなかった

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、メモされていた食材を一通り揃え終えたメビウスは、レジで買い物を済ませた。こうして、はやてに頼まれていたお買い物は終わりを迎えたのであった。その帰路についた道で、騒ぎ声が聞こえる。

 

 

 

メビウス「・・・・?」

 

 

 

 それは少し離れた人気のない場所。見れば女の子が数人の男性に連れ去られそうになっている光景だった。前にも似たようなことに遭遇したメビウス。

 

 

 

メビウス「(また誘拐か…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 メビウスはため息をつく。いつの間に自分は人助けの便利屋になったのだろうか。メビウスはその騒いでいた車にゆっくりと近づいた。

 

 

 

メビウス「やめろ」

 

 

 

 車に少女を詰めようとする男の腕を掴む。その様子に男が驚いているが、そのまま男はメビウスを倒そうと拳を振り上げる。

 

 

 

誘拐犯「な、なんだてめぇ!邪魔だ!」

 

 

 

 男の拳がメビウスの腹部にヒットする。

 

 

 

――ボキッ!

 

 

 

 

 

 

誘拐犯「いってぇ!」

 

 

 

 殴ったはずの男の指が折れた。ノーガードだったメビウスの腹部は魔法で固くしていた。人間の手がぶつかればそうもなるだろう。

 

 

 

メビウス「フンっ!」

 

 

 

 その痛がっていた男の手を掴み、一回転させて他の誘拐犯へとぶつける。それによって他の誘拐犯も吹き飛ぶが。ソレを避けた仲間の一人がナイフを取り出し、メビウスに襲い掛かる。

 

 

 

ナイフ犯「死ねっ!」

 

 

 

メビウス「握りが甘い」

 

 

 

ナイフ犯「え!?ぎゃあっ!」

 

 

 

 メビウスはその向かってきたナイフを足で蹴ることで弾き飛ばし、そのまま唖然としている男の顎に目がけて拳の一撃を受けた。男はその攻撃をまともに受けてその場に倒れる。ピクピクとしているところから男は生きていることが確認できるが、今の一撃は間違いなくメビウスが加減しなかったら顎が砕けていただろう。

 

 

 

メビウス「大丈夫か」

 

 

 

 誘拐されかけていた少女は驚きながらメビウスを見ていた。涙目にはなっているが、最後まで抵抗する強い目を見せている。金髪の少女は頷きながら何かを思い出した表情になった。

 

 

 

?「え、ええ…あ、そうだすずか!」

 

 

 

 聞いたことのある名前だった。メビウスがワゴンの中に視線を移すと、そこには手を縛られたはやての友人、《月村すずか》がいた。

 

 

 

メビウス「……(こいつはよく誘拐されるな)」

 

 

 

 そんなことを思いながら、メビウスはすずかの拘束を解いて、そのワゴンに入っていたロープを使い、倒した誘拐犯達を電信柱に縛り上げた。

 

 

 

メビウス「大丈夫か」

 

 

 

すずか「はい。また助けてもらっちゃいましたね」

 

 

 

 と、顔を赤らめながらニッコリと笑うすずか。そんな様子のすずかに、メビウスは小さくため息をつく。

 

 

 

メビウス「君はもう少し用心しろ」

 

 

 

すずか「はい、気をつけます」

 

 

 

 とすずかは頷いているが、そんな風に言う割にはメビウスの言葉がすずかの耳には入っているようには見えない。そのメビウスに助けてもらったということに嬉しさが彼女の中を満たしているらしい。そんな状態のすずかに、一緒に助けた少女がすずかに呼びかける。

 

 

 

?「すずか、この人知り合い?」

 

 

 

すずか「うん、私のお友達の親戚の人」

 

 

 

 と、すずかが紹介する。すると、すずかの友人らしき少女が一歩前に出て、右手を出す。どうやら握手を求めているらしい。

 

 

 

アリサ「あたしはアリサ・バニングス。すずかの友達よ。助けてくれてありがとう。貴方何者?」

 

 

 

メビウス「…八神メビウス。何者、と言われても困るが、すずかの友人の親戚だ」

 

 

 

 そう言いながら、アリサと握手をするメビウス。ちなみに、このメビウスの八神メビウスというのは、姓と名の両方が無いとこの世界では不便だから、というはやての提案によるものである。そのため、シグナム達守護騎士にも、姓には八神を名乗るようにということをはやてから言われている。握手を終えて未だにアリサは納得していない様子だが、すずかはクスクスと笑っていた。この後警察が来て、誘拐犯達は拘束。軽い事情聴取を受けてメビウスたちは解放された。ソレを終えて、そのままメビウスは立ち去ろうとする。

