ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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稼働記録 

 この記録を付けるに当たって事の発端を振り替えようと思う。

 

 始めは自分自身の立たされている状況を把握するのにかなりの時間を要した。

 

 星々が頭上を浮かぶ夜の下、周りはまるで中世時代のような街並みに加え、炎と破壊が混同した光景、血の匂いや悲鳴も相まって地獄絵図とはまさにこのことだろうと感じた。

 

 黒いローブを纏った連中に遭遇し、危うく殺されるところを間一髪逃れ、物陰に隠れたまま夜明けを待った。

 

 終始生きた心地の無かった地獄は静寂という形で終わりを教えてくれた。

 

 半信半疑で身を乗り出し、未だ落ち着きを取り戻せない息遣いと足取りで周囲を散策した。

 

 周りは破壊後の復興と負傷者の治療を行っているであろう者達が賑わっている。彼らの口から度々冒険者だ魔法だとファンタジー語録を叫んでいた。

 

 あの時、小さな子供を助けようと死を直面した矢先に現実からかけ離れた悪夢のような光景、これが俗にいう異世界転生(或いは転移と呼べるものだろうか?)なるものかと。

 

 思考が追い付かなかった。これからどうすればいい? この人達に助けを求めるか? それともこの世界の全貌をある程度把握するまで自力で生きていた方が良いのか? 衣食住は? 身分は? 

 

 目の前は阿鼻叫喚、中には親を見失い泣き崩れる子供さえいるというのに我ながら薄情にも自分の事ばかりで手一杯だった。

 

 その時だった。

 

 途方に暮れる中、とある女性に声を掛けられた。

 正義を司る女神、アストレア様だった。

 

 その日を通して俺が今こうして生きているこの世界が『ダンまち』であること、今がオラリオの歴史の中で最も最悪な暗黒期の真っ只中であること、そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺自身の姿が刹那・F・セイエイ(自称ガンダムなる者)だったこと。

 

 

 

 

 

 

 

 そこからは流れるままアストレア様に誘われ、アストレアファミリアのホームに足を運んだ。

 

 

 最初はそれはそれは酷いものだった。

 

 ホームにて話を伺っていたと思えば扉やら窓からアリーゼ達が飛び出してその場で拘束、地面に叩きつけられるし、敬愛する主神に誘われたとはいえ何か邪な考えがあるのではないのかと某情弱エルフに睨まれるし、散々な日だった。

 

 

 その日から俺は居候として、アストレアファミリアの雑務を担うこととなった。

 大変だった。あぁ大変だったものだ。大雑把に散らかす小人(パルゥム)、下着も混ぜた洗濯物を顔面に放り投げてくる大和撫子女狐だの、私物には一切触れるなと猫のように威嚇してくる情弱エルフを始め、それを見ても「今日も元気ね!」と明るく流してる団長。平手打ちをしたいと思った日々は星の数とも知れず。

 

 だが我慢した。すごく、凄く、我慢した。

 

 何故なら此処に居続けなければならない理由があったからだ。

 

 住む場所がない? それも無きにしもあらず。だが本命は別にある。

 

 そう………………ガンダムを作ることだ。

 

 初めはどうしょうもなく漠然とした日々を送っていた。だが傷が癒えると同時に頭の中が金属を引っ掻いたかといわんばかりに響いてくる。

 日を追うごとに激しくなり、まともに立っていることさえ出来なかった。

 やがて頭の中で這いずり回る痛みから少しづつ、少しづつ記憶らしきものが流れてきたのだ。

 

 強大なビーム兵器を持つ紫の機体、四方八方に乱れ撃つ緑の機体、 天駆ける如き速さで飛び交う橙色の機体、そして明るく暖かい光を放つ青色の機体………………

 

 知っている。俺はこの記憶を知っている。

 

 まだ物心つき始めた子供の頃に出会い、そして心を奪われた存在、それがガンダムだった。

 

 ウル◯ラマンでも仮面ライ◯ーでも、ましてやマク◯スでもない。

 

 ガンダム、そうガンダムだ! 

