ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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混乱

 オラリオにてウィーネの暴走から始まった一般人を巻き込んだ騒動、しかしその話題を瞬く間に掻っ攫ってしまった俺は今ロキファミリアとの小競り合いを終え、都市を見下ろす形で飛行中だ。

 やはり第一級冒険者、ダンジョンの下層部にまで足を運ぶ者達となるとやはり一筋縄ではいかない。以前にアイズとダンジョンにて戦闘した経験はあるものの同レベルの相手を複数相手にするという貴重な経験を得られたのだ。保護対象であるウィーネとベルクラネルと分断されてしまっただけの価値はあると言えよう。それはさておき、肝心の二人に関してなのだが…………

 

 完全に見失ってしまった。非常に不味い状況である。

 

 街の破壊痕跡が点々と見受けられるが当の本人達はそのずっと先を移動している筈だ。

 

 急いで合流した後ウィーネにはクアンタムバースト(ハナシアイ)をして早いとこ正気に戻らないと原作通りの様に複数の魔導士達による処刑シーンに到達するというバッドムービーを目にしてしまう。

 

 幾らフェルズが長い年月の中で編み出した蘇生魔法があるとはいえ、こちらの精神的なダメージは計り知れないのだ。あれを見せられた当時はどれだけ狂わされたことか。

 

 そんなの認めない。認めるものか。絶対に防いでみせる。例え原作ガチ勢から批判されたとしても知ったこっちゃないもんね! 

 

 クアンタの飛行能力であれば探すこと自体は不可能ではない。無いのだが…………一つ問題がある。

 さっきからこちらを親の仇と思わせるような殺気を突き付けてくるお姫様をどうにかしないと肝心の本題に専念出来ない。向こうは先程から能力をフル活用しているのか屋根伝いにピョンピョン飛んできて振り切ることが出来ないのよ。一体どうすればいいのよあのモンスター絶対殺すウーマンは。

 闇落ちリディさんに追われてたバナージになった気分だよ。

 

 一先ず彼女の追撃から逃れるのが急務、最優先事項に当る。

 牽制目的で彼女の足場となっている屋根をビームライフルで破壊、動きを封じこんだ。

 

 向こうも多少の動揺はあれど何時如何なる状況も生み出すダンジョンに潜っていた手練れだ。冷静に回避して一気に跳躍、間合いを詰めてきた。

 

 その勢いを利用したまま風を纏った剣が再び襲ってくる。これに対してサーベルを展開、周囲に突風が弾ける衝撃が破壊された住宅街の瓦礫を吹き飛ばしていく。

 

「今はお前の相手をしている訳にはいかない。退いてくれ…………!」

(邪魔しないでよ! 今こっちは忙しいんだから!!)

 

 お姫様は聞く耳を持っていないらしい。返答もなく次に繰り出されたのは脇腹に目掛けた蹴りだった。この体となった今では痛覚と呼ばれるものは存在しなくなったものの衝撃そのものは無くなった訳ではない。力の流れに抗うことなくそのまま重力引っ張られ、地面に落下していく。

 

 ここで疑問に思う事はあるだろう。何故今の攻撃を防がなかったのかと。理由は至ってシンプル、体の硬さが違うからだ。

 

 だって考えてみ? 向こうは生身の人間という骨と肉が複雑に構成され、こっちはガンダム、純度100%の金属(ELS製)、純粋に衝突してしまったらどちらの被害が大きいかは明白。幾ら神々の恩恵によって人外レベルの身体能力を得たり、スキルを得たとしても元の素体は人、体がアダマンタイト並みの硬さを持ったわけでもないし。ましてや即座に失った四肢を回復させる手段も大きく限られている。だから第一級冒険者でも自分より一回り大きい鎧を着こんだり覆い隠すことが出来る程の盾を持ったりしているのだ。

 

 極端な話、重機を蹴ったり殴ったりするのと同意義。現に見てみろよ。蹴ったはずの剣姫の足から痛々しい程に血が出てしまっている。

 

 まだゼノスに接触する前の話だっただろうか、例の如く冒険者とのエンカウントの際に体術を得意とする者が接近戦を挑んできた事があったのだが、咄嗟に防御を取る形で片腕で振り払おうとしたがなんとも呆気なく折れてしまったのだ。冒険者の四肢が。

 こう、なんと言えばいいのだろうか道端に落ちている小枝を折る時のあの感触と表現すれば近いだろう。兎に角もう酷い光景だったのか今でも印象深く残っている。

 

 それ以来は出来る限り物理的に冒険者との接触は避けている。

 あれは酷かったなぁと感傷に浸っている間に地面との衝突は避け、現在は低空飛行という形で移動を続けているものの、アイズ・ヴァレンシュタインの猛攻は止まる気配はない。多少の痛みは生じているのは間違いない筈なのだがこの状況を好機と思っているのか再び眼前まで迫り剣を突き刺そうと刃を向けてくる。

 

「よせ。これ以上戦ってもお前が傷付くだけだ…………!」

(やめようって!? ほら、怪我してるじゃん! そんなに血を流しちゃって!?)

