ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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夢だ………こんなの夢だ……

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大変ありがとうございます!!


ガンダム

 

アストレアファミリアを助けてからどれほど時が経ったのだろうか。

あれから進展は得られず、ダンジョン内を散歩しては冒険者に喧嘩を売られ、モンスターを倒しては冒険者を地面に叩き付け、魔石を集めては冒険者を吹き飛ばし、日々退屈との攻防を繰り広げていた。

ここ最近の変化といえばよく彼らとエンカウントするようになったというべきか。

恐らくアリーゼ達を通して正義の女神アストレアに俺の存在が明るみになったことでギルドも本格的に危険視し始めたといったところか。

 

「お前がオラリオで噂になっている者か」

 

ふと背後から声が掛けられた。振り向くとそこには黒いローブで全身を包んだ何かが立っていた。

また冒険者が襲撃を仕掛けてきたようだ。しかも今回は気配を察するに一人しかいない、どうやらかなりの自信家のようだ。

 

「ま、待て!?私は奴等(冒険者)ではない!!」

 

ローブの袖から骨だけの手が飛び出し、狼狽えたのだ。

こちらも少しばかり戸惑ったがゆっくりと観察した結果、その姿には見覚えがあった。

 

「愚者フェルズ………」

(フェルズ?どうしてこんなところに?)

 

「っ!?どうして私の事を知っている?今のオラリオでは一部の者しか知らない筈だ」

 

やばい、思わず口が滑ってしまった。

 

「…………………」

 

「だんまりか………まぁ、もとよりお前の存在そのものが未知だ、その件に関してはまた別の機会に問いただすとしよう、今は共に来てくれるか?謎のモンスターよ」

 

溜息と共に深く被られたフードが此方をじっと見つめてくる。

 

「いきなり現れて信用出来ないのは分かるが、少なくともお前と同じ境遇の者………モンスター達がいる、その者達と会ってほしい」

 

ゼノスの事か、こちらとしては彼等と接触するまたとない絶好の機会だ。断る理由はない。

出来ればウラノスにも直接対面して今のオラリオについて質疑応答したいところではあるが、それはもうしばらくの我慢といこう。

 

「了解した…………」

(まぁいいよ、暇だったし)

 

承諾の返事が返されたフェルズは心なしか安堵の様子が伺えた。

 

「よし、こっちだ、冒険者共に見つかる前に移動しよう」

 

そう言ってフェルズは背中を向けて歩み始め、後を追い始める。

 

しかし良かった、もしまたしつこく追求されてしまったらそれこそ言い逃れは避けられない筈だ。

初めて冒険者達に遭遇した時といい、意味不明な翻訳機能といい、今後は逐一言動に対してより注意深くならなねば。

 

「一つ聞きたい」

 

フェルズが唐突に口を開いた。

 

「お前と戦った冒険者達はお前が対話を求めるような発言をしていたと聞くが………それは真か?」

 

「事実だ、だがこちらに恐怖し、拒絶されてしまった・・・・・・・・」

(そうだけど、向こうは驚いて全然話を聞いてくれないんだよ)

 

「だろうな、このダンジョンの中………いや、オラリオではモンスターは敵、害悪をもたらす存在としか認識されていない」

 

「いずれ、分かり合える時は来る…………」

(いやー、どうにかして話の場を設けられないかな)

 

「……どうしてお前はそこまでに冒険者との………人との対話を求めているのだ?」

 

「争いの無い世界、それを俺は望んでいる………」

(ん?そりゃ平和が一番でしょ?)

 

「冒険者とモンスターとの溝は奈落の底よりも深いぞ」

 

「それでも歩み寄る、何度でも………」

(簡単に諦めるつもりはないよ、要は根競べって奴さ)

 

「…………そうか」

 

そんな会話を続けながら歩き続け、暫くすると通路から逸れるような通路へと向かう。

やがて注視しなければ気づかない程の洞穴が視界に映った。

 

そこを潜ると少しばかり開けた空間に繋がっており、中央に大きな焚き火を囲んだモンスター達、異端児(ゼノス)がこちらを見つめていた。

 

「皆、新たな同胞を連れてきた」

 

「お!来たかフェルズ!!」

 

赤い鱗を纏うリザードマンが声を高らかに上げ、フェルズに歩み寄ってきた。

 

「また新しい仲間が増えたにか!!」

 

リザードマンがこちらに視線を変えた途端に先程の勢いは何処へ行ったのやら、ただじっとこちらを見つめていた。

 

「どうした………?」

(あー………なんか顔に付いてる?)

 

「………俺達の事、驚かないのか?」

 

「具体的には………?」

(どういうこと?)

