迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第1話:尊厳レイプ! 被差別階級と化した先輩!!

「ファッ!?」

 

 空手部員である鈴木はたまげていた。先程まで、1人で屋台の美味いラーメンを楽しんでいた所だったというのに、気づけば全く知らない所に居た。

 周囲にいる者達はコスプレをしているのか中世風の衣装を着ていたが、それ以上に鈴木が違和感を覚えたのは彼らの顔の造詣だった。

 

「気持ち悪い! 何だ、このハゲは!?」

「うんこの臭いが漂って来そうだ!!」

 

 異様に目が大きく、鼻と思しき箇所が見当たらない。全体的に顔が平たく、似た様な顔が幾つも並んでいる様に見えた。だというのに、日本語は通じるというチグハグさが一層混乱を招いていた。

 

「早くこのゴミを片付けて頂戴!」

 

 何も分からないというのに、掛けられる言葉は暴言ばかり。何故、ここまで責められるのか分からずに呆然としていると衛兵達に拘束されていた。

 

「ふざけるな!!」

「カスが! 聞かねぇんだよ!」

 

 抗議をしたが聞き届けられることは無く。20人以上、30人以下の男達に囲まれて散々に殴られた後、鈴木は何処とも知れぬ場所へと運び出されていた。

 

「おい、コイツをどうするんだ?」

「オークの巣に放り込むんだ。そうしたら、人質救助の名目で冒険者を送り込むことが出来るからな」

 

 薄れゆく意識の中、突如として迷い込んだ理不尽に満ちた世界に対する怒りを忘れぬように。鈴木は内心で闘志を滾らせていた。

 

「(いいよ……来いよ!!)」

 

 降り掛かる全ての不条理を食らってやる。と言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべながら、彼は意識を手放した。

 

~~

 

「ここは?」

 

 鈴木の意識は暗闇の中を漂っていた。現実から乖離した場所にフゥっと浮かび上がったのは、周囲に溶け込みそうな黒い肌をした金髪の青年だった。

 先程まで、見ていた巨大な相貌を持った者達と比べて、自分とも近しい容貌をしていることにも安堵を覚えていた。

 

「う~ん。イイ体してんねぇ、なんかやっていたの?」

「僕は、王道を征く……空手。ですかね」

「あぁ~! 道理でねぇ!」

 

 非現実的な光景の中で日常会話を交わしながら、鈴木は目の前の青年に何とも言えない感情を抱いていた。

 まるで人を導く救世主然としたような雰囲気を感じるが、同時に人を陥れようとする悪魔めいた雰囲気も併せ持っているように思えた。

 

「オナシャス。帰して下さい。センセンシャル」

「大丈夫だって~! 安心しろよ。ヘーキ、ヘーキ!」

 

 突如として人格レイプを行って来る世界に安心できる要素など何一つとしてないのだが……と言う抗議をしようとした所で、鈴木の体は淡い光を放ちながら、多少臭い立っていた。

 

「パパっと異能【スキル】を授けて、終わりっ!」

 

 一体何のことかと疑問を覚えたのも一瞬。直ぐに、全身を跳ね回る様な痛みに襲われ、堪らず叫び声をあげていた。

 

「ンアッー!!!」

「おとなしくしろ! ジタバタすんじゃねぇ!!」

 

 先程までの気さくな様子から一転、青年は鈴木の口にガムテープを貼り付け、押さえつけていた。

 理不尽は全て食らってやると先程、誓いを立てたばかりではないか。まるで、女子の様に泣き叫んでも仕方がない。この痛みすら克服せんとばかりに、鈴木は胸中で呟いていた。

 

「(暴れるなよ、暴れるなよ)」

 

 力を抑え込もうという意思に呼応するようにして、痛みが引いて行く。自分の中に何かが沁み込んでいく気がした。

 何かしらを手に入れたとしても、自分が元の世界に帰るアテはあるのだろうか? 不安げに青年の方を見てみれば、彼は人差し指を掲げながら笑みを浮かべていた。

 

「まぁまぁ、そう焦んないで」

 

 もっと色々なことをぶちまけたかったが、意識が浮上していく。自分が得た力が何であるのか? 彼は何者なのか? ここは何処なのか? 全ての疑問を抱えたまま、覚醒へと向かう。

 

~~

 

「フゴゴッ。ブギッ」

「グーッ」

「ファッ!?」

 

 目を覚ました鈴木の視界に飛び込んでいたのは、人間と思しきモノだった。

 浅黒い肌と豚鼻。言葉の代わりに鳴き声の様な物でコミュニケーションを取っている様子は異質に見えた。

 だが、彼らの顔の造詣は鈴木が見慣れて来た物に近しく、整っているとは言い難い者達ばかりであったが、親近感は覚えた。

 

「ブギィギギ。ギッ」

 

 スッと差し出されたのは白濁色の液体で満たされた木の器だった。中身は殆ど味付けのされていない粥だったが、この世界に来て初めて受けた厚意に涙を浮かべていた。

 

「美味いですね。これは美味い」

「ゴーッ」

 

 鈴木が満足していると分かるや、周囲からは喜びを共有するような鳴き声が上がった。何故、自分をこうも歓迎してくれるのだろうか?

