ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
ガトリングの掃射気持ち良すぎだろ……………
大樹の迷宮の中、
細い四肢に青白い肌、鋭い爪に
モンスターの証とも呼ぶべき風貌をした存在は体を己の血で染めていた。生暖かく、鈍くも鋭い痛みが動こうが止まろうが絶えず襲い掛かってくる。
_____どうして?
訳も分からず奇妙な洞窟の壁から生まれた直後は何もなかった。ここは何処なのか?自分は誰なのか?
教えてくれる者は居ない、自分で知る由もない。だから歩き始めた。ひたすら歩いた。
始めに出会った存在は大きな
返って来たのは言葉ではなく、大きな爪だった。耳を抑え込んでしまう程の咆哮と共にその鋭利なモノは
底なしの混乱と共に
其処からは様々な
次に出会ったのは人間達だ。
言葉を介さない
ゆっくりと慎重に近付き、出来るだけ相手を驚かさないように接触した。
たすけて。
しかし、返ってきたのは驚愕、混乱、敵意の言葉だった。矢が鱗に飛び掛かってくる。剣がその肌に食い込もうとする。
少女はまた走り去った。
_____どうしてっ!?
眼には見えない、存在しない何かに明確な拒絶の烙印を刻まれた
それが単なる疲労によるものか、外的な傷によるものなのか、或いはその両方か、どちらにせよ、もう動く気力も体力も残されていない。
そんな時だった。目の前に大きな光が生じたのだ。
明るい緑色の光が小さな粒となって辺りに散り去っていく、なんとも綺麗な光景だった。
その光は徐々に強まっていき、やがて光が終わりを告げるように儚く消え去ってしまう。しかし、それと引き換えに何かが何処からともなく姿を現したのだ。
人の形をしていながら人ではない。モンスターと言われればその輝くような姿からは生まれてから出会ってきたそれらとは比べ物にならない程に綺麗で幻想的なもの。
背中と思われる部分からは絶えず光を放ち続けるそれがこちらの存在に気付いているのか、ゆっくりとこちらに振り向いた。
体中に硝子玉のような何かが埋め込まれ、其処から放つ淡い光が光沢を纏う肉体をより際立たせている。
そして何よりその存在の顔が露わになる。人の顔に近い形状をしており、目からは常に光を放っており、額からは鋭利な角が飛び出ている。なんとも特徴的だ。
その両目が一瞬だけ酷く輝きを増したと思ったら微動だにしなかったその腕がゆっくりとこちらに向けられてきた。
理由は至って単純、怖いと思ったからからだ。また何かされると本能が訴えて来たからだ。
最早意識と呼べるものは其処にはなく、次に我に戻った時は目の前に人間達が居た。こちらを好奇心という名を、嗜虐という悪意が染まった眼で、
モンスターよりも醜く映る彼等から少しでも遠ざかりたい一心で逃走を図るも既に最後の力を振り絞った後の華奢な体では到底逃げることは出来ない。
何の変哲もない地面に足を取られ、無様に地面へと伏してしまった。
自分達が追いかけた獲物が見せた大きな隙を見逃す筈もなく、醜悪な追いかけっこの勝利を確信した人間達は遠くからゆっくりと歩み寄ってくる。
_____こわいっ……こわいよ!
残された道は目を閉じて現実逃避するしかなかった。視界を暗闇に包み、人間達が近付いてくる複数の足跡を耳で聞くだけだった。
だが次に聞こえてきたのはその人間達が苦痛を混ぜた嗚咽や悲鳴だった。少女は理解出来なかった。何故優位になっている筈の彼等からそんなものが聞こえるのかと。
それを確かめる為に閉ざされた瞼を恐る恐る開き、人間達が来る筈だった方角に視線を向けるとそこには戦いが起こっていた。
複数の人数を相手に戦っていたのはたった一人、全身を覆う程の外套を纏い、素早い動きで翻弄し、一人、また一人と薙ぎ倒していく。
向こうも思いもよらなかった襲撃とはいえ時間と共に冷静な判断が出来るようになったのか悪態をつきながらもその手に持つ槍や剣で応戦する。外套のそれは怯むことも、臆することもなく、淡々と応戦していく。
金属が激しくぶつかり合う音も瞬く間に消え、次に映った光景は驚愕させるものだった。
それに相対するように外套を被った何者かは何事もなかったかのように悠然とその場に立ち尽くしている。
何故人間達と戦ったのか、仲間じゃないのか、どうして自分を襲わないのか。数えきれない疑問、狐疑を浮かべる事はあれど、
目の前に居る外套の正体不明者は覆い被さるように隠されたフードの中から金色の輝きを放つ両眼だけが暗闇の中からこちらを覗き込む。
今まで遇ってきた驚愕、困惑、敵意、悪意もどれとも違う。分かるのはそれだけ。
ありがとう。
普通であれば感謝を伝えるべきなのだろう。しかし、少女には分からなかった。自分以外の何かを信じていいのか、頼っていいのか、判断出来ずにいた。
挙動不審になってしまった
正体不明の存在が何であれ、少なくとも邪気を孕んだ魔の手から逃れることは出来た。少しの間立ち止まったお陰で疲労に陥った肉体も精神も回復することが出来た。
ゆっくりと立ち上がって少女はその場から離れるように歩き始めた。此処が何処なのか、
するとまた誰かの足音がこちらに近付くのが鼓膜を通して危険信号という形で
また襲われるかもしれない。そう冷や汗を流す少女は近くにある茂みの中に姿を隠した。少し前の
だが今は疑心暗鬼によって支配されている心にとっては好奇心よりも恐怖心によって動かされるしかない。
細かな切り傷から未だに血の流れが止まる気配はない。乾いたはずの目元からはまた震える涙が零れ溢れてくる。着々と迫りくる気配に震え始める。
そして、
「モンスター……
何故なら人間状態の俺が今、怒りを抱いた目をしたグロスに胸元を掴まれているからだ。
「どういう事だ!?エルスクアンタ!!」
「あの
(あー……ひょっとしてさっきの事かな?)
