迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~ 作:ゼフィガルド
人間達を排除した後、鈴木は改めてトルノ達を引き連れて来た。豚人(オーク)達は彼の姿を見るや一斉に鳴き声を上げた。
「歓迎されているんですね」
「多少はね?」
周囲に飛び散った血の跡を見るに、鈴木が何をしたかは直ぐに察せられた。
豚人(オーク)達の危機を救ったのは事実だが、トルノは先の一件がずっと引っ掛かっていた。
「(赤子の時とは違うんだ)」
殺そうとしていたのだから、殺されても文句はあるまい。そんな理屈がどれほど通じるだろうか? そもそも、そんなことを考えている余裕があるのだろうか?
トルノが思い悩んでいることなど気にもかけず、豚人(オーク)達を代表するかのようにして、巨漢の男が歩み寄って来た。
「助か、った。お、れ。イサアク。こ、こ、首、領」
「あ、どうも。初めまして。蜥蜴人(リザードマン)族長のトルノです。こちらにいる方は……」
「鈴木。24歳、学生です」
「さ、っき、聞い、た」
既に自己紹介は終えているらしい。ならばと、こちらからも用件を切り出した。
先の襲撃も相まって、付いて来ている女子供達は疲弊しきっていた。どうか、彼女達に安らげる場所を恵んで貰えないかと。
「採集や内職なら手伝うことも出来ますので。どうか!」
「頼むよ~」
トルノと同じ様に鈴木も頼み込んでいた。蜥蜴人(リザードマン)の女子供の表情に不安が浮かんだが、イサアクは頷いた。
「鈴木、命、の、恩人。助け、る。当然」
「それじゃあ!」
「で、も、安らげ、る。か、わか、らない」
「どういうことですか?」
「仲間、たく、さん。殺さ、れた。許せ、ない」
イサアクの声は怒りを孕んでいた。今までは怒りを覚えてもどうしようもなかったが、今は違う。理不尽を叩き殺す存在を知っている。
「復讐、ですか?」
「そう、だ。鈴木、強い。殺さ、れた、仲間、の分。殺す。女、子供。含め、て」
「FOO↑」
彼の怒りに呼応するようにして煽り立てる鈴木を他所に、トルノの脳裏には彼女の姿が過っていた。身内を殺され、全ての未来を投げ打って憎悪に殉じた狂気の姿が。
「駄目です! 貴方達に危害を加えた人間達は殺したんですよね!? これ以上、殺す必要があるんですか!?」
「だま、れ。鈴木、殺し、たの、数人だけ。こっち、10人、以上。殺さ、れた」
先程までの歓迎ムードが一変して剣呑な物になった。だが、トルノも引き下がるわけには行かない。これは感情論だけの問題ではない。
「もしも、貴方達が近くの街で関係のない人間達に報復をしたとしましょう。そうしたら、彼らは本気で復讐をしに来ます。1人の生き残りも出ない位に」
今は軽く見られているから、この程度で済んでいるのだと。もしも、脅威だと認識されたら皆殺しにされる可能性もある。そうなれば、この場で生き残るのは鈴木だけだろう。
「そう、した、ら。もっ、と。殺す。別の、街で。他の、やつを。鈴木、お前は、コイ、ツに。従う、のか? それ、とも。俺達と、殺る、のか?」
だが、怒りが理で伏せられる物でないことも分かっている。故に、トルノは一縷の良心を期待して、鈴木の方を見た。
「んにゃぴ、よく分からないです…」
イサアクは肩を落とし、トルノは安堵の息を漏らした。復讐と天秤にかけた時、自分達を取ってくれる位には鈴木から信頼を得ていることにはホッとしていた。とは言え、明確に答えてくれた訳では無いことに不安は残っていたが。
「そう、か。ねど、こは、好き、な所。使え」
トルノ達にはあまり関心がないのか、イサアクは話し合いの場から去った。友好的とは言い難い空気の中、心身共に疲れ果てていた女子供達は案内された場所で睡眠をとり始めた。
彼もまた、休める場所があると分かった途端。今までの疲れがドッと押し寄せて来た。
「鈴木さんは寝なくて大丈夫なんですか?」
「多少はね?」
睡眠時間は誰よりも短い割には、一番動いて来たというのに疲労の色は殆ど見えなかった。一体、異能【スキル】と言う物がどれだけの力を与えるのかと言考えると空恐ろしくなる物があった。
「(鈴木さんは、何時までも僕達の味方で居てくれるんだろうか?)」
自分より、この世界について聡い者が現れたら。あるいは、唐突にGOの提案を受け入れて、矛先を自分達に向けてくる可能性もあるかもしれない。
もしくは、今回のように。より、自分と行動指針の近い者達について行くかもしれない。トルノが鈴木に対して渡せる物が、あまりにも少なすぎるのだ。
「(彼は僕らが居なくても大丈夫だろうけれど、僕達は彼が居なければ生きていけない)」
鈴木には元々の目的があったことを知っている。自分をボコボコにして捨て去った挙句、その時。拾い上げてくれ恩人達を虐殺していた人間達を許さない。つまり、復讐と言う目的がある。
今は、その復讐に相乗りしているが。もたらされたのは達成感でも無ければ、爽快感でもない。新たな復讐が生まれ、矛先を向けられる恐怖と罪悪感だった。
「(考えれば、考える程。答えが出ない。寝よう)」
瞼が重くなり、視界が塞がって行く。静かに、彼は微睡の中に落ちて行った。
~~
「(夢。か?)」
トルノは夢を見ていた。視界だけが進んで行く。足元には死体が転がっていた。味方も敵も、関係の無い者も転がっていた。老若男女。種族も関係なく、死体が転がっている。
積み上げられた遺骸の山の頂、一人の男が居た。血に塗れた両腕を拡げ、天に向かって哀しみの叫びを上げていた。
「(この男は、GOか?)」
やがて、声も涙も枯れ果てたのか立ち上った。その手には見覚えのある物を持ちながら。
「みぎゃ」
「ばら撒くぞ、この野郎」
「(これは、何の夢だろう?)」
どうして、自分がこの様な夢を見ているのだろうかと言う疑問は尽きぬ中。すれ違いざまに見たGOの顔が、あまりにも鬼気迫る物であったので、その場をう置けずにいた。