ダンジョンにELSクアンタが居るのは間違っているだろうか   作:ユーグクーロ

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ここ最近、一人でゲームしていると虚しさを感じてしまう……何故だろう?

評価者

白銀刀さん

佐藤一郎hvさん

はつきさん

古鷹0079さん

ゲッターアークさん

宵闇堂さん

評価してくださり有難う御座います!!


アストレア

神様とリリから地獄の制裁を受け、睡眠不足の苦しみに抗いながらアストレアファミリアのホームに居る。

 

まだ顔すら出していなかった太陽も既に傾き始め、オレンジ色に染まりつつあるオラリオは普段と何一つ変わらず住民達の呑気な声が行き交っていた。

意気揚々に母親と小さな子供が手をつないで晩御飯の内容を決めていたり、ダンジョンから帰って来た冒険者達がその日を生きてこれたことを互いに労い合っていたり、日々の癒しを潤す為の酒場が営業に追われていたりとごくごく平凡でごくごく当たり前なオラリオの日常が描かれることだろう。

そんな平凡の一部で、僕は非凡な一時を送っている。

 

昨日とはまた違った意味で顔面蒼白、滝のように油汗を滴らせながら応接室にて正義と秩序を司る女神、アストレア様を目の前にアリーゼさん達の帰りを待っていた。

 

「あらあら、そんなに緊張しなくても自分の家だと思ってもう少し寛いで良いのよ?」

 

「い、いえ!そんな!?」

 

穏やかに微笑みを投げ掛けるアストレア様の厚意を直接受け入れることが出来なかった僕は震える手で紅茶が淹れられたカップを手に取り、落ち着こうとするけれど陶器が震える音が部屋中に響き渡ってしまう。

極度の緊張の所為なのか味が分からない、たった一口だけ含み、無理矢理飲み込む。だけどこの程度じゃ収まる気配がなさそうだ。

 

昨日のイシュタルファミリアとの一悶着によって少なくとも今は女性に関してはあまり触れたくなかったのだが、左を見ても右を見ても女性の団員ばかり、それも好奇心によるものか突然の訪問に対する警戒心なのか、こちらを覗き込む瞳はどれも歓迎している雰囲気ではない事だけは理解出来た。

 

「貴方達、そんなに大勢で見詰められては彼も息苦しそうよ?少し席を外してくれるかしら?」

 

「流石にそれは無理な相談っていうもんですよ、アストレア様」

 

「そら、あのリトルルーキーがウチに来たんですからこうなるんは無理のない話ですからねぇ?」

 

アストレア様がこちらの事を気遣ってくれたのだが、それを眷属達である和服に身を包んだ清楚な女性と小柄ながら勝気でわんぱくな喋り方をする小人族(パルゥム)が異を唱えた。

 

「ついこの間、アポロンファミリアと戦争遊戯(ウォーゲ―ム)をしたことはアストレア様もご存じの筈です!」

 

「たった一カ月かそこらでレベルアップ………今やオラリオじゃ知らない冒険者はいないとまでされている有名人やけど、そんな彼がまさかとは思ってたけどここに来るなんて、厄介事はほぼ確定としか言いようがないと思いますけど?」

 

「もう……そんなこと言わないの、彼だってアポロンから無理矢理決闘を押し付けられた立場、言わば被害者よ?」

 

言葉の所々に棘を感じる発言が飛び交ってくる。最初から歓迎する雰囲気ではないことは分かっていたのだがアストレア様が擁護してくれていることを差し引いても時間が過ぎる度に息苦しさが募ってくる。早くアリーゼさん達が戻ってきてくれないだろうか?このままだと小人族(パルゥム)よりも縮こまってしまいそう。

 

「アリーゼ!ただいま戻りました!!」

 

「巡回、無事に終了しました、アストレア様」

 

「おかえりなさい、二人共」

 

軽快に部屋へ入ってきたアリーゼさん達のお陰で地獄のような沈黙は遠ざかって行ってくれた。向こうからしたら今の僕達の状況がいまいち把握していないからかキョトンとした顔で回りを見渡している。

 

「んん?ベル君が来る事は分かっていたけど、このしんみりとした空気はどういう事かしら?」

 

「あ、あの………アリーゼさん、実は………」

 

「あ、分かった!!」

 

どう説明しようか言葉を詰まらせていると自問自答に至ったのかアリーゼさんは大きく手を叩き、一層明るい表情をファミリア全員に向けた。

 