「そうだ!お前が人間を殺さずにいたのはこの際もうどうでもいい!問題はあの
「あれ以上の武力介入は害をもたらす…………」
(だって、そうしなきゃ原作通りに進まないんだもん)
「害だと!?なら人間共が俺達にしたことはどう説明する!!何もしなければ向こうが付け上がるだけだ!!」
「俺達が目指すべきものは対話だ、支配じゃない、だからあの
(そんなことしたら殺し合いの未来しかないよ、だから______)
「それを何故だと聞いている!!返答内容によっては貴様でも_____!!」
「もういい!!やめろグロス!!」
これ以上見るに堪えられなくなったリドが間に割ってグロスの拘束から解放されたが、未だに緊迫した空気は消える気配を感じられない。
「___っ!フン!!」
見るからに不機嫌な様子を見せつけるグロスはそのまま里の入口へと歩み始め、姿を消すと共に緊張が解れた他のメンバー達はほっと胸を撫でおろした。
別に今回、この様な状況になったのは初めてではない。他の
「エルッち、大丈夫か?」
「ああ、問題ない…………」
(大丈夫大丈夫、別に怪我してるわけじゃないから)
「けどよ、流石に今回の事については教えてくれねぇか?グロス程じゃねぇけど、どうして
「教えて下さいエルスクアンタ、私だけじゃない、他の皆も気になってます」
流石に今回の行動に対して不信感を抱いているのはグロスだけじゃないらしい。周囲を見渡すとリドやレイを始め、疑問に溢れた視線がこちらに一点集中している。
未だに
それが異端児編だ。
「ベル・クラネルがあの子を守る…………」
(ベル・クラネルが居るから大丈夫!)
「ベル……クラネル?え?誰?」
「その者は一体………?」
「彼が
(あいつがきっとどうにかしてくれるって!だから大丈夫!!)
グロスとはまた何処かで言い争いにはなりそうだが、ベル・クラネルと会えば考えも多少は変わる。
仲直りすることが出来るのはその時までのお預けという事になるな。
そろそろ地上に戻らなければ
誰も居ない暗闇の部屋、僅かに視界が部屋の内装を確認できるのは遠くから差し込む窓から差し込む月と街灯の灯りのみだ。
その中でも前進ボロボロのローブを纏い、立ち尽くすその姿は死神と誤認してもおかしくはない。俺でなきゃ絶叫しちゃうね。
「来たか」
「フェルズ、見ていたのか…………」
(あー、やっぱりアレ、見ていたよね?)
「お前があの
そのままゆっくりと半ば景観用に置かれていると言われても差し支えのない椅子に腰を下ろし、寛いでいる。骨だけの体となった今でも心労は絶えないようなのか微かに呼吸音からは溜息染みた何かが聞こえてくる。
また小言が襲い掛かってくる。そう思っていたのだが鎮座する愚者からは何も発することなく窓から見える光景をただただ見つめている。
「どうした?いつもであれば問い詰めてくる筈だ…………?」
(……また説教をしに来たわけじゃないの?)
「いつもならな、だが今回は違う」
今回の愚者は至っては冷静な声色で受け返されてしまった。事の発端を起こす本人が言うのもなんだがこうもいつもと違う反応をされてしまうと調子が狂ってしまう。それを他所に愚者は淡々とこちらに視線を戻した。
「エルスクアンタ………いや、刹那、今回の件については神ウラノスも静観するという事らしい…………こうなることをお前は気付いていたのか?」
「………何の話だ?」
(な、何のことでしょう?)
「…………いや、何でもない」
少しばかり思考を巡らせているのか少しばかり俯いた後、下ろした腰をすぐに持ち上げ、扉へと進み始める。
「こうなった以上、お前にはダンジョンでの行動は暫く控えろ、今後はヘスティアファミリア………主にベル・クラネルとあの
「了解した…………」
(あいよー)
用事を済ませた愚者は何事もなかったかのように扉の音だけを鳴らして姿を消した。完全に気配が感じられなくなった事を確認した俺は心の中で大いに喜んだ。
漸く………漸く始められる!原作に基づいた通り、
それは、ウィーネがベルに甘えているという何とも尊い光景を実際にこの目で見届けることだ!!
こちらが介入したことで本来は無い何かしらの
そう意思堅固をELS製の心に刻んだ俺は眠る必要のないこの肉体に大いに感謝しよう。これから作戦を練らなくては……………