迫真転移! ~異世界の主人公と化した先輩!~   作:ゼフィガルド

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第4話:悶絶異世界 其の四 汚物拉致

「オォン! ホォン!」

 

 人気の無くなった街に鈴木の慟哭が響いていた。酒とつまみを楽しんだ後で、仲間を探しに行ったら、豚人(オーク)達のバラバラ死体を発見したからだ。

 彼らが絶望の真っただ中にいた時、1人で宴会を楽しんでいたというのは人間のクズと言う外ない所業だが、起きてしまった過去は変えられない。

 

「しょうがないね」

 

 折角の祝勝ムードを取り戻す為に、酒場に戻って飲み直そうと考えた矢先、背後に気配を感じた。生き残りが居たのかと振り返ってみれば、眼前に刃先が迫っていた。

 

「ファッ!?」

「外してんじゃねぇよ、バカ!」

 

 咄嗟に反応できたのは幸運だった。もしも、あのまま行けばバラバラ死体が増えていたことだろう。回避と同時に十分に距離を取って、相手を見た。

カッターシャツに黒ズボン。腰に差した細身の剣は元より、鈴木の関心を惹いたのは、彼の顔面だった。

 顔の下半分は面頬で覆い隠されており、上半分の大半を占める眼球の大きさは左右非対称で薄っすらと赤みを帯びていた。

 

「えっ、何それは……」

「おい、なんで住民を皆殺しにしたんだ?」

 

 話し合いから入るというのは、対話を望むだけの実力があると言うことだろう。返答次第では矛を収めてくれるかもしれない。

 

「まずうちさぁ、豚人(オーク)の仲間なんだけど、焼いて行かれたんだよね。だから、やられる前にパパっと殺って、終わりっ!」

「報復ってことか。……それに、その眼球、『転移者』か。見た目からして、日本人か?」

「ファッ!?」

 

 どうやら事情を知っている人間らしい。だが、腑に落ちないことがあった。

 もしも、目の前にいる男も自分と同じ世界に居たならば、どうしてこんな異常な双眸をしているのかと。

 向こうも対話の余地があることに気付いたのか、臨戦態勢を解いて歩み寄って来た。

 

「お前、名前なんて言うんだ?」

「鈴木。24歳、学生です」

「鈴木か。喉も乾いているだろう。酒場で、何か飲みながら話そう」

「FOO↑」

 

 豚人(オーク)達と一緒に飲むことは適わなかったが、元居た世界の縁を感じる相手と飲むことになって、鈴木のテンションは上がっていた。

 未だに血生臭さの残る酒場で、鈴木は注がれたアルコールを飲みながら話を聞いていた。

 

「自己紹介が遅れたな。俺の名前はレン。お前と同じく、日本からやって来た」

「オッス、お願いしま~す」

「まずは、この世界がどういう所なのか気になるだろう。話してやる」

 

 レンの説明によれば、この世界は『BB』と呼ばれているらしい。正式な名称は誰にも分からないらしいが、とにかくBBと呼ばれているそうだ。

 

「この世界は人間が絶対的な王者だ。権力者達は冒険者を使って、定期的に他種族を虐待し、悶絶させている」

「駄目みたいですね」

 

 中世っぽい世界相応に人権意識は低かった。改めて、多様性も寛容さもない世界だと分かるや早急に帰りたくなって来た。ある程度の説明はスーヴからも聞いていたが、やはり溜め息しか出なかった。

 

「その様子だと、ある程度の事情は知っているみたいだな」

「多少はね?」

「だったら、まだ気になることがあるんじゃないのか? どうして、この世界の人間はこんなに目が大きいのかと」

「なりますねぇ!」

「つっても、俺も事情は知らねぇんだけどな。この世界では、この目の大きさが普通なんだ。目が大きければ大きい程、美しいとされている。逆に目が小さい種族は醜く、劣った者として認識されているんだ」

「え。何それは……」

 

 もしも、この世界に目玉の親父が来たとすれば。全国民が平伏するのだろうか? 等と考えたりもしたが、気になることは他にもある。

 

「最初は俺も驚いたよ。ほら、漫画とかアニメとかのキャラって目が大きいけれど、ディフォルメじゃなくて現実にあのサイズになると不気味だよな」

「そうだよ」

 

 あくまで表現技法の1つとして受け入れられているだけであって、存在として認められるかどうかは別の話である。

 この様子であれば、この世界の人間がどうして興奮すれば強くなるか。と言うメカニズムについても、スーヴと同程度の知識しかなさそうだと考えた。

 

「だけど、この世界ではコレが常識だ。お前が差別されるのも当然だし、豚人(オーク)達が駆除されるのも道理なんだよ」

「ふざけるな!」

 

 一方的な考えで、心や感情がある者達を傷付けて良い訳がない。自分のやらかしたことを棚に上げながら、非難するダブルスタンダードな態度を糾弾する訳でもなく、レンは微笑みを浮かべるばかりだった。

 違和感を覚えた頃には既に遅く、グラリと鈴木の視界が揺れた。全身が弛緩して、思うように力が入らない。ハメられた! と思った時には、レンに担がれていた。ギョロリと巨大な双眸が彼を捉えていた。

 

「お前も人間だって言うんなら、俺達と同じ存在に生まれ変わるんだよ。OK? OK牧場?」

 

 同じ知識を共有できるからと言って油断をしていた。レンもこの世界の住民であり、自分を害する者達の仲間だったのだ。それでも諦めきれず、鈴木は残された気力を振り絞って声を上げた。

 

「レンおじさん、やめちくり~」

「こんなんで止める訳ねぇだろおいオラ、こっち来いやオイ!」

 

 対話用の仮面も剥がしたのか、今まで対峙して来た冒険者達の様に荒々しく口汚い罵りを吐きながら、彼の意識は暗闇に落ちて行った。

 

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