迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~ 作:ゼフィガルド
磔にされた者達を埋葬しているトルノの横で、鈴木はスーヴの遺体を手刀で切り分けていた。あの巨体を埋葬するとなれば、相当巨大な穴を作らねばならないことを考えれば、解体して埋めるのは合理的だとも思えた。
続いて、鈴木が拾って来たのは枯れた小枝や着火材料になる様な物だった。トルノも話では聞いていたが、遺体を燃やして埋葬するという文化もあるそうだ。
「(鳥人族(ハーピィ)は、死後も大空を飛べるように火葬して煙と共に昇っていく。と言う話はあるけれど、先輩達もそう言った文化があるのかな?)」
「オォン! ホォン!」
凄まじい速度で木を擦り合わせ、種火を確保すると、トルノ達の拠点から失敬した枯草に着火した。そこから枯木に燃え移り、適宜空気を送って大きくした日の中に、スーヴの遺体を入れた。
油が滴り落ち、火の勢いが強くなっていく。と、同時に肉が焼ける香ばしい匂いが漂って来た。すると、鈴木は手にした短剣を焼き上がった肉へと突き刺し、そのまま口へと放り込んだ。
「うん。美味しい!」
「何やってんですか!? 不味いですよ!」
火葬するかと思いきや、この男は恩人の遺体を調理していただけだった。先程、仲間を失ったトルノからすれば信じられない神経と倫理観をしていた。
「多少はね?」
「死んだら食い物だなんて考え。まるで、野獣みたいじゃないですか!」
言葉を交わし、感情を伝えて、誰かを思い遣ることが出来るから社会を築けて来たのでは無いのか。今の、鈴木の振る舞いはそう言った文化的な面を否定しかねない行動だった。
だが、鈴木は責められたことに対して憤る訳でも無く、悲嘆にくれる訳でもなく。自らの腹部を指差しながら言った。
「こ↑こ↓」
それが何を意味するかは一瞬理解できなかったが、トルノは先程まで巡らせていた思考を思い出していた。
鳥人は死して尚、空へと向かえるように火葬をする。鈴木は自らの腹部を指差した、と言うことは何を意味するのかと言えば。
「何時までも自分と一緒にいる。ってことですか?」
「そうだよ」
解体したスーヴの破片を次々と焼き上げては、胃袋に収めていく。
一見すると、恩人も死ねば肉でしかないという野獣の如き考えではあるが、自らの血肉となって生き続けるという考えの上で行っているならば、これは彼なりの弔い方法ではないのだろうか?
実際、食している彼の顔は必死な物ではなく、まるで慈しむかのような。最後の会合を堪能している様な、穏やかな涅槃顔であった。
「す、すいません。そんなつもりとは知らず、失礼なことを」
「多少はね?」
誰でもイキ違いはある物だ。誤解を解いたトルノは改めて、仲間達を埋葬し終えた後、鈴木と向かい合う様にして腰を下ろした。
「僕は、これから攫われた仲間を助けに行きます。鈴木さんは、どうしますか?」
一件、選択を提案している様に見えるが、これは強制と言っても良かった。
この世界の勝手が分からず、頼る相手も居ない鈴木には自分しかいないはずだ。GOに立てついた以上、何の考えも無しに放浪しても先は長くないだろう。
幾ら、逸脱した能力を持っていたとしても一度は捕まっているという前例がある以上、鈴木も考え込んでいた。
「これもうわかんねぇな」
「だったら、僕に協力してくれませんか? 住居を用意するという約束は果たせませんでしたが、この世界で生きていく為の知識を教えることは出来ます。困ったことがあったら、何でも聞いて下さい」
だが、一方的に利用するのも気が引けた。利用する以上は、鈴木がこの世界で生きていく為に必要なことは可能な限り手配しようと決意していた。トルノに対する返答として、鈴木は笑みを浮かべながら言った。
「良いよ! 来いよ!」
「それじゃあ!」
「胸に掛けて! 胸に!」
自らの胸を叩きながら言った所を見るに、俺に任せろ。と言う意思表明だと解釈した。トルノ1人では、囚われた仲間の解放など現実的ではなかったが、鈴木と言う規格外の存在がいるなら話は別だ。
「この場で祝福された者達がいるというのに、態々。女子供を攫って行ったのは、丁重に行う必要があるからか。あるいは、奴隷として売り飛ばすつもりだったのか……。いずれにせよ、人を連れた状態では足も鈍ります。この付近で王都に近い村があるとすれば、あちらの方です」
一切の淀みなく、トルノはとある方角を指差した。指示を受け取った鈴木は、彼を抱え上げ、迷うことなく走り出した。
「ほら、行くどー」
立塞がる獣は撥ね飛ばし、道なき道を突き進み一目散に駆け抜けていく。
~~
トルノ達の拠点から少し離れた場所では、大量の蜥蜴人(リザードマン)が連行されていた。いずれも女子供ばかりであり、歯向かおうとする者は誰一人としていなかった。
彼らの逃走を防ぐべく配置された兵士達は戦戦恐恐としていた。例の襲撃地点で待ち伏せをしていた冒険者達が返り討ちにあったと聞いたからだ。
「アイツら。今まで、何回も他種族の抵抗者達を葬って来たベテランだったのに」
「例の豚人(オーク)か? クッソ、何だって俺達がこんな目に」
この世界における、人間と言う種族は一種の特権階級であった。他種族を圧倒するだけの力を備え、いずれも眉目秀麗な者達ばかり。
無論、他種族の抵抗や反乱が無かった訳では無いが、どれ一つとして成就することはなかった。
「バカじゃねぇ?」
怯えた表情を見せている兵士達を鞭で打ち据えたのは、タクヤだった。まるで、彼らが抱いている不安や恐怖を一笑に付する物だと言わんばかりに、笑みを浮かべていた。
「タクヤさん。すみません」
「俺達はGO陛下から崇高な使命を賜っているんだ。今更、ビビってんじゃねぇよ! お前らの決意って、こんなユルいんかよ」
呆れた様な物言いは、却って兵士達の覚悟を想起させる事となった。
「いえ、そんなことはありません。我々には、この憐れな種族に祝福を受けさせる義務があります!」
「そうだろ? 分かったら、さっさと行くぞ!」
兵士達の疲労が取れ切っていた訳では無いが、タクヤ達は蜥蜴人(リザードマン)の女子供達を連行しながら、王都へと向かっていた。