ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
異端児編では暴れますから!!
そして誤字脱字があれば報告よろしくお願いします!!
今回の評価者
RIZE.DUMMYさん
豚缶本さん
睦月透火さん
騎ノ原 騎覇さん
青竹さん
評価ありがとうございます!
今日のオラリオは晴れやかとはいかず、雲が大空を覆い隠している。
これから雨が降ろうとでもいうのか空気中の湿度が増えていく一方、作り物とはいえ、肌に不快感を覚える湿気が纏わりつく。
ELSによって精巧に作られているとはいえ、感覚さえも本来のそれと遜色ないほど模倣しているというのは人の目を十二分に欺くことが出来るとはいえ、比例するように不便な部分も生まれてくる。
例えば汗もそうだ。別に内臓までも模倣する必要はない為、備えてはいない、だからオラリオの外周を何周も全力疾走したとしても汗一滴どころか息切れをすることもない。
だが、今の俺はこめかみから一滴の雫が垂れているという非常事態、現象が起こっている。なぜなら……………
「貴様が刹那・F・セイエイだな?」
落ち着け、向こうは俺がガンダムであることは気付いていない筈だ。ここは冷静に対処しなければ折角のオラリオ生活もたった数日で終わりを告げてしまう。
「そうだが、俺に何の用だ…………?」
(そうだけど……何か?)
「我が主が貴様との対談を所望されている、来てもらおうか」
やはりというべきか……………女神フレイヤ、まさかこんな形で接触を図ってくるとは予想外としか言いようがない。どうにか豊穣の女主人には訪れないよう避けてはいたのだが、それが仇となったか。
フェルズからは神々との接触は何としても回避しろと口酸っぱく忠告されてはいる。だが、ここで拒否されてしまっては無用な疑惑を掛けられてしまう可能性も大いにある。今の俺が出来る返事は唯一つ。
「わかった…………」
「ついて来い」
屈強な背中の後を追いかけ、俺はバベルの塔の最上階に招かれた。さすがオラリオの象徴ともいうべきあの巨大な建物の頂きという事もあってか街の全貌が視界に収まってしまうくらいだ。
「いらっしゃい」
妖艶な姿と声で迎え入れたのは現オラリオで屈指の冒険者達を統べ、全てを魅了してしまう美の女神。
「女神フレイヤ…………」
「初めまして、刹那・F・セイエイ?」
優雅に座りながら
それはとても嬉しそうでありながらも何処か狂喜と危険と未知を孕んだものだ。どうしよう、もう帰りたくなってきた。
「オッタル、暫く彼と二人で話がしたいの、席を外してくれるかしら?」
「なりません、フレイヤ様に万が一の出来事が無いためにも離れるわけには________」
「オッタル?」
「…………承知しました」
主神の我儘、もとい命令によって、
部屋の中は静寂によって支配される。だが心の中は対照的に騒ぎ立てている。
「これで心置きなく話が出来るわね?座って?」
促されるように俺は女神と対面する形で腰を下ろすと女神はそれを見届けると同時に舌なめずりを行った。ただ単に口元に付着した
陽光が部屋の半分しか照らさないにも関わらず、その眼は奥深くにギラギラと輝いている。
ここから先は下手に口を出すとあれやこれやと情報を抜き取られてしまう。神々は人の嘘を見破ることが出来る。それを打開する手段はたったひとつ、当たり障りのない発言と沈黙を全面的に押し出すしかない。
「単刀直入に言うわね?…………貴方、私の
「何故だ……………?」
「面白そうだから」
やはり、というべきか………この手の要求は大方予想は出来ていた。自分の欲しいモノはどんな手を使おうと手に入れようとするのが女神フレイヤ、そして今回
「それで?返答は?」
「拒否する…………」
(だが断るっ!!)
「理由は?」
「女神フレイヤの眷属になる道理も利害もない………冒険者を目指すつもりがない俺には不必要だ………」
(冒険者にはならないからあんたの眷属になれないし、なる理由も無い!後メリットがない!)
