ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
評価者してくれた方々には次回紹介させていただきますのでもうしばらくお待ちください………
アルテミスの件から少しばかり日数が経過した頃、俺はフェルズに問い詰められていた。
「エルスクアンタよ、私との約束を破ったな?」
自身を覆い隠す程のローブを身に纏っている為、その表情は分からないが口調からは怒気を孕んでいるのが即座に理解出来た。
いや、元より骨の身であるから表情と呼べるものは分からないが、兎に角気圧されそうな雰囲気が押し付けてくる。
「何がだ…………?」
(な、何のことでしょうかな?)
「ダンジョンから出た事は勿論、
更に問い詰めるように此方へ一歩ずつ近寄ってくるフェルズ、
正直怖い。
「しかし、放置していれば女神アルテミスはアンタレスに取り込まれ、彼女のファミリアは全滅を避けられなかった。更にはオラリオにも危険が及ぶと判断した為、こちらが対処する事が最善だと判断した…………」
(だ、だけどね?あのままだとアルテミスはアンタレスに取り込まれてヤバかったんだよ?そうなればオラリオがやばいことになってただろうし、ならこうするしかないでしょ?)
「それでその魔獣………アンタレスを倒したと?」
「始めはクアンタムバーストで対話を持ち掛けてたのだが、向こうは明確な殺意しか向けられず、拒絶されてしまった上、こちらをも取り込もうとしてきたのだ、あれはその結果だ…………」
(だって、アルテミスを返してくれって頼んでもあの蠍、全然話を聞いてくれないんだよ?おまけにこっちも吸収しようとしてくるし、仕方が無かったんだよ)
「それでもだな______!」
「まぁまぁそう怒鳴るなよフェルズ、要はあれだろ?エルっちは人助けの為に戦ったってことだろ?仕方ないじゃないか」
不毛な議論に助け船を出してくれたリドーがフェルズを宥めようとする。
「そうですね、というよりエルスクアンタがオラリオの外に出られた事が私達にとっては驚きなのですけれども…………」
レイがそう補足すると周囲の皆は揃って頷いていた。
オラリオに戻った時は皆が驚きこちらに駆け寄ってきたのだ。なんでもここ数日姿を見かけなかったからか何処かで強力な冒険者達に襲われているのではないかと心配し、総出でダンジョン内を捜索してくれていたらしいのだ。
その話を聞いた時は嬉しい気持ちだったのだがそれと同時に申し訳ないと反省したものだ。次からは皆に行先を伝えなくてはならないな。
さもなくば無尽蔵に動き回る
「そういう問題ではない!」
フェルズの怒号に今回はそう簡単に許してくれない事なのだと皆が肌で感じ取ったのか、馬鹿騒ぎを起こしていたゼノス達は静まり返る。
「話は聞いた、お前がやったことも理解できないわけではない、だがお前が姿を現したお陰で5年間の努力も水の泡と化した」
「もう既にその情報がオラリオでも伝わっているのか…………?」
(あー………ひょっとしてオラリオの方でも騒ぎになってるのかな?)
「いや、流石にそんなことをしたらまたオラリオに混乱を招いてしまう、今は神ヘルメスとヘルメスファミリアの一部の冒険者達の協力の下、事態を穏便に済ませようと動いてくれている」
確かにオラリオでの
だが、そのことは読んでいた。いや、むしろ狙っていたのだ。
女神が魔獣に取り込まれ、危機一髪のところでそのガンダムが現れ、救出したとなればどうなる?
その現実を目にしたアルテミスファミリアも含め彼女達がいずれ神月祭を行うであろうオラリオに戻り、神々にこう告げるであろう。
ガンダムは敵ではないと、話し合いの余地があると、そう………対話の場を設けることが出来ると!!
今回は少しばかり遠回しな策を講じたのだが、きっとこれならうまく事が運ぶことが出来る。
そう思うと少しばかり気分が高揚してしまいそうだ。
「そしてだ。肝心のアルテミスファミリアの動向だが…………」
お?どうやら早速動きがあるみたいだ。
「神ヘルメスの情報提供を元に、お前の手配書と共にお前に対するオラリオの状況を鑑みた結果…………」
うんうん!
