ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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タイトルで察してください…………


POWER

突如現れた竜女によって騒動の嵐が起き、そこから相次ぐように現れた謎の結晶体であるモンスター、ガンダムによりその嵐はより吹き荒れた。

それからガンダムへの対処としてロキファミリアによる第一級冒険者達による突発的な戦闘が数刻が経過。

オラリオ勢からすれば下層、深層でも通用する程の戦力がたった一体のモンスターに対峙するという異質な状況が生み出されていたがそれ以上にその場に居る誰もがその後の結果を認めたくないものであるだろう。

 

凶狼のベート・ローガ、アマゾネス姉妹の姉である怒蛇のティオネ・ヒリュテ、妹こと大切断のティオナ・ヒリュテ。

ダンジョンにて最前線で戦っている数少ない有名人達だ。そんなメンバーがボロ雑巾のように倒されている。

周囲は余程の激戦が繰り広げられていたのか至る所に破壊の痕跡が生まれている。

 

「クソ……がぁ!」

 

「ねぇ、これ……やばいんじゃ………」

 

「あんのゴーレムが………一度ならず二度までも……団長の邪魔を………!」

 

勿論彼等だって手を抜いていた訳ではない。なんなら下層に潜りこんだ時以上の心構えをしていた筈だ。にも拘わらず、敢え無く、呆気なく撃退されてしまった。

 

その光景が引き金になったのだろう。その恐怖の対象は一般住民

に収まらず、錬度の低い冒険者達さえもその場から蜘蛛の子を散らすかのように逃げ始めた。

 

「これは……少し不味い状況だな」

 

混乱が新たな混乱を呼び掛ける中、ロキファミリアの団長、フィンが少しばかり苦い表情を浮かべていた。

決して彼が高みの見物をしていた訳でもない。団員が倒され、いざ自分も戦線に参加してみたが結局のところはガンダムに致命傷を与えるどころか返ってこちらに被害を生み出すだけという惨敗に終わっている。

その結果か当人であるフィンも頭部から多少の流血を流し、何処か打撲してしまったのか鈍重な痛みが絶え間なく襲い続けてきている。

 

「やれやれ、ガンダムとやらは噂以上のモンスターだったな」

 

フィンにゆっくりと駆け寄るドワーフが一人、ロキファミリアの最古参に当たる年長者の一人、重傑の二つ名をもつガレスの姿があった。彼もまた激戦を繰り広げていたのか至る所に擦り傷や痣が生まれていた。

 

「ガレス、そっちはどうだい?」

 

「致命傷はないが自慢の盾が紙細工みたく真っ二つよ………そっちは?」

 

「脳震盪に至る所に打撲………これじゃあ追いかけても足手纏いになるな」

 

「……‥あのガンダムとやらは?」

 

「今はリヴェリアとアイズに追わせているところだ、少なくとも住民の避難を最優先に動くよう伝えているけれど………」

 

ガンダムが飛び去ったと思われる方向に視線を向け、フィンはただただ今回の騒動の行く末に思考を張り巡らせる他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

未知の塊であるダンジョンの上に鎮座する街オラリオ、そこには日々ダンジョンに挑む冒険者達だけに限らず、そこで生活を営む住民たちの手によって活気づいていた。昼間は貿易のやり取り、そこに住まう人達の何気ない日常会話といった微笑ましいほのぼのとした時間、夜間は豊穣の女主人を始めとした酒場やイシュタルファミリアが統括していた歓楽街の大人の欲望が渦巻く時間が流れている。

 

しかし、今はそんな光景とは無縁な状況が渦巻いていた。

 

「お、おい!こっちに来たぞ!?」

 

「魔法が使える奴は!?詠唱はまだ終わらねぇのか!!?」

 

モンスターが生み出される迷宮とは違い、ここはモンスターなど無縁の場所、故に微笑ましい日々が送れている筈なのだが、そんな場所にて悲鳴にもにた怒号が冒険者達の口から発せられている。

 

建物沿いに設営され、普段なら日常生活に必要な物品が置かれているであろう屋台。その大半が崩れてしまい、埃やら土や撒き散らすほど視界が遮られている。

そんな煙が巻き起こる先に冒険者達は酷く警戒していたのだ。まるで階層の主(ゴライアス)かそれ以上に。

 

そして、冒険者達が危険視していた存在が確かに其処に居る。煙の中から奇妙な粒子を放ち、眼光と思わしき鋭い何かがこちらを見つめている。

まるで狩人に睨まれたかのような恐怖、戦慄を覚えるがやらなければやられるそんな当たり前の事実を前にそれぞれ愛用していた武器を再度握りしめ身構えた。

 

街に通り過ぎるそよ風が舞い散る煙を押し退けていきその全貌が青空の元に晒される。

情報があった通り、全身が鋼か類似する何かで構成されているのか光沢を帯び、人の形に近い細めの体形、そして何より今もなお背中から放ち続ける謎の光る粒子、分かっているのはそれだけ。

