ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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シテ……ロシテ………〇ロシテ…………(byシャチク)


追跡の果て

 ガンダムの介入からどれ程時が流れたのだろうか。

 イケロスファミリアの策略によってウィーネは暴走してしまい、挙句の果てにはオラリオに住まう者達を危険に晒すような暴挙にまで身を乗り出してしまった。

 

 自分が今、何をしているのかは十分理解しているつもりだ。

 本来なら守らなきゃいけない人達に立ちはだかり、狩るべき相手を守ろうとしている。

 リリはモンスターは倒すべき存在、人とは相容れない存在だと断言していた。

 それは冒険者となった自分自身もよく理解しているつもりだ。

 

 モンスターは本能のままに襲い掛かり、人の命を何とも思っていない。

 

 だけど、今、僕の後ろに居るのは誰かが傷付いたら悲しみ、泣いて。誰かが楽しそうにしていたら笑顔になって、笑って。

 何処にでも居そうな、極々平凡な、無垢な女の子の生き方をする…………そんな優しい子なんだ。

 

 でも、それを知る由もない人達は悲鳴を突き刺し、怒号を投げつけることしかしない。

 

 その二つの光景を理解出来る自分にとっては何とも歯痒い現実だ。

 

 選ぶことのできない選択に迫られ、今にも押しつぶされそうな何かを吐き気と共に押し殺しながら濁流の様に滅茶苦茶になってもうどうしたら良いのか分からなくなったその時だった。

 

 何の前触れもなく目の前に光の粒子が蛍の様に漂い始め、一ヵ所に集まり始めた。

 一点集中した光は徐々に強まっていき、その正体が露わになる。

 少し前にダンジョンで出会った正体不明のモンスター…………ガンダムが光が失うと共にその姿を見せた。

 オラリオの冒険者達から姿を消していた筈の存在が何故此処に、このタイミングで現れたのか、知る由もない。

 こちらの心情など他所にオラリオの住民達と対面していたガンダムはゆっくりとこちらに向き直した。

 

『迷うな…………』

 

 前触れもなくそう告げられ、僕は間の抜けた声が零れてしまう。

 

『守りたいと決めたのなら、戦え…………!』

 

 絶え間なく光る二つの眼が真っ直ぐに迷いなく向けられ、その発言は紛れもなくウィーネの事を察しての発言だったと今でも断言出来る。フェルズさんから強力な助っ人が到着するとは言っていたけど、まさかそれがガンダムだとは夢にも思わなかった。

 

 太刀打ち出来なかったとはいえ、以前にダンジョンにて刃を向けた相手だというのにも関わらず背を向け、助けようとその場にいたオラリオの冒険者達から放たれる圧迫感を背負ってくれた。

 

 そのお陰でウィーネを追跡する今も冒険者達の大半がガンダムに集中しており、こちらの障害たる存在が極僅かなものになっている。

 

 だけど、そんな状況に対して甘えにも似た感謝と共に今だイタチごっこをしている己の無力さを嘆くばかりだ。

 

「リトルルーキー! こっちだ!」

 

 前方から聞こえてくる大きな呼び声に濁った思考を断絶させられ、意識を向けると進路方向には複数人の冒険者達のが各々武器を構えながら待ち構えていた。

 

「あとは俺達で仕留める! お前はこのままそいつをここまで追い込め!!」

 

 このまま進めば前方で身構えていた冒険者達によってウィーネは狩られてしまう。それだけは絶対に避けなくてはならない。

 

 もう一刻の猶予もない中、僕に迫られた選択はたった一つしか無かった。

 冒険者達の妨害を行う。それはこのオラリオに対して明確な反逆を意味している。

 

 望んでいない筈の結果が今か今かと迫る最中、断腸の思いで右手に魔力を溜め始める。

 

(ウィーネをこんな所で殺させたりなんかしない…………やるしかないんだ!)