「ガンダムの捕縛に協力する方針に定まったそうだ」
………What?
「そして、アンタレスとの戦闘に関する情報は外部に漏らさないように徹するという条件の下でな」
Why……?
「これで仮にまたオラリオの外へ出ようとしたら、狩猟を得意とする女神がお前を地の果てまで追いかけ、捕まえようとするだろうな」
な、何故だ!?何故そういう展開になるというのだ!?
俺は既視感のある状況に思考を放置してしまいそうになった。
いや、分かるよ?ガンダムでも捕縛ネタはかなり王道的なものだからそうなる展開はむしろ燃えてくるというか面白くなるけれども今回はそういう展開は要らないんだって!!
「何故だ、何故分かり合えない…………」
(ど、どうしてこうなるんだ……………)
「お前程の存在をそう簡単に受け入れる事が出来たら我々も苦労はしない」
またしても振出しに戻された俺はフェルズの話を右から左へと受け流しつつ虚空を見つめることしか出来なかった。
それからというもの流石にこれ以上ダンジョン内にて騒ぎを起こせばリド達も冒険者達から襲われ易くなってしまうということで俺は隠れ里に長時間棒立ち状態となっている。
理由は至って簡単、これ以上表に出てくるなとフェルズから釘を刺されてしまった為だ。
これ以上に悪目立ちしてはならないと静かな圧を掛けれてしまい、ほぼ軟禁状態に近い。
「エルスクアンタ、大丈夫?」
静かに時間が流れていく最中、ハーピィのフィアが陽気な声で呼びかけてきた。
「フィアか………」
(フィアちゃん………)
「なんか元気ないけど、やっぱりこの間の事かなぁ?」
「あぁ………すまない、皆に迷惑を掛けてしまった…………」
(そうなんだよ………ごめんなぁ?俺の所為で………)
「確かにちょっと騒がしくなってしまいましたね………けど、皆さんも十分強いですし、大丈夫ですよ!」
あれからフェルズによる長時間の説教によって精神が摩耗してしまった俺に長期間の潜伏をするために狩りに出たリドやレイ、フィア達がフォローしてくれているのだが、如何せんモチベーションが上がらないのだ。
アリーゼ達を助け、敵意はないと伝えても要捕縛対象にされてしまうし、今度は女神を助け、こちらの真意を伝えようにも更にガンダム捕縛戦力を増強させただけで終わったし、骨折り損のくたびれ儲けでしかなかった。
「対話するというのは難しいな…………」
(どうすればこちらの話を聞いてくれるのかなぁ………)
「そうだね………どうしよっか?」
意気消沈していると里の入り口から赤帽子を被ったゴブリンのレットが現れた。体のあちこちから出血している模様。何かしらの非常事態に陥ったのは容易に判断出来た。
「レット!?どうしたのその怪我!!?」
「だ、第一級冒険者と遭遇しちまったんだ!それもかなりの手練れでかなり苦戦しているんだよ!!リド達がヤバい状況なんだ!」
レットの必死な説明で和気藹々としていた雰囲気が凍りついた。
第一級冒険者、このオラリオのダンジョンを目指す者達の中で最も深く潜ることが出来る実力を持った存在。
ここに居るゼノスメンバーは一部を除き、LV4程度の所謂第二級冒険者程度の実力を持ち合わせている。
その中でもリドやレイ、グロスはメンバー屈指の実力を持ち合わせているが、それでも遠く及ばないのが第一級。
深層に潜ることが出来るゼノス最強のアステリオスと互角に渡り合えるのだ。
そんな人物がリド達と戦ってしまったらすぐにとはいかないが討伐されてしまうのも時間の問題だ。
「す………すぐにアステリオスに連絡を______!!」
「そんな余裕はない!ここも見つかる可能性が高くなった!早く必要なものだけ持って下に逃げてくれ!」
そんな呼び掛けに返って来たのは微かに聞こえてくる困惑と動揺の囁きだった。
それも無理はないだろう、リドやグロスを除けばここにいるゼノスのメンバーは第二級冒険者程度の実力はあるがそれを遥かに上回るのが第一級冒険者なのだ。
加勢しようにも虚しい結果で跳ね返されてしまうのが本能的に理解出来ているのだろう。中には震える者すら居るのだから。
「致し方ない………」
(あぁもう!!こうなったら!)
