ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
もし好評であればこちらをメインで書いていこうと思います。
1日で書いた上、そこまでダンまちの知識がないのでもし間違った箇所があれば教えて下さい。
冒険者達が集い、女神の祝福の元に死と隣合わせのダンジョンに挑む街オラリオ
地上がモンスターに蹂躙されないよう常日頃愛用する武器を手に足を踏み入れる者達がいる。
人間だけではなくエルフ、ドワーフ、獣人、多種多様な種族が各々信仰する神々の名の下、明日を得る為に奮闘している。
そんな日々を送り、疲れ切った心身を癒やす場である豊穣の女主人にて冒険者の間でとある話題が酒の肴代わりになっていた。
「なぁ、また
「またか、この前はロキファミリアとやりあったって話だが今度は?」
「フレイヤファミリアだとさ」
「マジかよ、こりゃ嵐が来そうだな・・・・・・」
木樽のジョッキを仰ぎながら呆れ声が零れる。酒と入れ替わるように溜息が吐き出される者達の前にお代わりのジョッキが置かれた。
「随分と萎れてますね?何かあったんですか?」
店の看板娘でもある薄鈍色の髪をした少女シルは不思議そうに彼らに問いただした。
ここでは常に血の気が多い冒険者が常にドンチャン騒ぎが店の装飾の一つでもある。
そんな怒号染みた活気溢れる様子がないのは決まって不吉の前兆を現すのが一連の流れだ。
「あれ?シルちゃんは聞いていないのかい?あの
想像していた通り、この手の話題は決まってモンスターの類だ。その反応を見るに新種の類が確認されたのだろうかと首を傾げるシル
「未知のモンスターということですか?だとしたら厄介ですね」
ここ最近ではそういった話は入ってこなかったのだがありえない話ではない。ここオラリオの外にでさえベテランの冒険者が知りえない生態系が数多く存在しているというのだ。
それが混沌と暴虐の渦を巻く地下のダンジョンであれば尚の事だ。
「いや、そういうんじゃねぇんだ」
既に酒で満たされ、顔を赤く熟したもう片方の冒険者が補足してくれた。
「違うんですか?」
具体的に聞こうとすると目の前にいる飲んだくれと化していた二人は悩むように互いの顔を合わせた。
時間にして数秒程、微かに聞こえる唸り声を終え、再び顔をこちらに向けたのだが、その表情は何とも言い難いものであった。
「すまねぇなシルちゃん、俺達もそいつをどう言い表せばいいのか分からねぇんだ」
「見たことがないんですか?」
「いや、あるにはあるんだが何て言えばいいのかなぁ」
明らかに歯切れが悪くなった人達に更に首を傾げてしまいそうになるシル。
それもそうだ。未知のモンスターといえど見たことがあるのなら何かしらの特徴と呼べるものがある筈だ。
姿、能力、好んで生息している場所、観察しようと思えば幾つも挙げられる。
にも関わらず、苦虫を噛んだような表情を浮かべる冒険者が漸く口を開いた。
「そいつ自体はもうかれこれ数年前から目撃情報があるんだ」
「こう………体中が鋼か何かで出来ていてな?人の形をしているんだよ」
「そんで背中から緑色の光を放っていて、おまけに空を飛ぶときたもんだ」
余りにも予想外の返答に少女はどう返せば分からなくなってしまった。
それだけでも出鱈目な話だというのに冒険者達の口が止まる気配がない。
「おまけに奇妙な遠距離魔法を使ってくると思ったら今度は腕から剣を生やしてきたんだよ」
「ありゃ並大抵の冒険者じゃ一方的にやられるのが関の山さ、それこそこのオラリオの全てのファミリアが団結して戦っても勝てる気がしねぇよ」
つまり箇条書きすればこうなる。
1つ、メタル系のモンスターであること。
2つ、人の形をしていること。
3つ、空中移動する能力があること。
4つ、離れた所へ攻撃する魔法を扱うことも出来ながら接近戦に長けていること。
例えダンジョンに潜らない一般人からしても開いた口が塞がらないだろう。現にその話を聞いた看板娘が手本となっている。
「そ、そんなモンスターが居たら大変じゃないですか!!?どうしてそんな危険な存在を放置しているんです!?」
「いや、太刀打ち出来ねぇっていうのもあるけどよ?それがまた変な奴なんだよ」
まだこれ以上あるのかとそろそろ聞き手として色々と限界なのだが少女の心情を察してかすまないと両手で合わせて無言の謝罪が返された。
「で、その変な理由ってのはよ……誰も殺さないってことだ」
「………へ?」
ついつい間抜けた声が零れ落ちてしまった。今、この冒険者は何て言った?
