日本のどこかにある廃墟。既に住人が存在せず、夜の闇に支配されている街。
その街の外れに、大きな建物があった。それはまるで城のような大きさの建物だった。
だが、それは城ではない。
なぜならば、かつて、山だったからだ。
戦いの余波によって、崩れ、その形はまるで城を思わせる形になっているからだ。
そんな荒れ果てた場所を、二人の吸血鬼が戦っていた。
一人は金髪の女性。
血を思わせる赤いドレスを身に纏い、その手には刀を持つ。
女性の名前はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼と呼ばれた吸血鬼だ。
もうひとりは、鎧を身に纏っている。
全身を鎧に身に纏い、鎧のあらゆる箇所には鎖で巻かれている。
その鎧の名はキバ。
とある吸血鬼の王の為に造られた鎧であり、鎖は、その力を制御する為の物である。
そして、その手に持つ剣もまた鎖で巻かれている。
本来ならば、美しい刀身は、鎖によって、見るも無残な姿へと変わり果てていた。
しかし、それでもなお、その剣からは美しさを感じる事ができるだろう。
キバの持つ武器──―魔皇剣・ザンバットソード。
それこそが、この剣の名であった。
そして、キスショットの持つ刀もまた、ザンバットソードとは違った魅力を持っていた。
その名は心渡。
元々は、キスショットの眷属が所有していた日本刀であったが、今、キスショットの手にあった。
「はぁ、渡。無駄だと分からないのか」
そう、キスショットは、目の前にいるキバに問いかける。
それは、キバを身に纏っている男の名前である。
「どんなにお前が私を止めても変わらん。お前が人を守ったとしても、吸血鬼に対して、憎しみを持つ者は襲う」
「だから、人を殺し続けるのか」
キバの言葉に、キスショットは答える。
キスショットの目的は人間を守る事ではない。
ただ、自分が生きる為に人間の血を飲むだけだ。
その為には、多くの犠牲が必要だと考えている。
そして、人間は自分以外の者を虐げて生きようとする者達もいるのだ。
だからこそ、多くの人間を殺す必要があると考えていた。
しかし、それを渡は。
「それでも、俺は信じたい。父さんが言っていた言葉を」
その一言と共に、ザンバットソードを振った。
その一撃により、周囲にある瓦礫が崩れ落ちていく。
「ならば、仕方ない」
その言葉と共にキスショットもまた構える。
「貴様を徹底的に痛めつける。痛めつけた後、貴様の血を飲み、眷属とする。
悪いが、私は欲しい物は徹底的に動くつもりだ」
その言葉と同時にキスショットは動いた。
キスショットの身体能力は高く、一瞬にしてキバとの距離を詰めると刀を放つ。
だが、それに対して、キバもまたザンバットソードを振るう。
ザンバットソードと心渡。
二つの刃が激突すると共に、山は崩れ去る。
それは、後に地図から消えた、小さな島で起きた戦い。
ふと、あの時の出来事を思い出した。
なぜ、あの時の事を思い出したのか。
それは、あの時と同じぐらいに、真剣な目で、忍がこちらを見ていたからだ。
「渡よ、大変な情報を見つけてしまった」
そう言いながら、忍は俺にスマホを見せつけてきた。
その、スマホは、彼女がよく行くドーナツ店のクーポンであり、どうやら今日はそれが半額になるらしい。
「そうか、凄い情報だな」
「何を呑気な事を言っておる! この店では今月一杯、クーポンを使えば全てのドーナツが一個百円で食べられるのだぞ!」
「ああ……それは確かに凄いな」
しかし、忍の興奮とは裏腹に俺は特に感動しなかった。
「何を言っておる、早く行くぞ」
「行くか、それで、誰の金で食べるつもりだ」
「そんなの、渡の金に決まっているだろ」
そう、まるで当然の事のように言うと、忍はさっさと歩き出した。
「いや、何を言っているんだ、俺は行くつもりはないぞ」
そんな、当たり前の事に何を言うのかと言うように首を傾げる忍を見て、俺は溜息をつく。
彼女は、時々こういう事を言い出すのだ。
「はぁ、まったく、渡よ、こんな機会はないのだぞ。私達は普段、渡されている小遣いしか使う事が出来ないだろう?」
「まあ、そうだな」
「そして、儂は残念ながら、既に小遣いはなくなってしまった。ならば、ドーナツを食べるには、渡の金が頼りなのだ」
「…………」
別に、そこまで必死になって食べたいわけではないのだが……。
「というわけで、渡よ、金を寄越せ」
「断る」
即答だった。
すると、忍は不機嫌そうな顔になり、俺に向かって手を伸ばす。
「何を言っているのだ、儂とお主は二人で一人。
ならば、お主の小遣いは儂の物でも有るはずだ」
「いや、無いからな……」
そう言っても、忍の手が伸びてくる事は変わらない。
「それに、儂には多くの借りがあるじゃろ。それを返して貰おうと思ってな」
「借り」
それに対して、俺はすぐに思い出してしまう。
忍には、よく世話になっているし、何かあれば助けてもらってもいる。
だから、彼女の言葉に対して反論する事は難しい。
だが、それでも俺は財布に手を伸ばしたりはしない。
「はぁ、5個までだぞ」
「よしっ」
仕方ないので、妥協案を出すと、忍はとても嬉しそうにした。
……まあ、いいか。
ドーナツ屋へと、向かった。
その時だった。
「いやぁ、こんな所でまさか、会えるとはねぇ」
「……」
聞こえた声。
それと共に振り返ってみてみれば、そこにいたのは金髪の青年。
そいつには、見覚えがあった。
「久し振りだね、ここで、何の用だ?」
「なに、仕事を頼まれてね。なかなかに厄介な仕事で同僚もかなり面倒だけどね」
「あっそ、悪いけど、俺はこれからドーナツを買いに行くから」
「まったく、つれないねぇ、まぁ良いけど」
そう、俺はすぐに立ち去ろうとする。
「だけど、今回の1件、またお前を巻き込むからな。その時は頼りにしているよ、キバ」
「本当に厄介な事だな、エピソード」
そう、俺達はそのまま立ち去る事にした。
ドラルクの作戦は
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笛で渡達を呼ぶ
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鬼舞辻を噛んで、支配下に
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下剋上しそうな鬼達を仲間にする
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アーカードの旦那を呼ぼう