迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第17話:受けた恩を返すのは当たり前だよなぁ?

 

 トルノが激闘を繰り広げている傍ら、鈴木は豚人(オーク)達の拠点に向かっていた。この世界に迷い込み、心身共に打ちのめされていた自分に手を差し伸べてくれた種族。

 恩師であるスーヴは自らの手で殺めてしまったが、彼の血肉は自分の中で生き続けている。故に、体の奥底からの叫びが聞こえるのだ。『助けねば!』と。

 

「見とけよ、見とけよ~」

 

 返せなかった恩を返す時が来た。嗅覚に導かれるようにして、地を蹴り、腕を振り目的地を目指す。道中、彼を迎え撃つようにして設置されていた罠は足止めにすらならなかった。

 大量の剣山が仕掛けられた落とし穴は、易々と飛び越えられた。通行した者に反応して放たれる魔術は、鈴木の体に傷をつけることも能わない。

 

「グルルルル。グァ!」

「ヌッ!」

 

 頭部に奇妙な刻印が施された猛獣達が一斉に襲い掛かって来たが、ヒゲクマの様な怪物に比べると取るに足らず、その場で鏖殺された。

 彼らの死骸をおやつの様に齧りながら駆け抜けた先では、怒号と悲鳴と断末魔が交差していた。

 

「グゴ。グゥルル。グギ!」

「殺せ! 殺せェ! 同胞を殺した豚共を許すな!!」

 

 人間達の殺意は尋常ではなかった。応戦していた豚人(オーク)達は1匹たりとも逃すまいと念入りに殺し、逃げ出そうとした者にも容赦のない追撃を行っていた。彼らの暴虐としか言いようのない様子を見た鈴木は音もなく、跳ねた。

 

「死んで。どうぞ」

 

 頸椎を圧し折るべく伸ばした腕は、大剣に弾かれた。視線を移せば、そこには全身を甲冑で覆った大男が居た。

 

「貴様が野獣(ビースト)か。我々に弓引く怪物め。ここで死ね!!」

 

 鈴木の存在は人間側でも共有されているのか、彼らの対応は迅速だった。

 ターゲットが切り替わると同時に、甲冑の男に何重ものバフが施された。膂力、機敏性、持久力の全てが強化され、鈴木と互角に殴り合える程になっていた。

 

「やりますねぇ!」

「死ね! 死ね! 死ね!!」

 

 鈴木は惜しみのない称賛を送っていたが、殺意が返されるばかりだった。

 このまま殴り合っても埒が明かないと踏んでか、鈴木は打ち合うのを止めて、バッファーや後方職を葬ろうと視線を変えた先。何時の間にか、彼らの姿は消えていた。

 

「ファッ!?」

 

 だが、臭いが離れた訳では無いので何処かへと移動した訳では無い。何が起きたか分からないまま交戦を続けているが、徐々に相手の一撃が重く、鋭くなっていく。

 

「ヤベェよ。ヤベェよ」

「野獣(ビースト)死すべし!!」

 

 施すバフに上限はないのか、甲冑の男は只管に強化され続けていた。大剣の一撃は木々を薙倒し、地面をえぐり返し、鈴木を吹き飛ばす程の威力なっていた。いずれ、男の振るう刃が心臓に達するかもしれない。

 

「これもう分かんねぇな」

 

 相手に致命傷を与える方法を見つけ出さなければ、自分の復讐はここで終わってしまう。そうなれば、トルノ達も終わりだ。ここにいる豚人(オーク)達も救えず、スーヴに恩を返すことも出来ない。

 もう一度考えた。目の前の大男にバフを施していた者達は何処に消えた? 近くにいることは確かだ。

 姿を消していたとしても、臭いがする方向を見れば不自然な空間や、何かしらの存在を見出せるにしても。あそこには豚人(オーク)達しかいなかった。

 

「(うん?)」

 

 豚人(オーク)達しかいなかった。……もしも、その中に連中がいるとすれば?

 もう一度、嗅覚を働かせる。血と肉の焦げる臭いに混じって、ストレス、怒り、恐怖の象徴とも言えるアドレナリンが彼らの獣臭に乗って漂っている。

 

「(誰だよ)」

 

 だが、鈴木が分かったのはそこまでだった。もしも、勘に任せて豚人達を手に掛ければ、今後の交流にも影響してしまうだろう。どうにかして、確証が持てないかと悩んでいると。

 

「ェ。だ、り。だ!」

「ギャ!?」

 

 呆然と立ち尽くしていた豚人(オーク)達の中の1匹。一際、大きな体躯を持つ者が、突如として仲間に槍を突き立てた。すると、刺された者の姿がブレて、人間の物へと変わった。

 すると、バフの一部が切れたのか大男の動きが鈍った。その隙を逃す鈴木ではなく、彼は甲冑男の体制を崩すと跳び上がった。

 

「逝きますよ~イクイク!」

「や、やめ」

 

 可動域を確保する為か、他の部分よりも装甲の薄い首元に五指を突き立てた。ズブリと指が沈み、作物を収穫する様にして頭部を引き抜いた。引き抜かれた生首には脊椎と片方の肺がぶら下がっていた。

 巨体がグラリと倒れる。鈴木の視線が、先ほどの大柄な豚人(オーク)へと向けられた。

 

「まず、うちさぁ。億乗あるんだけど、焼いて行かない?」

 

 彼らの横暴な振る舞いに募った憤りは億乗としか言い表せない物であり、自分達の姿に化けた人間達を焼き殺すことも辞さない、彼の漆黒の殺意の表れでもあった。

 

「…イツ、と、ソイツ」

「ヌッ!」

 

 大柄な豚人(オーク)が指差した相手に駆け寄り、一瞬で両腕と両足を圧し折ると、激痛から変身を解除した。元の人間の姿を見るや、豚人(オーク)達はめいめいに鳴き声を上げた。

 

「ブギギギッ! ブギ!!」

「ブギィイイ!!」

 

 今すぐにでも煮て、焼いて、殺して、食ってやろうかと言わんばかりの殺意であったが、人間達は恐れを抱いた様子すらなく。むしろ、薄笑いさえ浮かべていた。

 

「へへへ。へへへへ……」

「おっ、大丈夫か大丈夫か?」

 

 相手の不敵さを嘲る様な鈴木に対し、両手足を破壊された男は叫んだ。

 

「俺達が死んでも! 必ずや、同胞達がお前のことを殺す! 俺達その礎に過ぎないのだ!!」

 

 彼らの体に刻印が浮かび上がると同時に赤熱、膨張した段階で、鈴木は彼らを空高くへと放り投げた。空中で爆発した彼らは、最期の一撃をまき散らす子とも叶わずに命を散らしていた。

 

「FOO↑ 気持ちい~」

 

 周囲の者達も勝利に酔いしれるように咆哮を上げている中、先ほど。自分を助けてくれた大柄な豚人(オーク)が歩み寄って来た。

 

「お、前、何も、のだ?」

「鈴木。24歳学生です」

 

 この拙い喋り方はスーヴを彷彿とさせた。同時に、彼がこの集団の渉外。あるいは、トップなのだろうかと考察していると。手を差し出された。

 

「たすけ、てくれた、こと、ありがとう。俺、イサアク」

「頼むよ~」

 

 その手を握り返した。周囲に潜んでいる者達が居ないかを確認した後、一旦。鈴木は踵を返して、トルノ達を迎えに行った。

 

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