 

「関係ないよ。目の前にモンスターがいる。なら戦うだけ!」

 

「どうしても引く気はないのか…………?」

(もう! 何言っても聞いちゃくれないんだから!)

 

 終わりの見えない逃走劇を続けている最中、進路方向には小さな群衆が確認出来た。その中にはアルテミスファミリアにアストレアファミリアも一緒のようだ。恐らく先程の騒ぎでまだ避難が終わっていなかったのだろう。加えて先程リド達の介入も始まっているのだから無理もない話か。人々はこちらを見るや否や阿鼻叫喚の地獄へと豹変してしまっているようだ。アリーゼ達も民衆を背にこちらに身構えているし。

 

 これ以上騒ぎが拡大したら捜索している暇がないし、もうオラリオの全てのヘイト稼いでしまった自信しかないよ! 

 

 このままでは避難の真っ最中である群衆に衝突してしまう。それだけは避けなくてはならない。止むを得ず減速、反転してアイズとの強制戦闘に臨む他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、突如現れた竜女とヘスティアファミリアのベルクラネルの奇行から始まり、更には未知のモンスターであるガンダムの介入により、突発的に起きた一般人の恐怖は爆発し、濁流の如く四方八方へと散り散りになる者達をどうにか宥め、比較的安全な場所へと移動させようとアリーゼを始めとしたアストレアファミリアは避難誘導に勤しんでいた。

 

「皆! 慌てずに!」

 

「年配や女性子供は先に! 力に自信のある男性は動けない人達に肩を貸して下さい!」

 

 どれだけ声を大きくしても耳に届いている者がどれだけいるのか計り知れないがそれでも喉が枯れるまで叫び続けた。

 

「アリーゼ!」

 

「リオン!そっちはどう!?」

 

「駄目です!まだ全員動くには時間が!」

 

「輝夜!ライラ!」

 

「分ぁっているよ!あぁもう!こんなの柄じゃないんだぜ?」

 

「泣き言愚痴る暇があるなら手を動かせ!竜女とあのガキンチョはおろかガンダムだってまだ近くに居る!」

 

「だからこうして動いてんじゃねぇか!」

 

ファミリア同士で怒号ににも似た掛け声を荒げながらも避難民への誘導を続けた。

少なくともガンダムの騒動が収まるまでにはこの状況を納めなくてはと焦りが生じていたが避難民の誰かが声を荒げた。

 

「モ、モンスターが来たぞ!?」

 

誰が叫んだかは分からない。誰しもが振り向くその先には事の騒動をおこした張本人であるガンダムがこちらに目掛けて飛翔してきたのだ。

よく注視すると後続にはロキファミリアの剣姫と呼ばれているアイズ・ヴァレンシュタインが風に乗って追いかけてきている。恐らく両者とも戦闘中の最中なのだろうか。

 

かつてあの時、後にジャガーノートと呼ばれることとなったモンスターから命を救われた者としてだろうか直感にもにた何かが悟った。恐らく意図してここに来たのではないと。

 

だがそんな事を誰が信じるだろうか、モンスターが人を救う事など………

 

あの時、悪のファミリア(イヴィリス)の罠により全滅を目の当たりにした出来事だった。もしあのまま私達だけだったなら全滅は元より誰かしら命を落としていたのは明白だった。

勿論その事に対して私達で何かしら調査を始めようとした。ファミリア全員で仕掛けても勝てる気配が一切見えない相手だったとしても。

しかし…………

 

「駄目だ。これ以上あのモンスターの調査は行ってはならん」

 

いざ行動に移そうとしたある日の事だった。突然ギルド長が現れ、直々にそう告げて来た。

普段であれば本部の奥で姿を滅多に見せない筈の者がだ。

 

唐突に突き付けられた警告に対し、これから赴こうとしていたファミリアの中に不満と疑惑が生じた。

 

「はぁ?」

 

「調査してはならないって………それはどういうことですか?」

 

常日頃、冒険者達にダンジョンに向かえと嫌味も付け加えた口調で催促してくる者の口から発せられたのだ。団員達はおろか、こちらも戸惑いが零れてしまった。

 