「エルスクアンタ?」
「レット、リド達は今何処にいる………?」
(リド達の居場所を教えてくれ!何処だ!!)
「ちょ、ちょっとエルスクアンタはフェルズから絶対に冒険者に会っちゃ駄目って口酸っぱく言われていませんでした!?」
「責任は取る………!」
(あとで誤魔化せばいいさ!)
「ちょ、ちょっとぉ!?」
周りが動揺する最中、レットから聞いた情報を元にワープホールを潜り抜けた。
暫くしてダンジョンに抜け出した俺の目の前には―刃毀れしている得物を片手に肩を大きく揺らしたリドが居た。
それに限らず身動きが取れなくなった者達があちこちに横たわっている。
思っていたよりも事態は深刻のようだ。
「エルっち!?」
「無事か、リド…………!」
(リド!大丈夫か!?)
「馬鹿!?何で来ちまったんだよ!!」
「今ここでお前達を死なせるわけにはいかない………!」
(こんなところで死ぬつもりか!?)
リド達と対峙していた者に視線を向けるとそこには黄金色の長髪に白を基調とした服に独特なプレートアーマーとサーベルを身に着けた女性が目の前で立っていた。
ロキファミリアの主力にして戦姫、または剣姫と呼ばれている第一級冒険者、アイズ・ヴァレンシュタイン。
「金属の見た目、緑色の光、見つけた………ガンダム」
冷静沈着な表情をしてはいるがその瞳から放つ光は剣にも劣らないものだった。
「狙いは俺か………」
(やっぱり、捕まえに来たってことね………)
「テンペスト!」
強化魔法によって臨戦態勢に入った戦姫は周囲に風を巻き起こしながら引き抜いたサーベルをこちらに食い込もうと突進してきたのだ。
それを右腕をブレード化して受け止め、鍔迫り合いに持ち込むが、流石はトップレベルの冒険者だ、少しばかり押されてしまった。
「ここは俺が引き受ける、お前達は皆の所に………!」
(こいつの相手は俺がするから、リド達は隠れの里に戻ってくれ!)
「そ、そんなことしたらエルっちは!?」
「行け………!」
(いいから!!)
「リド、ここはエルスクアンタに任せましょう!皆もここは撤退してグロス達と合流しましょう!動ける者は負傷者を担いでください!」
レイの指示によってゼノス達は血塗れの同胞を背負い、よろけながらも走り出した。
「リド!急ぎなさい!!」
「っ!エルッち!す、すまねぇ!」
苦渋の表情をしたリドが最後に暗闇へと消えていき、再び静かさが取り戻された。
「貴方は逃げないの?」
「狙いは俺の筈だ、彼等には手出しさせない…………!」
(いいや、リド達が逃げるまでとことん付き合ってやる!かかってこい!)
「そう………じゃあ遠慮なく!」
火花を散らしあった均衡が戦姫によって崩壊し、再び疾風のような猛攻が襲い掛かる。
「何故対話を拒む、何故分かり合おうとしない………!」
(だから、どうしてそんな一方的な考えしか出来ないのさ!)
「それは貴方がモンスターで、私が冒険者だから!」
それを受け流し、距離を図るも眼前にいる疾風を纏う者が一瞬の隙を生むことを許してはくれない。
何度も切迫してくる剣技、流石にこれまであってきたモブ冒険者と違って実力が段違いだ。
「どうして、そこまで拒絶する………?」
(なんでそんなに嫌がるのさ?)
牽制の為に展開したGNビットを襲わせるも紙一重で跳ね避けられてしまう。
「その力が人々を惑わせる!その刃が人々を傷つける!その姿が人々を………怖がらせる!貴方のような存在を許せば、モンスター達が地上に出て、多くの人々に死をもたらす!」
GNビットが弾き返される中、まだ余裕があるというのか、その合間を縫って一気に跳躍し…………
「そんなの認められない、だから………分かり合うことなんて出来ない!!」
拒絶の言葉と共にその切っ先が胸元に迫ってきた。