 

 憧れだった存在を再び認知すると次に頭の中には複雑な物理方式やら設計図やらが濁流の如く流れ込んだ。高校止まりだった凡人にはあまりに膨大で鼻血出してぶっ倒れた記憶は今でも鮮烈に覚えている。

 

 翌日を境に俺は心優しき女神に即土下座をして頼み込んだ。

 最初はあまりにも滑稽な願いを穏やかに断っていたが勿論、タダでは通らないと察してはいた。

 

 代わりに変わり者の神ヘルメスに会わせてほしいと毎日頼み込んだ。

 

 次第にこちらの誠意が伝わったのか諦めの境地に至ったのか数日を経て俺は漸く変神との対面を果たせた。

 

 無論、同じ事を頼み込んだが軽く拒否された。流石はオラリオの中でも随一用心深い神だ。正体不明の人間に頷くことはない。でも、此処までは予想通り。

 

 ヘスティアの名を元に既に話を付けているアストレアがカオスの泉がどうのこうのとよく分からないが俺がこの世界の住人ではないという説明をしてくれた。するとヘルメスはピクリと眉を動かした。

 

 きっけかけさえ出来れば後はこっちのもの。ヘルメスは品定めをするかのようにこちらを一瞥した。此処で俺は切り札を出した。

 

 未だこちらを警戒する神に対し、用意した答えは簡単、背中からGN粒子を吹き出した。

 

 最初は自分自身でさえもびっくりした。なんせ体の何割かはELS製で構成されているんだもの。もうおっかなびっくりだよ。目ん玉飛び出るかと思ったよ。

 

 とはいっても体の中にあるELS(彼等)はほんの一握り程度、粒子だってものの一分足らず放出すればすぐにガス欠になる程度しか生成されない。

 

 この見栄を張るようで情けない答えではあるが一番効果があるとも確信していた。すると男神は笑い転げながらこう答えた。

 

「良いだろう、ならその価値を示してもらおうか」

 

 そこからはあっという間にだった。

 

 どういうコネで用意したのか鍛冶専門であるヘファイストスファミリア、ゴブニュを通してこちらが書いた部品の見取り図の通りの物を用意してくれた。

 

 外装、動力パーツ、実体剣、ネジ一つ漏れることなく精巧に作られている。流石は鋼を取り扱うファミリアだ、こちらの要望をそのまま用意してくれるとは有り難い。ヘルメス曰く誤魔化すのにかなり苦労したとか。

 

 とはいってもこちらは知識はあれど技量は皆無、完成するのにかなりの労力と時間を代償とした。流石にプラモを組み立てるとはまるで訳が違う。

 

 普段は過酷な肉体労働なんて真っ平御免だがそれが趣味全開のものとなれば話も変わってくる。どれだけ失敗しても設計図と睨み合いながらも少しづつ、着実に事を進めていった。

 

 その結果が今手元にあるガンダム、ガンダムアストレアだ。

 

 元々鎧形式で作られた為、本体自体はそこまで難しい構造ではない。寧ろ問題があるとすればこちら側にある。

 

 背中に付属しているGNドライブ、もといGNコンデンサーなる蓄電装置のような部品にこちらが毎回粒子をチャージするのだが、これがまたかなり時間を取られる上、燃費も悪い。

 

 まだ初期段階であるとはいえ、いちいちアリーゼ達の目を盗んではこれに費やす羽目となった。

 

 だがその分見返りはあった。

 

 画面の向こう側にしか存在しなかったものが、世界が、今自分が生きている舞台なのだと。初めてアストレアを動かしたときの興奮ときたら言葉に出来なかった。

 

 戦闘データに関しても特別困ることはなかった。何せ倒してもいい敵がそこら中にうじゃうじゃと沸いているのだからこんな事を言うのは大変不謹慎ではあるが感謝の言葉を添えておこうと思う。

 

 

 

 

 

 ◯月✕日

 

 粒子残量には限りがある為、ビーム兵器等の武装を用意したもの、使用するには至らず。

 

 今後は物理兵器を軸とした接近戦で試験を行うとする。

 

 アストレア様に機体名を聞かれた時は凄く気まずかった。

 

 

 

 ◯月△日

 

 今日は民間人と思われる母と子が襲われているところを無事救出する。女性が感謝の言葉を言い掛けようとこちらの顔を見た途端、悲鳴と共に怖がって逃げられた。

 

 何故? 

