ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか 作:ユーグクーロ
いつも誤字脱字の報告してくださる読者の方々、本当にありがたいです!!
何度も読み返している筈なのに自分でもこんなに気付かないとは……恥ずかしい限りです。
評価者
フロム大好きな不死人さん
リュウガ2022
shunyaさん
評価、ありがとうございます!!
オラリオの中央に聳え立つ塔から我が主は都市全体を鬱屈と戦いながら眺めていた。
そんな日々を過ごしていた筈なのに、ある日を境に主の目は何処か面白そうな物を見つけたのか少しばかり輝いていた。
今日に関しては特にだ、我らが主神に寵愛を受けているあの者が太陽神といざこざを引き起こしている事に少しばかり眉間に皺を寄せている。
「オッタル」
「はい、此処に」
鈴を鳴らしたような声に応じ、近くに寄ると主の手には一枚の古びた手配書があった。
数年前に突如として現れた謎のモンスター、名前はガンダムとそう記されていた。
この状況下で我が主が私に
「このガンダムというモンスターを捕まえてきてくれるかしら?」
「しかし、そのモンスターはある日を境に姿を消し、情報が途切れてからかなり日数が経過しております…………今から捜索するにしても何も手掛かりは………………」
我が主のそういう発言にはもう既に慣れた。だが問題はそこではない。
このガンダムの情報収集、及び捕獲の件はアストレアファミリアを始めとして、ロキファミリアと我等フレイヤファミリアの手によって繊密に捜索したにも関わらず何一つ成果を得られることは出来なかった。
当時の空振りな結果に主も落胆の声を発し、断念せざるを得ないとして切り捨てたのだがどうして今になって掘り返すような事を申されたのか私には理解出来ずにいた。
しかし、此方が苦言を呈したにも関わらず、フレイヤ様はとても落ち着いた様子で微笑みを返してきた。
「ロキファミリアが見つけたそうよ?確か………剣姫だったかしら?」
剣姫、アイズ・ヴァレンシュタインがガンダムと遭遇、戦闘を行ったという事か。様子からして、彼女は敗北したのだろう。
だとすればガンダムと呼ばれるそのモンスターはそれなりの実力を持っているという事だ。
「剣姫は死んだのですか?」
「いえ、生きているそうよ?五体満足どころか、かすり傷程度でホームに戻ってきたらしいの」
酷く驚いたのはいつ以来だっただろうか、狼狽えているこちらをフレイヤ様はクスクスと面白可笑しく堪えている。
だが本当にそうなるしかないのだ。あり得ないと。
剣姫なら尚の事、モンスターに対しての敵意はオラリオでも随一の筈だ。本気で戦っていたのはまず間違いないだろう。ましてやみすみす見逃すなんて行為は彼女自身が許さない。
逆にモンスターを討伐出来ていたのなら、主の要求と矛盾してしまう。
これまでの会話の過程を要約し、一つに纏めた答えが更に疑惑を生み出していく。
「まさか………ガンダムが剣姫を逃したと?」
「そうなるわね」
このオラリオでこんな事を耳にするのは初めてである。モンスターが仕留められる筈の冒険者を野放しにするなど前代未聞の出来事であるが、だからこそ納得した。
その未知のモンスター………ガンダムに我が主が酷く興味を惹かれていることに、怠惰の日々を払拭してくれる存在が現れたのだと。
街を見下ろすその顔がこちらに向けられる。その表情は想像していた通りのものだった。
「しかし、当時の話では奴は神出鬼没の存在、所在が分からなければ対処のしようがありません」
「このモンスターはとても知能が高く、剣さえ扱うと聞いているわ、その上、奇妙な魔法で何処かへと姿を眩ませることが出来ると聞いているの、恐らく更に下の階層へと逃げていったのでしょう、第一級冒険者ですら死を覚悟する程深い場所に………」
「…………」
「行ってきてくれるかしら?オッタル」
