気が向いたりしたら短編として出すかもしれません。
それではどうぞ。
その子供は糞尿の中から産まれ出たと言っても過言ではなかった。
母親は女しかいないという特殊な種族、アマゾネスと呼ばれる者たちの中でも格段に強い者であったが種族特有の強い雄との子供を作り、子孫を増やすということに関してはほぼほぼ無頓着であった。
だが、その女は自分自身の体は充分に男の情欲を唆るとわかっていたので金目的の肉体関係を結ぶこともザラであった。
現代風に言えばパパ活や援助交際と言ったものである。
そんな時であった。
その女に子供ができたのだ。
始めは女はどうしようかと考えた。
このまま子供を産んで適当に育てるもいいが、それは手間がかかるし何よりも面倒くさい。
しかし、バレると周りから生んで育てろと言われるに違いない。
結果的に色々考えた女は子供を便所に堕ろすことにした、もちろん秘密裏にだ。
陣痛が酷くなってきた頃合いを見計らって女は夜中、一人で家の便所に閉じこもり必死に声をおさえて、子供を堕した。
その糞尿まみれの中で子供は産声を上げた。
しかし、女はすぐさま便所に蓋をして必死に声が外部に洩れないようにした。
その声は三日三晩続き、母親は耳を塞ぎ、なるべく家の外で過ごすようにして必死でやり過ごしていた。
しかし、四日目を迎えた頃からその声はパッタリと止んでしまった。
女はようやくくたばったのかと内心ホッとして、久々にゆっくり寝られると思い、床に着いた。
しかしそれから三日後、堕してから七日ほど経った頃であった。
女は奇妙な音で目を覚ました。
窓からの満月の月明かりに照らされて、ズルッズルッという音と共に何かが床の上を這ってきていた。
見た目はただの黒い塊であるがその恐怖のあまり、女は動けずにいた。
するとその黒い塊はいきなり速度を上げて女に襲いかかった。
口の中に入り込んできたのだ。
そして女はようやく気がついた、それが便所捨てた自分自身の子供であると。
そう、その子供は便所の中のウジ虫や糞尿を食べて生き残り中から這い上がってきたのだ。
子供はもう一度胎内に戻るように口の中に入っていった。
そして胃袋まで到着すると、息苦しさからか母親の腹を突き破り中から顔を出した。
こうして子供は2度目の誕生をしたのだ。
そう、その子供は生まれついての怪物だったのだ。
母親の死体を発見したのは友人のアマゾネスであった。
何十日も顔を見せない様子に不安を抱いて様子を見にきたところで発見したらしい。
流石のアマゾネス達もそばですやすや眠っている子供が女を殺した犯人だとは想像もできないようだった。
しかし、問題はその後であった。
なんとその子供は女ではなく、小さい陰嚢を持つ、男だったのだ。
アマゾネスの子供はどんな人間と子供を作ろうとかなりの確率で女になる。
男生まれても捨てられるか、奴隷としての扱いを受ける。
つまり育てられる子供は女ではなくてはいけないのだ。
しかし、その男が生き延びたのは生まれ持っての美貌であったのかもしれない。
アマゾネスの一人が顔を布で拭くと、ゾッとするほどの美しい顔が現れたのだ。
独り占めしたくなるような美しさをしており皆に見せてみるとと我先にと言わんばかりに奪い合った。
結局、最初に顔を拭いた女性が預かるという事になったが女本人もこのような素晴らしい美しさを奴隷にするなど勿体無いと感じていた。
しかし、いくら美しいとは言え、掟には従わなければならない。
女は惜しいと思いつつも子供を隣の国にでも捨てようかと考えたが、そこでとある人間に見つかってしまった。
アマゾネスの女王たるヒッポリュテの妹ーーーペンテシレイアである。
「貴様、なんだその子供は。どれ見せてみー」
顔を除いた瞬間、ゾッとペンテシレイアは背中を指でなぞられたかのような感覚に襲われた。
すぐさま後ろに下がるとペンテシレイアはすぐさま女から子供を奪い取るとじっくりとその顔を見つめた。
(この子供ー身体を見る限り男か!通りでこんなにコソコソとしていたわけだ。何よりこの美しさは...)