 

 

 

 ◯月□日

 

 ここ最近、オラリオの民衆の間でガンダムの事を『星屑』と呼んでいるらしい。名無しの正義という形で少しづつ広まっているようだ。決して、決して嬉しいだとかカッコよくね? とかは微塵も思ってない。

 

 ここ数日、『星屑』に対してアリーゼからも多種多様な反応が伺える。見つけ次第捕まえよう等と物騒な発言すら出る始末、勘弁して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日

 

 

 この日は吉と取るか凶ととるか。

 

 アリーゼ達と遭遇してしまった。こちらからは仕掛けなかったもののあのまま逃げなければ彼女達と戦闘、或いは正体がバレるところだった。

 

 結果的には闇派閥(イヴィルス)だけを攻撃しているところを見せれたのでこれを期に印象を変えて欲しいものだ。

 

 大抗争の『あの日』までそう遠くはない。

 

 急ぎ機体調整を完了させなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯月W日

 

 

 とても調子が狂う一日だった。

 ガネーシャファミリアのアーディ・ヴァルマと遭遇した。

 

 今日も今日とて機体の調整、粒子補充へと足を運ぼうとしたタイミングで出会ったのだ。

 

 何処から聞きつけたのか、アストレアファミリアのホームに居る居候の男子がいると耳にし、一目会いに来たのだという。

 

 やはり原作通り活発で人懐っこい、お陰で色々と雑談に付き合うこととなった。

 

 

 

 

 

 ◯月∀日

 

 この日は炊き出しの営業、雑務をやる日だった。

 

 特に難しい内容ではなかったものの、こうも群衆が活発に動いていると本日の作業は断念せざるをえなかった。

 

 体の何割かはELSで作られている所為か空腹という感覚はほとんど無いし、もちろん睡眠も2、3時間あれば熟睡したかのような状態になる。

 

 だから毎回自分の取り分をこっそりと子供達に渡していると決まってアリーゼに見つかって「貴方も食べなきゃ駄目よ?」と指摘された。あと俺はロリコンでなければショタコンでもない

 

 

 

 ◯月V日

 

 機体作業の進捗もそれなりに進み、この調子でいけば念願のトランザムを現することが出来る筈だ。

 

 そうすれば漸く『アレ』の作業にも手を付けられる。

 

 最後は実施テストあるのみという形で早めにホームへ、自室と戻るとアリーゼに待ち伏せされていた。

 

 かなり危うかった。

 

 夜遅くに何処に行っていたのかと酷く問い詰められた。

 ガンダムに乗って闇派閥(イヴィルス)をボコしてましたなどと口が裂けても言える訳がなくヘルメスの元に届け物を頼まれたとアストレア様を出汁にしてしまった。

 

 向こうは如何にも納得していないという表情だったが珍しくもすぐに退いた。まさか薄々バレてしまっている? 

 

 ◯月X日

 

 前回の失態もあってかどことなくアリーゼの視線が突き刺さる。

 他の団員達には言い触らしていないようだが、まさか闇派閥(イヴィルス)のスパイと疑われている? 

 

 ここ最近、連中も比較的大人しく、ホームに誰かが残るなんて日も増えたお陰か流石に抜け出せる隙は無い。

 

 残るは最終テストだけだ。まだ時間はある。

 

 

 ◯月Z日

 

 突然アリーゼが部屋に入ってきた。

 今度は普段の明るい振る舞いとは裏腹の口調で「正義は何か?」と問われた。

 

 こちらとしてはベルや彼女達のような大義名分と呼べるものはない。

 

 寧ろただただガンダムを作りたいという邪心に近い欲望しか存在していないのだから当然答えられるわけでもなく、少しの間をおいて自分には正義と呼べるものはないとだけ答えた。

 

 少し悲しそうな顔を浮かべるアリーゼを見送ったが未だに理解出来ていない部分がある。

 

 

 ◯月ν日

 

 皆には悪い事をした。

 

 アストレア様に相談し、俺はホームを後にした。せめて一言くらいは挨拶と礼を言いたかったのだが致し方ない。

 

 この日は大抗争の彼女が命を落とす日、これを阻止してからその後のことを考えよう。

 

 保険としてヘルメスに渡せる物は渡せた。後は出たとこ勝負。

 

 色々と干渉してしまった所為か、アストレア様とヘルメスからの情報だと敵の動きが大きく変化している模様、だがこちらがやるべき事は変わらない。

 

 これよりガンダムアストレアを起動、武力介入を行う。

 

 

 

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