 

 

 

メビウス「ではな…」

 

 

 

すずか「あ、メビウスさん!」

 

 

 

 立ち去ろうとするメビウスに対し、すずかがメビウスを呼び止めた。

 

 

 

すずか「その、お礼をさせてくれませんか?」

 

 

 

 すずかとしては、2回も助けてもらっては、何かお礼をしなければ失礼だと考えたのだろう。しかし、メビウスは首を振る。

 

 

 

メビウス「いらない。私が勝手にやったことだ。見返りを求めるためにやったわけではない」

 

 

 

アリサ「ちょっと、そういう言い方ないんじゃない?」

 

 

 

 と、不機嫌そうにアリサがいう。どうやら、すずかのお礼がしたいという気持ちを一蹴されたことがどうやら気に入らないらしい。そのためか、アリサが「そんなに何かを急いでいるのか」とつっかかる。

 

 

 

メビウス「帰りを急ぐ」

 

 

 

アリサ「ちょっとくらいいいじゃない」

 

 

 

メビウス「食材が腐る」

 

 

 

アリサ「そんな長居させる気ないわよ」

 

 

 

メビウス「…だから」

 

 

 

アリサ「拒否権なし!とっとと来なさい!」

 

 

 

 数回のやりとりでこの少女、アリサ・バニングスはテコでもすずかのお礼を果たさせようとしており、自分が了解しなければこのやりとりは終わらないとメビウスは思う。アリサに言われたメビウスは首を縦に振り、半強制的にアリサとすずかに引っ張られて連れて行かれることになった。先ほどのこともあり、危険を考えた上で現在は3人で大通りを歩いている。

 

 

 

メビウス「どこへ向かうつもりだ?」

 

 

 

すずか「翠屋さんっていうケーキ屋さんです。とってもおいしいと評判なんですよ」

 

 

 

 と、ニコニコ笑うすずか。実は、メビウスはその「翠屋」という名前だけは知っている。はやてが以前すずかに買って来てもらったケーキの名前だったはず。それをヴィータが食べたかったと愚痴っているのをメビウスは覚えていた。

 

 

 

アリサ「ほら、ついたわよ」

 

 

 

 大通りに出て数分。他愛のない会話をしている間についてしまった。翠屋と大きく看板に書かれたその喫茶店。

 

 

 

メビウス「…(離脱するか?)」

 

 

 

 ともメビウスは一瞬考えたが、ここでシャマルに連絡して転送などしたら、その時点で、色々と問題が起きてしまう。メビウスは仕方がなく、店に入ることにした。アリサ、すずかの後に入店すると、店員らしき小さな少女がトコトコとお盆を持って走ってくる。

 

 

 

なのは「いらっしゃい!すずかちゃん、アリサちゃ…」

 

 

 

 小さな店員…高町なのはがそこで言葉を止めた。そこにはいつもの親友、アリサとすずかがいた。だが、今日は一つだけ違う点がある。別の人物…否、自分たちが事件で追っている犯人が目の前にいるではないか。メビウスが武装形態でなくても、その金髪と鋭い目は彼女にとって忘れることはできない。

 

 

 

なのは「あ、あの、すずかちゃん…う、後ろの人誰?」

 

 

 

すずか「えっとね、こちらはメビウスさん。私の友達の親戚の人で、さっき私たちのことを助けてくれたの」

 

 

 

メビウス「……」

 

 

 

 明らかにパニックになっているなのはに対し、メビウスも同じように彼女に気がついた。あの日の夜、ヴィータが襲った少女なのだ…と。メビウスが視線を感じて目をやると、奥の席にはフェイトの姿も見つけてしまった。びっくりしたり、メビウスをジッと見ているフェイトにアリサが首を傾げる。

 

 

 

アリサ「フェイト?ちょっと、あんたさっきから何してるの?」

 

 

 

フェイト「ア、アリサ?ううん!なんでもないよ」

 

 

 

 ここで逃げ出しても二人に不信感を抱かせてしまうだけなので、メビウスはとりあえず案内されるがままに席に着いた。すると、すずかがメビウスにメニューを見せる。

 

 

 

すずか「何食べます?」

 

 

 

メビウス「いや、食欲がなくてな…(プ…プリン………クッ)」

 

 

 