 

「ファイヤボル______!」

 

 直撃させなくても近くの建物を瓦解させれば向こうの行く手を阻めることが出来る。そうすれば少なからず時間は稼げる筈だ。

 

 冒険者になって初めて会得し、今や十八番とも呼べる技を放とうとしたその瞬間だった。

 

 ファイヤボルトを放とうとした直前に狙っていた場所が急に爆発が起こり、瓦礫が真下に居る冒険者達を襲い掛かる。

 

「なっ…………!」

 

 突然起きたであろう目の前の出来事に酷く困惑してしまい、足を止める。

 一瞬、ほんの一瞬だけど微かに紫色の針のような光が放たれたのが確認出来た。

 その軌跡を辿ると僕達の頭上にはガンダムが宙を漂っていた。

 背中から緑色の夥しい光を撒き散らしながらこちらを見つめている。

 

「き、来たぞ! ガンダムだ!!」

 

「嘘だろ!? だってついさっきロキファミリアとやり合ってた筈!!?」

 

「何でもいい! 撃ち落とせ!」

 

 既に屋上に回り込んでいた他の冒険者達の意識がウィーネと僕から空中に佇んでいる存在に向けられた。杖から魔法を、弓から矢を、対空攻撃が可能なありとあらゆる方法で未だ微動だにしない存在に対して一気に襲い掛かった。

 

 結果、轟音と共に大きな爆発が生まれた。

 視界から確認出来る限り十人近くの冒険者達による不規則な波状攻撃によって発生したそれは並大抵のモンスターなら即死するであろう光景だった。

 思いの他呆気なかったのかそれとも大きな手応えを感じていたのだろうか。攻撃した者達はかつてない程に安堵と期待に胸を膨らませていた表情を浮かべている。

 

 だがそれも爆煙が晴れる数秒後にその顔は絶望へと豹変した。

 ガンダムは死んでいなかったのだ。それどころか攻撃を喰らう前と何ら変わらない無傷のままで微動だにしていなかった。

 

 そして反撃の合図を挙げるように右腕を掲げ、周囲に奇妙な短剣の形をした何かが光と共に姿を現した。

 

 掲げた腕が冒険者達に向けて振り下ろされた瞬間、浮遊する短剣のような何かの切っ先から先程見たであろう紫色の光が生み出され、まるで針のように鋭く、光の速さで自身を攻撃してきた者達を撃ち抜いた。

 

 発射されてから僅か数秒足らずで僕とウィーネ以外の冒険者は呻き声を挙げながらその場に崩れるように伏せてしまった。

 

 近くで悶絶している者を確認してみると当てられた箇所は急所から外れているものの、酷く焼け爛れて此処からでも肉の焼ける音が聞こえてきそうな位酷いものだ。

 

 周囲の光景を見渡し、その光景を前にして改めてガンダムの存在に対し戦慄を覚えた。

 

「ゥゥゥウウウウウアアアアアアアアア!!!」

 

 今もなおこちらを見下ろしている存在に気を取られてしまった所為で肝心の守るべきであろうウィーネを放置していることに僕は我に返った。

 振り向くとそこには悪夢に苛まれるかのような呻き声を零すウィーネがまた何処かへと走り去ろうとしていた。

 

「ま、待ってウィーネ!」

 

 さっきの騒動で崩壊した路地裏は半ば一方通行の形で何処かへとつながるであろう門へと繋がり、ウィーネはまるで導かれるかのように其処へと駆け込んでいった。

 

 明かりの無い通路を無我夢中で駆け抜けるとそこは大昔に存在したであろう綺麗な円を描く劇場のような場所だった。

 ウィーネが舞台の中央に辿り着いた瞬間、空から何かが降り落ち、大きな衝撃と共に土煙が襲い掛かかるように視界を遮る。

 

 次に視界が晴れた時は先程まで浮遊していたガンダムがウィーネを抑え込むように拘束していた。

 

「ぁぁあアあああアア!! ベル! ベル!!」

 

 暴走し始めてから枯れる様子のない瞳に映っているであろう幻影を追いかけようと自身を縛り付けているガンダム(邪魔な存在)に鋭利な爪を引っ掻いて引き剥がそうとしている。

 