ペンテシレイアは言葉でうまく表せないような感覚に襲われていた。
心の中にモヤが残るような、そんな感じだ。
そして、この子供は私が預かると無意識のうちに声に出してしまっていた。
何故そんなことを言ったのかは自分自身でもすぐに理解はできなかった。
アマゾネスは納得のいかない様子ではあったが軽く威圧をかけると何か言いたげな表情をしたもののスゴスゴと帰って行った。
そしてこっそり家に帰るとどうすればいいかと考えた。
ペンテシレイア自身は戦士としてのプライドや矜持を持っている。
だが美しさを全く理解ができないという訳ではない。
だがこの子供を周りの人間、例え女王たる自身の姉、ヒッポリュテにすら渡したくないという独占欲が心の中に渦巻いているのだけはハッキリしていた。
だからこそこの子供を立派な戦士に育ててみせるという考えが浮かんだ。
そうすれば他の戦士にすら容易に殺されもしないだろうし強い雄として立派な種馬となるかもしれない。
母乳は他のアマゾネスから少しずつ貰えば良い、なに女児を拾って育てたいと言えば姉すら疑うまいと中々都合のいい事ばかり考えていたがこの子供を独り占めできると考えればそんな不安すら消し飛ぶようであった。
それから数年後、男は六歳まで育っていた。
美しさには更に磨きがかかり、男だからか同年代の通常のアマゾネスよりも逞しい体つきをしていた、しかし表情は常に氷のような冷たい顔をしていた。
ペンテシレイアでさえも男が笑顔になった所を見たことはない。
何故なら男は自分自身にしか見えない黒い手が纏わりついていた。
そしてそれと戦っていたのだ、それはまるで埃のように男の周りを漂い口や鼻を塞いでいた。
その匂いはまさに糞尿そのものであった。
それが凝縮されてその黒い手となっているようだった。
でもその手がなくなり男が安らぎを感じる時がある。
それはペンテシレイアと触れ合い、匂いを嗅ぐ時であった。
ペンテシレイアは戦士だ、それ故に戦って、血を浴びて匂いが染み付いている。
男はその匂いが好きだった血の乾いた、生臭い匂いが好きだった。
血の匂いがする時は表情こそ変えないものの抱きついて匂いを自分自身の体に染み込ませ、必死に黒い手を無くそうとしていた。
事件が起きたのはペンテシレイアが数日の間家を開けた時であった。
ヒッポリュテから命令を受けたアマゾネスが家に入ってきたのだ。
ペンテシレイアがここ数年怪しい動きをしていることはヒッポリュテも知るところとなっていた。
家を留守にしている間に何があるのか調査をしてこいというのがアマゾネス達に下された命令であった。
男は本能的に何かがきたことを察知すると急いで家から逃げ出した。
しかし、ただ逃げ出したわけではなく、ペンテシレイアの持っていた古びた手斧を持って逃げ出したのだ。
アマゾネスの一人が奥の部屋に向かい寝床を調べていたことであった。
後ろからブスリと何かが食い込んできた感触がしてきた。
一瞬何が起きたのが理解できなかった。
そして次の瞬間自分が死ぬということを思い知らされることとなった。
首の裏からまるで熱い鉄を押しつけられたような感じがしてきた。
何かが首から離れた感触がするとビチャビチャと音がしてようやく自分の首が切られたことがわかったのだ。
あぁ、こんなに自分の血って熱いんだなぁ。
そんなことを思いながらアマゾネスは息絶えた。
男は上手に首の切れなかったことを悔やんだが、直ぐに女の死体の下に潜むと次の獲物を待った。
滴る血をミルクを飲む犬のように舐めて味わいながら。
そうしてそのアマゾネス達は全滅した。
中には腹を裂かれ、内臓や血が夏の日に撒かれる水のように飛び散っている者さえいた。
これが発覚したのはペンテシレイアが帰ってきた時であった、そしてその頃には男は忽然と姿を消していた。
まるで最初から存在そのものがなかったかのように。
ペンテシレイアは必死で周りを探索したがついぞ見つけることは叶わなかった。
また必ず一緒に暮らしたい。
そんな夢を胸に抱いてペンテシレイアはまた戦士として生きる事となった。
男は山へと逃げ込んでいた。
流石にあんなに殺してはタダでは済むまい、と本能的に男は察していた。
そして男は下手ながらもツルや木の枝で弓を作ったり、持ってきた手斧や削った石で獲物を狩るなどして生きながらえていた。
時には迷い込んできた人間を捉えては惨殺し、血の匂いで黒い手をかき消した。
人間の糞の匂いがする、殺せばもっと臭くなる。
でももっと臭くなれば臭くなくなる。
黒い手がなくなる。
いいな、それ。
