教会は、少し前までは崩れかけていたとは思えない程に、改築されていた。
その周囲の敷地は、まったいらな広場が広がっている。
その奥にある教会は、そんな広場の中心で、そびえ立っている。
夜の闇と共に、周囲は静かな風を吹かせながら、その場に、ヴァルバトーゼは立っていた。
「……まさか、貴様と、こうして教会で戦う事になるとはな、アーカード」
そう、自身の目の前にいる男に対して、ヴァルバトーゼは呟く。
血色の悪い白い肌をした男は、全身に赤いコートを身に纏いながら、ヴァルバトーゼの前に立っていた。
「これはこれは、久し振りだなヴァルバトーゼ。こうして、お前と再び戦える事になるとは、正直に言えば、嬉しく思う」
その一言を告げると同時に、アーカードは、その両手に持つ拳銃を構えていた。
「そうか、貴様には聞きたい事があるが、今は良いだろう」
それと共に、ヴァルバトーゼは、すぐにその手に持った剣先を、真っ直ぐとアーカードに向ける。
「貴様からは聞きたい事は、貴様を殺した後、たっぷりと聞かせて貰おうか」
「それは、出来るか、楽しみだなぁ!!」
アーカードは、その言葉を合図に、手に持っていた拳銃の引き金を引く。同時に撃たれた銃弾は、まるで爆発したような音を響かせながら、真っ直ぐとヴァルバトーゼに向かって飛んでいく。
それに対して、ヴァルバトーゼは、紙一重で避けると同時に、真っ直ぐと走り出す。
それを予想していたのか、すぐさまに第二射が放たれるが、それもギリギリのところで回避していく。
しかし、それでも避けきれなかったのか、頬から僅かに鮮血が流れる。それと同時に、そのまま一気に駆け抜けていく。
だが、アーカードも簡単に攻撃を許すわけがなく、即座に第三射を撃つが、今回は当たる事がなかった。
そのまま、勢いよく駆け抜けるように、地面を強く蹴りあげる。
アーカードの放った弾丸は、壁にぶつかり床に落ち、今にも消えそうな光を放っていた。
「やはり……この程度では当たらぬか」
その言葉と共に、ゆっくりと近づいて行く。
その姿を見ながら、アーカードは、大きく息を吐き出すと同時に、表情を歪めていた。
その歪めた表情は、笑みとも言える。
「ふんっ!」
そんなアーカードに接近したヴァルバトーゼは、そのまま手に持った剣を、振り下ろした。
振り下ろされた剣に対して、アーカードは、両手に持つ拳銃を交差させ、白羽取りのように受け止めた。
それと共に、もう片方の銃口を向けて、引き金を引くが、すぐに剣を引き戻して距離を取る事で銃弾を避ける事に成功する。そのままヴァルバトーゼは、アーカードに向かって、蹴り上げて来る。
「ぬおっ!?」
その蹴り上げた足を掴もうと手を伸ばすが、それを察したヴァルバトーゼは、すぐさま足を引っ込めて回避する。さらに追撃するように、地面に着地する前に掌底を放ち叩きつけようとするが、「むぅん!」という声と共に、まるで野球ボールでも扱うかのように、手首を掴む。
そしてそのまま手を放そうとするが、ヴァルバトーゼはすぐに腰を落とし、逆立ちするような体勢になる。その状態のまま、一気に両足で頭を挟み込むように蹴る。「ぐおおおおぉっ!!?」この攻撃によって、アーカードの体は宙へと浮かび上がり、そのまま教会の壁に激突する。この隙を逃すまいと、即座に地面へ降り立ったヴァルバトーゼは、再度接近し、斬りかかる。
だが、やはりと言うべきか、銃の引き金を引き、銃弾を放つ。
それに対して、ヴァルバトーゼは、その手に持つ剣で薙ぎ払う。
それによって、ヴァルバトーゼの剣が、アーカードの拳銃が。
互いの武器が砕け散る。
互いの獲物が無くなった。
それによって、行われるのは。
「「ふんっ!!」」
純粋な殴り合いであった。
吸血鬼の怪力によって、行われる拳と拳のぶつかり合いである。互いに相手の顔に向かって放つそれは、
しかしてどちらも弾かれる。
互角であった。だが二人はそこで止まる気はない。お互いに相手よりも先に一撃を当てようと再び殴り合うのだ。
やがて互いの体力も尽きてくる中で、二人の戦いはさらに激しさを増していくだろう。
だが。
「止めにしようか」「終わるのか」
それが終わったのは、アーカードが言った、たった一言だった。
それまで、死闘を行っていた者同士からは考えられない程に、あっさりと。
「私の目的はあくまでも陽動。ここに、お前を含めた吸血鬼を、この場に留める事」
それは、周囲にいる戦いを見ていた渡達の事を指していた。
「それが、ロキからの指示か」
「私の目的と合致しただけの話」
「目的だと?」
「これ以上、化け物共が一緒になるのは、見るに堪えないだけだ」
そう言ったアーカードは、その帽子を深く被る。
「お前の目的に関しては既に分かっているが、なぜ、奴らと協力する」
「私が協力? 何か勘違いしているようだが、私が奴らと一緒にいるのは、その方が奴らを始末するのが楽だからだ」
そう言ったアーカードは、笑みを浮かべる。
「奴らが行おうとしている事には興味はないが、隠れるのは上手い奴らばかりだからな。そうして追っていたら、自然と一緒にいるように見えただけだ」
「ならば、全員を殺すのか?」
「さぁな、だが、奴らの中に気に入った奴は、考えるつもりだ。特に純愛にはめっぽう弱くてね」
そう言ったアーカードは、そのまま周囲を見る。
「ヴァルバトーゼ、次の決闘では、全盛期のお前と戦ってみたい」
「化け物嫌いのお前が言うのか」
「貴様は少なくとも化け物ではあるが、愚かではない。人間が最も強い力、団結や友情だと語った貴様は、我が宿敵に相応しい。何よりも、他の化け物に殺されるぐらいならば、お前に殺される方がマシだ」
「そうか」
それと共にアーカードは、その場から去っていく。
「状況はどうだ?」
「さぁ、ロキの方はどうなったか知りませんが、おそらくはなんとかなると思いますよ、それで、どうします?」
それは、このままでは、ヴァルバトーゼはアーカードには勝てない。
それは、今回の戦いでヴァルバトーゼ自身が一番理解していた。
だからこそ。
「方法を考える、手伝ってくれるか?」
「えぇ、勿論」
仲間を頼る事にした。
ドラルクの作戦は
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笛で渡達を呼ぶ
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鬼舞辻を噛んで、支配下に
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下剋上しそうな鬼達を仲間にする
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アーカードの旦那を呼ぼう