「皆が待っている。今は共に帰ろう、ウィーネ…………!」

 

 無造作に振り回される爪によって大きな火花を散らしながらも乱暴に振り解こうとしているウィーネにまるで泣きじゃくる子供を諭すように問い掛けている。しかしそれでも根本的な解決には至っておらずその均衡は崩れる様子はない。

 

「イヤァ! ドコ!? ドこニいるノ!!? ベルゥ!!!」

 

「仕方ない…………」

 

 ガンダムはウィーネを押さえつけながらもこちらに目を向け、一回だけゆっくりと頷いた。向こうも僕が持っているウィーネの核の存在を知っているのだろうか? 何をするのか皆目見当つかないけれど、まるで頼むと言わんばかりの素振りに対し、僕はこの機に便乗する他無かった。

 

「クアンタムバースト…………」

 

 ガンダムから詠唱のような言葉を発した瞬間、その金属のような体そのものが大きな光が発せられ、この場を飲み込む勢いの光の粒子が散りばめられた。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻

 

 事の発端を引き起こした当事者達が豆粒程度にしか見えない距離にある塔の一角にて二人の影が傍観するかのように立っていた。

 

「初めましてというべきかな? 賢者よ」

 

「…………今は愚者、フェルズだ」

 

 ダンジョンにて知性を持ち合わせる群衆ゼノスを率いる者、片やオラリオにて名の有るファミリアを導く神。

 この異色な組み合わせに互い違和感を覚えるのだろうが、それもこの惨劇を前にしてしまえば些細なものだ。

 そんな両者がただその場に居合わせたのは偶然ではない。互いに利害の一致があってこそ成り立つ状況であった。

 

「じゃあフェルズ、俺の立場上、あの状況に関しては一つ礼を言っておくべきかな。ベル君の助力に感謝するよ」

 

「私としては色々と振り回されているだけなのだがな」

 

 素っ気ない返答にヘルメスは肩を竦めながら苦笑いを浮かべていた。

 

「それにしても噂以上に凄まじいものだね。ガンダムっていうのは、これじゃあオラリオ全体が揃って危険視する訳だ」

 

「本人からしてみれば望んでない結果らしいのだが、あれでは致し方ない」

 

「あれだけの力があるならどんなことだっていとも簡単にねじ伏せられるだろうに……それこそこのオラリオを侵略、或いは支配出来たりなんかね」

 

「奴が望んでいるのは支配でも侵略でもない。対話と協調だ」

 

 自らを愚者と名乗るフェルズは

 迷うことなく断言した。

 かつて賢者とも呼ばれていたであろう存在に返された言葉に対し、ヘルメスは無言で光の先を覗き込んでいた。

 

 するとオラリオを照らしていた緑色の光は急に不規則な点滅を見せた後、発光体であるそれが落下して大きな土柱を生み出した。

 

 この光景に対し、愚者は目に見える程に酷く狼狽えた。

 

「何!? おい! エルスクアンタ! どうした!? 応答しろ!!」

 

 懐から通信アイテムを取り出し荒げた声で光の主に呼びかけるも返ってくるのは無そのものだけだった。

 

「すまないがこれにて失礼する!!」

 

 唐突に起きた異変に対し、原因が分からないままでは埒が明かない。そう判断したであろう愚者はヘルメスからの返事を待たず、急ぎ足でその場を後にした。

 

 一人残された男神は再び彼の地へと視線を戻した。しかし、その表情は焦りが見られない。それどころかむしろ想定通りに事をが運んでくれたと物語っている余裕振りさえ醸し出していた。

 

「やれやれ…………一か八かの賭けだったけど、どうやら上手くいったみたいだね」

 

 そんな独り言を呟いていると背後の物陰から一人の女性が現れた。

 

「指示された通りに用意してくれてありがとうアスフィ」

 

 水色のショートヘアーとメガネが特徴のヘルメスの右腕にして万能者(ペルセウス)の二つ名を持つ冒険者は見るからに頬が痩け、目の下には隈、当に心身共に疲労困憊を体現した姿が陽の光の下に照らされた。

