極東の剣聖   作:ミノたん

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2話

 

 『勇者』フィン・ディムナ。『九魔姫』リヴェリア・リヨス・アールヴ。『重傑』ガレス・ランドロック。『剣姫』アイズヴァレンシュタイン。『凶狼』ベート・ローガ。『怒蛇』ティオネ・ヒリュテ。『大切断』ティオナ・ヒリュテ。

ロキファミリアが誇る第一級冒険者達、全員がLv5とLv6であり世界でも有数の実力者である。そんな彼等の視線の先で巨大な光の柱が立ち昇っていた。

 

モンスターの自爆を回避するため、フィンの指示のもと、十分な距離を離した上でヒカルの戦闘の行方を見守っていた彼等のところまで魔力の余波が届く。押し寄せる突風と衝撃に誰もが目を覆った。

 

「相変わらず規格外だね」

 

「詠唱も無しにあんな事をされたら我々魔導士の立つ瀬がない」

 

「チッ…」

 

フィンとリヴェリアの呆れた様な声にベートが悔しげに舌打ちを放つ。

 

「ねえ!あれって魔剣なの?」

 

「あんな威力の魔剣なんて見た事無いわよ…」

 

「恐らくあれは魔剣じゃなく彼のスキルか魔法だろうね。ただステイタスの詮索はマナー違反だ。くれぐれも質問攻めなんてしないでおくれよ」

 

ティオナとティオネのやり取りにフィンが答え、念の為アイズの方へ視線を向け忠告する。以前どうしたら強くなれるのか、ヒカルに教えて貰おうとストーカー紛いのことをしてしまいリヴェリアに説教されたアイズは逃げる様にスッとフィンから視線を逸らした。

 

「さて、取り敢えずお礼をしに行こうか」

 

アイズの態度に苦笑しつつ、フィンの考えとしては敵対的なフレイヤファミリアと違ってヒカルは友好関係を築いておきたい他派閥の人間のうちの一人だ。さらに先程の新種のモンスターの情報収集も含めて、彼と敵対するメリットはない。唯でさえ自分達より上のLv7の実力者なのだから。そんな事を考えながらフィンはヒカルの方へ視線を戻した。

 

 

◇◇◇

 

 

 

女型のモンスターを討伐した俺は、避難していたロキファミリアと合流し、新種のモンスターの情報交換を行った。結果としてはお互い初めて見たモンスターとの事で今回の戦闘で得られた情報以上の収穫はなかった。挨拶もそこそこにロキファミリアはモンスターの腐食液により装備の大半を溶かされており遠征は中断。既に50階層を離脱し、地上へ帰還しようと出発している。ヒカルも本来の目的であるカドモスの泉の採取は終わっている為、ロキファミリアが離脱した事を確認し地上へ帰る為の魔法を発動する。

 

「【輝き増す黄金(こがね)の空。舞い降りる天の遣い】」

 

詠唱と同時に金色の魔法円がヒカルの足元から広がっていく。

 

「【導きの神。御門(みかど)の紋章。世界を廻す、星の軌跡】」

 

それは未だ誰も発現を確認していない魔法。公表されることがあればダンジョン探索の常識も世界の流通もひっくり返すであろう転移の奇跡。

 

「【開かれる門。時渡りの異邦人。ここに幻想の旅を記せ】」

 

最後の詠唱が終わり、転移魔法が発動する。

辺りを照らす金色の光が収まるとそこには誰もいなかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 迷宮都市オラリオ

広大な面積を誇る円形状の都市は、堅牢な市壁に取り囲まれている。修繕跡から覗く、外敵の迎撃を度外視したその設計は、防壁が持つ本来の目的とは裏腹に、内部より溢れるモンスターに対して築かれた障壁の証だ。長い年月を感じさせるもの言わぬ巨岩の壁は、『古代』当時のダンジョンの要塞としての面影を残している。外界と隔てる市壁の内側は大小様々な建物が立ち並び、そして都市中央には、天を突く白亜の巨塔がそびえていた。地中に開く大穴、ダンジョンの入り口を塞ぐ蓋として建設された摩天楼施設『バベル』。ダンジョンを中心にしてオラリオは今もなお栄え続けている。『世界で最も熱い都市』オラリオはそのようにも言われていた。

 

 

オラリオ北西のメインストリート。『冒険者通り』の名で親しまれる目抜き通りに入れば、ダンジョンを運営管理する『ギルド』がある。荘厳な万神殿(パンテオン)──白い柱で造られたこのギルドの歴史は今から約千年前にまで遡る。古代、モンスターと人類が地上でしのぎを削っていた頃、大穴を塞ぐ蓋の完成が求められる中、その計画は難航していた。そして人類が絶望に染まる中、神々は降臨した。中でも精力的に塔と要塞着工に取り組んだ一柱の神。この地に最初の『神の恩恵(ファルナ)』をもたらし、オラリオそしてギルドの原型となる要塞都市を完成させた神がいた。現代もなお、都市の守護神として多くの者達に崇められているその神の名は──ウラノス。

 

ギルドの窓口、ロビーから進み関係者以外立ち入り禁止の区域さらに奥にその広間はあった。長い年月を感じさせる石造りの祭壇。暗闇を照らす四炬の松明。四角を描くそれに囲まれる祭壇の中心の玉座にウラノスは座っていた。その広間の一角に金色の魔法円が浮かび上がる。光が収まりウラノスが視線を向けるとそこには一人のヒューマンが立っていた。

 

ヒューマン──イチジョウ・光はダンジョン50階層から直接ウラノスの祭壇まで転移した。

 

