迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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飲み会に誘われていましたが、寝坊しました。いや~、きついっす。


第15話:樹木と幸せなキスをして終了

「ヌッ」

 

 鈴木は基本的に早起きである。これは異能【スキル】の影響ではなく、空手部の朝練の為に身に着いた習慣だった。周囲に罠や潜伏者がないことを確認すると、続いて行うのは全員の様子確認だった。

 朝、起きた時。誰かが亡くなっていることも珍しくはない。全員が同じ朝を迎えられる幸運を願いながら、特に異常がないことを確認する。そして、ようやく彼は自分のことを気に掛ける。

 

「出そうと思えば」

 

 彼は樹木の前に立つと外樹皮を剥がした。内部を通る導管から水分を得るために、齧りつく姿は情熱的なキスを行っている様にも見えた。

 激しく吸われている樹木も、抵抗のつもりかささくれを立てたりキモイ虫を徘徊させたりしていたが、唇が傷つくことも無かったし、虫はおやつがてらに食われていた。

 

「樹持ち良いか~?」

 

 樹木の壮健さと頑強さを褒め称えつつ、感度も確認していたが当然返事がある訳もなく。何なら、こんな傷を付けられたら菌やカビなどが繁殖して駄目になるに決まっているが、鈴木は気にすることも無かった。

 この場を離れることが出来ない彼が編み出した、苦肉の策とも言える補給行為であったが、森の豊かさを一身に受ける有難みは悪くもないと考えていた。

これらのルーティンを終わらせると、1日の方針を聞く為にトルノの傍へと戻って来るが、大抵の場合。彼は寝苦しそうにしていた。

 

「う、羽毛……」

 

 多くの同胞が殺された痛み、これからは自分が女子供を守って行かなくてはならない責任。されど、立ち向かうと決めた艱難辛苦な道。もしも、出来ることならば背中に翼を生やして全てから逃げ出したいという本音が漏れ出ていた。

 今、自分の背中に翼があるなら。と願うのは、苦境に置かれた者達が一様にして思うことらしい。

 

「ないです」

 

 だが、この世界は優しくはない。例え、翼が生えたとしても逃げられる場所など存在しないだろう。そんな彼の寝汗を拭きとるべく、鈴木は先程の補給行為で得た水分を布に染み込ませていた。

 このまま拭うには生地が少し硬いので、水分を含ませて柔らかくしようとするのは彼なりの気遣いでもあった。そんな作業をしていると、トルノはフラフラと目を覚ました。そして、彼がドバーっと水分を使っているのを見て声を荒げた。

 

「鈴木さん!? 貴重な水分で何をしているんですか!? 不味いですよ!」

「大丈夫だって~、安心しろよ~」

 

 この場においても全体のことを気に掛けるトルノの緊張感を解すべく、鈴木はジョーク混じりに声を掛けていた。今日も1日が始まろうとしていた。

 

~~

 

 大移動を始めた当初は猛獣や冒険者に襲われもしていたが、鈴木が誰一人として逃さなかった為、追撃の頻度は減っていた。

 故に、この大移動から逃げ出そうとする者はいなかった。今となっては、一番生存率が高い場所はここだったからだ。

 

「待って下さい。皆さん、身を深く沈めて下さい」

 

 だと言うのに、周囲に自分達以外の気配を感じた。と言うことは、何者かが周囲にいると言うことだ。もしも、自分達の様子を伺っている者達がいるなら、気取られる様な間抜けは起こさない。

 と言うことは、全く自分達と関係のない何かが居る訳で。息を殺しながら歩を進めていると、その正体に気付いた。

 

「オラァ! 死ねや豚共!!」

「ギギギ。ブギッ」

 

逃げ惑う豚人(オーク)達を、人間達が一方的に殺傷している。

他者を傷付ける興奮で発情したのか、血や遺体が転がる中で男女が盛り始めた光景を見て、トルノ達の胸中に不快感がこみ上げていた。鈴木は飛び出していた。

 

「あ?」

「死んで。どうぞ」

 

 眼窩に指を突き入れ、顔面の下半分を引き千切った。支えを失った目玉がゴロリと地面に転がり落ち、残された頭部も裏拳で粉砕された。

 続いて、男が手にしていた剣を奪い取り、合体していた男女を串刺しにする様にして、男の肛門へと剣を突き入れた。

 

「ウッ」

 

 直腸を突き破り、臓器を引き裂き、男性器を切り裂いた。男の体が撥ねたのは痛みだけではなく、快楽もあったのだろう。割礼された生殖器から漏れ出た白濁色の体液が剣に掛かった。

 ついでに、女性の性器をズタズタにして、同じ様に臓器を刃で掻き混ぜ、2人の臓腑は仲良く地面に零れ落ちた。

 人間と豚人(オーク)達のあらゆる種類の体液が混ざり合い、咽返る様な臭いが立ち込めている。周囲に気配が無くなったことを確認すると、トルノが恐る恐る近付いて来た。

 

「酷い。一体、彼らが何をしたというんだ」

 

 人間の死体には目もくれず、物言わぬ躯となった豚人(オーク)の遺体へと近づいた。彼が身に付けていた麻袋には、仮に使う道具以外に拙い装飾品も納められていた。

 

「子供にでも作って貰ったんでしょうか?」

 

 だとすれば、二度と父親が帰って来ないことを告げねばならない。

 つい先日、同胞や父親に当たる者達を大量に亡くしたトルノとしては心を痛める外なかった。一方で、鈴木はと言えば人間達の荷物を物色していた。

 

「急ぎましょう。もう、二度と僕達の悲劇を繰り返してはいけません! 鈴木さん! 先行してください!」

「おかのした」

 

 また、誰かが犠牲になることがあってはならない。同盟を組む為に恩を売ることもあったが、これ以上。誰かが不幸な目に遭って欲しくないという考えも本心だった。

 鈴木が豚人(オーク)の遺品から、彼らの拠点へと向かった。トルノ達も追いかけるべく歩を進めようとした所で、風切り音と共に悲鳴が上がった。

 

「グアッ」

 

 1本の矢が、女性蜥蜴人(リザードマン)の頭部を貫いていた。同胞達が次々と貫かれ、悲鳴と混乱が場を支配していた。

 

「(僕のせいだ! 周囲に潜伏している者がいる可能性を疑わなかったせいで!)」

 

 まさか、生き残りが居るとは思っていなかった。鈴木と言うあまりにも強大な力に頼り切っていたこと、連日の疲れからか判断力が落ちていたことも相まった故の失敗だった。

 だが、嘆いた所で事態は好転したりはしない。失った同胞達から託された女子供を守れるのは、自分しかいないのだ。

 

「はぇ~。すっごい大きい」

 

 この場における自分が背負った責任、命。今まで、鈴木に押し付けていた物の大きさを感じながら、トルノは短剣を構えていた。

 

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