ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。 作:夢泉
細かい所は飛ばして、一旦これで過去回想は終了。
後々もう少し詳細を書くかもしれませんが。今はともかく本編。
★★★
少年の言う「ナンパ」とは、ずばり女の子と仲良くなることを意味していた。彼曰く、「大人の階段」だそうだ。
当然、ボクは強く拒絶した。だけど、彼はいくら振り払っても付きまとって来て。常に周囲をウロウロし続けた挙句に、遂には帰宅するボクの後をこっそり追って、図々しくも家の前まで来やがったのである。
「こういうのストーカーって言うんだよ。知らないの?」
「大丈夫だ! 男同士なら問題ない!」
「男同士のストーカーもいるんだよ」
「まじか!」
そうやって家の前で騒いでいると、その声が聞こえたのだろう。家の中から極が出てきた。
「おう、星。おかえり。……なんだ、オマエ」
「ふっはっは! 聞いて驚け、俺こそは星の親友――」
「違うよ。ただのストーカーだよ」
「――親友になる予定の男! 人造人間Xマンだ!」
昨日は銀河戦隊スーパーXマンを名乗っていたくせに、そんなにコロコロ名前を変えるな。
いや、そもそも一人なのに戦隊って変だし。スーパー取れてるから劣化してるし。ツッコミどころしかない。
「……つまり、どういうことだ? このクソガキは星の友達ってことか?」
直ぐに否定の言葉を発しようとしたけれど、それよりも来栖の意味不明な返答の方が速かった。
「ガキじゃねぇ、カミだ!」
「……神?」
「そうだ! かっこいいだろ、あがめ垂れて待つ!」
もしかしなくても、「あがめたてまつれ」と言いたいのだろうか。
そもそも「人造人間」じゃなかったのか。何で急に「神」になるんだ。設定が滅茶苦茶じゃないか。
「ははっ! 何だクソガキ、超面白いなオマエ! 」
「クソガキじゃねぇ、クソカミだ!」
「ひぃーーー! 笑い過ぎて腹痛ぇ! じゃ、寄ってけよ、クソカミ!」
ただ、その支離滅裂さが、極の何かしらの琴線に触れたらしい。
来栖と極は意気投合し、来栖はボクの家に入り浸るようになった。
★★★
以来、家でも学校でも。更に来栖が付きまとうようになって。
その頃にはボクも色々と諦めていた。彼を振り払うことは不可能だし、いっそ彼の思うままにさせた方が楽だと考えるようになっていた。無駄に抵抗して疲れるくらいなら、流されていた方が楽だと。
それで、遂に彼が当初より言っていた「ナンパ」とやらを一緒にすることとなって。
「よし。最初のターゲットはアイツだ! いっつも教室の隅に一人でいて気に食わねぇ!」
その時、最初の犠牲者になったのが「鷲平 韻子」。良くも悪くも、これが切っ掛けとなってボクらの友情は始まった。
それからも彼は、学校中の人間に声をかけて回った。年齢差も何も関係なく、ただ無作為に。「ナンパ」という名目なので女子ばかりだったが、条件はそれくらいだった。
そう。本当にそれだけ。たとえ、どれだけ暗かろうが、嫌われていようが関係ない。本人自ら、または周囲が壁を作って距離を取っている子でも関係なかった。その壁をブチ破って距離を詰めていくのが偽十字 来栖という非常識な少年だったから。
だから、街で恐れられるヤクザ「鷹刈組」組長の一人娘……鷹刈 麻琴であっても、彼の無差別ナンパの魔の手からは逃れられず。ずっと周囲から避けられてきた彼女は、来栖に手を掴まれてボクたちと知り合った。
そうやって、人の輪が広がっていって。ボクの世界は色づいていった。
再び失ってしまう恐怖が消えたわけじゃない。でも、その恐怖があって尚、ボクは彼らと繋がっていたいと思うようになっていた。
失わないために離れるのではなくて。守るために強くなりたいと、そう思うようになっていた。
――そして、5年前。小学生最後の年。再びの悲劇は起きた。
★★★
「……無事みたいだな。しっかし、3人全員が適正者ってどうなってんだよ」
アストロラーベ・フィールド。
自身を含め、周囲の星群少女全てを強制的に別位相へと移す術。
それは、星群少女たちが戦う為だけに作られた、専用の世界への招待状。
しかし、AEに高い適正を持つ者……「適正者」と呼ばれる者たちも、星群少女と誤認されて飲み込まれてしまう。
両親を失った日のボクように。今日この日、迷い込んだ3人の少女……ボクと、韻子ちゃんと、麻琴ちゃんのように。
「こちとら薬漬けになって、やっと
燃え盛るフィールドの中で。
女は――夜白 極は
目の前で泣く少女たちを安心させるように。
「はは、これじゃ白鳥じゃなくてカラスだな。まだまだオバサンには程遠いと思ってたんだが、流石に少女ってのは無理があったか」
いつか見た、はくちょう座の星群少女と同様、女の背には巨大な翼がある。
ただし、あの白い翼とは異なり、ドス黒い泥を……“ダークマター”を吐き出し続けて黒く染まっていた。
