ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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投稿遅れて申し訳ありません……………


武力介入

俺はオラリオにてベル・クラネルの追跡を行っていた。

流石にここは原作さながらウィーネの存在があって表立って動くことは出来ない様子だが流石に手詰まりの様子でダンジョンに向かおうという手段しか残らなくなった彼らは依頼という形でアストレアファミリアからリューとアリーゼ、それから元イシュタルファミリア、現在はヘルメスファミリアに身を置くこととなったアイシャ・ベルガの参加が確認された。

 

それはいい。アストレアファミリアの現存により多少の物語の変化は許容範囲内だ。幾らでも修正は出来る。向こうは滞りなく事が進んでいた筈なのに………

 

「おい、そこのお前」

 

どうしてこっちに厄介事が降りかかってくるんだ…………

ウィーネとベル・クラネルが出会った階層に辿り着いたものはいいが、どうやら密か活動するために用意したこの外套(マント)姿も冒険者の間、それもガンダム捕縛隊とやらとイケロスファミリアに目を付けられる形となってしまった。

とはいっても活動そのものはガンダム状態と大して変わらないのだからこのような結果になることのも想定済みだ。何せ特徴らしきものと言えばこの外套(マント)が大半を占めている。その中身、身体的特徴は掴めていないのだ。そのまま姿を晦ませれば向こうは追って来れない。

 

いや、俺がそう思っていたのだろう。

 

「おい!聞いてんのかこの野郎!」

 

一切の反応が返ってこない事に腹を立てたのか、イケロスファミリアの一員が声を荒げてこちらを睨みつけてくる。故意ではないが、流石に目の前の問題に現実逃避してしまったお陰で既に複数の冒険者によって包囲されてしまっている。声を掛けたものに限らず、今か今かと自身の得物を手の平で遊ばせながらどうやって襲うか考えているのだろう。

 

「………俺に何か用か?」

 

「テメェはやっぱりあの時の………よくも邪魔してくれたなぁ?え?」

 

「何のことだ………?」

 

しらを切るも身に覚えはある。ウィーネを捕まえようと下衆な笑みを浮かべていた一団だ。その証拠に啖呵を投げつける者の口元を注視すると前歯が折れている。可哀そうに、まるで何処ぞの天の道を行き、全てを司る者からカウンターキックを喰らったかのような悲惨さが元から残念な顔面も相まってそれを物語っている。

 

「お前は生け捕りにして団長の所に引っ張っていかなきゃなんねぇけどよぉ、その前に落とし前はきっちりつけなきゃなぁ?」

 

こちらの態度に痺れを切らしたのか、唾を吐き、もうこれ以上の御託は要らないと言わんばかりにギラリと腰から鈍い光を放つ片手剣をゆっくりと引き抜き、こちらに見せびらかすようにしている。恐らく脅しているのだろう。その笑顔は欲望に忠実で何とも三下を彷彿とさせるそれだ。

 

「泣いて詫びてももう遅いからなぁ?野郎共!!やりな!!」

 

その号令と共に戦闘が終わったのはものの1分程度だった。実際に剣を交えていた限りでは大半がレベル2、啖呵を吐いてきたのがレベル3になったばかりと思えるような身のこなし方だった。

流石に見慣れた光景になったが、如何せん体が鈍ってしまいそうな一連でもある。まだオラリオに足を運ぶ前の頃、剣姫(アイズ)都市最強(オッタル)を相手していたころが懐かしく思えてしまう。

などと呆けているとこちらに歩み寄る足音に戦慄を覚えた。

 

正確にはその存在ではなく、その事実そのものだ。不味い、とんだ失態を犯してしまった…………

 

足音の主に恐る恐る視線を向けるとそこにはベル・クラネル(出会ってはいけない存在)がこちらに畏怖していた。

どうしよう、これのままじゃ不味い、非常に不味い。視線をその向こうに逸らすとどう動いて良いのか分からず戸惑うレイの姿が確認出来た。それもそうだ。こんな死屍累々のような状況を見つめる目標にどうやって近づけというのだろう。

そうだ!このまま何も言わずに退いて次の機会を狙うしか………

 

「ベル様!!」

 

幼くも力強い呼び掛けがベル・クラネルの更に向こう側から響いてきた。そこにはリリルカ・アーデ、アイシャ・ベルガ、そしてアストレアファミリアのリュー・リオンにアリーゼ・ローヴェルが追随してきたのだ。

何だろう、今更ながら自分が逆主人公補正にでも掛かっているのか再認識したくなってきた気分だ。

 

「貴方、ここ最近ダンジョンで冒険者達を襲う外套マントの人物ね?」

 

「大人しく武装を解除し、投降しなさい!」

 

既に戦闘態勢に入った彼女達に私は悪人ではない、話を聞いてはくれないだろうか?などという言葉は一切響くことは無いだろう。一蹴され、無力化を図ることだろう。

 

『エルスクアンタ!』

 

ふと首元から吊り下げている球体、予めフェルズから渡されていた通信アイテム、眼晶(オクルス)からレイの呼び掛けが密かに聞こえてくる。どうやらこの拮抗状態に痺れを切らしたのか、その声からは焦りらしきものが感じられる。

 

「レイか、久しいな、皆は元気だったか…………?」

(おや、レイじゃないか、久し振り!そっちの調子はどう?)

