アリアがどんな運命(物語)を紡ぐのか、楽しみに!
空白ストレンジャー
ああ・・・
愛しい我が君
気高く麗しい悪の華
貴女こそが世界で一番美しい
・・・鏡よ鏡、教えておくれ
この世で一番・・・
・
瓦礫から煙が上がる。
煙は雨雲のように濃く、空を覆い尽くしている。
かつて建物だったであろう物は炎で焼かれ燃えているか、雨風に晒されてボロボロになっている。
鉄でできた窓枠はひしゃげて枯れた花のようになり、ガラスや鏡、地面には大きな亀裂が走っている。
かつての荘厳さは面影すら感じられず、『過ごした時間は幻で、最初からここは何もない荒れ地だった』と言われれば誰だって信じてしまうだろう。
轟音と共に強風が吹き荒れ、風は小石や小さなガラスの破片が巻き上げて皮膚のあちこちを掠める。
強風と炎の熱に思わず目を閉じそうになるが、目をこじ開けて前を見据える。
最初に目に入ったのは、燃え盛る青い炎だ。
まるで亡霊のようにゆらゆらと揺らめいている。
その炎の中には、爛々と光る目玉があり、荒い息を吹きかける鼻があり、鋭く軽く人間を丸呑みできそうな牙がある喉が千切れるほど見上げても全身を見渡せないほど巨大な獣が目の前にいた。
その巨大な獣は、醜悪な顔を顰めて絶叫する。
『ウグアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーー!!!!!』
その獣に呼びかける者達の姿がある。
それも1人や2人ではない。
黒いローブを身に纏い、フードを目深に被った多くの青年たちの姿がある。
けれど、その呼びかけ1つ聞こえない。
獣の口が開いて大きく咆哮する。
咆哮と共に地面がグラグラと揺れる。
その咆哮すら聞こえない。
それよりも強烈に、頭の中に誰かが囁く。
私に 彼らに 君に
残された時間は少ない
決してその手を離さぬよう・・・
・
(あれ・・・?さっきの夢は、何だったんだろう・・・?)
不気味な夢を見た私・・・アリア・クロックベルは目を覚ましました。
私は、確か沈黙の霧を歩いて他の想区に向かっていたはずなのに・・・
何故か暗くて狭い場所にいました。
閉じ込められているということに気がつくのに、時間はかかりませんでした。
ガタッ!
(え・・・?今の音、何・・・!?)
「やべぇ、そろそろ人が来ちまうゾ。早いところ制服を・・・」
状況の飲み込めない私に、急に大きな揺れが襲いました。
恐らく、外にいる『誰か』が私の閉じ込められている空間を揺らしたか、壁にぶつけたのでしょう。
その証拠に、揺れの後にゴン!という音が響きました。
「くっそ、この程度じゃ壊れねぇか・・・ふなーーーーー!!!」
その声が響くと同時に、急に私のいる空間が熱くなりました。
(か、火事!?)