押し寄せてくる言葉の波を受け流し、動揺の欠片は一切見せないようにする。一瞬でも油断すれば瓦解が起きかねない。
しかし、即座に拒絶された女神はさも予想していたと言わんばかりに余裕を浮かべている。恐らくこれは挨拶替わりだろう。
「そう、残念ね♪」
「要件は終わりか?ならばこれで帰らせてもらう………」
(じゃあそういうことで…………)
「あら、ただの冗談よ?本題はここから」
「…………」
「刹那・F・セイエイ、貴方はどうやって、何時、このオラリオに?何をしに此処へ現れたの?」
「…………………」
「ここ数日、ある人物がギルドに出入りしているみたいなの、ダンジョンに潜る冒険者でも無い筈の人物…………」
女神からは笑みは消え、既に尋問染みた質問を投げ掛けてくる。
素直にダンジョンから生まれ、内通者の協力と共に地上に出てきましたなんて知られようものならこの女神は周りに知らせることはない。それどころか出汁にして自分の都合のいいように手札として残されてしまう。
狡猾で、お淑やかに、慎重で、強引に事を進める。それがこの女だ。
「だんまり………ね、ならこれならどう?」
普通であれば望んだ答えが中々返ってこないという事に不服そうな顔を浮かべる筈なのだが、目の間に居る女神はより一層笑みを深くなる。まだ切り札を残しているのだろう。
「貴方のその姿………本物なの?」
「……………」
こればっかりは完全に後手に回ってしまう。簡単だ、女神は人の嘘を見抜く力がある。ウラノスから聞いた辺りでは、どうやらモンスターと部類される
そして、この質問に対して向こうは得られる答えはたったひとつしかない。
頷くのは論外、知らないといえば神々の力で見抜かれる。ならばそこに残された道は沈黙しかない、だがそれは肯定している。知っていると教えるも同然だ。
「帰らせてもらう…………」
返事を待たずに腰を上げ、扉へと足を進める。その時だった。
「ガンダム」
その一言でその場から一刻も離脱したかったつま先が捕らわれてしまった。
「………を知っているかしら?」
「……………………」
もし、今の俺に心臓があったのなら、きっと、きっと飛び跳ねていただろう。
鼓膜を何度も叩きつけていたことだろう。
汗があったのならきっと額から垂れ落ちていだろう。
女神の問答に答えることなく、塔を降りた。
事の始まりは本当に偶然だった。
彼の主神でもあるヘスティアがオラリオの外に出てしまいラキアに捕まってしまったことでその後を追うように街の外へ姿を消してしまった。
彼が居なくなった街に興味はない、まるで灰色だらけのありきたりな背景が描かれた絵画を見ているのと同じ。
またオッタルにガンダムを捕まえるよう命じようとするも、以前のようにまた忽然と姿を消してしまった所為で私の楽しみは何一つ残っていない。
あまりにも怠惰で、退屈で、苦痛でしかない。
そう思っていたのだが、私は鼓動が大きく響いた。
このオラリオでは見かけない人物がそこに居た。
お世辞にも顔立ちが良い訳ではない冒険者達の中ではかなり目立つという意味でもそうだが、私が目と心を盗まれたのはその人物が放ち続ける魂の輝きだった。
迸るほどの光の粒子が溢れ、渦を巻いていた。
まるで命の輝き、力の奔流、未知の嵐。
気が付いた時には既に私はオッタルに命令を下していた。
実際に連れて来させ、突拍子もない会話を投げ掛けどんな反応をするのか楽しみにしていたが返ってくるのは静寂に淡々と此方を拒否してくるだけだった。
だがたった一つ、一つの言葉に彼は大きく反応を見せてくれた。
ガンダムだ。
秘密裏にとはいえ、オラリオで注目されているモンスターがなんの前触れもなく消え、こんな魂の持ち主が姿を現すなんて…………これが偶然だと、奇跡というべきなのだろうか?
間違いなく彼はガンダムに関して重要な何かを隠し持っているか、或いは…………………
「オッタル」
「はい、此処に」
既に部屋に戻ってきた
「彼を監視して頂戴、何かあれば逐一報告するように」
「…………ベル・クラネルは宜しいので?」
「そっちはロキの
「承知しました」
その姿が偽りのものであったという事実も相まって益々目の前に居る存在の謎と未知が乾いたこの体に潤いが満たされていく快感が走る。
人ではない何か………ひょっとしたら彼がガンダムだという可能性も……………………
「フフフ………」
嗚呼、欲しい。
アレも、手に入れてみたい。
あれから数日経っただろうか、女神フレイヤとの出来事以降街で視線を感じるようになる。間違いない、目を付けられた。
第一級冒険者ということもあってか街中の風景に溶け込んでいる。見つけ出すこと事態は不可能ではないがそんな事をしても意味はないと切り捨て、オラリオの東方面にてギルドから用意された宿屋に逃げ込む。
流石に建物内までは入ってこれないのか気配も薄れていく。
私室に入り、窓も閉め、人の目を完全に避けれる状況を生み出し、俺は肉体そのものを人からガンダムへと変貌させる。
「行くか…………!」
(よし、行きますか!)
粒子テレポートで地上から地下へ、ダンジョンに移り変わる。
本来ならダンジョンに戻るのは未だにガンダム捜索を行っている冒険者達と遭遇する可能性があるとフェルズから止められていたのだがそのフェルズからある報告が届いたのだ。
この事に俺は酷く歓喜した。
漸く、漸く誕生した。異端児編の始まりともいえるこの瞬間に立ち会えると。
だがここで肝心なのは
あくまでこちらがすべき事は当たり障りなく、二人を引き合わせるように徹することだ。
頭の中で自分がすべき内容を再確認し、捜索を始めようと振り返ると其処には血塗れ
「ア……ア…………」
恐らく
その目は恐怖によって光を失い、唇が小刻みに震えている。
「安心しろ、俺は______」
(えっと……大丈夫、敵じゃ______)
「__っ!?」
余程神経が敏感になっていたのだろう。こちらが手を差し伸ばそうとするとその小さな肩が跳ね、我武者羅に反対方向に走り去ってしまった。
きっと精神が不安定だから襲われると無意識に逃走を図ったのだろう。
きっとガンダムフェイスが怖く見えた訳では無い筈だ。
無い…………よな?