迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第19話:遭(遇)だよ

 

 トルノ達が寝静まっている間。鈴木は豚人(オーク)達の作業を手伝っていた。

 人間達に虐殺された同胞の死体を細かく刻んで焼いていく。焼き上がった破片を貪って行く。皮、肉、骨、内臓を残さず食らい尽くして行く。

 共食いは発病のリスクも高い行為ではあるが、特段関係のない鈴木は空腹を満たす目的も兼ねて、彼らの弔いに参加していた。

 

「グゴゴッ。ブギギッ」

「やんほぬ」

 

 イサアク以外は言葉を話せないが、鈴木は鳴き声や抑揚、表情からある程度の感情を読み取っていた。彼らに倣い、言葉を使わないコミュニケーションは行った所。これが上手く行っているようで、和やかな雰囲気が流れていた。

 傍から見れば、同胞達の屍肉を肴にした宴会。と言うサタニックな光景ではあるが、彼らの弔いだった。笑う様に鳴いているのも、死者達に心配はない。と見送る為の気丈な振る舞いであるのかもしれない。彼らの行いに感傷的な一面を見出していると、イサアクがやって来た。

 

「鈴、木。隣良、いか?」

「入って。どうぞ」

 

 この談笑の輪の中に入ることを促す様に隣のスペースを開けると、イサアクが腰を下ろした。すると、彼は真っ先に頭を下げた。

 

「感謝、する。皆、お前、のお陰、で、助か、った。埋葬、も手、伝って、くれた」

「多少はね?」

 

 強大な敵対者を葬り、同胞達の埋葬を手伝い、共に弔ってくれた。イサアクは大恩を感じていたが、鈴木にとっては多少で済むことであるらしかった。

 

「多少、か」

「そうだよ」

 

 器の大きさが違う。故に、イサアクは知りたくなった。どうしてこれほどの男が蜥蜴人(リザードマン)の面倒を見ているのかと。

 

「何故、アイ、ツらの、面倒、を?」

「しょうがねぇなぁ」

 

 鈴木は話した。同じ牢屋に幽閉されていたこと、共に逃げ出したこと。拠点が壊滅させられていたこと、タクヤと呼ばれていた男達と戦ったこと。そして、ギリギリで女子供達を救い出せたこと。

 話を聞きながら、イサアクは興奮に打ち震えていた。まるで、伝承の様な颯爽たる活躍だと。だからこそ、同時に後悔していた。どうして、この男に先に恩を売れなかったのかと。

 

「そう、か。アイ、ツは、恩人。なのか?」

「ハイ、ヨロシクゥ!」

 

 だから、これからも仲良くして欲しい。と言う意味を込めた声掛けに、イサアクは渋々と頷いた。陰惨な悲劇の跡が豚人(オーク)達の鳴き声により払われて行き、間もなく日が昇ろうとしていた。

 

~~

 

 翌日のことである。昨晩、葬儀を行っていた豚人(オーク)達の大半が眠りに落ち、蜥蜴人(リザードマン)達が目を覚まし始めた頃、イサアクとトルノは話し合いをしていた。

 

「では、報復の方は一旦止めて貰えるんですね?」

「お前の、考え、に、賛同、した、わけ、じゃ、ない。俺達、は、鈴木、に、惚れて、いる。意に、沿わ、ない、ことを、しない」

「そうですか。それでも、助かります」

 

 武力方面だけでは無く、人柄と言う面でも助けられた。鈴木が離れて行かないことには安堵したが、より強力に縛り付けられた様な気もした。

 

「これ、から、どう、する?」

「そうですね。志を共にする仲間を増やしたいのは確かですが」

 

 現状、人間達の暴力に対抗できるのは鈴木だけだった。彼を連れ回すということは、拠点の戦力をがら空きにすることにも等しかった。

 この拠点は既に襲撃を食らっており、再度襲撃されるかもしれないリスクを考えると、鈴木に比肩しうる戦力を置いておきたかった。

 

「そん、な物、存在、する、か?」

「存在はしています。……敵、としてですが」

 

 絶望的な回答だった。もしも、異能【スキル】持ちの存在が複数現れたとすれば、鈴木だけでは対抗し難いだろう。イサアクは暫く考え込むような素振りを見せた。

 

「だと、すれば。アレ、は、ひょっと、して」

「何か心当たりが?」

「実は」

 

 最近になって、この付近に見慣れない存在が現れたという。昨日、哨戒させていた所、運悪く人間達と遭遇してしまったという。

 

「あの時、僕達が見た遺体にはそう言った経緯があったんですね……。その、見慣れない存在と言うのは?」

「姿は、人間。髪も、ない。目も、小さい」

「まさか」

 

 2人が真っ先に思い出したのは鈴木だった。ひょっとしたら、同じ様な力を持つ人間ではないかと期待した。

 

「探す。か?」

「はい。鈴木さんは拠点に置いて行くとして、僕も探しに行きます」

「お前、族長、だろ?」

「だからこそです。何かがあった時、咄嗟に判断できるのは僕位だと思いますし。喋れる奴も必要でしょう?」

 

 トルノには鈴木を引き込んだという実績がある。加えて、今までに何回か人間と戦って生き延びた経験もある。説得と生存の両能力に長けていた。

 

「分か、った。付近、の、歩き、方。詳しい、奴を、付ける」

「ありがとうございます!」

 

 本当に鈴木と同じ様な人間が居たとしても、異能【スキル】を持っているかは分からないし、友好的に接してくれるかも分からなかったが、今は他に縋る物が無かった。それだけで十分だった。

 

~~

 

「ゴゴッ」

 

 複数の豚人(オーク)と共にトルノは捜索をしていた。相手はもう山を下りているかもしれないし、人間達に捕まって始末されているかもしれない。それでも、一縷の望みに賭けていた。

 

「待って下さい。コレ」

 

 祈りが天に通じたのか。トルノが指差した先にあった木の枝には何かが引っ掛かっていた。木に登って手にしてみれば、感触は滑らかだった。一瞬手拭いかと思ったが、それにしては中央部分が黄ばんでいる。ついでに湿っている。

 

「ブギッ。クサッ」

「下着。でしょうか?」

 

 豚人(オーク)達が顔をしかめている中。トルノは冷静に分析を続けていた。

 彼が直ぐにこれを下着だと判断できたのには理由があった。単純に、鈴木が着用している物と似ていたのだ。期待が高まる。

 

「この下着の所有者は近くに居るかもしれません」

「そうだよ」

 

 鳴き声の返事があるかと思いきや、言葉が返されたことに驚いた。振り返れば、全裸の男が立っていた。

 坊主頭と言う特徴はイサアクからも聞いていた通りだった。引き絞られた肉体に加え、研ぎ澄まされた刃の様に鋭い目つきが特徴的だった。

 

「貴方は一体」

「お前らこそ何者ゾ?」

「この付近に住まう者達です。僕はトルノ、蜥蜴人(リザードマン)です」

 

 ひとまず、話しが通じることに安堵していた。いきなり殺しに掛かって来ることがないだけ、理性的な存在だと思っても良さそうだった。

 

「俺は三浦だゾ。何か用か?」

「折り入ってお願いがあります。僕達に手を貸して欲しいんです」

「話が見えてこないゾ。一から話せ」

 

 トルノは一から話した。自分達はこの世界の人間達から迫害されていること。抵抗していること。その為に力を貸してくれている人間が居ること。これらの話を三浦は注意深く聞いていた。

 

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