 

「ほら、こうして自分以外に喋れる奴が他に居たなんて普通思わないだろ?」

 

「自分の実状を踏まえ、お前達のような存在が居る可能性は考慮していた………」

(別に?そんなにおかしな話じゃないだろ?現に俺だってこうして喋れてるし)

 

「怖いとか思わねぇの?」

 

「皆無だ、俺はお前達とこのように話し合えることを嬉しく思う………」

(いいや?寧ろこうして会えた事が嬉しいよ)

 

「そうか………へへっ!そうかそうか!!」

 

そう受け答えすると緊張が解けたのか、目の前にいるリザードマンの表情がスッと綻んだように見えた。

 

「リド、そんなに凝視するのはあまりに失礼でしょ?」

 

「おぉ悪い悪い!!なんだか初めて見る奴だなって思ってよ!!」

 

頭を掻きながら豪胆に笑い声を上げるリドに呆れているハーピーが翼を羽ばたいて近くまで寄ってきた。

 

「ごめんなさい、あまりにも珍しい方だったから興味が尽きなくって………彼には悪気はないのです、許してくれますか?」

 

「問題ない、自分の存在が特殊なのは認知している………」

(いや、俺自身も変わった考えをしている奴だって分かってるから大丈夫だよ)

 

まぁ元々はこの世界に存在していないのだから無理はない。

 

「私はセイレーンのレイ、新たな同胞よ、歓迎します」

 

「リザードマンのリドってんだよろしく!!」

 

自己紹介され、リドから握手の手が伸ばされた。

 

「よろしく頼む………」

(おう!こっちこそよろしく!!)

 

そして握手に応え、リドとレイ、そして後ろにいるゼノスのメンバーが雄叫びを響かせる。

やはりこうやって歓迎されるのは悪くない。

孤独との闘いに終止符を打つことが出来たのは束の間、リド達は困惑の様子が伺える。

 

「何をそんなに戸惑っている……?」

(あれ?どうかした?)

 

「まだ貴方のお名前をお聞きしておりません」

 

「そうそう!なんて名前なんだ?教えてくれ!」

 

すっかり忘れてた。フェルズに会うまでは会話はおろか、名前すら呼ばれる機会なんて一度もなかったのだ。

こうしてゼノスの仲間として迎え入れられるという事はコミュニケーションが伴ってくる。

今までの()()()()()()()()しか出来なかった弊害がここで起こるとは………

 

「そういえばまだ私も聞いていなかったな、なんという名だ?」

 

「クアンタ………ELSクアンタだ………………」

(まぁ、ELSクアンタって呼ばれてるよ)

 

「エルス………クアンタ?」

 

「それじゃあ………エルっちっで良いか!」

 

「遠慮しよう…………」

(それは断る)

 

一昔前のギャグ漫画のようにショックを受けたリドはレイに宥められながら仲間達に笑われていた。

 

「エルスクアンタよ、早速で悪いが…………」

 

隣りにいたフェルズから声を掛けられ、唐突に何事かと思えば。

 

「暫くの間はダンジョンには姿を現さないようにしてくれ」

 

その言葉を聞かされた時は思わず呆けてしまった。

 

「何故だ………?」

(ど、どうして!!?)

 

「当たり前だ、お前の存在が大きくなり過ぎたんだ」

 

こちらが戸惑いの最中、フェルズは言葉を続けた。

 

「今ではお前の存在は冒険者の中で都市伝説扱いをされている、討伐すれば未知の鉱石か或いは装備品が手に入るかもしれないという根も葉もないことも含めてな」

 

その話を聞いた俺は身に覚えがあった。

アストレアファミリアとの遭遇からしばらくしてダンジョンに潜る冒険者達の数が日を追うごとに増えていた。

てっきり彼女達が死なずに済んだお陰でオラリオの戦力の損失が免れ、治安維持と共に冒険者として全体的に活動が活発化したのかと思ったのだが、その要因がまさかガンダム(自分)目当てだったとは。

 

「おまけに闇派閥(イヴィルス)も大きく関与しているという情報も先程入手した」

 

「しかし、そのような事態になっているのであればアストレアファミリアが沈黙しているとは到底思えないが………?」

(け、けど前に助けたアストレアファミリアが闇派閥(イヴィルス)の連中をただ黙って見過ごしているとは思えないんだけどなぁ?)

 

「因みにその中で最も躍起になって探しているのは以前、お前が助けたというそのアストレアファミリアだ」

 

Oh F〇ck♪

 

「それからロキファミリアにフレイヤファミリアも一枚噛んでるらしいぞ?」

 

ねぇ?なんでそんな追い打ち掛けてくるの?

あ、わかった。さっき驚かせたその仕返しでしょ?そうなんでしょ?

 

悪かったよ、あの時は作業化してしまった冒険者の相手に嫌気がさしていたんだよ。

だからGNビットで包囲した事は謝るからもうこれ以上悪い知らせを聞かせるのはやめてくれ!!