「戻ったか」

 

「ああ、取り敢えずステイタスの更新お願いしてもいいか?」

 

「わかった」

 

神の恩恵(ファルナ)』──神々が扱う【神聖文字】を神血を媒介にして刻む事で対象の能力を引き上げる促進剤。これは、様々な出来事を通して得られる【経験値(エクセリア)】を糧に眷属達を成長させることができる代物だ。特殊な『魔道具(マジックアイテム)』を除いて、契約を交わした眷属と神との間でしか恩恵の更新は行うことは出来ない。

 

ヒカルの背中にはアマテラスの『恩恵』が刻まれており、ウラノスへ『改宗(コンバージョン)』をした訳ではない。そして大神であっても他神の眷属の恩恵は更新できない。そこで使用するのが魔道具だ。

 

更新薬(ステイタス・ニッチ)

男神と女神、司る権能が異なる複数の神血(イコル)を原料に作られるその効力は、他神のステイタスの更新。他派閥の眷属の更新など普通に考えれば百害あって一利なしの代物だが、意地の悪い主神に生殺しにされている眷属の救済や、間諜に基づく戦力の引き抜きに使われる。用途が用途なので派閥運営を行う主神からは蛇蝎の如く嫌われ、製造されている絶対数自体が少ない。

 

本来なら中々手に入る物ではないが、ヒカルの主神であるアマテラスは極東の地にて多くの従属神の上に立つ大神だ。転移魔法があるとはいえ不便なことは不便なのでヒカルの為に用意させたものの一つである。アマテラスは自身が極東から動けないが故にヒカルのステイタスをウラノスに開示することで、主神が近くにいない事で起こる不都合をウラノスに全面的に協力するようにオラリオ移住の際の取引で約束させている。

 

そして神時代最強と言われたゼウス、ヘラファミリアがいなくなった事で協力者自体が少なかったウラノスはこの取引を了承した。

 

ヒカルの背中にウラノスの神血と更新薬の液体が落ち神聖文字で刻まれたステイタスが浮かび上がる。更新作業が終わりステイタスが書かれた羊皮紙をウラノスから受け取り視線を走らせる。

 

 

 

イチジョウ・光

Lv7

力 :B 792→800

耐久:C 675→678

器用:S 999

敏捷:S 999

魔力:S 999

 

心眼:C

耐異常:D

魔導:D

精癒:E

天道:G

覇光:H

 

《魔法》

【カグラ】

・速攻魔法

・光、聖属性

 

【カミカクシ】

・転移魔法

 

【マガツ・ヒノカミ】

・神葬魔法、詠唱連結

・第一階位(イザナギ)

・第二階位(マガツ・ヒノカミ)

 

《スキル》

剣聖血統(ソード・オリジン)

・発展アビリティ『剣聖』の発現。

・刀剣類使用時、剣撃に高補正、

 獲得経験値上昇。

 

無限光(アマテラス)

・精神汚染、呪詛無効。

・光属性攻撃強化、精神力消費の効率化。

 

八咫鏡扉(ヤタノカガミ)

・異空間への物質収納。

 

紫電一閃(カンナギ)

・任意発動。

・敏捷に超高補正。斬撃威力に敏捷値

 による補正がかかる。

 

聖剣伝説(ラスト・レガリア)

・装備に自身の魔法を付与可能。

・剣撃に対するチャージ実行権。

・精神力消費で損傷、状態異常の自動治癒。《オートヒール》

 

 

 

アビリティはS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iの十段階で能力の高低が示される。基礎能力値を表す五項目の基本アビリティのみに熟練度が発生し、0〜99がI、100〜199がHと、SからIまでの能力段階と連動している。熟練度はその能力分野を酷使しなければ上昇しない原理となっており、魔力を例に挙げた場合、詠唱を何度も唱え魔法を根気よく使用し、更に目標へより強力な効果を発揮することが求められる。ただ魔力や精神力を使用するスキルでも上昇効果は確認されている。

 

また、アビリティの能力高低および熟練度は、戦闘対象の実力が自身と同等あるいは格上であるほど上位の【経験値】を得やすく、結果、値が上昇しやすい。これにLv.の上昇に際して発現が任意可能な──ヒカルならば『心眼』や『耐異常』を始めとした発展アビリティ、魔法、スキルを総合したものが【ステイタス】の全容となる。

 

更新されたステイタスを見てウラノスは昔日のファミリアを思い出していた。ギルドと同様、迷宮都市の誕生から寄り添い続けてきた二大最強派閥。【ゼウス・ファミリア】。【ヘラ・ファミリア】。

二つのファミリアが積み重ねてきた千年の歴史をウラノスは知っている。神時代始まって以降最強の名を欲しいままにしていた眷属達。その規格外といえるステイタスと比べてみても眼前の青年が劣るとは決して思わない。アビリティの上昇具合から見てLv7の器の限界は来ており近いうちにゼウスとヘラの両ファミリアの団長しか到達しなかったLv8の領域に至るとウラノスは確信している。

 

「まあ、こんなもんか…」

 

自身のステイタスを確認したヒカルは無感動に羊皮紙を虚空に収納した。

 

「そういえばフェルズはいないの?」

 

「フェルズは報告にあった新種のモンスターの件で動いて貰っている」

 

「なるほど、俺はクエストの報告もあるしそろそろ行くよ」

 

「ああ」

 

通常のルートでギルドを通ると騒ぎになる為、ヒカルはもう一度転移魔法を使用し、祭壇の間を後にした。

 

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