アリサ「あら?そうだったの?それなら、持ち帰りように包んでもらいなさいよ。私とすずかが奢るから。あ、お金は気にしなくていいわ」

 

 

 

メビウス「(この世界のケーキとプリンに興味がある……けど…………まぁ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス「なら、この白いとプリンのをもらおうか」

 

 

 

?「おや、お目が高いね。それは妻の自信作だ」

 

 

 

メビウス「…そうなのか(いつの間に背後へ?この男、ただものではなさそうだ……)」

 

 

 

 メビウスの座っている席の背後に、体格のいい男がやってきた。この店の店主だろう。店主はニコニコと笑っているが、メビウスは彼が只者ではないと確信し、少しだけ警戒しながらメニューに再び目を通す。

 

 

 

メビウス「あとは、あの子らにも買っていくか」

 

 

 

 言いながら店主に数個ケーキを選んで包んでもらえるように頼む。すずかとアリサもケーキを注文して自分たちだけ申し訳ないといいながらケーキを食べてメビウスと会話をする。その際、メビウスは相変わらずフェイトとなのはに見張られっぱなしだったが。時計をちらりと見て、すずかやアリサとの話をうち切ってメビウスが立ち上がる。

 

 

 

メビウス「そろそろ失礼する」

 

 

 

すずか「メビウスさん、もう帰るんですか?」

 

 

 

メビウス「ああ、夕食の支度があるのでな」

 

 

 

アリサ「そ。さっき言ったけどケーキのお金は私達が払うからいいわ。あと、今日はありがとね」

 

 

 

メビウス「気にするな。勝手にやったことだ」

 

 

 

 そう言いながら席を離れ、会計の場所で店主の男からケーキを受け取る。その際、男は笑った表情で口を開いた。

 

 

 

?「君は、何か…とても大き過ぎるものを背負っているようだね」

 

 

 

メビウス「…何?」

 

 

 

 突然の店主の言葉に、メビウスは驚いて目を鋭くして店主を見た。しかし、相変わらず店主は笑顔でいる。

 

 

 

?「何、君がなにやらウチの娘に似ていてね…何かを抱えているがそれを打ち明けていない。自分の中に押し殺して前を向き続けている」

 

 

 

メビウス「……」

 

 

 

?「前を向き続けるのも悪くないが、たまには横でも見るといい。周りにはきっと、君を支えようとする人達もいるはずだからね」

 

 

 

店主の言葉に、メビウスは少し思うところがあるのか、無言でそのまま立ち去ろうとする。しかし、店の扉の前で足を止めた。

 

 

 

メビウス「……店主」

 

 

 

?「なんだい?」

 

 

 

メビウス「感謝する」

 

 

 

 そう一言言い残し、メビウスは見せを後にする。翠屋店主こと、高町士郎はそんな様子に小さくため息をつきながら、そんなメビウスを見送るのだった。

 

 

 

 

 

海鳴市臨海公園

 

 

 

メビウス「……」

 

 

 

 店を出てから、メビウスは帰りのコースを大きく外れ、海鳴市の臨海公園へと足を踏み入れる。なのはたちに悟られないように、遠回りで移動をしたが、そこで異変に気づいて足を止めた。夕方だからかもしれないが、周囲にはまったく人がいない。しかし、以前はやてとここに来た時には襲撃の前ではそこそこ人がいたことを覚えている。メビウスがそう思った瞬間、周囲が結界に覆われ、景色が暗くなった。

 

 

 

メビウス「……」

 

 

 

 メビウスの目の前に、白い服を着た少女と、黒い服を着た少女が空からヒラリと現れる。その後ろには知らない少年と、ザフィーラが前に戦ったという黒い服の少女の使い魔と思われる女性が立っている。そして、白い服を着た少女が一歩前に出た。

 

 

 

なのは「あ、あの!私、高町なのはって言います!」

 

 

 

 後に、管理局のエースオブエース、白い悪魔と呼ばれる少女が紅き蛇魔導神の前に立ちはだかるのだった




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高町 士郎(たかまち しろう)
なのはの父(第1期・『A's』当時37歳)。喫茶店「翠屋」店主、地元少年サッカーチームの監督も務めている。器が大きく、包容力のある人物。「小太刀二刀御神流」正当継承者であり、恭也・美由希に伝えている。かつてボディーガードとして世界中を飛び回っていた際テロに遭い、瀕死の重傷を負うものの無事生還する。しかし彼の看病や実家の切り盛りのため、なのはは少々寂しい幼少期を送ってきたらしい。
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