ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
評価者
ただやんさん
呪天さん
ヤーパムさん
れいもんどさん
評価してくださり有難うございます!!
俺は木箱に詰められ、ダンジョンからオラリオに、地上に運ばれている。
ガラガラと木製の車輪が歪な道のりを乗り越える音を鳴らし、上へ上へと昇っていく。
「すまない、オラリオまであとどれだけ掛かるか?」
(あのー、すみません。これってあとどのくらいで着きますか?)
「あ、あと……もう少しです!」
今乗っている………いや、正確には乗せられている巨大な木箱は
風化して僅かばかりに空いた隙間から御者に問いかけると、向こうは肩を大きく竦ませ、声が震えている。
無理もない、何せ乗せているモノが人ではなく、モンスターを乗せている。それも地上を騒がせている程の噂となっている存在だ。緊張するのは分かるが別に取って喰う訳じゃないんだからせめてもう少し落ち着いた様子を見せてくれないとこちらも妙にそわそわしてしまいそうだ。
勘違いされそうだがこれは別に冒険者達に倒され、捕まった訳ではない。自らこうして外から完全に遮断された状態、荷物のように運ばれているには理由がある。
その理由としては至って単純だ。アイズやオッタルとの闘いを終えた後、俺は考えた。このままでは冒険者達の猛攻が行われるばかり、俺が対処すれば良い話だが、ゼノスの活動に対する悪影響が大きくなり過ぎた。
そこでフェルズにとあるお願いしたのだ。
オラリオに出ると…………
最初は反対された………猛反対された。
というより、ガンダムの姿でどうやって街に出るのだと突き付けられたのだがそこは自慢げにELSの擬態を用いて刹那・F・セイエイの姿に変異させると一瞬だけ驚愕した後、呆れられてしまった。ふむ、流石にELSネタにも耐性が付いてきたのかな?流石は元賢者。
其処からは渋々だが協力する形で事を進め、群衆の主であるガネーシャの助力もあってか、時間はそう掛からなかった。
普段であれば瞬きする程の時間で移動できる道のりを数時間も掛けて移動し、怪物祭が開かれている闘技場に着いた頃にはもう既に夜空に覆われており、涼しい風が退屈で固まった体を労ってくれる。
人払いも済ませ、木箱から身を乗り出すとここまで護送してきたガネーシャファミリア達が周囲を警戒しつつも、先程から視線がこちらに向けられているのが感覚で伝わってくる。
「俺がガネーシャだぁぁぁ!!」
そんな中、筋肉隆々の神が一人、自慢の肉体を魅せるポーズを取りながら大声で高らかに自己紹介を行ってきた。
半ばスルー、もとい無視してゼノスを知るファミリア達の協力でダンジョンからオラリオの街に出ることが叶った。
本来であればアルテミスの救出時のようにGN粒子を用いた瞬間移動という手もあったが、もしものことがあるとフェルズに止められてしまった。
ついでにいえばどのようにダンジョンから抜け出したかもバレてしまった。俺としたことが痛恨のミスである。
途中ベル・クラネルに接触したことを除けばこれといって何事も滞ることなくギルドにいるウラノスまで辿り着く事が出来た。
「では改めて聞こう………お前は私に何を求め、何を望む?刹那・F・セイエイ」
「俺の望むものは今も昔も変わらない、争いを必要としない未来だ…………」
(そりゃ、戦いを失くすことだけど?)
「それは他者に向けての願いだ、お前個人の願望はどうなのだと聞いている」
「俺自身が望むもの………?」
(願望ねぇ………?)
「平穏な日々を手にし、人とモンスターが手を取り合う世界………それはゼノス達も望んでいる未来だ、それとは別に空を見上げたい者、誰かの温もりを求める者、大空を羽ばたきたい者、各々憧れる目標がある、刹那よ…………貴様はないのか?」
此処で今度は俺が考えさせられることとなった。確かに争いを根絶するための対話は原作に沿った設定であって俺個人という願いはあまり定義されていない。うーむ、今から考えるにしてもすぐには思いつかないな。はてさてどうしたものか?
平和を手にし、オラリオにとってゼノス達が当たり前の存在になったとして、そこでめでたく幸せに暮らすとしよう。答えはNOだ。理由は至って簡単、その後がつまらなさ過ぎる。
そんなの所謂あれだ。ゲームでストーリー全クリした時の気分と同じだ。達成感を味わいつつもやることやって満足してしまったが故の停滞を感じてしまうアレがある。
かといっても今この現状を今更放っておくことも出来ないし、もっとこうオープンワールドで…………そうだ!!
俺としたことが何故こんな簡単なことを忘れていたのだろう。何故こんな狭い考えをしてしまっていたのだろう。長い間、ダンジョンに住み着いてしまったお陰ですっかりモンスターという固定概念に囚われてしまっていた!
「今まで考えたこともなかったが、もしオラリオが平和を手にすることが出来れば…………」
(んー、今の所特に無かったけど、もし仮に平和になったら………)
「…………」
「俺は皆の前から消え去る…………それだけだ…………」
(こっそり一人で旅っていうのも悪くないかも!こう、スローライフ的な部分も含めてね?)
そう答えると一貫として無表情だった神ウラノスは目を少し見開いた。それもそうだろう。モンスターが地上に訪れ、こうしてギルド内に居る自分の目の前に立っている事ですら前代未聞。
本来、オラリオに平和を取り戻し、人間とゼノスが手を取り合って生きる未来を考えていたのだろう。少しばかり翻訳機能で変な内容になってしまったが、要は一人で自由気ままに動きたいと述べるのだ。それは驚くだろう。
「………どういうことだ?」
「ガンダムはあくまで紛争根絶の為の存在だ、そのような場に居ては漸く手にした平穏に何が起こるか分からない……………」
(ほら?俺の存在ってあまりにも浮き過ぎてしまうっていうか、目立ち過ぎるっていうか………ね?)