殺さない?モンスターが?冒険者を?
これまでこの店で数多の冒険者からダンジョンに関する様々な情報は大抵ここ豊穣の女主人で手に入る。
それでもその未知のモンスターとやらの情報が耳にしたことが無かった。
「おまけにどの階層にも目撃情報があるって話だ」
「………え?」
「つまりダンジョンに潜ってる奴全員にそいつと遭遇する可能性があるってことさ、まったく冗談じゃねぇよ」
「じゃ、じゃあ深層にも出没するってことですか!?」
「そういうこった」
「ま、俺達の実力じゃ中層辺りで手一杯だがな」
先程説明されたモンスターの並外れた実態をも凌駕する事実を聞かされ、シルは頭の中で考察された情報が吹き飛ばされた。
従来のモンスターには生息地帯、つまり自分の能力に見合った階層を住処にしている。
そしてそこから上の階層に上がることも、ましてや深く潜ることはありえない。そこには文字通りの弱肉強食、実力主義の世界で構成されている。
ましてや深層に生息することが可能というのであればオラリオの中でトップレベルの冒険者が相手でも勝てる見込みが無い。
それこそ駆け出しの冒険者が出会ってしまったら勝ち目はないに等しいといえるだろう。
「ひょっとしたらリトルルーキーの目の前に現れていたりしてな」
「ベルさん…………」
皆からリトルルーキーと呼ばれ、ここに来てから研鑽を怠らず日に日に強くなっていく彼だが、もしそんなモンスターに遭遇してしまったらまず勝てないだろう。
不安と焦りを誤魔化すようにシルは胸の中で無事であることを祈っていた。
僕達はアポロンファミリアとの
「ベル様、あ……あれは………?」
まだ僕が駆け出しで会った頃にあったサポーターであり、色々とあったけど今では同じファミリアとして共に戦ってきた仲間であるリリが軽く袖を引っ張りながら困惑していた。
「おいおい、こんな奴見たことねぇぞ!」
「こ、こちらも同じく………」
同じく鍛冶職人を目指し、共に戦ってくれるヴェルフ、
その二人も自身の得物に手を添えて臨戦態勢に入っているが戸惑いを隠せないでいた。
それもそうだろう、僕も心臓の鼓動が鼓膜に直接響いている程緊張しているのだから。
決して草木が生えることのない洞窟の岩肌には緑が生い茂っており、色とりどりの花たちが顔を出している。
そんな命溢れる大地の中心には今まで見たことが無いモンスターが佇んで………いや、浮遊していた。
全身は光沢で覆われた体でまるで鋼で構成されたかのような見た目をしており、全体的に丸みを帯びた人の形をしている。
胸の中央を始め体のあちこちには水色の綺麗な結晶体が埋め込まれており、頭部は人の顔を連想される形状になってクリアグリーンに光る両目がある。
背中からは表現のしようがない光が零れており、辺り一面に光の粒子が飛び散っていく様子は何とも幻想的な光景だ。
少し離れたここからでも奇妙な金属音、謎の光の粒子、周囲に起こっている現象。
そして何よりどこからともなく歌が聞こえてくる。まるで母親が眠りにつく子供に聞かせるような穏やかで、安心するような歌が。
僕達はそのモンスターをただただ傍観してしまっていた。
そして、正体不明のモンスターがこちらにゆっくりと体を向け、目が合った。
「っ!?やるしかねぇ!先陣は任せろ!!」
「ヴェルフ!?」
冒険者としての本能が先に働いたヴェルフは背中に背負っている大剣を振り下ろし、モンスターへと駆け出した。
「こちらも先行します!リリ殿は援護を!」
「わかりました!」
「命さん!?リリ!?」
続いて命さんが刀に手を置いてヴェルフの後に続き、リリは離れた所から腕のボウガンに矢を装填し始めた。
皆、普段通りに動いているにも関わらず、僕はどうしてかヘスティアナイフを抜くことが出来なかった。
もちろん未知との遭遇に緊張しているという事もある。モンスター相手に躊躇していればこちらが殺されてしまう。それはこのオラリオのダンジョンに身を投じる者であれば誰もが理解していることだろう。
だがそれ以上にあのモンスターには敵意ではない何かを感じてしまう。
