迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第20話:よし! じゃあ、ぶちこんでやるぜ!

 

 三浦に請われた通り、トルノはこの世界の事情から自分達が置かれた立場、その全てを話した。これらを聞き届けた上で、三浦から返された答えはと言うと。

 

「嫌だよ。なんで、俺が国と戦わないといけないんだゾ。お前らに与するメリットが一つも見当たらないゾ」

 

 当然との答えだった。鈴木と違い、三浦はトルノ達に恩がある訳ではない。自分から問題に入って行く必要など、ある訳も無かった。

 

「ですが。この生活がこれからも続いて行くとは限りません」

「そうだよ。だから、俺も住処を転々としているんだゾ。ここにやって来たのも最近だゾ」

「え? この世界の人間と相対して、生き延びた。ってことですか?」」

 

 この世界における人間達の迫害は熾烈を極める。抵抗さえも許されない力量差を持って、虐殺や人体改造が平然と行われている。

 彼らに抵抗するだけの力。あるいは、彼らに見つからずに生存していくだけの能力があるとすれば、やはり味方に引き込みたい。と、トルノは考えていた。

 

「そうだよ。アイツら、いきなり殺しに掛かって来たから返り討ちにしてやったんだゾ。そしたら、敵討ちとかが来て。すっげぇ、めんどくさかったゾ」

「三浦さんは、彼らを返り討ちにするだけの力が? ひょっとして、鈴木さんが言う所の異能【スキル】って奴を持っているんですか?」

「なんか、ここに来た頃にそんなこと言われた気がするけれど。憶えてないゾ」

「自分の運命を左右しかねない説明を憶えてないんですか……」

 

 だとしても、力を持っていることには変わりない。どうすれば彼を説得できるのか。と、考えていると。三浦は近くに生えていた草を貪り始めた。これにはトルノも豚人(オーク)達も驚いた。

 

「何やっているんですか!? そんな物、不味いですよ!?」

「他に食う物がねぇゾ。どうせ何喰っても、ラーメンより不味いから変わりねぇゾ」

 

 虫でもかくたるや。と言わんばかりの雑食ぶりは、既に鈴木で見ている。異能【スキル】で強化された肉体だからこそ、どんな悪食でも平気でいられるのだろう。食事、と言っても良いか分からない光景ではあったが。

 幾ら、肉体的に頑強と言っても腹が減ることには変わりないらしい。ふと、トルノは閃いた。腰に下げたポーチからドライフルーツを練り込んだショートブレッドを差し出した。

 

「あの。そこの草よりはマシだと思うんですけれど。食べますか?」

 

 トルノから受け取ると、一瞬で口の中に放り込んだ。

 文化的な食料を口にしたのが久々だったのか、先ほどの刃の様な視線が和らいぎ、足を崩してくつろぎ始めていた。

 

「いいゾ~これ」

「満足して貰えて何よりです。もしも、僕らに付いてくれるなら、こういった物が食べられます、仲間には料理上手な奴もいるんです」

 

 トルノの提案に対して、三浦は暫し考えていた。このまま逃げ続けることは難しい、と言うのは本人も感じ取っていたのだろう。追い込まれるにしても、少しでも快適な場所があるというのなら……。

 

「悪い条件ではないと思うんですけれど。どうですか? 仲間になって貰えますか?」

「当たり前だよなぁ?」

 

 三浦は立ち上がると、トルノと肩を組んだ。提案は受け入れて貰えたらしく、トルノはひとまず安堵した所で、気付いたことがあった。

 

「ちょっと、臭いますね……」

「水浴びして、サッパリしてぇなぁ。よっし、お前らもぶちこんでやるぜ!」

「何やってんですか! ホント、止めて下さいよ!」

 

 こうして、トルノ達は望まない水浴びに参加させられるハメとなった。

 近くの川まで移動すると、真っ先に三浦が飛び込んだ。周辺の水面に皮脂が浮かび上がり、リアルタイムで水質が汚染されて行く。

 

「ほら、こっち来いよ」

「えぇ……」

 

 生理的な嫌悪感が湧きはしたが、これから付き合っていく必要のある男。裸の付き合いも避けられぬとして、トルノ達も次々と川へと入って行く。

 

「なぁ。色々あって、お前も疲れただろ。なぁ?」

「え。えぇ、まぁ」

 

 蜥蜴人(リザードマン)はあまり、冷たい場所に長く浸かるのが得意ではない。体温の調整が利き辛いため、体温を取り戻すのに時間が掛かるのだ。

 

「おい、お前ら。ココアライオン」

「なんて?」

 

 三浦は自らの股間を指差していた。活舌が悪すぎて、何を言っているのかが分からなかったが、水浴びの為に入った。と言う前提から察したのか、丁寧に股間付近を拭いていた。

 

「おい、トルノ。お前もやるんだよ」

「え? 僕もですか?」

「当たり前だよなぁ? コイツらもやったんだからさ」

 

 して貰うのが当然。と言わんばかりの不遜な態度は、敵対している人間達を彷彿とさせるものだった。トルノの中に疑念が膨れ上がる。果たして、この男を仲間に引き入れて問題が起きたりはしないだろうか?

 

「(そもそも、この男が本当に人間達を撃退したかもわからない。今更だけど、全て噓かもしれないじゃないか)」

 

 実は、偶々この辺りに居ただけの不審者で、何となく話を合わせているだけの存在かもしれない。

 トルノが訝しんだ所で、不意に風切り音が聞こえた。頬に鋭い痛みが走り、背後を振り返れば、三浦が素手で矢を掴み取っていた。

 

「あー、冷えてるかー?」

 

 不意打ちをして来た襲撃者を挑発するように、三浦は笑ってみせた。

 彼は悠々と川から上がると、全速力で走りだした。まるで目標が何処に居るかを把握しているかのように真っすぐに走り、両腕を引いた。

 

「双打『揚』」

 

 全ての気配が静まり返った次の瞬間。離れた場所にもいるトルノからも分かる程に、高らかに人間が打ち上げられ……中空で爆発四散した。

 余りの光景に絶句した。そして、同時に確信した。間違いなく、この男は鈴木に比肩しうるだけの力があると。先程まで冷え込んでいた豚人(オーク)達の表情が興奮と共に紅潮するのは間もなくのことであった。

 

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