「皆、初めての男子の訪問に緊張してるのね♪大丈夫!私の方が美少女だけど皆も十分可愛いから何も問題ないわ!自信を持って!!」

 

その言葉を皮切りに周囲にいたアストレアファミリアの皆さんはますます険しい表情を浮かべるようになってしまった。

その所為か目の前に置かれていたカップに亀裂が入った。いや、それ以上に怖いという感情が上書きされてしまっているのかそれすらどうでも感じてしまっている。

 

「違う上にさりげなくマウント取りやがってるし………」

 

「いつ見せられても、やっぱり殴りとうございますねぇ、あの笑顔は」

 

「そんな物騒なこと言わないの輝夜!貴方も私程じゃないけど、きっと可愛い笑顔になれる筈よ!!」

 

そう返された輝夜と呼ばれる和服の女性は満面の笑みで応えるけども即座に純粋な笑顔でない事だけは理解した。何せ利き手であろう拳が血管を浮き出して震えているのだから。

少なくとも全員の矛先が変わったことで少しは呼吸がしやすくなったけれども、本題のガンダムについて話せるようになったのはもう少し先の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は初めてガンダムに出会ったことをアリーゼさん達に話した。少しばかりは驚くかなと淡い想像を浮かべていたが聞き手の彼女達はその素振りすら一切感じなかった。

強いて言えばまるで、そうなるだろうなと予想しているような雰囲気だった。

 

「それで、クラネルさんはあのモンスター………ガンダムについて詳しく知りたいとのことでしたが」

 

「はい、僕もあのモンスターに会ってから仲間達と一緒に色々と調べていたんですけど、思うように得られるものが無くて………」

 

「だからあの時私が持っていた資料に目を輝かせていた訳ね?」

 

二人の問いに素直に答えると二人、というよりはアストレア様を始めとしたアストレアファミリアの皆さんは各々に顔を合わせながら悩み始めた。

 

「先ずベル君はあのモンスターと出会ってどう思った?」

 

「え?」

 

アリーゼさんからそんな問いかけが投げ掛けられた。その表情は先程のふざけていた少女のそれではなく、重く、険しさも混じったものだった。

不意にそう言われ、僕はどう答えれば、いや、正確にはどう表現したらいいのか分からなかった。

 

『お前達と争うつもりは無い………』

 

あの時、ガンダムと呼ばれたものは確かにそう答えた。僕達を殺そうと思えば瞬きも必要としない位に圧倒的な力を持っていた筈なのに、そうしようとしなかった。

当時の記憶が今のアリーゼさんとの言葉に重なって今再び僕に突き付けられてくる。

 

あの時皆がガンダムに立ち向かう中、僕は武器を抜くことをしようとしなかった。戦おうと思わなかった。

ただ純粋に勝てないと、そう直感的に感じていたのかもしれない。

でも、それと同時に僅かに生まれた何かが僕の心の中で生まれたのだ。

 

「怖くない………そう思いました」

 

その言葉にアリーゼさんは少しばかり驚いたような顔を浮かべた。周りの人たちは何を言っているんだと思っているかのような中、目の前にいるアストレアファミリアの団長はゆっくりと笑みを浮かべた。

 

「そっか………じゃあガンダムについて私達が知っていること全部教えてあげる!!」

 

元気に構えるアリーゼさんだったけれど、ほんの一瞬だったが、僕の答えに少し寂しそうな顔をしたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もとからダンジョンで不思議なモンスターがいるって噂が飛び交っていたの、当時はもう大騒ぎだったわけ、なにせギルド長に私達アストレアファミリア、アルテミスファミリア、フレイヤファミリア、ロキファミリア、ガネーシャファミリア、ヘルメスファミリアという感じで一部のファミリアだけで会議したの!まる一日掛けてね?」

 

「一部って、全てのファミリアには伝えなかったんですか?」

 

当時から既にガンダムが問題視されていたのは何となく分かっていた。そして秘密裏に事を進めようという事も含めて。

人のように感情がある上に常識外れの力を備えているのだ。普通に互いに協力して討伐しましょうというにはあまりにも無理難題だったことは容易に想像できる。

だがそれを加味してもそこまで秘密裏にしておく理由とは一体何故だろうか?