男はずっとそのように考えて生きていた、客観的な視点から見ると間違いないくらいの狂人であったが男にはそもそもそんな考えすらないのであろう。
男はようやく生きる喜びを知ったかのように毎日を楽しく生きていた。
そんな生活をしていると紫色の大蛇に出会った。尻尾は棘に螺旋のようなものが巻き付き、持ち手もついているためまるで剣のようだ。
更に頭から胴体にかけてまるでフードのようなものさえついている。
いわゆるコブラ科と言われるヘビであった。
男は自分を丸呑みにしようとしてきたその大蛇に対して噛みつき、引っ掻き、斧による攻撃と自分自身の怪我を顧みずに戦ってみせた。
そして、大蛇と男は満身創痍と言わんばかりになってきた頃大蛇がとあるものを口から吐き出した。
それはヘビの形というかマークというかそのような見た目の金色のエンブレムだった。
男がそれを拾うといきなりエンブレムが光り出し大蛇はまるで吸い込まれるように男の胸の中に入って行った。
男は胸を押さえつけて悶えたが頭の中に何かの知識が入ってきた。
そして男はすぐさま理解した、これは大蛇との契約なのだと。
大蛇は男を丸呑みにして食おうとした。
しかし、予想以上に強く相討ちになると考えた大蛇はこの男と協力すればもっといい物を食えるのではないかと考えついた。
男に力を与える代わりに大蛇は餌を食わせて貰うという俗に言うギブアンドテイクという関係を結ばないかと大蛇は男の中で問いかけた。
クックックと男は笑い声をあげる。
「いいなぁ、それ。いい、いい....」
男はすぐに了承すると。今度は大蛇が名前はなんだと質問してきた。
男はペンテシレイアにストライクという名をつけてもらっていたが、正直気に入ってはいなかった。
そもそも隠れ蓑の一つにすぎないあの女につけてもらった名前など呼ばれただけでイライラする。
「王の...蛇...
男はそうボソリと呟いた。
これがかのヘクトールやアキレウスに勝るとも劣らないと言われるようになる反英雄の新たなスタートになるとは誰もが予想できなかった。
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ヘクトールは最近、起きている出来事に頭を悩ませていた。
ただでさえ今はギリシャとの戦争中だというのに、だ。
その内容としてはとある山に入って行った人間が戻ってこないというのだ。
あの山には確かに強い魔獣がいるという報告もあったが1度目の捜索の時などにあらかた片付けた。
なのに一向に行方不明者が減らないどころか、度胸試しで入った人間がアンコウの吊るし切りのようなって見つかったこともあれば、捜索のために駆り出された兵士たちがモズの早贄のようになって見つかったこともあった。
そして数ヶ月後、その犯人が見つかったという報告がヘクトールの耳に届いた。
この前度胸試しに入った人間の友人という2人組が山に入って、数時間した頃だったらしい。
偶然人影らしきものを見かけたというのだ。
それは簾のように伸びた髪と垢や泥で真っ黒になった王蛇ことストライクであった。
1人は捕まったものの命からがら逃げ出した1人がなんとか報告してくれたらしい。しかし、報告したもう1人も自分だけが生き延びてしまったという自責の念に駆られ自害してしまったそうだ。
すぐさまヘクトールは22人もの腕の立つ兵士と共に山に行きその男を探したものの兜輝くヘクトールと言われた男でも18人もの犠牲を出してようやく捕らえられたという。
男は汚れを落として、髪型を整えるとヘクトールやその弟のパリスでさえ、息を呑むほどの美しさであった。
特にパリスや他の弟や妹はヘクトールが尋問している最中だというのに見惚れてしまうとは何事だと諌められることもあった。
ゼウスやアポロンが発見してしまえば襲われるかもしれないと考えつつヘクトールは男に幾つもの質問をするように部下に命令した。
しかし、あまりに荒唐無稽な解答を返した事となり、精神鑑定すらできないと判断され常人では理解できぬ価値観がこの男にはあると何人もの大臣や将軍が感じたのかすぐに首を刎ねて殺すべきだという意見も多かった。
だが、ここで思わぬどんでん返しが起きる事となる。
偶然、駆けつけていたトロイア戦争で同盟を組んでいるアマゾネスの女王の妹、ペンテシレイアより殺すなという意見が来たのだ。
ヘクトールは当然納得のいかないと返したがこの男は我が子であるというペンテシレイアの衝撃の事実にはヘクトールや他のアマゾネス達も驚く事となった。
