ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
評価者
ユズみそさん
狸王さん
NEETMANさん
むぎ丸さん
サイアールさん
丸餅Zさん
とらんざむせっちゃんさん(←同志がいたとは………)
評価有難う御座います!!!
僕は今、心の中で決して紐解けない疑惑に苦戦していた。
例えば自分が想像する未来の結果というものがある。
きっとあのようになるだろう、このように収まるだろうと見当がつく。
だが仮にそれが違っていたとしてもなんだ間違っていたのか、そうなってしまったかと、過ちを認め、区切りをつける。それが人というものだ。
しかし、人生において絶対的な物事ばかり降り掛かってくる訳ではない。
何故?どうして?
そう思わざるを得ない出来事を前に人は考え、悩み続けるだろう。
そしてどう足掻いても納得出来る結果を得られなかった場合、大半の人はその事に対する思考を放棄するだろう。これ以上は無駄だと区切りをつけるからだ。
だけど今の僕にはそんな区切りをつける事は出来なかった。
ガンダムというモンスターは冒険者に対し対話を求めようとして決して自ら攻撃を仕掛けることはない。
それどころか自分を殺しに来ているはずの相手に報復はせず、ただ見逃すばかり。
圧倒的な力を持っているにも関わらずにだ。
一度しか会っていないけど僕には敵意は無いと心の中でそう思っていた。
逆に言えばそれ以外は全くの未知だ。
ガンダムが何を考え、何を目指しているのか、何一つ計り知れない。
そんな疑惑に捉われる中、アリーゼさんから放たれた一つの事実によって、僕はまた深い暗闇の中に沈み込んでしまった。
ガンダムに命を救われた。
確かにそう言葉にした。夢の中ではないかと周りに居たアストレアファミリアの人達も気まずそうに目を逸らしたり、俯いたりと否定しないというように佇んでいる。
「救われたって………そんな………」
「うん、そういう反応になっちゃうよね」
赤髪の少女は困った笑みを浮かべているが、自分が今何を言ったのか理解しているのだろうか?
モンスターが冒険者の命を救うなんてそれこそ天変地異としか言いようがない事柄の筈だ。
「事の始まりはダンジョンで
「………暗黒時代」
「そう、そして奴等は大量の火炎石を爆破させ、私達を生き埋めにしようと罠を張っていたの、でもそれは全員無事という失敗に終わり、あのまま何も起こらなければきっと
「あれって………ガンダムですか?」
「いいえ、違うわ」
するとアリーゼさんは懐から一枚の書類が出した。そこには蜥蜴のような姿が描かれており、不気味な赤い目に鋭利な爪、まるで骨を組み合わせたかのような体、少なくとも僕がダンジョンで見たことが無いモンスターだ。
「ジャガー……ノート?アリーゼさん、このモンスターは?」
「私にもよく分からない、あの後にギルドからはダンジョンが必要以上に破壊活動を行った者を排除する存在だとしか聞かされてなくて実際の所は良く知らないの………そして、突然ダンジョンの天井からこいつが生まれ、そして不意を突かれた私達に襲い掛かろうとしてきたわ…………その時だった」
アリーゼさんは手元に置かれていたガンダムの資料もとい、肖像画を見てどこか懐かしそうにしていた。
「突然、光を帯びた何かがジャガーノートを吹き飛ばしたの、そしたら空の上に光の門が浮かび上がってそこからアレが姿を現した…………もう私達には何が何だか理解が追い付かなかった」
「…………ガンダム」
「そこからはあっという間の出来事だったわ………そのモンスターを難なく、呆気なく倒してしまったの」
「その後は…………どうしたんですか?」
「今度は私達がガンダムに襲い掛かったわ!」
真剣な口調からまた一変し、最初の頃の陽気なものへと風変りしてしまった。どう反応していいか分からなかったけど、取り敢えず開いた口が塞がらなくなってしまったことは確かだ。
「ま、まさか…………」
「ええ!そりゃあもうこちらも呆気なく押し負けてしまったわけ!」
アストレアファミリアの戦力がどれほどのものかは把握しているわけではない。けれどそうなってしまうと、当然の結果だと思うのはおかしいだろうか………
「そこからはまぁ………想像の通り、誰一人殺されることは無かったわね」
やっぱりだ。だが、僕が聞きたいのはそこから先の事、始めにアリーゼさんが放った言葉の顛末を耳にしたい。どうしてガンダムが人を助けたのかそれを確かめたい。
「次に驚いたのはガンダムが言葉を話したことだった、危害を加えるつもりは無い、戦う意思はないって答えたの………だから私は聞いてみたの、どうして助けたのかって………」
僕は固唾を吞んでたった数秒という長い時間を待った。
『人間の命は、失えばもう、二度と戻りはしない…………』
返って来たのは僕が望んでいた答えだったものかもしれない、だけど、受け止めるには余りにも衝撃が強すぎた。
ダンジョンから生まれてきたモンスター達は侵入者である冒険者達を見つけた瞬間から排除しようと襲い、獣のように牙や角、爪で肉を切り裂こうとしてくる。
向こうに人道的な概念というものは存在しないはずだ。
残酷なまでに冒険者達を追い詰め、捕食する。
抗えば、逃げれば生き延びて、そうでなければ死という純粋な事実だけが残る。
だがあのモンスターは人が生きている事を理解している。そして、死んだらそれで終わりだということを知っている。
誰も殺す事はなく、それどころか助けようとしている?