こういう時に慌ててはいけないという事は分かっていますが、パニックになった私は「きゃあ!?」と声を上げて両手を思いっきり前に突き出しました。
それと同時に何か・・・形状からして、棺桶の蓋が倒れて周りが見えるようになりました。
そして、「ぐぇっ!?」という誰かの声も聞こえました。
「ここは・・・?」
その私の声が響くほどその部屋はとても広い場所です。
後ろを見ると、恐らく私が閉じ込められていたであろう棺桶がありました。
その棺桶はふわふわと浮いていて、黒をベースに金の鍵穴がついているデザインです。
周りを見てみると、同じデザインの棺桶がたくさん浮いています。
・・・インテリアにしては、かなり趣味が悪いです・・・
よく見ると、棺桶の隅に私の空白の書と導きの栞、私が着ていたワンピースドレスにタイツ、リボンパンプスが置いてあります。
それで不思議に思って自分の体を見ると、いつの間にか着替えさせられたのか、服が変わっていました。
黒を貴重にしたゆったりとしたフードのついたローブで、紫を差し色にして、金の糸で刺繍がされています。
「私、本当にいつの間に着替えたの・・・?」
「ふなぁ・・・」
「あ・・・!」
その声が聞こえた方向を見ると、棺桶の蓋の下敷きになった黒猫さんの姿がありました。
恐らく、私が両手を思いっきり突き出した時に蓋の下敷きになってしまったのでしょう。
その声は先程聞こえた声と同じで、棺桶をぶつけたのも火を出したのもこの子だとすぐに分かりました。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫な訳ねぇんだゾ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・!」
しゃべる猫さんには驚きません。だって、猫さん(長靴をはいた猫の事)がいますから。
「ひでぇ目に遭ったゾ・・・」
「本当にごめんなさい・・・!」
医者ではないから細かくは分からないけれど、見た限り大きな怪我は無さそうです・・・
改めて黒猫さんを見てみると、ぬいぐるみのように抱き抱えられる大きさで、耳からは青い炎が吹き出しています。
尻尾は三叉の槍のような見た目で、目の色は耳から吹き出している炎と同じ青色です。
そして、首には首輪代わりなのか白と黒の縞模様の裾がボロボロのリボンが結ばれています。
とても可愛らしくて、知らない人が見ればぬいぐるみだと思うでしょう。
私は黒猫さんを抱き上げ、目を合わせました
「ねぇ、猫さん」
「俺様は猫じゃねぇ!」
「じゃあ、君の名前は何ですか?私はアリア。アリア・クロックベルです」
「アリアか・・・俺様はグリム様なんだゾ!」
グリム君ですね。以前グリム童話の想区でお会いしたヤーコプ・グリムさんとヴィルヘルム・グリムさん、ルートヴィッヒ・グリムさんとシャルロッテ・グリムちゃんを思い出します。
「グリム君、君はここがどこか分かりますか?」
その言葉を聞くと、グリム君は呆れたような表情をしました。
「おめー、知らねぇのか?ここはナイトレイブンカレッジなんだゾ」
「ナイトレイブンカレッジ・・・?」
聞いたことがない場所・・・そういう想区なんでしょうか?
取り敢えず、一度探索する必要がありそうです。
グリム君を抱き抱えて部屋を出ます。
「ふなー!降ろせ!降ろすんだゾ!」
「ごめんなさい、今降ろしますね」
そう言ってグリム君を地面に降ろします。
「制服、奪う気失せたんだゾ・・・」
制服?今着てるこの服の事でしょうか?
せめて着替えるまで待ってほしいです・・・
歩いてみて分かったことですが、ナイトレイブンカレッジはお城のような建物のようです。
でも、
情報収集以前に、私は好奇心旺盛な質で周りの物についつい目を奪われてしまいます。
「どれもこれもすごいなぁ・・・きゃっ!?」
周りに目を奪われて、曲がり角から来た人にぶつかってしまいました。
転んで尻餅をつきそうになる私を、ぶつかってしまった人は私を咄嗟に抱えました。
「大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
私は助けてくれた人を見ます。
襟足が長い黒髪に切れ長の綺麗なライムグリーンの瞳、角を含めても私より高いであろう高身長、そして頭から生えた真っ黒な一対の角と尖った耳は、一瞬鬼かと思いましたが、それ以上に感じるこの不思議で神秘的な雰囲気は・・・
「・・・妖精さん・・・?」
「おや、僕を恐れない上に一目で僕が妖精と分かるか」
そう言って面白そうに笑うと、私を見て『ふむ・・・』と口に出します。
「お前は女子か?」
「?そうですよ?」
何か悪い事でもあるんでしょうか?