結果、この男をギリシャとの戦争に用いて、武勲により罪を軽減させるというアイディアでまとまる事となった。何人かは納得のいかないような反応を示したが使えると考えたヘクトールの口先八丁により渋々納得していた。
王蛇はトロイア戦争で武勲を上げれば罪を軽減するという誘いを受け始めは納得のいかない様子であったがその後アッサリと誘いを受けた。
好きな血を浴びることができる。
沢山の内臓や生き血を啜ることができる。
まるで旅行を楽しみにしている子どものように王蛇はワクワクしていた。
ペンテシレイアは彼に口づけをして、体を重ねることもあったが。
王蛇自身は血を水のように浴びることの出来る、戦いにこそ真の快楽を見出していた。
性行為自体は気持ちよかったが2人はお互いを傷つけながらよく行為に及んだという。
理由としてはなんてことはない、ただどんな薬草や興奮剤よりも最も2人が昂ったのが血液だっただけである。
彼はよく紫色のコブラをかたどった鎧を着て戦に赴き、野営地にいる味方さえ殺した。
血の匂いや色が好きで内臓や余った部分は相棒である大蛇ことベノスネーカーに食わせていた。
王蛇はずっとこの戦いが続くことを願っていた。
もっと血を浴びて匂いに浸っていたかった。
しかし現実は非常であった。
ヘクトールが死んだという知らせが王蛇の耳に入ってきたのだ。
王蛇自身はへーっという感覚であった。何せペンテシレイアは戦いに間に合わなかったのかという感じはしたが、少しして、ペンテシレイアも死んだと聞いた時はアイツの血や臓物はどんな味がしたんだろうな。くらいしか思わなかった。
そして王蛇自身も2人を殺したアキレウスに決闘を申し込まれた事となった。
「貴様が、かのオージャーか。噂は聞いてるぜ。血や臓物が好きな戦闘狂だってな!」
ガァン!!と王蛇の持っている剣、ベノサーベルとアキレウスの持っていた槍がぶつかり合う。
王蛇はアキレウスの頭を狙ってはいるが流石2人を殺しただけはあり中々有効打となるダメージはなく、実力は拮抗している。
「お前は特に臭えな!糞でも垂れたか!!」
そう言いつつも少し王蛇が押されて行っているのは王蛇自身も気が付いていた。
確かに王蛇自身も英雄にふさわしい実力をかねそなえている。
しかし、あまりにアキレウスとは生まれの差がありすぎたのだ、アキレウスはそもそも神と人間の混血児であり弱点の踵以外は不死の炎で炙られており、正に不死身に近い大英雄である。
だが全く効かないというわけではない。
王蛇はベノスネーカーを呼び出し、毒液や尻尾の攻撃により、少しづつではあるが着実にダメージを与えられていた。
次の瞬間
アキレウスの
踵が射られたのである
王蛇はあまりの衝撃に一瞬固まってしまった。
しかし、たとえ踵を射抜かれようともこれで挫けるほど英雄というのは脆くはない。
アキレウスはすぐさまベノスネーカーの首を刎ねると次の瞬間には
王蛇の
心臓を
貫いていた
王蛇は前に倒れ込んでしまう。もう目はかすみ、1メートル先すら見えない。
(あ、ああ、血の...匂いだ...)
そして王蛇は既に息絶えたかのように見えたが鎧が功を成したのかまだ生きていた。
すっかり色を失い、灰色となった鎧に紅の血の色が染み込んでいく。
どうやらアキレウスは既に息絶えたらしい。しかし暴れ回ったのか周りには大量の血や肉片が飛び散っている。
「誰ダァ、イラ.....イラ..するんだよォ...」
王蛇は誰がアキレウスの踵を射抜いたのか、それだけでも知りたかった。
アキレウスの槍を拾い、杖代わりにすると王蛇のかすんだ目に見覚えのある人間が映る。
そいつはヘクトールの弟でもある、パリスであった。
こちらに頑張って走ってきているが王蛇は怒りが爆発したかのようにパリスの首を掴むとギリギリと音を立てて締め始めた。
パリスも必死で抵抗しているが王蛇自身、何故こんなことをしているのかあまり理解できなかった。
勝負を邪魔された怒りか、それとも射抜いたことによって心臓を貫かれた恨みか、いずれにせよゴキリと首が折れる音がするとパリスはもう動かなくなってしまった。
1人、王蛇は空に向かって手を伸ばす、月か太陽かはわからない。
めがみえない
あぁ、あそこがでぐちだ
あそこからそとにでられる
きっともうすこしで
あたらしいせかいにいけるんだ
そう思った直後に王蛇の体はピシリと音を立てて灰になった、そしてサラサラと崩れ去りそこにはパリスやアキレウスの死体だけが残されていた。
後半結構駆け足だし、ご都合主義にも程があるやろと書き手ながらに思いましたね。
連載してくれって要望があったらするかもしれません。(チラッ、チラッ)
それでは753101938315でした。