そのダンジョンから生まれた存在が?
今ここでその答えを得られることは出来ない。
「…………これが今私達が知りうるガンダムの全てよ」
アリーゼさん達からガンダムの話を聞いた後、僕は太陽が沈みかけている街中に居て、いつの間にか自分のホームへと足を進めていた。
頭の中が容量を超えるほどの情報に圧迫されているのか、あり得ない事が現実で起きている事へ素直に受け止めきれていないのか、体の重心が定まらない。
その所為で自分で自分の足を引っ掛けてしまい、危うく転びそうになった。
バランスを失った体は前に前にと暴走して、ついに止まれたのは前から歩いてきた人の胴体に目掛けて顔面で衝突した後だった。
「す、すみません!大丈夫ですか!?」
「いや、問題ない…………」
目の前に居る黒髪の男性は穏やかにそう応えたが、此方としてはかなり勢いを付けて衝突した感覚がある。
本当にどこも怪我をしていないか心配するけれど男性は軽く会釈だけ済ませて何事もなかったかのように横を通り過ぎていった。
それにしても凄いな、そこまで大袈裟な事を言うつもりはないけれど、あの人は微動だに動いた様子がなかった。
何かしら武術でも習っていたのだろうか?
「あ、あの!」
今度会えたら何かお詫びでもしなければと振り返ったらもう既に男性の姿は無かった。
近くには脇に逸れる路地がある訳でもないのに………
「ベルくーん!!」
何処に行ったのだろうかと見渡していると後から呼びかけられ意識を逸らされてしまった。
「神様!!」
視線を変えるとそこにはこちらに向かって全力疾走で走り寄ってくる僕が所属するヘスティアファミリアの主神が見えた。それに続いてヴェルフやリリ、命さんが後に続いてやって来た。
そういえばアストレアファミリアの方々とはかなり長い時間話し込んでいたからもう皆は食事を済ませてしまった上、中々帰って来ないから向こうから出向いてくれたのだろうか?
「随分と長話のようだったなベル、で?どうだった?例のガンダムって奴の有益な情報は手に入ったのか?」
「うん………まぁね、その話はホームに戻ってから詳しく話すよ」
流石に今日アストレアファミリア、というよりアリーゼさんから聞かされた話は追い追い打ち明けることにしよう。
今すぐ皆に伝えてもきっと数時間前の僕のように混乱の一色に染まる未来しか想像出来ない。
「どうかしましたか?ベル様?」
「顔色が悪いようですが……何処か具合でも?」
「う、ううん!何でもないよ!!」
気になることはまだ山ほどある。春姫さんの事、イシュタルファミリアの事、明日もまたきっと忙しいのは間違いないだろう。
取り敢えずはまた慈善活動をきちんと済ませてからだ。
そう意気込んだ途端、腹部から盛大に訴えてきた。
「……先ずは腹ごしらえからかな」
考えるのは…………後にしよう。
俺はこのオラリオの大地を踏みしめるのに約7年も掛かってしまった。
すれ違うのは人、人、人…………ゼノスのメンバーを除けば本能的に襲い掛かるモンスターは一匹たりとも存在しない。
しかし、絶対に安全とは断言することは出来ない。何かしらの人の悪意は少なからず存在する。それは前世でも言えることだ。
だが、こうして直接命を奪われる心配はない。その事実がより足の動きがより一層、爽快に感じてしまう。
そういった感傷に浸っていられるのも束の間、既に暗闇がオラリオを包み込み、静寂が包み込み、道が狭まるに連れて人の数も減っていく。
やがて無人と化した通路は掃除というものを一切行っていないのが原因か、まるで人々から忘れられたかのように苔が所々生えている。
到底人が寄り付かないであろうこの場にたった一つの気配を察し、それに反応するようにゆっくりと歩んでいた足も止まる。
すると建物同士の間、人ひとりがやっと通れる程の幅の通路から黒いローブを身に纏う賢者……もとい愚者フェルズが姿を現した。
「漸く来たか…………ついて来い」
フェルズはそう述べ、何処かへと歩を進んだ。それに対しこちらは何も聞く事もなくその後を追いかけていく。
「貴様が奇抜なことをするのはもう慣れたつもりだったが…………まさかこんな方法でここに来ることになるとはな」
目の前で周囲を照らす程度の灯りを持ち、進み続ける愚者は振り返ることなく皮肉が込められているであろう言葉を投げ掛けてくる。
やはり以前オッタルとの闘いの事をまだ根に持っているのだろうか?
会話していくうちにオラリオの街はずれから壁全体に何かしらの模様が刻まれた人工的な薄暗い通路へと景色が変わっていく。
ある程度進むと行き止まりにぶつかってしまうも前を歩く案内人はゆっくりと正面の壁に手を翳すと壁中に彫られている模様達が一斉に光を帯びていく。
それに呼応し、目の前の壁がゆっくりと開かれていく。
「私はここまでだ」
フェルズはそれだけ言い残し、もと来た道へと姿を消していく。
開かれた入口を通ると見えてきたのは複数の灯りのみで中央には王座にも見て取れる椅子に老けた男性が座っていた。
「神ウラノス………………」
「フェルズを通して連絡のやり取りは行っていたが、こうして会うのは初めてだな?ガンダム…………いや、今は人の名を名乗っているのだったな」
「……………」
「では改めて聞こう………お前は私に何を求め、何を望む?刹那・F・セイエイ」