 

『な、何を呑気にしているのですか!どうして貴方がここに!?それにこの状況は!?』

 

未だ状況に理解が追い付けていない混乱と疑惑が織り交ざった声色を投げ掛けてくる。安心しろ。こっちも大絶賛困っている最中だ。

 

「どうやら不測の事態が起こってしまった、お前はこのままリド達と合流してフェルズから指示を貰え……………」

(えーっと………ちょっと厄介事に巻き込まれたってところかな?そっちは皆の所に戻ってフェルズに連絡しといて頂戴)

 

『あ……貴方は?』

 

「確かめたいことがある…………」

(ちょっと挨拶してくるよ)

 

その言葉を最後に通信を終え、向こうの足並みをそろえるように俺は両手に握りしめた剣を構え、突進し始める。

 

「っ!?ファイアボルト!!」

 

咄嗟に対応しようと速攻魔法を放つベル・クラネルだが、地面を蹴り、軌道を変えながら迫りくる炎の柱とすれ違う形となってさらに距離を詰めていく。

一瞬だけ戸惑いを見せるも即座に二本のナイフを引き抜き構えを取って迎撃しようとしていた。

 

なに、そんなに驚くことは無い。かつての偉人はこの言葉を残している………

 

『当たらなければどうという事は無い』と…………

 

突進した速度を利用し、そのまま身構えていたベル・クラネルに鍔迫り合いを行う。勢いを殺しきれなかったのか土煙を巻き起こしながら集団の輪から飛び出していった。

苦しい顔を浮かべながら火花を散らして堪えている。

 

それを助け出そうとヴェルフを始めとした仲間達が各々の得物の牙をこちらに食い込ませようと飛び掛かってくる。

鍔迫り合いの力を抜き、途端に均衡を失ったベル・クラネルは思いっきり体勢を崩されてしまったようで盛大によろけてしまっている。そのまま回転蹴りで襲い掛かる集団に吹き飛ばす。

 

向こうが敵ではなく、仲間が飛んでくるという思いもよらない出来事に対応出来なく、先陣切っていたヴェルフは敢え無く衝突し、地面に転がる結果となった。

その後ろから巻き添えを喰らわないようにアイシャが身の丈もある大剣を担ぎながら上空に飛翔した。

軌道を描きながら落下する重力を利用して思いっきり振り下ろしてきたのだ。普通であればあの質量を正面から受け止めたら無事では済まされない。

普通であれば。

 

風を切りながら襲い掛かる大きな刃を二本の剣を交差する形で受け止めた。その余波で周囲の地面が一瞬だけ振動による土煙が巻き上がる。

想定していなかった、ありえないと眼前にまで迫ってきた女戦士(アマゾネス)は両目を見開いていた。

押し退けるように切り開く、押し退けられたアイシャは後方に放り投げられる形となったにも関わらずひらりと一回転して体制を整えて着地した。

 

こちらを休ませるつもりは無いのかアストレアファミリアのアリーゼとリューが挟み込むように回り込んでくる。

 

「リュー!!」

 

「はい!!」

 

こちらの側面に素早く移動した二人は互いの仕掛けるタイミングをずらしてこちらに突進してくる。

 

「アガリスアルヴェシンス!!」

 

「今は遠き森の空、無窮の夜天に(ちりば)む無限の星々、愚かな我が声に応じ、今_____」

 

アリーゼさんが自身に炎を纏いながら高速で外套(マント)の者に切り掛かり、リューさんが詠唱を行いつつもその合間を木刀で隙を埋めるように打ち込んでいる。

紅蓮に染まる赤き少女との白兵戦についついこちらもトランザムを使いたくなってしまう衝動を抑えながら炎の斬撃を受け流していく。

とはいっても、流石にコンビネーションが整っている。片方が機動力を生かして注意を逸らしてもう片方が死角から攻撃を行う、良く言えば忠実であり堅実、悪く言えば単調であり愚直。

だがもう一人の偉人はこのような言葉を残している。

 

『後ろにも目を付けるんだ』と………

 