「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」
戸惑いを隠せきれない間にヴェルフの怒号が洞窟に響き渡り、身の丈程ある大剣を掲げて力の限り振り下ろそうとする。
しかし目の前にいる金属体のモンスターに狼狽える様子はなく、右腕をクリスタルの結晶体のような形に変貌させ、それが瞬く間に砕け散り、大幅の両刃が姿を見せた。
緑色に発光する不思議な刃を用いて右腕だけでヴェルフの渾身の一撃を微動だにすることなく受け止めてしまった。
「な!?」
鍔迫り合いする間もなく押し負けてしまったヴェルフはその場から吹き飛ばされてしまうも隙を狙っていた命さんが既に背後にへと回っており、すれ違い様に居合切りを放つつもりなのだろう。
僅かに鞘から覗く刀身がモンスターへと狙い定め一気に抜刀したのだが飛び掛かった刃が背中から生えている触手らしきもので受け止められていた。
「そんな!?」
よく見ると触手の先端はいつの間にか刃が形成されており、命さんの全体重をかけた一撃に微動だすることはなかった。
「離れてください!!」
「くっ!!?」
リリの合図に従い、命さんはそのまま大きく後ろに飛び去った。
標準を定めたリリはボウガンから矢を放つ、モンスターの首元に飛翔するも難なく片手で受け止められてしまう。その結果に舌打ちをするリリだが次に起こった現象に再び驚愕を強いられてしまう。
受け止められた矢は投げ捨てられることなく、体の中へと取り込まれてしまったのだ。
今度は反撃に動いたのかモンスターは左腕を上に掲げた。
すると周囲から光が発生し、そこからダガーのような刃が複数顔を出してきたのだ。
そのまま掲げた左腕を前に突き出すと召喚された緑色の刃達はまるで自我を持っているかのように飛んでいき、光の軌跡を描きながらヴェルフ達へと襲い掛かったのだ。
ただやられるわけにいかないと打ち落とそうとするも四方八方に飛び散るそれらに対応出来なくあっという間にヴェルフの大剣と命さんの刀が無残にも細切れにされてしまった。
「冗談だろ………なんでこんな化け物が中層に居るんだよ!!」
「これは下層……いえ、深層に居てもおかしくはありません!」
呆気ない結果を前に絶望するも刃達は勢いが止まる気配がない。今度は自分達に襲い掛かるかと睨むが次第にとある違和感を覚え始めたのだ。
自分達の得物よりも遥かに優れた切れ味を持つ奇妙な刃達は周囲に飛び交うままでこちらに襲い掛かる気配はない。
やがて光を放つ刃達は本体であろう未知のモンスターの所へと戻っていった。
そんな事態に剣を交えた二人は呆けてしまった。
普通であればあの刃に切り裂かれ、残酷な末路を辿ってしまうとばかり思っていた。
なのに冷静になれば破壊されたのは武器のみで未だ五体満足のままだ。
「よせ………」
困惑の渦の中、透き通った男性の声が聞こえてきた。
近くに自分達の他に誰か居るのかと見渡すも姿は確認できない。
「お前達と争うつもりはない………」
声が聞こえる方向を頼りに視線を向けるもそこには金属体のモンスターのみ、他には誰も居ない。
つまり、声の主は……
「まさか………だよな?」
「し、信じられません……」
この状況で考えられるのはただひとつ。
声の主は今対峙している目の前のモンスターだ。
「モンスターが………」
「言葉を話した?」
モンスターが人語が話す。これが一番衝撃を受けた。
ありえない現実を前に全員構えを解いてしまった。そうせざるを得なかった。
「更なる対話を果たす為に、俺は、進み続ける…………!」
目の前に浮遊するモンスターはそう告げ、召喚した刃達を自分の周囲に配置すると背後から大きな光を発生させた。
そのままゆっくりと光を潜り抜け、聞きなれない光の音と共に消え去った。
「な……何だったんだよ……今のは?」
「対話をする………?モンスターが?」
置き去りにされた僕達は咲き誇る花々を見つめ、空白となってしまった頭の中でその言葉を反復することしか出来なかった。
これは、