今のオラリオは表面上は平穏を保っているが、裏ではいつ何が起こっても不思議ではない程不安定な状況だ。出来る事なら傍を離れることは避けたいところだが、私の使命は我が主に降りかかるであろう障害の排除と共に、我が主の願いに全力で応じることだ。だから私が返す返事は唯一つしか無かった…………
「御心のままに」
私がオッタルに例のモンスター、ガンダムの捕獲を命じて早数日が経過しようとしていた。
それとは別にあの子がアポロンに目を付けられ、
やはりあの子はいつも私の期待に応えてくれる。あの無謀にも勇敢にも見て取れる姿は私の中の何かを焦がしてしまいそうなくらいに目を奪われてしまう。
あぁ、何時になったらあの子は私のモノになってくれるのかしら…………
少しばかり手助けをし過ぎてしまった自覚はあるけれど、結果はヘスティアファミリアの勝利という大団円に収まった。
その直後だ、私の
やはり
はやる気持ちを抑えながらもバベルの塔に戻り、彼が持ち帰った結果をこの目で確かめようとしたのだが、それは私の想像を裏返すものだった。
「申し訳ありません、フレイヤ様…………」
あのオッタルが、現在進行形で都市最強と謳われている彼が、体中に包帯を巻き付け、敗北という報告と共に跪いていたのだ。
彼があんな風に傷を負うなんて事があったのはゼウスファミリアのザルドと対決した時以来だったか。
「貴方がそこまで深手を負うなんて………」
「…………」
「それで、例のモンスター……ガンダムとはどうなったの?」
改めて私はオッタルに結果を求めるよう声にしたのだが、この様子を見るに失敗してしまったのは容易く予想できる。
「………一切手を抜いた覚えはありません。死力を尽くし、剣を振るいました、しかし奴には何一つ通用しませんでした」
何一つ通用しなかった、つまりオッタルの全力を持ってしてもガンダムとやらは揺らぎもしなかった。
一番に驚いたのはそこだった。
いくら剣姫と呼ばれているとはいえ、第一級冒険者になったばかりの者に通用する相手ならダンジョンに幾らでもいることだろう。
その上でオッタルであれば苦戦を強いられるとはいえ、何かしら得られるものがあると、そう確信していたのだが被害を被ったのはこちらだけだ。
「貴方以上の力を持ったモンスター相手に良く逃げ切れたものだわ」
「いえ、それが………こう言われたのです………殺すつもりはない、と」
私は酷く驚いた。ガンダムに対して何の情報も無かったのもあるが、あのオッタルが負けた上、そのモンスターは言語を介し、殺しに来た相手に情けを掛けたというのだろうか?
この結果が現実だというのならそのガンダムというモンスターはこのオラリオの冒険者よりも遥か上の力を……いえ、それすら凌駕する存在ということになるのかもしれない。
少なくともミノタウロスなんて存在が幼稚なものだと思えるくらいに…………
もしこれが事実だというのなら早急に行動するべきだろう。先ずは必要な情報を集めなくてはならない。
「どちらへ?」
「ちょっと
「承知しました…………」
オッタルの深く頭を下げる姿を背に、私は自室を後にした。
フレイアファミリアとしてはこの上ない屈辱ではあるが、それ以上に私はあの子がミノタウロスと戦う時よりも、先の
「本当に…………本当に感謝するわ、ガンダム」
まだ見ぬモンスターよ、貴方のお陰で………………
私の退屈はたった今死んだのだから。
俺はついこの間まで深層にてモンスターと戦っていた。
別にアステリオスのように修行に励んでいた訳ではない。ましてや自身に取り込んで強くなろうという訳でもない。
いつかリド達に合流することが出来た際の手土産代わりなれたらと、日々ソシャゲの作業感のような何かに浸りながら黙々と収集していた、ある日のことだった。
いつも通りモンスターを狩っていたら、目の前にあの
十中八九、この男が敬愛しているであろう
俺はダメ元で呼び掛けを行うと、向こうは素直に驚いていた。だが、すぐに冷静な態度を装っている。都市最強は伊達ではないということか。
