迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第3話:え~、生き残った奴は誰も居ませんでした ~生存者0人と化した先輩~

 闇夜に紛れての鏖殺は続く。住居に乗り込み、悲鳴を上げる間もない程に、俊敏に確実に仕留めて行く。引き連れて来た食い盛りの若豚人(オーク)達が遺体を貪り尽くし、跡には血の染みが残るだけだった。

 

「FOO↑ 気持ちい~」

 

 自分の尊厳を凌辱していた者達を排除するカタルシスは何にも代えられない。それが、恩義を感じている種族の為と言う大義名分があるなら尚更だ。

 おおよその民家と宿屋を潰した後、最後に回って来たのは酒場だった。時刻は深夜だったが、未だに灯りが点いている。騒ぎ声が漏れて来ないのは利用者達が自重しているからか、自分の知らない摂理が働いているのかは分からなかったが、やることは決まっていた。

 

「お邪魔するわよ~」

「!?」

 

 はちみつが練り込まれた焼き菓子の様に甘ったるい声で挨拶を交わしながら入店した。中に居た十数人の冒険者達とスタッフは言葉を失っていた。

 無理もない。彼らからすれば鈴木の容姿は異形と言う外なく、全身返り血塗れで血の臭いを漂わせているのだから。

 

「死ねぇ!」

 

 酔っていたとしても、荒事の対応には慣れていた。椅子に立てかけていた得物を手に取り脳天を叩き割ろうと襲い掛かって来た。背後からはサポートが行われているのか、凄まじく俊敏な動きだった。

 もしも、鈴木がただの空手部員のままだったら唐竹割に切り裂かれていただろう。だが、彼は少なからぬ加護を受けていた。

 

「ヌッ!」

 

 間の抜けた声と共に襲い掛かって来た冒険者達を薙いだ。顔面に命中した物は顔の前半分が消し飛び、身体に当たった者は支えを失った臓器が漏れだす様に床に落ちた。マトモに胴体へと命中した者は寸断された。

 

「ウォオオオオオ!!!」

 

 目の前で同胞が殺されたというのに臨戦態勢が解かれる気配は無かった。

 巨大な双眸を限界まで見開き、男女問わずして特定の臭いを放ち始める。空手部と言う雄が密集する空間に身を置き続けた鈴木には直ぐに分かった。

 

「固くなってんぜ?」

 

 これは人間が興奮した時に放つ独特の臭いだ。洞窟に居た時は不意打ちで終わらせたので、この状態で相対することは無かった。スーヴの説明通りならば、こうなった後が苦戦するのだろう。

 事実、彼らの動きは変貌していた。鈴木の正拳突きを回避し、返す刃は皮膚を切り裂くほどに力強い物になっていた。

 

「なるほど、道理でねぇ!」

 

 これが唯一無二ではなく有象無象に存在しているのなら、種族の繁栄は約束された物だろう。

 だが、鈴木は戦うと決めていた。自らの尊厳を傷つけ、恩義ある者達を傷付ける輩どもを許さぬと誓っていた。

 

「悔い、改めて」

 

 彼らの傲慢を断罪する様にして拳を振るう。自身の五体を武器にして、店内に破壊を振り撒いていた。サッカーボールの様に頭部を蹴り飛ばし、バスケの様に頭部を胴体に埋め込むようなダンクをかました。

 

「汚物が!! 死ね!!」

 

 彼らも狩られるだけの獲物ではなく、鈴木の胴体を切り裂き、貫く。

 だが、攻撃が命中した瞬間、筋肉の収縮により得物が絡み取られ、返す一撃で顔面が粉砕されていた。

 永遠とも思える殺戮劇は、実際の所。十数分ほどの出来事だったらしく、息をしている冒険者達は1人も残っていなかった。寸断された虫の様に、男女の下半身の残骸は蠢いていたが。

 

「ビール、ビール!」

 

 彼は破損していない瓶を見つけてキャップを開けた。ビールを期待していたが、中に入っていたのは薄っすいアルコールで、風味も糞も無かったので思わず顔をしかめてしまった。

 これだけ散らしたら、引き連れて来た奴らも食うのが大変だろうと思っていたが流し込む為の飲料には事足りるだろうと思って、背後を振り向いた。

 

「ファッ!?」

 

 表で待機していたハズの豚人(オーク)達は……誰も、来ていませんでした。彼らの奔放さに対しては頭に来る物があったが、暫くは勝利の余韻に浸る様にして店内の物品を食い漁っていた。

 

~~

 

 店主達の動きは早かった。鈴木の異形ぶりを察知するや、店員達を誘導して裏口から逃げ出していた。街は恐ろしい位に静まり返っており、既に事は起こってしまっているのだと理解した。

 

「ブギギッ。ブゴゴゴッ!!」

 

 逃げ出そうとした先、醜く肥え太った豚人(オーク)達が居た。冒険者達から聞いていた話では臆病で弱弱しいと聞いていたが、彼らが放つ獰猛な雰囲気には弱気などと言う言葉は微塵も感じられなかった。

 

「お前は逃げろ!」

 

 肉切り包丁を構えた店主が道を防ぐ。この世界の人間に興奮すれば強化される力があると言えど、使いこなす為には習熟が必要な物であり。

 

「ブギッ! ブギッ!!」

「ギャア!! 嫌だ! 助けてくれ!!」

 

 数で囲まれて瞬く間に袋叩きにされ、身体の端から食われて行く光景は凄絶を極める物だった。逃げることすら出来ずに放心していた店員達に目を付け、武器を振り被った豚人(オーク)の腕が宙を舞った。

 痛みすら感じない一瞬の剣閃。何時の間にか男がいた。鈴木と比べて瘦身だが、鍛え抜かれ引き絞られた肉体からは刃の様な鋭さがあった。

手にしていたのは、よく似た雰囲気を持つ細身の剣――我々の世界では『カタナ』と呼ばれる物であった。

 

「ギーッ!!?」

「誰が治安を乱して良いっつたァ! オラァ!」

 

 剣筋が閃き、豚人の体が切り分けられて地面に落ちた。

 一瞬で、自分達が被虐階級と言うことを分からされたのか逃げ出そうとするが、全員の膝から下が切り捨てられていた。

 

「おじさんはねぇ。お前達みたいなイキった奴らの悶絶顔を見るのが大好きなんだ!」

 

 先程まで豚人(オーク)達が浮かべていた様な嗜虐に満ちた笑顔を浮かべていた。因果応報と言わんばかりに爪先から寸刻みにされて行った彼らの表情は苦痛と恐怖に悶絶したまま固まっていた。

 哄笑を上げる男の惨殺劇を目の当たりにしていた店員達は、もはや笑うしかなかった。この場に正気は何一つとして残っていなかった。

 

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