「言葉通りの意味だ。あれは今こちらで対応し、然るべき人材を派遣して調査する。それまでは干渉しようとするな」

 

「理由を聞かせて貰いますか?」

 

「理由も何も未知のモンスターが現れたんだ。明確な情報が得られるまではリヴィラより下に潜ることは禁止となる」

 

淡々と告げられ、再び私室に戻ろうとする後姿にただ黙って納得する訳にはいかなかった。なぜ?どうして?疑問をどれだけ投げ掛けても同じ返答で一蹴されるだけに終わった。

 

後に神々の会合も開かれ、そこでも当時は名前すら定まっていなかったガンダムには極力不干渉、距離を置くようにと決まったらしく、主神のアストレア様にも止められてしまった。

 

それでも諦めきれずこっそり人の眼を盗んではダンジョンに潜って何かしら手掛かりを得ようと足掻いたのだがそれすらも徒労と化した。

それ以降、ガンダムに関する情報は当事者のみ秘匿するようにとギルド本部の人間からは耳が痛くなる程に幾度となく説明されたのは今でも苦い記憶として残っている。

 

そしてそんな絶望的な事実を前に突如現れた未知のモンスター、ガンダムに命を救われたという現実を民衆に知ららせればオラリオに訪れるのは冒険者の立場の人間全員に置かれている信用を失ってしまう可能性が大きかった。それ故に敬うべき主神アストレア様の命だったとはいえその出来事をしているのは身内のみという形で闇に葬られた。

 

人の命を明確に理解していたあのモンスターに対しもっと調査をするべきだと苦言を呈しても返ってくる返事は皆一緒だ。

 

結局、答えどころか手掛かり一つも得られなかった私達は街の治安に四苦八苦する毎日しか訪れなかった。

 

『人間の命は、失えばもう、二度と戻りはしない…………』

 

命というものを知っていたあのモンスターなら………なんて他の団員達に言えばなんて言われるだろうか。

それでも…………信じたかった。

あの者ならと…………

 

「アリーゼ!!」

 

リオンの荒々しい呼び声で現実に戻される。

漸く収まりかけてきた群衆の困惑という崩壊、指示を求める団員達の焦り、団長としての適格な判断を求められ……………

 

「避難民を背に防衛を張って!誰も傷付けさせないで!」

 

私は彼の者に対し、厚意を裏切る選択しか取れなかった。きっと傷付くに違いない。私が逆の立場ならそうなってしまうからだ。

 

後ろめたい気持ちに相対し、ガンダムは急に急転回し、自身の命を刈り取ろうとする剣姫を正面に構え、逃走から一転して対峙し始めた。

 

視界にギリギリ収まる距離で激しい火花を散らす両者を前に動揺を隠せないこちらに対し、当事者であるガンダムは密かにこちらに視線を向けた。そして次に頷いたのだ。ゆっくりとこちらに。

 

大丈夫だ________そう伝えたいかのようにこっそりと。

 

かつて一人の神が私達アストレアファミリア(正義の使者)に問いかけた事がある。

 

《正義は何なのか?》

 

私にはもう理解出来なかった。守るべき者達を守り通せたのならそうなのか。

ならこの状況はどう説明する?民衆を守る筈の私達が己の身を犠牲にしてでもこちらを護ろうとしているモンスターに。ダンジョンに蔓延り、幾度となく人の命を奪おうとしてくる筈のモンスターに守られている私達は?

 

見えない答えを模索する最中、今なお激しく衝突し合う両者を前に私は……………

 

罪なき民衆を守る為、正義を掲げる者として、例え無残に吹き飛ばされたとしても、これ以上誰かが傷付くのは見過ごせない。

 

『こちらはお前達と戦う意思は無い…………』

 

相手は無慈悲に殺そうと襲い掛かるモンスターで、明日を生きようとしている民衆は怯えている。

 

『人間の命は、失えばもう、二度と戻りはしない…………』

 

戦わなくてはならない、私達は罪なき者達の盾であり、剣でもあり、正義を胸に刻んだ者なのだから。

 

そうでなきゃ、()に合わせる顔なんてない。

 

ふと弱音にも似た何かに自己嫌悪を抱きそうだったその瞬間だった。

今もなお、目の前で戦っているモンスター……‥ガンダムの後姿に見覚えがあった。

似ても似つかない筈なのに………誰かを守ろうと必死に戦う姿も、感情と呼べるものが込められていないあの声も、自然と面影が重なってしまう。ずっと疑問に近い何かが氷の様に溶けていく。

 

この時、無意識によるものだったのかどうかは分からない。ふと、私の口から彼の名前が零れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソラン…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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