とはいっても実際に見えている訳じゃなく、ELSによる周囲の知覚、直感にも似た機能によって二人の距離感が手に取るように分かってしまう。

拮抗した状況に二人は苦い表情を浮かべている。

 

「アルヴェリア!!」

 

「ルミノス・ウィンド!!」

 

時差を利用した爆炎と疾風の多段攻撃が織りなす衝撃で生み出された烈風に身を包まれてしまう。流石にアストレアファミリアで団長、および主力と呼ばれるだけはある。

だがここには戦う為に来た訳じゃない。そろそろ本来の役目を果たすとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的だった。たった一人で当然のように、この人数を相手に立ち回れる程の実力を持っていたことに僕は戦慄を覚えていた。

 

「やれやれ………こりゃ春姫を連れて来るべきだったかね」

 

「ふざけろ、こんなにヤバい奴なのかよ………」

 

「ベル様!大丈夫ですか!?」

 

「ケホッケホ……うん、なんとか………」

 

皆それぞれの反応を示しているけれど僕と同じように相手の戦力が想定を上回っていたことに苦虫を潰したかのような表情を浮かべている。

今はアリーゼさんとリューさんが短期決戦で仕掛けた結果で外套(マント)の者は炎の嵐に飲み込まれる形となったけれど仕留めた筈の本人達は未だに相手が立っていた場所に警戒している。

普通の人に対してあんな攻撃を仕掛けてはまず生きていないだろう。やり過ぎではないかと心の中で不安に駆られた言葉が浮かぶけれど、それを裏切ったのは次の瞬間だった。

 

何の前触れもなく、目の前から暴風が襲い掛かってきたのだ。

アリーゼさん達の放った燃え盛る炎の嵐も相まって熱気が篭った風が肌を撫でてくる。そして次の光景に目にした光景に僕は両目を見開いてしまった。

嵐の中心であった場所に外套(マント)の者が立っていたのだ。それも無傷どころか火傷も、衣服の類が燃えた形跡も確認できない。

 

驚きが収まらない内に外套(マント)の者は最初とは比べ物にならない程の速度で迫ってきたのだ。

僕が次を知覚した時は既に首を掴まれ、視界から映る景色が殴り描いた絵具みたく変化していく、肺から空気が抜けそうになる。

 

皆からどれ程離れてしまったのだろう。あれだけの速度を何秒経ったのだろう?ヴェルフ達の姿が全く見えない。

まるで巨木のような頑丈な腕一本さえ振り解くことが出来ない更に追い打ちを掛けるように地面に擦るように押し付けられてしまった。

 

背中が削られ、摩擦が熱を帯び、やがて痛みとなって蝕んでくる。衝撃で呼吸すらままならなくなっていき、視界がぼやけてしまう。

このままじゃ不味いと防衛本能が働いたのか、残された体力と意識でナイフを食い込ませようとするもそれすら読まれていたのか腹部を踏み台代わりにするかのように両足で蹴られてしまった。

 

(今度こそ本当に意識が失ってしまいそうだ!どうにかして対抗しないと!!)

 

自身をそう奮い立たせ、外套(マント)の者に食い込もうと接近戦を持ち込む、だが向こうはそれも無駄のない動きで弾き返してくる。

 

「ファイアボル____」

 

「ベル・クラネル…………」

 

至近距離での速攻魔法(十八番)を放とうとした瞬間、不意に声が聞こえてきた。なんとも鈍重で響く声だ。

どういう魂胆なのだろう?何故今になって言葉を介するのか?疑心暗鬼になった体は構えを解くことは無く硬直してしまっていた。

 

「もう一度、ヘスティアファミリアのみでウィーネを連れてここまで来い…………」

 

心臓が飛び出しそうだった。

 

「ど、どうして…………?」

 

どうして目の前に居るこの人物はがどうしてウィーネの存在を………いや、どうしてあの子の名前を知っているんだ?

聞かれていた?見られていた?いや、そんな筈はない。あの館の中には僕達しか居なかった筈だ。

途端に汗が吹き出してしまう。手が震える。バレてしまった。どうしよう…………神様が、皆が…………ウィーネが………

 

「安心しろ、街の者に言い触らすつもりは無い…………」

 

目の前に居る外套(マント)の者は自分の得物を腰にゆっくりと納め、淡々とこちらに話しかけてくる。

 

「真実を知りたければ、もう一度来い…………」

 

「真……実………?」

 

相手はそれだけの言葉を投げつけ、ゆっくりと明後日の方向に歩き出した。

僕は待てと言えなかった。引き留めることが出来なかった。足が竦んだ。震えが止まらなかった。霧の中に消え去って行く後姿を見ながら反対側から大勢の走り寄ってくる足音が聞こえてくる。

僕は唯々、目の前の事実を受け入れずにいた。

 

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