 

「というのが先程の発言の理由だ、承諾してくれるか?」

 

「……承知した」

(わ、わかった………)

 

きっとこの顔がガンダムフェイスでなければきっとげっそりしているだろう、不眠不休で動ける体になってから初めて疲労感に近いものを感じてしまった。

 

「何も永久にという訳ではない、こちらとしてもこの状況はあまり好ましくないのだ、早急に手を回してお前の存在を有耶無耶にしておこう、そのほとぼりが冷めるまでの間でいいのだ………分かってくれ」

 

もうこれ以上会話をする余裕がなかった為、無言の頷きで返すとフェルズは再び暗闇の中に帰ろうとしていたが途中でピタリと止まった。

 

「念の為に冒険者達にこれ以上誤った情報が回らない為の措置、もとい冒険者達に接触しないよう手配書を書かなければならないが………種族名はどうすればいい?」

 

そう問い質され、皆の視線が集まる。

それなら答えは既に決まっている。

 

「こう記してくれ…………名は______」

(あ、じゃあこう書いてくれる?種族名は______)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達は今、ダンジョンで出会ったことをヘスティア様に報告していた。

 

「ベル君、つまりは喋るモンスターが居てそれも対話を求めていたっていうのかい?」

 

「は、はい神様………」

 

新しく出来たホームである竈火の館に戻り、創設祝いも兼ねて少しばかり豪勢な食事を目の前にしながら僕達はあの時の出来事をありのまま神様に報告を行っていた。

 

「そんな話聞いたことないよ、ましてや戦う意思がないなんて………」

 

神様の頭の中はきっと驚愕と困惑で支配されているだろう。

それもそうだ、僕達だって今までにない経験なのだから。

 

「けどヘスティア様、ベルの言う通り俺達もこの目で見ているし、おまけに底知れない強さも持っていましたよ」

 

「どちらかというと戦ったというより軽くあしらわれたといった方が正しいですね」

 

「あんなの出鱈目過ぎます!今までダンジョンに潜っていてそんなモンスター見たことありませんよ!!」

 

行動を共にしていた皆が後押ししてくれた。しかし、腕を組んだ神様はより一層険しい表情を浮かべた。

 

「僕もベル君達が嘘をついていないというのは神の力を行使しなくても分かっているさ、だから尚の事分からないんだよ」

 

モンスターが自ら攻撃することなく、言葉を発し、あろうことか戦う事を望んでいなかった。

このオラリオでは絶対にありえない話だ。

ギルド側からも未知のモンスターだとの一点張りで説明が一切ないのだ。

 

何度も謝るエイナさんには申し訳なかった。

 

するとその静寂を打ち破るようにとある人物がホームに訪れた。

 

「やぁやぁベル君!!元気そうで何よりだ!」

 

羽付きの帽子を被った神ヘルメスが陽気な振る舞いで挨拶をしていた。

 

「一体何しに来たんだいヘルメス!今僕達は取・り・込・み・中なんだよ!」

 

「おいおい、そんな邪険にしなくたっていいじゃないか?なぁヘスティアファミリアの諸君?」

 

膨れっ面のヘスティアの言葉を受け流しながら懐を探り始めたヘルメス様は相変わらず陽気なあ態度をしているが真剣な眼差しをこちらに向けていた。

 

「いやね?ここに来たのは君達にちょっと確かめておきたいことがあってね?」

 

「僕達に?」

 

「エイナちゃんから話を聞いていてね?ダンジョンで未知のモンスターに出会ったらしいじゃないか」

 

「っ!!?」

 

するとヘルメス様の懐からとある紙切れが一枚、差し出された。その状態は年月が経ち過ぎた所為かひどく風化している。

僕達は覗き込むようにその色褪せた表紙を見るとなんとそこには今日ダンジョンで出会ったあのモンスターの絵が描かれていた。

 

「ヘルメス様!これは!?」

 

「そいつはおよそ7年程前からかな?このオラリオのダンジョンにて突如出没した謎多きモンスターさ、これはその当時の手配書だ」

 

「7年前って………そんな前からあんな奴が居たのかよ!?」

 

「で、ですけど!あんな常識から外れたモンスターなんかリリがまだヘスティア様のところに来る前はそれらしい情報は一欠片もありませんでしたよ!?」

 

「そりゃそうさ、何せそいつはその2年後、つまり5年前にすっぱりと冒険者の前から姿を消していたのだからね」

 

「姿を消していた?どうしてそんな………」

 

「さぁね?一時はこっそりとどこかの冒険者に討伐されただの、他のモンスターにやられただの、真偽は定かではないよ?様々な噂が飛び交ったけど時が経つにつれて皆興味を示さなくなったんだ」

 

先程の軟派な態度は一切消え失せ、声も心なしか一段と低くなっている。

 

「ベル君、君が見たっていうモンスターはこいつで間違いないかい?」

 

再び挿絵を凝視する。色合い、人型の姿、背中の緑色の光、間違いない、僕達がであったあのモンスターだ。

 

「はい、そうですけど………?」

 

「そうか……………もうこっちに戻っていたか………」

 

「え?」

 

「ああ、いや何でもない!折角の祝いに邪魔をして悪かったね!その手配書はベル君にあげるよ、それじゃあまた」

 

「ちょっとヘルメス!!」

 

神様の声にも応じず、ヘルメス様は颯爽と館から出ていかれた。

 

「もう!何なのさあいつは!!」

 

終始膨れた顔をした神様に苦笑いしながら僕は渡された手配書を再び見つめた。

すると絵の下に何か文字が書かれている。

 

「それって………もしかしてそのモンスターの種族名か?」

 

「ベル様、何て書いてありますか?」

 

「えーっと……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはこう綴られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガン………ダム………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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