ガンダムと呼ばれたあのモンスターが戦い方を始めとした中身はほぼ謎と言っても過言ではない。

 

もしここがダンジョンであれば無理をせず撤退を余儀なく選択するのだが残酷なことにここはオラリオという自分達の家とも呼べる地上だ。

 

避けるどころか逃げることも許されない状況、冒険者達には玉砕覚悟でも挑む他なかった。

 

その内の一人、大剣を担いだ一人の大男が雄叫びを上げながら先陣を切ってガンダムに切り掛かった。大きく跳躍した後、その体重を生かした落下から振り上げた大剣を目の前のモンスターの胴体に目掛けて振り下ろした。

 

その衝撃は凄まじいモノと表現するに尽きた。だが結果はとても虚しい結果に終わった。襲い掛かる終始、棒立ちだった相手は依然動く気配もなく襲い来る刃を受け止めたのだ。

 

ぶつかる金属音と同時に何かが砕け散ったのだ。切り込み隊長を担ってくれた仲間の猛々しい鋼の剣が砕け散ってしまった。

別に不壊属性といった上等な能力が付与された武器ではない。何処にでもあるようなごくごく平凡な得物。だから何らかの要因で壊れるのは特別不思議ではない。

だがその代償と引き換えに得られた事実は相手が無傷という残酷なものだった。

 

吹っ飛ばされるわけでもよろける訳でもない。微塵も動かず、謎に包まれたモンスターは何事もなかったかのような立ち振る舞いをしている。

 

自慢の愛剣を叩きおられ、呆けた冒険者に訪れたのは拳による報復という無慈悲なものであった。

 

次にまた一人、サーベルをもった仲間が背後から忍び寄っていた。先程の大剣の仲間が注意を惹き付けているうちに裏をかいていたのだろう。音もなくだが素早く確実に距離を詰めていた。

死角からの不意打ち、明確な攻撃を与える事が出来るか疑問だが。

 

丁度間合いに入ったのだろう。忍び込む冒険者はぴたりと動きを止め、一気に飛び掛かった。

 

せめて一撃、致命傷を負わせることは出来なくともこれがきっかけで人海戦術に乗っ取って攻撃に転じる機会は得られる筈だ。

 

そんな淡い期待を抱いたのも束の間、あのモンスターには後ろにでも目がついているのだろうか、音もなく背後から攻めてきた冒険者に対し、振り向きざまに右手にある刃を横薙ぎで切り裂いたのだ。

 

僅かな間が空き、勢いを殺せなかった冒険者はガンダムの真横を通り過ぎる。襲い掛かった当事者も何が起こったのか理解出来なかったのだろう。呆けたまま己の手に持つ剣を見たのだがそこには刀身は存在していない。

 

そして次に刀身を失くした冒険者が宙を舞い、壁に衝突するという結果に終わった。余程の衝撃だったのだろう地面にばたりと落ちたっきり唸り声を零すだけで身動きが取れなくなった。

 

そして再び標的をこちらに戻したのか、ガンダムはこちらをギロリと睨みつけきたのだ。

 

「ひぃ!?は、早くしろ!!」

 

その視線にさえ恐怖を覚えた冒険者の一人が声を荒げる。その先には複数の杖を持った魔導士達が静かに、だが着々と言葉を連ねていた。

 

時間を掛け漸く詠唱を終えた魔導士集団はそれぞれ杖に込められた自身の魔法を標的に向け一斉に放たれる。

 

炎の玉、雷の閃光、氷の礫、躊躇無く放たれ、辺り一帯に大きな爆炎と共に更に煙が巻き起こり、暫くの間僅かな破壊音と共に静寂が訪れる。

 

「へへ………これならどうだ」

 

目の前で起こされた魔法による一帯への集中砲撃、恐らくは中層でも通用するであろう威力は誰が見ても明白の凄まじさ。

あれだけ喰らえば生きてはいない筈だ。そう安心したその中の一人がそう安堵したのも束の間、何かが煙の幕を突破し、魔導士部隊に襲い掛かった。

 

「痛っ_____!?」

 

「なんだ!?何の魔_____」

 

何が起こっているのか、見ているこちらだけでなく当事者である魔導士達も理解出来ずに慌てている。

紫色の光が針のように飛び出し、砲撃した彼等に直撃した後、体中に激痛が走っているのか身悶えしながら転げまわるばかり。どうやら当たった箇所には火傷を負ったかのような赤く焼け爛れた痕が出来ている。

 

「は、反撃をっ!?」

 

「無理よ!詠唱する暇すらないのよ!?」

 

「く、来るな!?こっちに来るな!!?」

 