元々武人気質である彼なら、何か通じるものがあると信じていた。
そう、俺はそう思っていたのだが…………
返って来た言葉は淡々とした捕縛宣言だったのだ。
そりゃあもうびっくりよ、どこぞの思春期を殺した少年に殺害宣告された少女のように驚いたよ。
其処からは口頭ではなく剣を交えることになってしまい、面倒な事この上なかった。
流石に猛者と呼ばれるだけあってこの世界に身を投じて以来、苛烈なものだった。アイズとの闘いですらまだ生易しい。
強いて言えば、向こうは何の情報も得られないまま接触してきたことが要因か、すぐに形勢は傾いた。
徐々に体力を奪って肉体が追い付かない状況に持ち込めたのは良いものの、ベテラン相手だと流石に無傷とまでは行かなかった。
どうにか不殺プレイしながら他の深層に逃げ、もうしばらくほとぼりが冷めるまで身を潜めようとしていた所までは良かったのだが、そこからが大変だった。なんと数時間後にはまたしてもオッタルが姿を現したのだ。
何故引き下がらないと質問すると、このまま引き下がってはフレイヤ様に顔向けできないとか言い出して負傷したまま牙を向けて来たのだ。
窮鼠猫を噛む、というのは語弊だが、とにかく手を焼いたのは確かだ。どうにか膝を崩したのは全身が血塗れになった頃だった。
流石に限界に達したのか酷い息切れと視点が定めることが出来なくなっていた。
それを好機と見計らって上の階層へと逃げ延び、今に至る。恐らく現在位置はかなり上の階層に辿り着いてしまったと思うが深層からここまで戻ってくるにもそれなりに時間を要する筈、少しの間は一息つくことが出来るだろう。
どうにか事なきを得たのだが恐らくこれでロキファミリアよりももっと面倒な相手に目を付けられたという事実は確かだ。
またフェルズに小言を言われてしまうだろうな……………
リド達にも合流し、皆が元気そうな姿を確認できたことに関しては良かったとだけ言おう。
これから起こるであろう出来事は、きっと今以上にややこしい事になる。そう思うと落ち込んでしまいそうになる。
全く、ほぼ謹慎状態になってからか、考えることが増えた所為でいつの間にか足元に草花が生い茂ってしまったじゃないか。
こんなところ、誰かに見られでもしたらもっと収集が付かなくなる。
早いところリド達に合流して、ある程度蓄えた魔石を渡してまた隠居生活に戻るとしよう。
そう思っていた矢先だった。
「にしても、さっきは災難だったな」
「うぅ、折角の魔石が
「仕方ないよリリ、流石にあの数を相手になんて今の僕達じゃどうにも出来ないし」
「私としてはかつての罪悪感が………」
俺は酷く混乱した。なぜならこちらに気付かず歩み寄ってくる冒険者達の声には聞き覚えがあったからだ。
レベル3になったばかりなのだからこの階層にいてもおかしくはないが、まさかこんなタイミングで出会うことになるとは…………
思わぬ遭遇だったが、数年前から待ち望んでいた時が漸く…………漸く訪れたのだ。
ここからが始まりと言っても過言ではないだろう。
俺はゆっくりと振り返り、声の主達に顔を向ける。
英雄に憧れる少年、ベル・クラネルと対面することが叶った瞬間である。
エルスクアンタと別れたゼノスメンバーはいつもと変わらず和気藹々と暮らしていた。
「しかし、いきなりエルッちが急にここへ来た時は驚いたもんだ」
「えぇ、それも土産だと言って大量の魔石を抱えてですもの、現に今も開いた口が塞がらない同胞達がたくさん居ますし、本当に彼は皆を驚かせるのが得意なんですから」
「それこそ今も冒険者達に襲われてるんじゃないか?」
「やめてくださいリド、そうなる度に頭痛を催したフェルズがここに訪れ、愚痴を零した回数が一体どれほどあったのか忘れたのですか?」
豪胆に笑うリド達の声が洞窟に響き渡ったが、数日後、フード越しからでも判る程の怒りを露わにしたフェルズがエルスクアンタを呼んで来いと言い放ったのはまた別のお話。