 

「そ、それ、は、貴方が、うつ、くしい、からです」

 

 奥から出て来たモノはたどたどしくはあったが、鈴木にも分かる言葉で話していた。ようやく会話を交わせるものが現れたことが嬉しかったのか、鈴木は彼のコミュニケーション能力を褒め称えた。

 

「やりますねぇ!」

「よ、ろこんで、貰えたら、うれじい、です」

「あ、そうだ。まずうちさぁ、鈴木っていうんだけど。貴方達は?」

「わ、わだす達は豚人(オーク)です。族長のスーヴです」

 

 オーク。と言われて、鈴木が思い浮かんだのはRPGなどに出て来る敵キャラだった。だが、彼らからは邪悪さなど微塵も感じられなかった。

 まずは落ち着いて色々と聞こうと。話す順番を整理していると、ドタバタと若いオークが駆け込んで来た。

 

「グゴゴゴゴッ!! ブギギッ!!」

「おっ、大丈夫か、大丈夫か」

 

 只ならぬ様子に鈴木が彼の肩を叩いた所、スーヴの顔は血の気がサーッと引いて真っ青に染まっていた。

 

「大変で、す。冒険者達の、襲撃です」

「ファッ!?」

 

 一体、何故。襲われているのか? と考えた時、鈴木は薄れゆく意識の中で聞いた話を思い出していた。人質救助の為に冒険者達を送り込むと。

 

「に、逃げまじょう。命があれば、やりなおぜます」

 

 周囲には生活跡と思しき食料や鍋。衣服や手作りと思しき玩具等もある。どうして彼らの生活が脅かされねばならない? ひょっとしたら、自分の預かり知らぬ所で悪逆を働いていたのかもしれないが、一方的に奪って良い筈がない。

 

「頭に来ますよ!!」

「あ“!」

 

 堪らず、先ほどの若いオークが駆けて来た場所を逆走していく。そこには、目を疑う様な光景が広がっていた。

 

「オラァ! 死ね、豚共!!」

 

 年若い男女の集団が蛍光色の髪を振り乱しながらオークを切り裂いていた。先程まで自分に粥を渡し、笑い合っていた者達がゴミの様に殺されている光景に激しい憤りを覚えると同時に全身の筋肉が怒張した。

 

「死んで、どうぞ」

「は?」

 

 先頭で大剣を振るっていた青年の首根っこを掴むと、頸椎を握り潰した。支えを失った頭部がダラリと垂れて崩れ落ちる。目の前の出来事に信じられず、冒険者達が硬直した一瞬は生死を左右した。

 

「硬くなってんぜ?」

 

 小剣と盾を構えた少女の眼窩に指を突き入れた。眼球の角膜を突き破り、水晶体を砕き、視神経を引き裂く。洞窟内に絶叫が響き渡る中、鈴木は天井を跳ねて最後列に居た男女の前に立った。

 

「あ」

「ホラホラホラホラホラ!」

 

 固めた拳で打ち据える、あまりにもシンプルな暴力。頭骨を砕き、折れた肋骨は臓器へと突き刺さり、彼らの体を持ち上げて何度も地面へと叩き付ける。周辺を体液が汚し尽くした頃にはピクリとも動かなくなっていた。

 

「FOO↑ 気持ちい~!」

 

 暴力の快感に酔いしれていた。人を殺したというのに不快感も嫌悪感もわくことは無く、むしろ自分を足蹴にしていた連中を始末した達成感に満たされていた。

 恍惚としながら洞窟に戻ってみれば、眼球を引き抜かれた少女がオーク達に拘束されていた。

 

「フゴゴッ! ブギギギッ!!」

「オ”ェツ! ゲェッ!!」

 

 同胞を殺された怒りを晴らす様にして、オーク達は切り刻んだ冒険者の死体や自分達の排せつ物を彼女の口に詰め込んでいた。

 

「俺もやられたんだからさ」

 

 陰惨極まる光景を冷徹に見下ろす鈴木を見て、スーヴは薄ら寒い物を感じていた。

 

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