阿鼻叫喚の渦が巻き起こる中、一人、また一人と倒れ、反撃する間もなく魔導士隊は潰されてしまった。

 

体感にして一呼吸かそこらだったろう。ある者は殴り飛ばされ、ある者は蹴り飛ばされ、ある者は切り伏せられ、ある者は撃ち抜かれ、数にして10人そこらは居たであろうその場所は瞬く間に蹂躙される形で形勢逆転されてしまった。

 

唯一生き残った……いや、生き残されたと解釈した方が正しいであろう一人が無傷のまま腰を砕き、あまつさえ失禁という恥も外聞もないほど崩壊している。

甘かった。無傷で済まされた冒険者は後悔した。ギルドからは曖昧な情報しか手に入れられなかったという事もこの状況の起因の一つではあるが、これだけの戦力ならもしかしたらという自分達の驕りがこの事態を生み出したということを。

 

「これが、ガン……ダム………!?」

 

手配書の名前にそう刻まれたモンスター、ガンダムは周囲を確認した後、ゆっくりとこちらを捉えた。

 

「ひ!?だ、誰か助け______」

 

辛うじて恐怖に支配された体を動かすことが出来た。僅かに生まれ持った生存本能が勝った結果だろう。重心が定まらない足取りで仲間が居るかもわからない何処かに助けを求めようと走り出そうとしたその瞬間、真横から衝撃が襲ってきたという事実を確認出来たのは数秒経過した事後の事だ。

 

不思議と痛みは無い。ただ自分がたった今、肩を捕まれ、めり込んだ建物の壁に埋められているという事実だけ理解出来ている。

もちろん己が強靭な体を持っている訳でも怪力になるような能力(バフ)を持ち合わせている訳でもない。

 

今、真横に仲間達を一瞬にして蹴散らしたモンスター(ガンダム)によるものだと悟った名も無き冒険者の視線は太陽の光を背にその鋭い2つの眼が一際光ったのを確認した。

 

蛇に睨まれた蛙。この状況にぴったりと収まる言葉だ。もちろん蛙は冒険者側だ。

ギルドからの情報ではガンダムは今まで人を殺してはいないと報道されていたが、そんな眉唾な話にどう信用しろというのだろうか。

ひょっとしたらあの奇妙な刃で切り刻まれるのだろうか、さっきの光を放つ何かで焼き貫いてくるのだろうか、それともまだ知らない未知の能力で攻撃してくるのだろうか。

 

後悔した。懺悔をする機会があるなら即座に跪き、命乞いをしたいくらいには。

 

「お前に問う………」

 

突如聞こえてくる言葉に対し、一体どこから、近くに誰かいるのか、そんな疑問さえ浮かんでこない。もう闘争心の欠片さえ無くなり、放心状態に近くなった者はただその言葉に耳を傾けることしか出来なかった。

 

「竜女とベル・クラネルが何処に行ったか知っているか………?」

 

「…………は?」

 

突如投げ掛けられた質疑に対してなんとも素っ頓狂な声を出してしまった。

どうしてガンダムがリトルルーキーなんかに?奴とどんな関りが?そもそもどうしてモンスターが冒険者を追う側になっているんだ?

 

様々な疑問が生まれ、返答する言葉が二の次になっている最中、

別方向から空気が切り裂くような音が聞こえてくる。

 

「もう一度問う、竜女とベル・クラネルの所在は何処だ………?」

 

「え?あ、いやその______」

 

次の瞬間、目の前でこちらを拘束していたであろうガンダムが吹き飛ばされたのだ。次に目の前に訪れたのはダンジョンに潜る者達なら知らない者は居ないだろうロキファミリアの剣姫ことアイズ・ヴァレンシュタインだった。

 

「今度は逃がさない!」

 

常に冷静を保ったかのような顔を浮かべながらもその瞳はギラギラと輝きを放っており、目の前の獲物を討ち取らんと鍔迫り合いを行っている。

 

「まだ争いを続けるつもりか………」

 

「貴方が潰えるまで……終わらない!」

 

これまでとは比べ物にならない程に凄まじい速さで互いの得物を衝突させ、最早斬り合いというよりも演武を行っているのではないかと錯覚してしまう程に流麗で美しささえ感じてしまうものだ。

 

たがそんな状況も束の間、ガンダムが剣姫から距離を取るかのように屋根よりもさらに高く飛翔し、何処かへと去ってしまったのだ。それを追うように彼女もまた兎のように屋根を伝って姿を消してしまった。

 

「た、助かった…………のか?」

 

次から次へと、二転三転する状況に追いつけずただその場に腰を下ろして長くも短い緊迫感から解放された冒険者はこの世界で最も間抜けな表情を浮かべていた事だろう。

 




なお、ELSクアンタ曰くダンジョンに居た頃はこのような出来事が日常茶飯事だったという。
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