 

「当時はそれだけ異常事態だったの、ギルド長からも街に余計な混乱は起こしたくないってことで私達にも箝口令が敷かれたわけよ」

 

「い、今更聞いておいてあれなんですけど、僕に話して大丈夫だったんですか?」

 

「大丈夫大丈夫!ベル君もあれに会ったんだし、これで晴れて私達は共犯仲間になれたんだから気にしないで!」

 

「物騒な言葉で誤魔化そうとしないでください!!?」

 

満面の笑みでサムズアップするアリーゼさんに困惑しつつも次に言葉を繋げたのはアストレア様自身だった。

 

「当初の予定では捕縛する方針で話が進んでいたのだけれど、そう簡単には区切りがつけられなくてかなり闘論することになったの」

 

「どういう事ですか?」

 

「………先ずはガンダムに対する皆の認識が大きく差が出たことね、大きく別れて2つ、穏便に接触してガンダムと対話、話し合いの場を設けるべきという派閥とモンスターと平和的な解決は無理だと、危険分子として排除すべきだという派閥、2つの意見が大きく衝突したの」

 

「で、でもヘルメス様からの話だと捕縛対象として今でも認定されているって聞きましたが…………」

 

「表面上はね、だけど結局のところ相手はダンジョンから生まれたモンスター、ましてやその能力は未知の領域、更には街に住む一般の方に絶対危害を加えないという保証は出来なかったの、だからもし、ガンダムが自ら冒険者達に危害を加えるようなことがあればその場にいる者達の判断に一任するという事になったわ」

 

アストレア様は淡々とそう説明してくれたが、要は捕まえてもいいがもしも他のモンスターと同じく無闇に攻撃してくる存在だと判断すれば討伐しても何もお咎めはないということだ。

もっと言ってしまえば向こうが何もしなくてもこちらが危険だと判断して攻撃して、倒してしまってもギルドどころか他のファミリアにも危なかったから討伐したと言い訳が出来ることになる。

 

「なら、どうして捕縛という名目が消えなかったのですか?」

 

「理由は二つあるわ…………一つはアルテミスファミリアとアルテミス本人が討伐そのものに異を唱えたからよ」

 

「アルテミス様?」

 

「ええ、貞潔を司る女神でヘスティアとは親友の間柄になる処女神の一人よ、今はオラリオの外で活動しているわ」

 

「どうしてそのアルテミス様は討伐自体に異議を唱えたんですか?」

 

「理由は教えてくれなかったわ、ただ頑なに討伐そのものへ首を縦に振らなかった所為で今のアルテミスファミリアは他のファミリアから反感を持たれてしまって議会の中ではすっかり孤立する形となってしまったの」

 

理解が追い付かなかった。普通に考えれば可笑しな話だからだ、ガンダムという存在はダンジョンの中で起きた出来事の筈、情報が入ったにしても外で活動している筈のアルテミスファミリアがどうしてモンスターを擁護するような発言をするというのだろうか?

ますます謎が深まる中、僕は新しいヒントを欲しがるような気持ちでアストレア様に顔を向ける。

 

「もう一つの理由って………何ですか?」

 

「…………そのもう一つは私達にあるの」

 

そう問いかけたが応えたのはアストレア様ではなく、隣に居たアリーゼさんが唐突に答えた。

 

「アリーゼさん達に?」

 

疑問を投げ続ける中、アリーゼさん達は仲間同士で目を合わせ、アストレア様からは無言で頷き返していた。

小さく深呼吸したアストレアファミリアの団長はゆっくりとその口を開いた。

 

「今から話す事は誰にも喋らないって約束出来る?」

 

その眼は力が宿していた。その顔は凛としていながらも堂々としていた。今僕が目の前で対談している人物は陽気で明瞭活発な少女ではない。

アストレアファミリア団長、アリーゼ・ローヴェルその人だ。

突然襲い掛かってくる言いようがない重圧に押し負けてしまいそうになる。

だけどここで怖気づいて引き下がるわけにはいかない。僕は知る為にここへ来たんだ。

今オラリオが起きている事、これから起ころうしていることを、そして…………ガンダムの事を。

 

「教えて下さい、その理由を!」

 

「………さっき、私達もガンダムに遭遇したって話をしたよね?」

 

「え?あ、はい………」

 

目の前で真剣な顔を向け続けるアリーゼさん、その口がゆっくりと開かれた。

 

「私達はその時……ガンダムに命を救われたからなの」

 

「_____っ!!?」

 

僕は息を呑んだ。

このオラリオに訪れ、冒険者として道を歩み始め、ダンジョンの事を理解した上で決してありえない………いや、想像を絶する言葉が突き付けられてしまった

 

 

 

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