 

「いやぁごめんね? こんな無茶振りしちゃって」

 

「もういいです…………慣れましたから…………」

 

 この神には文句を言っても軽く流されるだけ、そう諭してるのか諦めの境地に至る溜息で喉元まで出てきそうだった何かを飲み込み、軽快に笑う己が信仰しているであろう存在にせめてものと睨みつけるだけで終わらせた。

 

「しかし、この状況にも酷く驚きましたが…………どうして今になって()()を?」

 

「んー…………正確には彼女が持っている()()が鍵になると思ってね」

 

「アレ…………とは?」

 

「まぁ、それは追い追いね…………」

 

 眷属の疑問を適当に流し、その場をゆっくりと立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、オラリオの門外にてとある馬車が街に向かって走っていた。

 

「お姉ちゃん、アストレアファミリアの皆元気にしているのかなぁ」

 

「お嬢ちゃん、オラリオ出身なのかい?」

 

「うん、ちょっと呼ばれちゃって、いきなりこんな事頼んじゃってごめんねわざわざ貸し切りにもしてもらって」

 

「いいさいいさ、その分嬢ちゃんを呼んだ人からたんまり依頼金をもらってるさ!」

 

 ガハハと中年の男性が豪快に笑いながらそう返してくれた。

 事の始まりはとある調査で長期間の遠征していた所にヘルメスファミリアのアスフィが急に訪れ、今行っている調査を即刻中止し、オラリオに戻ってきて欲しいと言われ、今に至る訳なのだが…………

 

 訳を聞こうも若干濁された感があるが、要は今危険視されているモンスター、ガンダムについて話があると言われた。

 

 ここ最近アリーゼやリオンとの手紙のやり取りで話は来ていたのだけれども、それが今の自分とそこまで関連性があるのかと疑問に思うところはあるが、自分もオラリオの冒険者、それにあの町には辛く、苦しくも仲間との何物にも変えられない思い出もある。

 

 そういった理由で断る訳にも行かず、こうして馬車に揺られ、空を仰いでいる訳だ。

 

 ガラガラと車輪の音を鳴らしながらほのぼのとした陽気な天候の下でオラリオを眺めているとこれまで知っていた光景とは一線を画するものが見えて来た。

 

「あれって…………」

 

 オラリオの中心辺りからだろうか、緑色の光のようなものが噴水の様に溢れている。微かにだが太陽が空高く昇っているのにもかかわらずまるで夜空の星のような光の粒子が周囲を流れている。流れからしてあのオラリオから放たれているものと同じであると推測が出来る。

 

 

「な、なぁ嬢ちゃん? あれってなんか不味いんじゃないか?」

 

 中年の男性はこの世の中では見られないようなものを見せられ戸惑っている。実際自分もこんな状況は初めてで説明の仕様がない。

 

 あれはオラリオにとって災厄をもたらすのか、それとも…………いずれにしても大きな何かが起きている筈だ。皆は本当に大丈夫なのだろうか? どうか無事であって欲しい。

 

「…………大丈夫、今度は私が頑張る番だから」

 

 そんな不安の一抹を零し、両手で優しく握られた一輪の白い花を見つめる。

 

「丁度顔を出したかったし、色々と報告したかったからね!」

 

 荷台から勢いよく飛び出し、先程会話をしていた業者を追い越す形で城門へと軽快に進んでいった。

 

「あ! おい嬢ちゃん!?」

 

「ここまで運んでくれてありがとう! 安全が分かるまではおじさんは門の近くで待っててね!」

 

「いやだけど……」

 

「大丈夫! 大丈夫! なんたって私は_____」

 

 青く短めに切り揃えられた髪、そして同じ色の瞳は揺るぎのない光を宿し、一見大人びた顔立ちからは想像できない天真爛漫な笑顔で女性はここまで連れて来た礼を伝えた。

 

「私はあのシャクティ・ヴァルマの妹で! 品行方正で! いつも笑顔を忘れない! ガネーシャファミリア所属のレベル5! アーディ・ヴァルマだよ!!」

 

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