「良いか、星。アタシがくたばったら、クソジジイを……
「何を言ってるの…! ねぇ、極っ! 極ってば!」
ボクはずっと彼女の名前を呼んでいたけれど、彼女はまるで何も聞こえていないかのように話を続けた。
いや、事実として聞こえていなかったのだろう。
その時には既に、腹部の穴を始め、口や耳、目といった場所からコールタールに似た泥が流れ出し始めていた。もう視力も聴力もまともに働いていないのは明白で。
それでも、ボクは彼女の名前を呼び続け。
それでも、女はいつも通り快活に笑った。
「アタシは戦いの道に引きずり込む事しか出来なかった。復讐心を植え付けて、焚きつけて。……はは、改めて言葉にすると酷ぇな」
「違う…! 違うでしょ…! もう分かってるんだよ! 何年一緒にいたと思ってるんだ!」
彼女はいつだって悪人として振舞った。常にボクから嫌われるように立ち回っていた。
でも、5年も一緒に居たんだ。もう流石に分かる。彼女の真意くらい理解できる。
適正者であるボクは、自分の意思に関わらず戦いに巻き込まれる。
近くで星群少女の戦いが始まれば……フィールドが展開されれば、否が応でも飲み込まれてしまう。高いAEのせいで星群少女と誤認されて。
それに、極星機関を始めとした人間側の組織・団体もボクを放っておかない。
だから、彼女は。夜白 極はボクを養子にした。極星機関・極東支部
せめて自衛できるように。生き残れるように。道を選べるように。
男と偽らせて、あらゆる脅威や組織から隠しながら鍛えてくれていた。
「聞け、星。お前は……お前たち3人は、これから否が応でも巻き込まれる。だから、覚えておけ」
そこで彼女は数度咳き込んだ。
血の代わりに、真っ黒な泥が吐き出される。
それこそは、適正無き身でAEに手を出した者の末路。薬物で無理やり適応させるのも流石に限界のようだった。
「星、韻子、麻琴。失うモノがない強さ、守るモノがない強さ。それは確かに強い。捨て身で何かを為せることだってある」
「だがな、それじゃあ個人の力の限界にしか至れない。当たり前だ、一人なんだから」
「守るモノがあれば、守ってくれる奴がいれば。一人じゃ無ければ、人の可能性はどこまでも広がる。あの遠い星々にも飛んで行ける」
「だから、星。韻子に麻琴。繋がることを恐れるな。守るモノをつくれ。失うことを恐れながら強くなれ。――失わない為に戦え」
そこまで言って。
彼女は懐から3つのペンダントを取り出した。
「星、これを託す。使い方は教えたよな」
付いている星型の結晶体は、「はくちょう座」「わし座」「こと座」の3体の星群少女のコア。
夜白 極が、あの日に散った戦友たちより譲り受けた形見。
ずっと持つことを許されないでいた、星群少女になるための鍵。
「神なんか信じちゃいないが、あの
嫌だと言いたかった。
聞こえていないと分かっていても、一緒に逃げようと言いたかった。
誰かが囮にならなければ逃れられないことなど理解しながら。全員無事に逃げ切ることなど不可能だと知りながら。
それでも、ボクは否定の言葉を紡ぎたかった。
だけど――
「――韻子と麻琴のことを、
――続く言葉は、余りにも卑怯に過ぎた。
★★★
少女は走った。
理解及ばぬ状況に困惑する2人の手を無理やり引いて、走らせて。
「待っていてくれて感謝するよ」
「構わぬ。今生の別れを邪魔するほど無粋ではない」
もう聞こえていない耳を、聞こえているように偽りながら。女は僅かでも時間を稼ぐ為、会話を続けていく。
そんなことも、共に暮らしていた少女は手に取るように理解できていた。
「せっかくだ。最初で最後の名乗りをさせてもらうが、構わないよな?」
「無論だとも」
理解していながら、その声を後ろに少女は走った。
ただ真っ直ぐ、振り返らずに。
「アタシは2代目ノーザンクロス! キュクノス・ヒュリエ! 友としても母としても、どっちも落第のアタシには似合いの名だろ!」
「確かに聞き届けた。キュクノス・ヒュリエ、誉れ高き母よ。我が名はペルセウス、いざ尋常に死合おうぞ」
その後。少女3人は逃げきり、女は二度と帰ることはなかった。
それが結末。残酷な、2度目の悲劇。
――この日、ボクは再び親を失った。
★★★
「……あれから、もう5年か」
あれ以来、ボクたち3人は星群少女となって戦い続けている。
ただただ、自分たちの平和な日常を、人々の平和な暮らしを守るために。
その過程で、助けて助けられて、色んな人と繋がっていった。
てうちゃんに、貨月ちゃん。他にもたくさん。
……まぁ、大概は来栖がきっかけになっているけれど。
「来栖が敵だったら、か……」
その時、ボクはどうすれば良いのだろう。
守りたい存在が敵になってしまうのだとしたら。
「もう分からないよ。ボクはどうすれば良いのかな。教えてよ、極……」
呟いても、独りきりの家に答える者はいなかった。
諸事情により、前回のAI絵は消しました。
大変申し訳ありません。