その反応に疑問を覚えた私は、キョトンとした表情で首を傾げました。
私の様子を見たグリム君は、真似をしているのか妖精さんを見て首を傾げました。
すると、「あー!」という男性の声が響きました。
びっくりして後ろを振り返ると、白いシャツの上に黒いベストを纏い、黒いネクタイを締め、烏の羽飾りがついた黒いマント、黒いシルクハットに顔の半分を覆い隠す黒い仮面をつけた黒ずくめの怪しげな人がいました。
多分、シェインちゃんこの人を見たら、『怪しさ胡散臭さマックスです』って言うんだろうな・・・
「全く、鏡の間に入ったら既に『扉』が1つ開いてるんですから!まさか勝手に扉から出る新入生がいるなんて・・・」
近づいて、ようやく私の姿をよく見たんでしょう。
そして、一言呟きました。
「・・・女性?」
「女性ですよ?」
グリム君以外は皆・・・いや、まだ妖精さんと仮面さんにしか会ってないからどうなのかは分からないけれど・・・どうしてそんな反応するんでしょうか・・・?
「と、兎に角一度鏡の間に行きますよ!ドラコニア君、呼び忘れましたが、入学式が始まっています!」
「入学式?」
「やっと呼ばれたか」
そう言って嬉しそうに笑うと、妖精さんは黒いジャケットの胸ポケットに挿していた黄緑色の宝石のついた万年筆を一振りします。
すると万年筆から光が溢れ、光は彼の体を舞い踊ります。
その光が収まると、彼の着ていた白いシャツに黒いジャケット、横に金のラインの入った黒いズボンは私の来ている服と同じデザインの服に変わりました。
強いて違いがあるとすれば、彼は角があるからフードに角用の穴が2つ空いている事くらいです。
それはそうとして・・・
私は2人について行きながら、仮面さんにドラコニア君と呼ばれた妖精さんに声をかけました
「ドラコニアさんというんですね。私はアリア。アリア・クロックベルです」
「俺様はグリム様なんだゾ!」
私達の様子を見て、何を面白く思ったのか、ふふっと笑いました。
「僕を恐れないどころか、僕のことを知らなかったようだな。僕はマレウス・ドラコニア。クロックベルにグリムか・・・楽しくなりそうだな」
「自己紹介は一度ここまで」
仮面さんの声が聞こえて、周りを見るといつの間にか私が目を覚ました部屋の前にいました。
予想以上にマレウスさんと話すのが楽しかったようです。
「改めて、私はディア・クロウリー。このナイトレイブンカレッジの学園長を務めている者です」
「がくえんちょー?」
がくえんちょーって何でしょう・・・?
そもそもにゅーがくしきも何でしょう・・・?
「さあ、行きますよ」
そう言って、クロウリーさんは私がいた部屋・・・鏡の間と呼んだ部屋の扉を開けました
キャラ紹介
グリム
アリアがツイステッドワンダーランドで初めて会った住民。
大魔法士を目指しており、原作に比べると素直で大人しい
最初はアリアの着ていた式典服を奪おうとするが、逆にアリアのペースに飲まれて奪う気を無くす
アリアとは大切な親友兼家族になってゆく
マレウス・ドラコニア
アリアがグリム以外でツイステッドワンダーランドで初めて会った住民。
ディアソムニアの寮長を務めており、茨の谷の次期国王
自分を恐れないどころか、自分の事を知らなかったアリアに興味を持つ。
アリアがきっかけで初めて入学式に参加できて嬉しい。
なお、ここで名前を名乗ったのでアリアは彼を『ツノ太郎』と呼ばない
ディア・クロウリー
ナイトレイブンカレッジの学園長。
扉が一つ既に開いていたのと、その新入生が女子だったこと、そして魔獣がいた事にめちゃくちゃビックリした。
アリアからは怪しげな人と思われたが、原作より優しい。
この地点でアリアのカリスマ性と胆力の凄まじさを見抜いている。
マレウスが入学式に参加できて嬉しそうなことが伝わってきて、できる限り寮長会議に呼ぼうと努力する