「だから此処から消え去ると?その割には随分とオラリオに住まう者達を気に掛けているように見えたが?」
「否定はしない、だがそれこそ俺という存在が彼らの成長の妨げになってしまうと確信している部分がある…………」
(んー、まぁ確かに気になると言われたらそうなるけれど…………今更ではあるが、これ以上原作崩壊は避けたいところなんだよねぇ)
「…………」
「いずれその時が訪れたら神ウラノス、協力して欲しい……オラリオからガンダムという存在を完全に消し去って欲しい……………」
(だから、そうなったら色々と痕跡を消して欲しいってか、融通を聞かせて貰いたいってことだ!俺からは以上!!)
「………………」
こちらの切実な願いを声にし、必死に訴えかけるも目の前に居るギルドの主神からは僅かばかりの唸り声と沈黙しか返ってこない。やはり駄目だろうか………
「……頼む!」
(ね?お願い!この通り!!)
「……………分かった。いずれ、その時が来たらそうしよう」
「用は済んだ、邪魔したな…………」
(良しっ!じゃあ要件は終わったから帰るねー)
良いぞ良いぞ♪ギルドの主神であるウラノスにこの約束を取り付けることが出来た事は大きい!オラリオに出られた事も相まって尚の事気分が良い!こんなにも足取りが軽く感じたのは何時以来だろうか?
ついでにベル・クラネルの様子でも遠目から確認するとしようか、まぁ恐らく今頃フレイヤファミリアによって歓楽街は火の海になっているだろうし、もう手遅れ感は半端ないだろうけど…………
エルスクアンタもとい、刹那・F・セイエイをウラノスの下に送り届け、私は本来の役目であるベル・クラネルの動向を確認していた。
イシュタルファミリアによる
オラリオの中でもそれなりに名の有る派閥の消滅……………それを考えればこのような惨状になるのは想像に難くない。
それよりも気になるのはいつの間にか戻っていた彼が見晴らしのいい建物の屋上で私と同じようにこの光景を眺めていた。
「もう戻ってきていたのか、案外早かったのだな?」
近くまで寄り、話しかけるも目の前にあるこの惨状から目を離す事は無かった。やはり元から争いごとを好まない言動を取っている彼にとってはあまりにも沈痛な心境なのだろう。
「遅かったか……………」
ただ一言、聞こえるか否かの音量で零した。
「…………仕方あるまい、あれだけの派閥同士の衝突だ」
もし一連の出来事の始まりに彼がこの場に居たら問答無用で武力介入、鎮圧化を図ろうとしただろう。だがそれは逆効果でしかない。
ガンダムの力は壮大だ。かつてダンジョン内でエルスクアンタの能力の一端を見させてもらった事がある。一言でいえば常識が無いと言えよう。
あれはあまりにも異質で、強大で、圧倒的だ。かつての存在した二大派閥、ゼウスファミリアとへラファミリア、彼の者達がガンダムに戦いを挑んだとしたらと思うと想像を絶する。
そんな存在が今、ベル・クラネルの元に現れたりでもしたらその後に起こる光景は無意味な支配と蹂躙しか起きない。そこから生まれるものは間違いなく恐怖、見た者は怖れ、慄き、己が手にする武器を放棄せざる負えない事だろう。
無論、この者がそんなものは望んではいないだろうが、今だけはこの場に居なかったことに心から感謝している。
するとこの惨状を背に彼はゆっくりとその場を去ろうとしていた。
「もういいのか?」
「後は彼の問題だ、これ以上は無意味でしかない……………」
「…………わかった」
僅かな会話の後、彼は暗闇の中へと姿が消えていった。私としても既に確定した結果を眺める程、暇を持て余してはいる訳ではない。これからもやることは山ほど積み重なっている。
急がなければ……………
イシュタルファミリアの野望を打ち砕いた。
アイシャさんとの戦いに勝った。
春姫さんを救うことが出来た。
底しれない達成感、今まで無視していた疲労感、一人の女の子を助けることができたという事実が生み出す高揚感、それらが夜明けの光と共に薄れていく。
「クラネル様…………」
気を失っていた春姫さんも目を覚まし、春姫さんを縛っていた首輪を破壊すると同時に一気に押し寄せてきたのかその眼には大粒の涙が溢れ、次々と零れていった。
たった一夜の出来事で今まで閉じ込めていた多くの感情が抑えきれなくなったのであろう。
「ありがとう…………英雄様」
「ハハハ………前に春姫さんから聞かせて貰ったお話のように格好良くありませんけど…………」
「いいえ、そんな事はありません、こうして助けてくださったことは紛れもない事実なのですから」
やや自虐めいた言葉を溢してしまったけど春姫さんは微笑みながら否定してくれた。
「ベルくーん!!」
すると目の前から神様やヴェルフにリリ、それに命さんを始めとしたタケミカヅチファミリアの方々が迎えに来てくれた。
「行きましょう春姫さん」
「………はい!」
イシュタルファミリアとの決着はついたけれど、まだこれで終わったわけじゃない。
ダンジョン攻略もそうだけど、ガンダムの事だってまだ良く理解しきれていないんだ。
また明日からダンジョンに潜って、ガンダムの捜索を行いたいし、これからは今まで以上に忙しくなることだろう。
けれど、今はこの戦いの勝利を素直に喜ぶことにしよう。
今はそれだけで十分だ。